佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 ザグレブフィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ドミトリーキタエンコ指揮
アンドレイ・ガヴリーロフ ピアノ独奏

 クロアチアを代表するオケ、ザグレブフィルハーモニー管弦楽団の演奏会をホームグラウンドであるザグレブのレシンスキーホールできいた。このホールは2000人以上入る大ホールである。音の轟は決して悪くはないが、残響が少なく豊潤な音がきけるホールではない。しかし、各オケは自らのホームグラウンドを熟知している。そして、僕はこの夜、とてもいい演奏を聴けたのである。
 クロアチアは、ユーゴ時代に、社会主義を標榜しながらもソビエト連邦との距離感を持っていた歴史はあるが、大枠ではソビエトの影響を受けていないわけがない。現存するロシア人指揮者としては最高峰のひとりドミトリーキタエンコを迎えてのベートーベンプロ。
 ロシアの演奏でいつも思うのだが、良く鳴るのである。音の固まりが客席にガンガン跳んでくるのだ。現代的かどうかは別として、一寸無骨なベートーヴェンにはマッチしているから不思議だ。
 さて、ピアノ協奏曲。かつてガブリーロフは1974年にチャイコフスキーコンクールで優勝したソビエト期待のピアニストであった。当時18歳だったはず。超絶技巧でドイツグラモフォンにも数々の録音を入れ、名実共にリヒテル後のロシア人ピアニストの筆頭になるはずの人だった。そのプレッシャーからか、薬物中毒になりしばらく演奏から遠ざかったのだった。近年復帰。
 そして、今宵もそのピアノは荒れたものだった。数多くのミスタッチ。感情が不安定なのが良く分かるフレージング。時折見せる美しい音も、意味もなく叩き付けられた鍵盤から響く音も、何か無意味に怒っている良く分からない人のようで怖くなってしまう。無意味に腕とか手を高くあげたりするんです。パフォーマンス?
 アンコールで、ショパンを弾いたがこれもイマイチだった。ところが、その次に弾いたプロコフィエフは、曲そのものが感情が行ったり来たり、急に爆発したりする音楽だったのでぴったりだった。これだけはブラボーもの。
 いづれにせよ、コンチェルトはオケが良いだけにちょいと残念だった。
 後半の7番交響曲は、オケが落ち着いてたっぷりと聞かせてくれた。弦の音が美しくアンサンブルもピッチの合い方がとても良く素晴らしい出来。金管木管系も良く期待以上の出来でした。
 


ベートーベン エグモンド序曲
       ピアノ協奏曲3番
       交響曲第7番

http://www.zgf.hr/en/news.php


2008年4月11日
リシンスキー・ホール (ザグレブ/クロアチア)
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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