自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ヘルベルトブロムシュテット/NHK交響楽団定期演奏会 2011年9月
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
ドヴォルザーク/交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
ヴァイオリン: 竹澤恭子
2011/12のシーズンを期待させる最上の演奏。スコアをもう一度見直したからこそ聞こえてくる新しい新世界。
素晴らしいホールが多くある東京においてNHKホールは決して演奏するのに有利なホールではない。25年前にサントリーホールができた時に、同じNHK交響楽団がまったく違った音で聞こえるのに愕然としたほどだ。今でもNHK交響楽団の定期会員はサントリーホールが人気で、年間の定期会員の全席が完売になることでもその理由が分かる。今宵、私はこの交響楽団の音をきいて、愕然とした。かつてこのホールでベルリンフィルもパリ管弦楽団もウィーンフィルも、こんな素晴らしい音をこのホールで聞かせただろうか?もちろんホームグラウンドであるからホールを知り尽くしている事はあるだろう。しかし、例えば、今や80代となり巨匠となったブロムシュテットの十八番とはいえ、シベリウスの弦楽合奏が、3楽章のあの大地をゆらるようなリズムをきくと、私は生きながら天界にいるのではないかと思うほどの美しさを感じるのだ。管楽器も打楽器も、、、、35年も聞いているオーケストラだから、ほとんどのメンバーは入れ替わっているけれども。本当に素晴らしいオーケストラになった。
竹澤恭子は急遽の代役であるが、彼女にとってもシベリウスの協奏曲は十八番。私は、20年ほど前に、アンネゾフィームターとプレヴィンの録音を聞いた時に、チョンミュンファの録音を高校の時に聞いた時に魅せられたこの協奏曲だが、今宵の竹澤の演奏は自分の個性をむき出しにしてオーケストラと競奏するのではなく、音楽の中にお互いが無我の境地で陥って演奏する狂想のように思えて仕方なかった。
後半のもはや曲には何の興味ももてない新世界交響曲だが、演奏が良かったのは当たり前だが、ブロムシュテットは垢のつくほど演奏したオーケストラのメンバーにスコアにもう一度真摯に当たるように求めたのか。いつもと音色が違う。いや新世界ってこんな感じだよね?という演奏が全くない。国民学派の民謡のメロディ頼りの演奏ではなく、きっちしとした交響楽の構築美を聞かせてくれた。面白かった。
2011年9月10日 午後6時 NHKホール
Cプロ
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30
チャイコフスキー/交響曲 第5番 ホ短調 作品64
指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
カラヤン/ベルリンフィルの最盛期を思わせる鉄壁な演奏。
驚いた。こんなすごい演奏が35年以上聞いて来たNHK交響楽団の、それもNHKホールでの定期演奏会で聞けるとは夢にも思っていなかった。
プログラムの前半、ラフマニノフのピアノ協奏曲は41才のノルウェー生まれのレイフ・オヴェ・アンスネスを招いての演奏。この演奏は高校のころだったか、ホロヴィッツのライブ盤が発売されて話題になった。アンスネスの演奏はそれとは違うが音の粒をひとつひとつおざなりにしない彼の演奏はホロヴィッツの音作りと共通するところがある。ただ、アンスネスは抜群の技術をもちながらも、それを華麗で豊麗な音で埋め尽くして圧倒するような演奏にはしないことだ。知性と品性のある演奏なのだ。だからこそ、カデンツアで超絶技巧を聞かせるときの聞き手の興奮は頂点に達する。この協奏曲は何回か生演奏をきいてきたけれど、NHK交響楽団の見事なアンサンブルもあって、この曲のライブ演奏ではベストのものとして長く記憶に残るだろう。
正直、前半で疲れきってしまう程驚いた。しかし、当夜のメインディッシュは後半にあったのだ。
チャイコフスキーの5番交響曲。第一楽章が始まった時に、これとてつもない演奏になるかもしれないぞと思ったのだが、前の週のブロムシュテットの新世界の時と同じく、先ずは世界の超一流のオケにひけを取らない見事な弦楽アンサンブルが心を鷲掴みにしていく。そして、奇跡は第二楽章に決定的なものとなった。そのアンサンブルに、ホルンがテーマを吹いたとき、その格調の高さとメランコリックに流れない知性のある演奏が、ロシアのオケでは演奏できない、かつてのカラヤン/ベルリンフィルが栄華を極めた時代の演奏のそれに匹敵する完璧さで迫って来たのだ。ホルンはオーボエなどと絡みながら他の楽器に主題を譲っていくわけだが、それぞれが見事としかいいようのない音楽を聴く楽しみを再認識させてくれる名演だ。
中間部でのクラリネットと弦の呼応の見事さ。ブロムシュテットは北欧生まれのアメリカ人だ。カラヤンの演奏に比べるともう少し淡白ですきっと聞かせる。真ん中で弦のピチカートが入り、弦が再びオーボエなんかと唄うところがあるけれども、そのピチカートのくっくりさと、弦の唄わせ方がカラヤンよりも品がいいんだよなあ。特にここの第一バイオリン。こんな音をベルリンフィル、シカゴ交響楽団、ウィーンフィルといった世界のトップオブトップ以外から聞いた事がなかった。それが、あなた、NHKホール(最悪音響空間)のNHK交響楽団から聞けたんで驚いたわけですよ。
