佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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弩級圧倒的
世界の楽壇で最高峰に上り詰めたN響2012/13のラインナップ
NHK

ものすごいです。何かニューヨークフィルの布陣みたいです!チケット争奪戦が確実!?。BプロCプロは年間会員券で完売してもいいような感じです。僕は3階自由席1500円の範囲をもう少し狭めて1回2000円くらいの指定席化を希望します。
 

クラシック音楽を生演奏で聞かれない方へ。
せっかくこの世に生まれてきて、すぐ近くにある究極の音の素晴らしさを自らの肉体の五感を使って、いや時には霊感まで使って受けとめないのはあまりにも勿体ないです。それも100人を超えるプロの音楽家が奏でる2時間弱の音楽をN響ならたった1500円で(N響NHKホール定期演奏会の場合)手にする事ができるのです。
以下は、2011年4月。世界的名指揮者ズビンメータが東日本大震災に苦しむ日本のために単身来日し、急遽NHK交響楽団ともったベートヴェンの第9交響曲の第4楽章の模様である。






2012年9月
「巨匠2人の重量級大作とプレヴィンの至宝モーツアルト」

 この15年N響に新境地を開いたアンドレプレヴィン。加齢から体調のことを考えるといつ最後の公演になってもおかしくありません。1回1回が大変貴重な公演です。
 

 思い返せばプレヴィンとN響の出会いは偶然のものでした。
「サウンドオブミュージック」や「メリーポピンズ」の主演で有名なジュリーアンドルースが1993年8月にNHKの招きでコンサートを開くことになったのです。その時の伴奏をしたのがN響(一部でサウンドオブオーケストラという人がいますが、それはコンサートの名称です)だったのです。
 アンドレプレヴィンはハリウッドでも活躍し1960年代には何回もアカデミー賞をもらってる人ですし、ジャズのピアニストとしても高い評価をもってるマルチな才能の持ち主です。ウィーンフィルなどにも頻繁に呼ばれる存在の彼は、もはやポップスコンサートの伴奏の指揮をする存在でなかった。そんなアンドレプレヴィンですが、ジュリーアンドルースとも旧知の仲ということで、特別にそのコンサートの指揮者となったのです。指揮だけでなく、コールポーターやクルトワイルの名曲のピアノ伴奏をしたりと語りぐさになってるコンサートです。
 この時、ジュリーアンドルースも2時間近く唄ってばかりはいられません。衣装替えも必要です。そこで、ラベルのヴァルスとラプソディインブルーがジュリーアンドルースの衣装替えなどのつなぎとしてN響とアンドレプレヴィンは演奏したのです。
 すでに欧米の超一流のオケしか指揮していないプレヴィンですが、ここで一気に距離が縮まり1990年代の半ばからN響を指揮する様になったのです。面白い出会いでした。何回かの定期演奏会は毎回至福の時間、あれから、まだ10数年ですが、もう80歳を越えてしまったプレヴィンは2011年の演奏会では歩行器を使っての登場となってしまいました。もちろん座っての指揮。指揮ぶりも最低限の指示だけになっています。それまでの指揮とは大きく違います。身体が弱っていくのが手に取る様に分かります。もちろん流れてくる音楽は素晴らしいのですが…。こういうわけですから、ひとつひとつの演奏会が貴重だと思うのです。
 今回もN響側の気の使い方をみて下さい。通常ひとつのプロを2日間やったら、1日くらいの休暇のあと、すぐに次のプログラムの稽古、本番となります。
 しかし、このシーズンでこの9月だけはAプロとBプロの間に別の指揮者を入れてプレヴィンに十分な休息を取れる様に配慮しているわけです。当初は未定となっていたその枠にスラトッキンが入ったのは2012年1月の名演があったからでしょうが、嬉しいですねえ。

 さて、新しい2012/13のシーズンはマーラーの大作第9番交響曲で幕を開きます。NHKホールでマーラーの9番と言えば、僕に取ってはレナードバーンスタインがイスラエルフィルと1985年の秋に来日したときの超名演が忘れられませんが、それと並ぶ名演が期待で来ます。もちろん両日とも行きたいです。
 さらにプレヴィンとモーツアルトやハイドンを奏でる時のN響の音といったら!ウィーンフィルがモーツアルトを演奏するときの音楽にもひけを取りません(そういえば、プレヴィンはウィーンフィルにものすごく愛された指揮者ですよね)。美しい弦のアンサンブル。管楽器の素朴な音…。モーツアルトの最初の交響曲と一番最後の交響曲を聴けるのは幸せですねえ。さらに100を越えるハイドン交響曲から何と102番。選びに選びましたね。是非聞いて下さい。1楽章の最初から溢れる静謐な音楽。それをN響とプレヴィンが別れを惜しむ様に奏でるでしょう。
 そして、2012年1月に、ふたつの定期演奏会と外部公演で3種類のプログラムを指揮してN響と抜群の相性を証明したスラトッキン。ニューヨークフィルを始め世界の最高峰のオケしか指揮しない名匠とこれまた来日公演ではなかなか演奏されないショスタコーヴィッチの大作。次はいつ来てくれるんだろうと多くの人が思っていたことでしょう。それがたった8ヶ月で再登場。嬉しいです!
 


