自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作演出 横内謙介
出演 岡森諦 山中崇史 有馬自由 鈴木利典 藤本貴行 中原三千代 杉山良一 ほか
傑作。チケットを奪ってでも観に行った方がいい芝居。東京でもこれほどのレベルの作品はほとんどない。若い人から年配の人迄、日本人から外国人迄、どんな人が見ても、台詞に、演技に、視覚に、すべての五感で演劇を体験しつくせるもの。
浄瑠璃も、シェイクスピアも、ギリシア悲劇も、漫画も、歌舞伎も、ミュージカルも、人形劇も、新劇も、ロックも、そして、横内謙介の過去の作品までをも呑み込んでいく骨太な作品。これは、横内謙介と劇団扉座が作り上げたというだけでなく、今までのパフォーミングアーツの歴史があってこそ生まれた作品でもある。
そして、私が思うに、生きた役者が演じる舞台を見て味会う究極の気持ちは、生きていることのしあわせではないだろうか。愛おしさではないだろうか。
だから、すべてのことを呑み込んで、自分がいま生きていることを肯定し、現世のこの人生を愛おしく思い大切に行こうと思えるようになる。それだけでなく、廻りの人までをももっともっと愛おしく見えてくるような珠玉の作品。再演ものではあるが、初演を遥かに上回る完成度に身震いした。横内謙介が生んだ21世紀の作品として最高傑作のひとつ。戯曲家として現代日本を代表する横内謙介であるが、ここでは演出家としての才能を見せつける。戯曲の力でねじ伏せて行くのではなく、劇団力で見せる。すべての出演者が素晴らしい。関東地区でたった7日間。全席完売がうなづける。
出演者の魅力は尽きることがない。3年半ぶりの舞台であった山中崇史には深みが増した。ユーモアに加えて面白いことをやっていても哀しげな、そう「道」のアンソニークインの匂いがするようになった。岡森諦はメインでありながらもバイプレイヤーの役という大変難しい役どころをプロの演劇人として見事に演じた。その声の魅力は尽きることがない。中原三千代、有馬自由とメインどころはもちろんスゴいのだが、私が感じるのは若手のアンサンブルの充実ぶりなのだ。例えば、安達雄二、串間保彦といったほとんど台詞のない出演者。旗を振り回すことで表現をすることを求められる俳優たち。しかし、彼らは文字通り命がけで旗を振っている。そこに感動がある。拳をあげているところに感動してしまう。
中堅の充実ぶりはスゴい。もはや扉座の大黒柱になった鈴木利典は「集合!」という台詞だけで観客を笑いの渦に巻き込む。ものすごい集中力だ。上原健太がね、見事に上手くなっていてね。スゴいぜよ。川西佑佳が廻って来た大チャンスに決しておじけづくことなく、堂々と向き合って演じきったこと。そして、結果として見事な姫を演じたことに感動してしまう。 江原由夏は、本当に楽しく、あき竹城くらいのベテランでしか出せない不思議な魅力を20代で醸し出す。見事。大抜擢の小嶋喜生も半年前の舞台と同じ役者かと思うくらい成長。去り際まで魅惑する!
百鬼丸の中で竹が揺れるところがある。
心が揺れるところ、ドラマが起こるところで竹が揺れる。心がざわざわするって。ホントに視覚的にきちんと見せてくれて。 観劇に来ていた日本を代表するエンタティナーが打ち上げで言っておられたけれど、偉い浄瑠璃の先生の上手い録音よりも、この見事なアンサンブルを行う扉座の劇団員が一糸乱れぬ語りをやってみせる。その呼吸の合い方に感動してしまう。心の入り具合に感動してしまう。
とかく劇団扉座の公演は、横内謙介の本が良かったと感想がまとめられることが多い。しかし、この作品は横内謙介のシャープで削ぎ落とし、この作品の肝の部分に迷いなく突き進んで行く戯曲もすごいのだが、その演出の素晴らしさ、そして、何よりもベテランから若手までカンパニーの総合力で勝ち取った勝利なのだ。素晴らしい。感動した!
