自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
ドビュッシー / バレエ音楽「カンマ」
ドビュッシー / サクソフォンとオーケストラのための狂詩曲
ラヴェル / 亡き王女のためのパヴァーヌ
ドビュッシー (C.マシューズ編) / 前奏曲集 第1巻から「パックの踊り」「ミンストレル」第2巻から「水の精」「花火」[日本初演]
ドビュッシー(アンセルメ編) / 古代のエピグラフ
ラヴェル / バレエ音楽「ラ・ヴァルス」
指揮/準・メルクル
アルト・サクソフォン/須川展也
「準メルクルのフランスものについて。デュトワと比較して」
現在世界でフランスものの圧倒的な評価を得ている指揮者といったら誰だろうか?いろいろといい人がいるだろうけれど、先ずはデュトワは挙がっていい。そして、長老で実はドイツものが得意だったりするジョルジュプレートル、すみだトリフォニーホールで3日間のラベルの演奏会が素晴らしかった、しかし、ガラガラというかほとんど客がいなかった、マイケルプラッソン。90年代にはリヨン管と来日してパリ管よりも魅力的だぜと思わせてくれたエマニュエルクリヴィヌがあがってくる。
しかし、日本のオケでということになると、やはりデュトワである。80年代にN響との初顔合わせの頃に聞いた「ファウストの刧罰」!に始まって、さまざまな演奏を聴かせて来てくれた。ちょっと幻想交響曲が多すぎる感じがするけれども。
今日の準メルクル。素晴らしかった。ドビッシーのあまり演奏されない曲が多かった事もあるけれども、本当に良かった。休憩の時に、ロビーで「私はサクソフォンの音色が嫌いでね」などとクソったれな感想を述べている親父をどやしつけたかったくらいだ。感想は人に聞こえないようにやってくれ!と。なぜならその曲も素晴らしかったから!
でも、デュトワのそれと違うなあと思いつつ、例えが良くないかもしれないが、こう思った。デュトワの演奏がマグリット的なシュールリアリズム的なくっきりはっきり系の音色で埋め尽くされるのに対して、準メルクルのフランスものは、印象派。それもマネの演奏のような感じがした。音色には濃淡があり、聞き込めばいろんな魅力的な音で埋め尽くされているが、ちゃんとハイライトされるメロディやリズムがある。
浮世絵というより、その先の水墨画の淡い魅力のある音色であるのだ。フランス人の音楽へのこだわりのいい部分が出ていて、と思った。そして、いつものようにN響は世界的になったなあ、今日の演奏なんかベルリンフィルやウィーンフィルと、、、いや、違う。この演奏はN響だから出せる音色だと思った。ベルリンフィル/カラヤンのフランスものの魅力もあるし、デュトワがモントリオールを初めとして演奏して来たそれもあるだろう。もちろん、プラッソンなどのフランスものの名演もあるのだけれども、今宵の演奏は、19世紀から20世紀のフランスの芸術家たちが、愛した日本の絵画、浮世絵に影響された芸術家たちが産み出した芸術を日本人の演奏家のところに一周して戻って来たら、さらにハイな、素晴らしい演奏になりました!という奇蹟の名演ということが言えるのではないか。。。
オケの音は拡がったかと思うと食虫植物に触った時にのように、キュっと戻ってくる。テンポは品よく揺れ、弦のピッチは揃い艶やか、木管がそこにゴッホのような力強いラインを一気に書き込んだかと思うと、それは打楽器も担っていて、紙の上に乗った砂が振動で揺れるような、音の色彩が花火のように舞う縁取りをしていた。
もはや、ベルリンフィル、ウィーンフィル、シカゴ響、アムステルダムコンセルトヘボウといった世界のトップオケの機能を持ったN響は、いまそこにオケの個性までもが宿りつつあると感じたのである。欧米のオケではなく、アジア的な感性の西洋音楽の演奏団体として、サイトウキネンオケが合奏の機能美を披露したけれども、もっとアジア的な良さが前面に出た印象だ。
ウソだと思ったら31日の演奏を聴いてもらいたい。
僕は今日の最後の「ラヴァルス」の音色をきいて震えてしまって、涙が止まらなくて、今までにも何回も感謝したけれども、たった1回の人生で音楽を聴く人間になれたこと、それも、こういう素晴らしい演奏会を選べてそこにいられる幸せを心から感謝した。1億2千万からいる日本人でこの会場にいられるのは2000人程度である。奇蹟としかいいようがない。
2012年5月30日@サントリーホール
ドビュッシー / サクソフォンとオーケストラのための狂詩曲
ラヴェル / 亡き王女のためのパヴァーヌ