Aプロ:15(土)・16(日) / アンドレ・プレヴィン
 マーラー交響曲第9番

Bプロ:26(水)・27(木) / アンドレ・プレヴィン
 モーツアルト交響曲1番&41番「ジュピター」ハイドン交響曲102番

Cプロ:21(金)・22(土祝) / レナード・スラットキン
 ショスタコーヴィッチ 交響曲第7番「レニングラード」ほか

2012年10月
 「巨匠中の巨匠マゼールがN響と驚愕の初顔合せ」

 ロリンマゼールは過去50年間、欧米の楽壇の最高峰に常にいた名指揮者です。カラヤンやベーム、バーンスタインが君臨していた時代であっても年齢は若くても互角の存在。そのマゼールがNHK交響楽団に初登場です。日本では東京交響楽団と読売日本交響楽団に1日だけの特別演奏会のような形で登場したことがあります。廻りでは短い稽古時間で1日だけの演奏会。やっつけだよなあと陰口を言う人がいます。が、今回のN響との演奏会はそれらと全く違います。1ヶ月間N響に張り付いて3つの定期と今年のNHK音楽祭という四つのプログラムを振るのです。プログラムの質も違います。マゼールは2012年にウィーンフィルとウィーンの定期だけでなく公演旅行に出かけますが、その時のプログラムがそのままN響にも組まれました。マゼールがどれほどN響に期待しているかの現れでしょう。
 マゼールは2010年年末に亡くなった岩城宏之さんが行っていた大晦日のベートーベンの9つの交響楽を一挙に演奏する催しに特別な代役で出演されましたが、その時の特別編成のオケの主要メンバーはNHK交響楽団。とても評判になりました。マゼールも気に入った。そうして出演となったのです。
 以下の4つの演奏会は誰もが注目していますので、きっとチケットの奪い合いになるのは必須です。今年度のNHK交響楽団シーズンの最大の新規の目玉は10月です。Aプロのグラズノフのバイオリン協奏曲のソロのキュッヘルはご存知ウィーンフィルのコンサートマスターの中でもトップの存在。キュッヘルは2011/12のシーズン。震災後で多くの欧米の演奏家が来日を拒否しキャンセルする中、単独来日し、N響の5月のプログラムで特別コンサートマスターをしてくれた日本を愛してくれる世界の音楽界のトップ。そして、マゼールとはウィーンフィルで百回以上共演している仲です。もう期待が高まらないと言うのが無理な話です。4つそれぞれが音楽好きならたまらないプログラムになっています。


Aプロ:13(土)・14(日) / ロリン・マゼール 
 チャイコフスキー組曲3 グラズノフバイオリン協奏曲(キュッヘル)
 法悦の詩

Bプロ:24(水)・25(木) / ロリン・マゼール
 モーツアルトのプラハ交響曲、ウェーバー/クラリネッと協奏曲2番(Dオッテンザマー) スペイン狂詩曲 ボレロ

Cプロ:19(金)・20(土) / ロリン・マゼール
 ワーグナー ニーベルングの指輪(声楽なし/マゼール編曲)

NHK音楽祭 10月29日/指揮ロリン・マゼール
 ベートーベン:序曲「レオノーレ」第3番 ハ長調
 グリーグ:ピアノ協奏曲 イ長調 作品16 アリスオット独奏
 チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 作品36


2012年11月
名匠ワールトが提示した期待のプログラム」 

 エドテワールトは前に2009年にN響に登場しています。オランダ出身で世界で活躍する指揮者で、通常の年ならば、今月が最注目になってもおかしくないのです。しかし、今年は毎月がスゴすぎてなんか損をしてますよね?ワールトは2012年6月にもオランダのオケと来日しマーラー等を演奏してくれますが、11月にはN響との期待のプログラムです。
 ワールトはオペラの指揮者としても高い評価。そして演奏会でよく取り上げる組曲「ニーベルングの指輪」も日本でも高い評価となっています。(今年はマゼールが演奏するわけですが)そして、今回のAプロでは武満徹作品に加えワーグナーの「ワルキューレ」の第一幕を演奏してくれます。亡くなったホルストシュタインが演奏会形式でN響と演奏したワーグナー(パルジファルなど、1990年前後だと思うのだけれど)は今でも語り草。新たな伝説が生まれようとしている予感がします。
 Bプロは、近年高い評価を受けているN響のブルックナー。2011/12シーズンもブロムシュテットが究極の演奏をして話題となりました。ワールトは8番で勝負します。Cプロは聞きやすい曲が並んでいるだけでなく、ワールトのさまざまな局面を聞かせてくれる期待大のプログラム。おなじみのフィンガルの洞窟に始まって、リヒャルトシュトラウスの名曲、そして楽しんで聞いてもらうのがちょっと難しいブルッフのバイオリン協奏曲。名バイオリニスト・ヤンセンの登場も楽しみです。


