佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 ハートランド ひなあられ 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作/演出 中島淳彦  

出演
 福島まり子 小林美江 ほか

 昨年に続いて二度目のハートランド。中島淳彦さんのお芝居はそれこそ何もおきないし、偉そうな台詞はないのに、人生の真髄がどかーんと伝わるし、笑いと愛情に満ちていて嬉しくなる。ものすごい技術とハートの凝縮である。しかし、この芝居は、名うての役者さんでないときっと見てられない。役者に高度な演技力とセンスを求める、とても難しい台本なのである。言ってみれば、フォアグラとか、イベリコ豚、インドマグロ。良く分からないけれど、最高の食材だが、上手に調理しないと、不味くて食えなくなってしまう。そんな台本なのだ。だから、中島淳彦の見事な台本と演出もスゴいのだが、役者さんたちのスゴさを上げたい。
 先ずは、福島まり子がべらぼうに上手い。歩く、顔を向ける、息を止める。それぞれが、自然なのにべらぼうにナイスなタイミングと量である。もちろん小林美江さんもそうである。テーブルに隠れる。出てくる。その出る時のスピード。タイミング。どんな顔で出てくるか。全てが素晴らしい。もう本当にビーンズを早くやって欲しいなあ。
 そして、大西多摩恵さん。高度に作り上げたキャラを一糸乱れぬ見事な力と心で演じきった。誰もが面白いと思っただろう。さすが永井愛さんの秘蔵っ子だ。素晴らしい、ホントに素晴らしい。
 保谷果菜子さん、高橋亜矢子さんは去年を上回る見事な演技。保谷さんは大西さん同様にキャラを作り上げ、その人物を掘り下げた。高橋さんは、気持ちの切り替えのタイミングが気持ちよく、笑いを誘う。渡辺由紀子さんは、不思議な色気があって物語の中軸でスゴくいい仕事をし、神田繁子さんも不思議な女性を上手く演じていた。万引きした商品を差し出すところなんか、ただ洋服から隠した商品を出すだけ、それも、客はネタも分かっているのに笑える。スゴい!!!
 江原里実のでかい声も間違うと毎回大しらけになる危険性があるのに、外さない。冒険をし成功した。本当に面白かった。本当に楽しかった。見事な役者さんの演技が本当にこの芝居を成功に導いたのだ!
 美術は無駄もなく、レジの位置やカウンターの座席数。テーブルの位置や椅子の形状などに粋で微妙な配慮があって、美術が芝居の演技を大いに盛りたてた。衣装もこだわりもあって、それでいて華美になりすぎずにセンスの良さを感じさせた。
 こういう一級の芝居はなかなか観られない。このメンバーなら、ぜひとも「8人の女たち」舞台版を見てみたいものだ。
 


ザスズナリ
2008年4月21日                   

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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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