ドビュッシー (C.マシューズ編) / 前奏曲集 第1巻から「パックの踊り」「ミンストレル」第2巻から「水の精」「花火」[日本初演]
ドビュッシー(アンセルメ編) / 古代のエピグラフ
ラヴェル / バレエ音楽「ラ・ヴァルス」
指揮/準・メルクル
アルト・サクソフォン/須川展也
「準メルクルのフランスものについて。デュトワと比較して」
現在世界でフランスものの圧倒的な評価を得ている指揮者といったら誰だろうか?いろいろといい人がいるだろうけれど、先ずはデュトワは挙がっていい。そして、長老で実はドイツものが得意だったりするジョルジュプレートル、すみだトリフォニーホールで3日間のラベルの演奏会が素晴らしかった、しかし、ガラガラというかほとんど客がいなかった、マイケルプラッソン。90年代にはリヨン管と来日してパリ管よりも魅力的だぜと思わせてくれたエマニュエルクリヴィヌがあがってくる。
しかし、日本のオケでということになると、やはりデュトワである。80年代にN響との初顔合わせの頃に聞いた「ファウストの刧罰」!に始まって、さまざまな演奏を聴かせて来てくれた。ちょっと幻想交響曲が多すぎる感じがするけれども。
今日の準メルクル。素晴らしかった。ドビッシーのあまり演奏されない曲が多かった事もあるけれども、本当に良かった。休憩の時に、ロビーで「私はサクソフォンの音色が嫌いでね」などとクソったれな感想を述べている親父をどやしつけたかったくらいだ。感想は人に聞こえないようにやってくれ!と。なぜならその曲も素晴らしかったから!
でも、デュトワのそれと違うなあと思いつつ、例えが良くないかもしれないが、こう思った。デュトワの演奏がマグリット的なシュールリアリズム的なくっきりはっきり系の音色で埋め尽くされるのに対して、準メルクルのフランスものは、印象派。それもマネの演奏のような感じがした。音色には濃淡があり、聞き込めばいろんな魅力的な音で埋め尽くされているが、ちゃんとハイライトされるメロディやリズムがある。
浮世絵というより、その先の水墨画の淡い魅力のある音色であるのだ。フランス人の音楽へのこだわりのいい部分が出ていて、と思った。そして、いつものようにN響は世界的になったなあ、今日の演奏なんかベルリンフィルやウィーンフィルと、、、いや、違う。この演奏はN響だから出せる音色だと思った。ベルリンフィル/カラヤンのフランスものの魅力もあるし、デュトワがモントリオールを初めとして演奏して来たそれもあるだろう。もちろん、プラッソンなどのフランスものの名演もあるのだけれども、今宵の演奏は、19世紀から20世紀のフランスの芸術家たちが、愛した日本の絵画、浮世絵に影響された芸術家たちが産み出した芸術を日本人の演奏家のところに一周して戻って来たら、さらにハイな、素晴らしい演奏になりました!という奇蹟の名演ということが言えるのではないか。。。
オケの音は拡がったかと思うと食虫植物に触った時にのように、キュっと戻ってくる。テンポは品よく揺れ、弦のピッチは揃い艶やか、木管がそこにゴッホのような力強いラインを一気に書き込んだかと思うと、それは打楽器も担っていて、紙の上に乗った砂が振動で揺れるような、音の色彩が花火のように舞う縁取りをしていた。
もはや、ベルリンフィル、ウィーンフィル、シカゴ響、アムステルダムコンセルトヘボウといった世界のトップオケの機能を持ったN響は、いまそこにオケの個性までもが宿りつつあると感じたのである。欧米のオケではなく、アジア的な感性の西洋音楽の演奏団体として、サイトウキネンオケが合奏の機能美を披露したけれども、もっとアジア的な良さが前面に出た印象だ。
ウソだと思ったら31日の演奏を聴いてもらいたい。
僕は今日の最後の「ラヴァルス」の音色をきいて震えてしまって、涙が止まらなくて、今までにも何回も感謝したけれども、たった1回の人生で音楽を聴く人間になれたこと、それも、こういう素晴らしい演奏会を選べてそこにいられる幸せを心から感謝した。1億2千万からいる日本人でこの会場にいられるのは2000人程度である。奇蹟としかいいようがない。
2012年5月30日@サントリーホール
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
HP:
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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