Aプロ:10(土)・11(日) / エド・デ・ワールト
 ワーグナー「ワルキューレ」第一幕 武満徹作品

Bプロ:21(水)・22(木) / エド・デ・ワールト
 ブルックナー 交響曲8番 ノバーク版

Cプロ:16(金)・17(土) / エド・デ・ワールト ジャニースヤンセン
 フィンガルの洞窟 Rシュトラウス/家庭交響曲 ブルッフバイオリン協奏曲
  
2012年12月
巨匠デュトワがゴージャスな音の絢爛絵巻を披露

 音楽好きでN響の昔を知っている人は誰もが認めるでしょう。N響を変えたのはデュトワだ!世界のトップクラスのオケしか演奏しないデュトワが初めてN響をしたときの喜びはもう20年以上前になるのでしょうか?元々素晴らしいオケでしたが、その時のベルリオーズの「ファウストの刧罰」を今でも忘れていません。これN響か!
 それからN響を世界最高水準に引き上げた最大の功労者であり、世界の楽壇から引っぱりだこのデュトワがこのところの例年通り12月に登場してくれる演奏会です。
 Aプロはデュトワが毎回N響に課す面倒くさいプログラムです。毎年のように頻繁に演奏される曲で通常の練習で簡単に演奏できる曲ではありません。ほとんど演奏されない曲です。ですから、N響には挑戦だったり、正直、面倒かもしれませんが音楽ファンには、なかなか聞けない名曲を世界最高峰の組み合わせで聞けるのですから幸せです。2011年はマーラーの8番交響曲「1000人の交響曲」とバルトークの「青ひげ公の城」の演奏会形式で2回も面倒な演奏会があって大人気でした。特にマーラーはチケットが早々に売り切れになり、ネットでの争奪戦が繰り広げられました。そして、今年は何と行ってもこれ!
 Aプロでのデュトワお得意のラベル。歌劇「子供と魔法」(演奏会方式)そして、これまたお得意のロシアものストラヴィンスキーの「夜鳴きうぐいす」(演奏会方式)。日本で過去あまり演奏されたことのない、この曲ですが、演奏史上最高峰が期待されます。僕は子供と魔法は1980年代の終わりにアムステルダムコンセルトヘボウホールで、コンセルトヘボウ管弦楽団とデュトワの組み合わせで聞きましたが、忘れられない演奏会でして、楽しみでたまらないです。とても楽しい曲ですので行くかどうか迷っている人はCDなどで早めに予習しましょう!
 Bプロはサントリーホールという交響楽には理想的なホールで、デュトワがN響と毎年行う濃密で繊細な演奏会です。デュトワの十八番と言えば、これだろ!といえる「春の祭典」。実は僕が生まれて初めて海外で演奏会をきいたのが、デュトワとサンフランシスコ交響楽団との組み合わせできいた「春の祭典」でした。フィラディルフィア、モントリオール響などとも聞いて来たデュトワのハルサイですが、N響との組み合わせも最高です。まあ、1回券は売り出しはないでしょうから、あまりいうと行けない人に可哀想ですよね。これだけでスゴいのに、2012/13のシーズンで、いまや世界最高のバイオリニストの一人、ワディムレーピンによるシベリウスのバイオリン協奏曲もあるわけです。この曲2011年9月の定期でも、竹澤恭子とブロムシュテットで名演がされたばかり。いやはや何かメインだらけの豪華なBプロです。
 ちなみに今年のN響はバイオリニストに素晴らしいソリストの客演が山ほどあるバイオリンソリスト当たり年です。
 Cプロは華麗なリストのピアノ協奏曲と、ローマの3部作に謝肉祭。もう豪華でゴージャスな音の曼荼羅、絢爛絵巻。親しみやすい名曲でオーケストラをきく楽しみを誰にでも伝えてくれるでしょう。それも、世界の巨匠のデュトワとNHK交響楽団。期待が高まります。12月の演奏会は年末で忙しいのですが6回とも行きたいなあというのが正直なところ!!
 