2009年7月10日
紀伊國屋サザンシアター
出演 岡森諦 山中崇史 有馬自由 鈴木利典 藤本貴行 中原三千代 杉山良一 ほか
傑作。チケットを奪ってでも観に行った方がいい芝居。東京でもこれほどのレベルの作品はほとんどない。若い人から年配の人迄、日本人から外国人迄、どんな人が見ても、台詞に、演技に、視覚に、すべての五感で演劇を体験しつくせるもの。
浄瑠璃も、シェイクスピアも、ギリシア悲劇も、漫画も、歌舞伎も、ミュージカルも、人形劇も、新劇も、ロックも、そして、横内謙介の過去の作品までをも呑み込んでいく骨太な作品。これは、横内謙介と劇団扉座が作り上げたというだけでなく、今までのパフォーミングアーツの歴史があってこそ生まれた作品でもある。
そして、私が思うに、生きた役者が演じる舞台を見て味会う究極の気持ちは、生きていることのしあわせではないだろうか。愛おしさではないだろうか。
だから、すべてのことを呑み込んで、自分がいま生きていることを肯定し、現世のこの人生を愛おしく思い大切に行こうと思えるようになる。それだけでなく、廻りの人までをももっともっと愛おしく見えてくるような珠玉の作品。再演ものではあるが、初演を遥かに上回る完成度に身震いした。横内謙介が生んだ21世紀の作品として最高傑作のひとつ。戯曲家として現代日本を代表する横内謙介であるが、ここでは演出家としての才能を見せつける。戯曲の力でねじ伏せて行くのではなく、劇団力で見せる。すべての出演者が素晴らしい。関東地区でたった7日間。全席完売がうなづける。
出演者の魅力は尽きることがない。3年半ぶりの舞台であった山中崇史には深みが増した。ユーモアに加えて面白いことをやっていても哀しげな、そう「道」のアンソニークインの匂いがするようになった。岡森諦はメインでありながらもバイプレイヤーの役という大変難しい役どころをプロの演劇人として見事に演じた。その声の魅力は尽きることがない。中原三千代、有馬自由とメインどころはもちろんスゴいのだが、私が感じるのは若手のアンサンブルの充実ぶりなのだ。例えば、安達雄二、串間保彦といったほとんど台詞のない出演者。旗を振り回すことで表現をすることを求められる俳優たち。しかし、彼らは文字通り命がけで旗を振っている。そこに感動がある。拳をあげているところに感動してしまう。
中堅の充実ぶりはスゴい。もはや扉座の大黒柱になった鈴木利典は「集合!」という台詞だけで観客を笑いの渦に巻き込む。ものすごい集中力だ。上原健太がね、見事に上手くなっていてね。スゴいぜよ。川西佑佳が廻って来た大チャンスに決しておじけづくことなく、堂々と向き合って演じきったこと。そして、結果として見事な姫を演じたことに感動してしまう。 江原由夏は、本当に楽しく、あき竹城くらいのベテランでしか出せない不思議な魅力を20代で醸し出す。見事。大抜擢の小嶋喜生も半年前の舞台と同じ役者かと思うくらい成長。去り際まで魅惑する!
百鬼丸の中で竹が揺れるところがある。
心が揺れるところ、ドラマが起こるところで竹が揺れる。心がざわざわするって。ホントに視覚的にきちんと見せてくれて。 観劇に来ていた日本を代表するエンタティナーが打ち上げで言っておられたけれど、偉い浄瑠璃の先生の上手い録音よりも、この見事なアンサンブルを行う扉座の劇団員が一糸乱れぬ語りをやってみせる。その呼吸の合い方に感動してしまう。心の入り具合に感動してしまう。
とかく劇団扉座の公演は、横内謙介の本が良かったと感想がまとめられることが多い。しかし、この作品は横内謙介のシャープで削ぎ落とし、この作品の肝の部分に迷いなく突き進んで行く戯曲もすごいのだが、その演出の素晴らしさ、そして、何よりもベテランから若手までカンパニーの総合力で勝ち取った勝利なのだ。素晴らしい。感動した!
2009年7月10日
紀伊國屋サザンシアター
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
HP:
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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