佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 新国立劇場バレエ団  アラジン 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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【演出・振付】デヴィッド・ビントレー
【作 曲】カール・デイヴィス
【装 置】ディック・バード
【衣 裳】スー・ブレイン
【照 明】マーク・ジョナサン

【指 揮】ポール・マーフィー
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

キャスト アラジン:山本隆之 プリンセス:本島美和 魔術師マグリブ人:マイレン・トレウバエフ ランプの精ジーン:福田圭吾


「21世紀に新しく古典を作るということ」

2010/11はバレエの通し券を買っていて、それでもほとんど全部いけなくてやっと初めてこれたのがこれだ。数年前にロンドンに行った時にロイヤルオペラでかかっていて、へえ「アラジン」かあと思っていたら、新国立劇場でも掛かったのだ。デビッドビントレーという今のバレエ部門の芸術監督はロンドンのサドラーウェールズのトップをやった人だ。せっかくロンドンまでいったら最高のものを見たいと思うからロイヤルオペラ/ロイヤルバレエとなるのだが、一度、サドラーも見た事があってこれが面白かった。そして、今の新国立劇場のバレエの監督としてはなるほど適任者だなとも思う。サドラーは超一流のスターダンサーはいない。そういう人はよそに転出する。技術があっても花がない人とかね。でも、作品の総合力で面白くみせてしまうのだ。
 この「アラジン」というバレエ。現代に作る19世紀的、いや20世紀のハリウッド的古典なのである。下のリンクから音楽をきいてもらいたい。まるでかつての(ウォルトが生きていたころの)ディズニー映画の音楽のような雰囲気だ。そして作曲者も現代音楽の作曲家ではなく、映画音楽などを主に作っている人らしい。
 そしてこれを躍るのに、ベジャールとか、フォーサイスとか、キリアンとか、何かに秀でていなくても、精神性とかがなくてもいいのである。
 地道な基本の総合力で勝負する作品だ。子どもたちをワクワクさせ、ちょっとした現代的のメカを使った仕掛けを入れて、プティパの時代のバレエのように、各国の踊りをいろいろと入れて…とそういう具合。それも、もちろん主役のソロもあるのだけれど、例えば超人的な体力も技術も求めない。それよりも、いろんな人が短い時間頑張ってそれぞれの良いものを出すみたいな。
 現代に作品を生み出す。それも大スターなくして作品を生み出すときに必要なことをこの作品は兼ね備えている。なかなか計算され尽くした作品だ。見ていて悪くない。いや面白かった。
 もっと言うと、観客は、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割人形」「ジゼル」「ラシルフィールド」「ロミオとジュリエット」「シンデレラ」「バイヤール」ほか古典で完成された素晴らしい作品はホントに少なくてバレエを見る観客はまたこれかあ〜になってしまうのである。そういう時にこういう新しい古典が加わるのは悪くない。ロイヤルバレエで上演した時は主役級の人達はプリンシパルが躍ったのだろうか。ソロダンサーで十分だとも思うのだけれど。
 ひとつ気になるのは、この作品21世紀になって作られた作品なのだが、未だに中東の人たちの表現が前近代的というか、童話的にしか扱っていないのだ。それは何とかして欲しいなあと思った。
 http://www.atre.jp/11aladdin/index.html
2011年5月5日 新国立劇場オペラパレス
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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