そして、近年ますますチケット完売で取りにくいN響の第9ですが、今年はさらに至難中の至難。N響と行っているベートーベンプロジェクトで絶大な人気を誇っているノリントンが第9に登場です。2012年4月と12月と年に2回も登場してくれるとは嬉しい限りですね。


Aプロ:01(土)・02(日) / シャルル・デュトワ
 夜鳴きうぐいす 子供の魔法 演奏会形式

Bプロ:12(水)・13(木) / シャルル・デュトワ
 シベリウスバイオリン協奏曲(ワディムレーピン)「春の祭典」
 武満徹 ノベンバーステップス 

Cプロ:07(金)・08(土) / シャルル・デュトワ
 リストピアノ協奏曲第2番(ルイ・ロルティ)ローマ三部作 ローマの謝肉祭

シャルルデュトワは12月16日(日)のオーチャード定期も振る事になりました。
ピアノ:児玉 桃
ラヴェル:優雅で感傷的なワルツ
サン・サーンス:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 作品22
リムスキー・コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」


第9演奏会 指揮 ロジャーノリントン
12月22日、23日、26日@NHKホール 27日@サントリーホール



2013年1月
「巨匠ジンマンの☆☆☆演奏会と若手アクセルロッドの勝負」

 2012年1月は年末のノリントンと並んで欧米でピリオド奏法の巨匠として評価が定着したジンマンが登場します。なんて幸せなオーケストラと聴衆なんでしょうか!最高の年明けですね。Cプロはマーラーの大作「夜の歌」そして、Bプロはブゾーニ、シェーンベルクという現代の息吹をN響から引き出してくれるとともにブラームスのピアノ協奏曲2番という交響曲にもひけをとらない重厚な音楽。うーーん、いいです。アクセルロッドは近年注目のアメリカの中堅指揮者で、N響とは既に何回か共演を重ねて来ています。2010年1月の定期で初登場していますが、この時はロレンスフォレスターという名匠の代役でした。2012年夏にも演奏会があります。こうした積み重ねがあって、今回は最初からお呼びのかかった定期演奏会の登場ですが、正直言ってアクセルロッドに取っては勝負の演奏会です。なぜならこれほど名匠が並ぶ今年のN響の定期演奏会の中でアクセルロッドが評価されるには超名演を結果として残さなければならないからです。彼自身も今年のN響のラインナップをみて、何で俺が入っていいの?と思ってるのではないでしょうか?
 曲目もアメリカ人指揮者として評価を問われる逃げられないプログラムが用意されています。

Aプロ:26(土)・27(日) / ジョン・アクセルロッド
 ショウタコーヴィッチ交響曲5番 バーンスタイン交響曲2番「不安の時代」ほか

Bプロ:16(水)・17(木) / デーヴィッド・ジンマン エレーヌグルモー(ピアノ)
 ブゾーニ「悲しき子守唄」清められた夜 ブラームスピアノ協奏曲第2番

Cプロ:11(金)・12(土) / デーヴィッド・ジンマン
 マーラー交響曲第7番「夜の歌」

2013年2月
「メルクル首席指揮者への関門と注目ウルフの2月」

 NHK交響楽団にとって2月の定期はひとりの指揮者が全部を振るということは少ないです。N響が未来にむけての関係を強めるべき指揮者の候補を呼んで来て演奏会を開くことが多いのです。例えば、2011年はド・ビリー1回とノセダ2回、2010年にはジョナサンノットが1回、2009年はビシュコフが全部振りましたが、2008年はエリシュカ、下野竜也、リッツイといった具合です。何人かの指揮者で受け持つ事の多い月です。
 今年は、長くフランクフルト放送交響楽団のシェフだったヒューウルフが1回振り、もうひとりは準メルクルです。N響は2012年に実現したいこととして、新しい首席指揮者、もしくは芸術監督を任命したい方向と公式に表明しています。それもドイツ系を希望している様で、その中で準メルクルは最大の候補のひとりのはずです。そういう意味合いで、この演奏会はN響、またヨーロッパで既に高い評価と地位を得ているメルクル、両者にとって大きな決断をするのに大切な演奏会になるのです。


Aプロ:09(土)・10(日) / ヒュー・ウルフ
 皇帝協奏曲(ポールルイス)プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」抜粋 ほか

Bプロ:20(水)・21(木) / 準・メルクル ヘルベルトシュッヒ
 サンサーンス交響曲3番 リストピアノ協奏曲1番 前奏曲

Cプロ:15(金)・16(土) / 準・メルクル ダニエルミュラーショット
 サンサーンスチェロ協奏曲1番 ダフニスとクロエ ほか
 

2013年4月
「これは嬉しいスター・ビシュコフの再登板

 セミヨンビシュコフが2010年2月にN響に初登場した時、僕自身は今シーズンのマゼール初登場と同じくらいの驚きと喜びを感じたものです。ロシア出身ながら、名門パリ管のシェフ。僕がウィーン国立歌劇場で2001年に現地できいた「トリスタンとイゾルデ」は感涙ものでした。2008年のパリオペラ座初来日のメインの公演としても演奏され高く評価されました。いまでもヨーロッパの超一流楽団で指揮をするビシュコフが再びNHK交響楽団に超嬉しい登場です。Cプロではヴェルディのレクイエム。近年国難に瀕している日本にとって最高の癒しの演奏会となるでしょう。もちろん2日続けて聞きにいきたいです。Bプロは幻想交響曲というビシュコフお得意のプログラムも注目ですがラベック姉妹(妹さんがビシュコフの妻だとか!)を迎えての良くわからない曲も実は楽しみです。
 ピーターウンジュンは過去四半世紀における室内楽の最高峰・東京カルテットの第一バイオリンメンバーとして活躍した人で近年指揮者に転じてさまざまなオーケストラを指揮している人です。特にヴィクトリアムローヴァという人気も実力もあるソリストを迎えてのショスタコーヴィッチ、そして、ウンジャンがよく指揮をするシドニー交響楽団の十八番でもあるラフマニノフの最高に人気のある第二交響曲とウンジャンの指揮者としての真価を問われる演奏会です。



Aプロ:13(土)・14(日) / ピーター・ウンジャン
 ショスタコーヴィッチバイオリン協奏曲1番 Vムローヴァ独奏
 ラフマニノフ交響曲2番

Bプロ:24(水)・25(木) / セミョーン・ビシュコフ
 幻想交響曲 
 デュビュニョン作曲2つのピアノとオーケストラの協奏曲(ラベック姉妹)

Cプロ:19(金)・20(土) / セミョーン・ビシュコフ
 ヴェルディのレクイエム、

2013年5月
「真価が問われるN響挑戦の5月」

 5月の定期演奏会はド派手な2012/13の定期演奏会のラインナップの中で、ある意味で普段着の地味さを感じさせるプログラムである。しかし、それは交響楽団としてのN響のこだわりを感じさせるプログラムとなっており、演奏団体としての真価が問われるプログラムとなっている。
 NHK交響楽団は20年ほど前はもっと日本人指揮者の活躍する枠がありました。しかし、世界的水準になったこのオケを指揮できる日本人指揮者は限られています。病気療養中で過去にトラブルもあった小澤征爾は別格として、大野和士ら数人はいるとしても特筆できる存在ではありません。NHK交響楽団は地方公演などでも日本人指揮者から外国人指揮者に託す様になってきています。N響を日本人が指揮する機会は少ないのです。だからN響の正指揮者としてのタイトルがあるにも関わらず外山雄三さんはもはや地方公演専任といった感じです。N響夏、ミュージックトゥモローなどの特別演奏会も欧米で注目し、今後定期に登場していいかどうかを試したい指揮者の試用の機会となりつつあります。そういう中で尾高忠明さん(もうひとりのN響正指揮者)はN響で2008/9から毎年定期演奏会を死守している唯一の日本人指揮者です。小澤さんと比べると派手さはないかもしれませんが、イギリスを中心に欧米での活躍も長い職人肌の演奏家で僕自身も2010/11のシーズンで初めてきいてその音楽の作り方の丁寧さに感動したひとりです。
 尾高忠明
 そして、ありがたいのは、名作曲家の家庭に生まれたこともあって、日本では、いや世界でも馴染みの浅い隠れた名作を高い水準で演奏してくれることです。特にイギリスものは特筆です。今回も楽しみな演奏会です。Bプロは交響楽団にとって、お客のニーズを向いての演奏会ではないかもしれません。しかし、一流の交響楽団は現代の作曲家に新作を依頼し演奏していくということがとても大切です。N響は定期演奏会以外でもそのような機会を作っていますが定期演奏会ではそのような機会はこの数年ますます少なくなってきましたが、久しぶりに現代作曲家の最高峰、タンドゥンの登場で定期演奏会で現代音楽の最先端が作曲家自らの指揮によって披露されます。
 その新作「涙の書」はN響とアムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団と3つのトプオーケストラの共同委嘱作品です。そして、これが世界初演。そして、そのハープの演奏をする早川さんは、そのご母堂もN響の名ハーピストとして長くご活躍された方です。僕の亡くなった母が若きころ、早川家でお世話になった事からも母を弔いながら聞かせて頂きたいと思ってます。
 Cプロはロシアの名匠フェドセーエフの登場です。1932年生まれ。80歳を越えたモスクワ放送交響楽団のシェフです。ロシアの巨匠をN響はかつてよく呼んでいました。その代表はスビャトラーノフだったり、コンドラシンだったりするわけですが、フェドセーエフは現存する巨匠としてはロシア音楽をソビエト時代から振っている数少ない名指揮者のひとりです。実は80年代にN響を振る予定があったのですが、反りが会わなかったのでしょうか、キャンセルしてしまいまいた。ということで25年ぶりくらいに仕切り直しの演奏会となります。こういう流れもあってこの演奏会はコアなN響ファンにとって、ド派手な今シーズンの中で秘かに楽しみにしている人が多い演奏会です。曲目もロシアもののちょっとこだわり感の感じられる曲目が揃っています。 

 そして、どうでもいいことかもしれませんが、このフェドセーエフやチョンミュンフンですが、東京フィルを振ることが多かったのですが、東京フィルが日本人指揮者を中心に演奏会をする傾向とになって、N響に来る時間ができたのかもしれません… 

Aプロ:11(土)・12(日) / 尾高忠明
 ウォントン交響曲1番 ヴォーンウィリアムズ テューバ協奏曲

Bプロ:22(水)・23(木) / タン・ドゥン作曲/指揮  涙の書

Cプロ:17(金)・18(土) / ウラディーミル・フェドセーエフ

 ショスタコーヴィッチ交響曲1番 だったん人の踊り チャイコ/セレナード

2013年6月
巨匠ミョンフンで華麗なフィナーレ&誰もが楽しいAプロ」

 ド派手な2012/13NHK交響楽団の定期演奏会のフィナーレは韓国出身ながら欧米で小澤征爾を上回る活躍と評価を得ているチョンミョンフンが登場です。チョンミュンフンは2年ほど前まで東京フィルのミュージックアドバイザーを務めていたのですが、その任を離れてN響との距離が急速に縮まっている超人気指揮者です。前回の登場は2011年2月のAプロCプロでしたが、巨大なNHKホールの4回の演奏会のチケットが事前完売になりチケット争奪戦が起きました。2011年Cプロはマーラーの交響曲3番でしたが、今回はBプロで第5番交響曲を披露します。音のいい、しかし座席の少ないサントリーホールでの演奏会ですので、チケット争奪戦は必須です。NHKホールでのCプロはロッシーニのスターバトマーテル。オペラ指揮者としても高い評価のミュンフンは声楽曲付きの大曲で大きな評価を得ています。この曲はドイツグラモフォンでの録音も高く評価されており、今回も完売が予想されます。
 そして、Aプロでは下野竜也の登場です。下野竜也は次代の日本の指揮者の最高峰を狙える指揮者として高く注目されています。いまは読売日本交響楽団の正指揮者として活躍するだけでなく、小澤征爾さんの代役としてオペラや交響楽をサイトウキネンオーケストラで指揮したこともご存知でしょう。本来、NHK交響楽団のAプロ定期は誰でも楽しめる聞きやすいポピュラー性の高い曲で、あまりクラシック音楽を聴く機会のない人に来てもらおうと思っている枠です。しかし、このシーズンは大指揮者が多く2月のA定期とこの6月の定期くらいしかポピュラーな曲だけで組まれている演奏会はありません。特にこの下野さんとのAプロは、おなじみ「惑星」とシューマンのロマン性高いピアノ協奏曲と誰もが楽しいと思うのです。4月もラフマニノフの交響曲2番は聞きやすい曲なのですが、ショスタコーヴィッチは好き嫌いがあると思うのです。そういう意味で2012/13の全ての定期演奏会の中で初心者にもっとも聞きやすいのが6月のA定期といえると思います。


Aプロ:08(土)・09(日) / 下野竜也 ネルソンゲイナー
 惑星 シューマン ピアノ協奏曲 バッハ 幻想曲とフーガ


Bプロ:19(水)・20(木) / チョン・ミョンフン
 マーラー交響曲第5番 ほか

Cプロ:14(金)・15(土) / チョン・ミョンフン
 ロッシーニ/スターバトマーテル
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指揮:ファビオ・ルイジ
PMFオーケストラ
ヴァイオリン:デイヴィッド・チャン
チェロ:ラファエル・フィゲロア

曲目
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
R. シュトラウス:アルプス交響曲

「音楽を聴く幸せを満喫できた夜」
 二重協奏曲はなかなか聞く機会のない難曲だが味わい深い名曲である。ソリストはMETのコンサートマスターと首席なのだが、あまり個性があるというよりも、無難に演奏している感じである。ブラームスの音楽とは?と難しくきくといろいろとあるのだろうが、このオケは若く音楽を演奏する喜びを発散させて演奏してくれる。マエストロの意図を何とか十全に表現しようと必死である。それが、真摯な演奏につながって聞いていて嬉しくなってくる。ああ、こういう態度必要だよなと思わせてくれるのである。
 特に後半のアルペン交響曲は素晴らしかった。一流の演奏である。将来、ここから次世代のオーケストラの中核となる逸材が出て来るのだろう。野村証券は22年前に始めたこのフェスティバルは花開き、日本が世界の音楽に貢献する素晴らしいものとなった。社会貢献とはこういうことである。
2012年7月30日@サントリーホール
●海外で活躍する日本人バレエダンサー★

菅野茉里奈★(ベルリン国立バレエ団)/ライナー・クレンシュテッター(ベルリン国立バレエ団)「アダージェット」 振付:R.ツァネラ

佐久間奈緒★(バーミンガム・ロイヤルバレエ団)/厚地康雄(新国立劇場バレエ団)「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」 振付:G.バランシン

菅野真代★(ディアブロ・バレエ)/ローリー・ホーエンスタイン(ジョフリー・バレエ)「Age of Innocence」パ・ド・ドゥ 振付:E.リアン

高橋絵里奈★(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)/ズデネク・コンヴァリーナ(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)「ドン・キホーテ」パ・ド・ドゥ

田北志のぶ★(ウクライナ国立バレエ団)「瀕死の白鳥」

藤井美帆★(パリ・オペラ座バレエ団)/ヤニック・ビッタンクール(パリ・オペラ座バレエ団)/グレゴリー・ドミニアク(パリ・オペラ座バレエ団)
「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・トロワ”(R.ヌレエフ版)


●新国立劇場バレエ研修所修了生◎
伊藤友季子◎(牧阿佐美バレヱ団、第1期修了生)/中家正博(牧阿佐美バレヱ団)「ロメオとジュリエット」バルコニーのパ・ド・ドゥ(A.M.プリセツキー版)

小野絢子◎(新国立劇場バレエ団、第3期修了生)/八幡顕光◎(新国立劇場バレエ団、第2期修了生)「海賊」パ・ド・ドゥ

本島美和◎(新国立劇場バレエ団、第1期修了生)/マイレン・トレウバエフ(新国立劇場バレエ団)「ライモンダ」パ・ド・ドゥ(牧阿佐美版)


●サンフランシスコ・バレエ学校 Trainees 「Spinae」 振付:M.サッチャー
振付は、自身もサンフランシスコ・バレエ学校出身のマイルズ・サッチャー(Myles Thatcher)。研修生時代から研修公演等で作品を発表している。2012年1月には、サンフランシスコ・バレエ団とサンフランシスコ交響楽団(指揮:マイケル・ティルソン・トーマス)による、ドビュッシー「聖セバスチャンの殉教」の振付を担当した。

●新国立劇場バレエ研修所修了生・研修生 「Triptyque~青春三章~」(トゥリプティーク) 振付:牧阿佐美



「新国立バレエ団のガラ公演の様相」
 吉田都といった大スター以外にも海外で活躍する日本人バレエダンサーはいる。彼女らと新国立バレエ団の日本人プリンシパルを中心としたガラ公演。新国立バレエ団の研修生や修了生の踊りから始まったのだが、これから伸びていくのだろうけれど、踊っているときの身体の芯のようなものがまだ完成されていなくて安定感は他のダンサーと比べると見劣りする。それでも若く踊ることの喜びを一心に踊る姿は好感をもって観客に迎えられた。
 この公演ではさまざまなダンサーの踊りを観ることによって、果たしてダンサーに求められるものは何だろうと考えさせられた。ひとつは技術、ひとつは肉体、ひとつは表現力、ひとつは容姿、そして、何かだと思う。
 日本人のダンサーの踊りをみていると、技術は世界最高峰に近いのだと思う。正確だし安定感もある。しかし、演技力ということになると、イマイチということも少なくない。何かが足りないのだ。
 今宵、見たもので一番面白かったのは、サンフランシスコバレエ学校の生徒のそれだった。

2012年7月22日日曜日@新国立劇場オペラパレス
MONSIEUR IBRAHIM ET LES FLEURS DU CORAN
出演 オマー・シャリフ (Monsieur Ibrahim)
ピエール・ブーランジェ (Momo)
ジルベール・メルキ (Momo's Father)
イザベル・ルノー (Momo's Mother)
ローラ・ナイマルク (Myriam)
イザベル・アジャーニ(The Star)
監督 /脚本 フランソワ・デュペイロン
脚本/エリック=エマニュエル・シュミット

宝物のような小さな映画
観光客では知らないフランスのパリとイスタンブールなどのトルコ。その片隅で暮らす人々の暖かい交流。異文化同志の幸せな邂逅。現実の社会ではなかなか起きないけれども映画ではそういう夢を見せてくれる。名優オマーシャリフが本当にいい味を出している。心が荒んだときにまた見ようと思う。
2012年7月22日
作・演出/名嘉友美
出演者/泉政宏 横手慎太郎 中田麦平 名嘉友美 満間昴平(犬と串)ほか





「若手?劇団に珍しいバランスのよい秀作」
 良かった。初見の劇団で期待をしないのも良かったのかもしれない。まあ、初見なので次回観る機会があった時にも今日のような面白さを感じられるかだけれど。というのも、若手劇団で面白いと思って観始めると、結局前回の変奏曲でしかなかったことが多くて。
 この作品は人間が生きていくこと、人を恋することといった根源的なテーマに寄り添っている。そして、一部の作家のように妙に自分の価値観を押し付けるということもなく、登場人物のさまざまな生き方を提示、それらを肯定しながら物語は進み、ふっと観客の心に入ってくる。美術はシンプルでこの作品にあっている。衣装もお金をかけているわけではないが心を砕いている。台詞は演劇の台詞だし、演劇的な処理や開放感もあってこの作家は非常に演劇的なバランスがいい作品を書くなあと思った。この感覚は演劇、それも劇場でしか味わえないものだ。
 犬と串の満間君は誠実な芝居をしていて好感。ダンス?をする時にもう少しトメがしっかり行くといいんだけどな。 2012年7月21日@王子小劇場

ビゼー / 「カルメン」組曲から
ショーソン / 詩曲 作品25*
ラヴェル / チガーヌ*
サン・サーンス / 交響曲 第3番 ハ短調 作品78

指揮/ジョン・アクセルロッド
ヴァイオリン/レイチェル・コリー・ダルバ*
「初心者にも通も満足させる水準の高い演奏」
 アクセルロッドの指揮は非常に安定感がある。個性がものすごくある演奏ではないが、輪郭をくっきりさせ、聴衆に聞かせたい音楽を分かりやすくデリバーする演奏である。カルメンに始まってサンサーンスの交響曲3番「オルガン付」で終わるフランス音楽の分かりやすい音楽をそろえた、夏のポップスコンサートの様相でありながら、下手に観客に媚びることもないし、こういう名曲をきちんと聞かせる腕前はN響ならではである。

2012年7月20日@NHKホール
金子修介脚本監督
2012年7月7日
監督 マーク・ウェブ
脚本 ジェームス・ヴァンダービルト

アンドリュー・ガーフィールド (Peter Parker / Spider-Man)
エマ・ストーン (Gwen Stacy)
リス・エヴァンス (Dr. Curt Connors / The Lizard)
キャンベル・スコット (Richard Parker)
マーティン・シーン (Ben Parker)
サリー・フィールド (May Parker)
デニス・リアリー (George Stacy)



2012年7月1日@渋谷東宝シネマ
ナビスコカップなんだよな〜

試合結果
浦和レッズ3-0(前半1-0)サンフレッチェ広島
得点者:43分 デスポトビッチ、63分 野田紘史、80分 矢島慎也
入場者数:14,022人



2012年6月27日@埼玉スタジアム2002
振付/ケネス・マクミラン
音楽/ジュール・マスネ
美術/ピーター・ファーマー
指揮/マーティン・イェーツ 東京フィルハーモニー交響楽団
マノン:サラ・ウェッブ
デ・グリュー:コナー・ウォルシュ
レスコー:古川和則




「サラウェッブの完成度の高いダンス、そして、ダンサーを観るにつけ」
 完成度の高い上演であった。僕は音楽が好きなので、どうしてもオーケストラの話になってしまうが、正直いって、このマスネの曲はバレエのための曲であり、単独できいたらきっと退屈だろうと思う。それはきっと演奏している側もそうなのだ。それが、やはり日本でトップのオペラ・バレエオケ、東京フィルハーモニー管弦楽団だけあって、素晴らしい演奏を聴かせる。弦、管楽器、そしてバレエだけにとても大切な打楽器も、見事な水準である。10年前のロイヤルオペラのオケに聞かせたい。踊り手に高い踊りでなくては、音楽に負けてしまうと鼓舞させるほどの演奏だ。今夜のバレエの水準を高めた大きな要因である。
 美術も衣装も特に工夫をこらしたというわけではないが、美しく必要なものは全て揃っている。オペラでも演劇でもないバレエの空間を見事に提示した。それも、舞台転換の早いこと。いろいろと考え抜かれたプロの仕事である。
 さて、踊り手では先ずは客演のヒューストンバレエからのサラウェッブが見事である。技術、そして、プリマに必要な華もあり、人生の中での有頂天亜時期から落ちぶれていく様まで見事な演技である。コナーウォルシュの技術、演技力も高く素晴らしかった。二人のパドトゥなど難易度の高いダンスも危なげなく、きちんと演じながら踊ったのは見事だった。
 そして、Mジェロモンのトレウバエフ、レスコーの古川も良かった。前者は演技がよく、後者は技術があった。古川はもう少し背が高かったらトップダンサーになれたろうに、あの背の高さであの跳躍力のある筋肉をつけた肉体だと、太ももが以上に太く見えてしまってずんぐりむっくりになってしまう。可哀想になあと思ってみていた。ソリストやデミソリストはいいのだが、時々、何かやっつけ仕事のコーラスも観られてそれが残念。5年ほど前には消滅したのかと思ったらひょっこり出てきた。
 新国立劇場のバレエ部門は多くの日本人に役柄を与えようと日替わりのキャストが多い。これが良くない。トップダンサーたちが、しのぎを削って少数の役を奪い合って欲しい。それでないと、きっと客演のダンサーに勝てない。
 つまり、今のような日本人キャストABC+客演みたいなキャスティングではなく、日本人キャストVS外国人キャストでいいのだ。そして、あとは、アンダースタディに泣けばいいのである。そうでないと、もっと殺気立った現場にならない。悪平等主義は芸術の発展にとって最も良くないものだ。
 今回の華は圧倒的にサラウェッブ。ひとりだけ飛び抜けていた。

2012年6月26日@新国立劇場オペラパレス
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佐藤治彦 Haruhiko SATO
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男性
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演劇ユニット経済とH 主宰
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演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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