3楽章は、乱れとまでは言わないが、二楽章の奇跡的な演奏に比べるとやや普通の演奏だったけれども、4楽章はまたまた奇跡がおきた。終幕の大合奏のすごかった事。ブロムシュテットはやや遅めのテンポで始めてたっぷり唄わせて、終幕にむけて通常のテンポくらいまで微妙に変えていく。いやあ、80代なのに、格調は高いのに若い。枯れていない。そこがいいところですなあ。ベームは晩年、チャイコフスキーを録音したけれど、もう枯れていて何かね、艶やかな魅力がなかったからな。
この演奏はオーケストラ音楽の極みへ聴衆を連れて行ってくれました。まさに見事。見事。NHK交響楽団、いま世界でももっとも旬な演奏団体になったようです。
この文章を書く時にカラヤン/ウィーンフィルのCDを聞きながら書いているのだが、正直、NHK交響楽団の演奏の方がいいなあ。
2011年9月16日 NHKホール
Bプロ
シューベルト/交響曲 第7番 ロ短調 D.759「未完成」
ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調(ノヴァーク版)
台風のため未完成は聞けなかった。客席は2割ほどの入りしかなく、どうもいつものサントリーホールよりも残響が良かった感じ。それが、ブルックナーの演奏にぴったり。第二楽章はワーグナーの死に捧げたとも言われる楽章であるが、そこでのホルンの見事なこと。おったまげ。これがN響の弦楽合奏かと驚いた次第。2楽章で火がついた演奏は最終楽章まで衰える事なく続く。ブロムシュテットは、感情でぐいぐいおしていくのではなく、あくまでも冷静にテンポも強弱もコントロールしていたように思う。なんだろう。僕は、オイゲンヨッフムがコンセルトヘボウやバンベルグ響とやったもの、ハイティンクなどの名指揮者が演奏したウィーンフィルとの演奏がブルックナーの名演奏として心に残っているのだが、少なくともそれと並ぶ名演だったと思う。とにかくオケから聞こえてくる音が日本のオケとは思えないのだ。すごい。
指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
2011年9月21日 サントリーホール
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
ドヴォルザーク/交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
ヴァイオリン: 竹澤恭子
2011/12のシーズンを期待させる最上の演奏。スコアをもう一度見直したからこそ聞こえてくる新しい新世界。
素晴らしいホールが多くある東京においてNHKホールは決して演奏するのに有利なホールではない。25年前にサントリーホールができた時に、同じNHK交響楽団がまったく違った音で聞こえるのに愕然としたほどだ。今でもNHK交響楽団の定期会員はサントリーホールが人気で、年間の定期会員の全席が完売になることでもその理由が分かる。今宵、私はこの交響楽団の音をきいて、愕然とした。かつてこのホールでベルリンフィルもパリ管弦楽団もウィーンフィルも、こんな素晴らしい音をこのホールで聞かせただろうか?もちろんホームグラウンドであるからホールを知り尽くしている事はあるだろう。しかし、例えば、今や80代となり巨匠となったブロムシュテットの十八番とはいえ、シベリウスの弦楽合奏が、3楽章のあの大地をゆらるようなリズムをきくと、私は生きながら天界にいるのではないかと思うほどの美しさを感じるのだ。管楽器も打楽器も、、、、35年も聞いているオーケストラだから、ほとんどのメンバーは入れ替わっているけれども。本当に素晴らしいオーケストラになった。
竹澤恭子は急遽の代役であるが、彼女にとってもシベリウスの協奏曲は十八番。私は、20年ほど前に、アンネゾフィームターとプレヴィンの録音を聞いた時に、チョンミュンファの録音を高校の時に聞いた時に魅せられたこの協奏曲だが、今宵の竹澤の演奏は自分の個性をむき出しにしてオーケストラと競奏するのではなく、音楽の中にお互いが無我の境地で陥って演奏する狂想のように思えて仕方なかった。
後半のもはや曲には何の興味ももてない新世界交響曲だが、演奏が良かったのは当たり前だが、ブロムシュテットは垢のつくほど演奏したオーケストラのメンバーにスコアにもう一度真摯に当たるように求めたのか。いつもと音色が違う。いや新世界ってこんな感じだよね?という演奏が全くない。国民学派の民謡のメロディ頼りの演奏ではなく、きっちしとした交響楽の構築美を聞かせてくれた。面白かった。
2011年9月10日 午後6時 NHKホール
Cプロ
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30
チャイコフスキー/交響曲 第5番 ホ短調 作品64
指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
カラヤン/ベルリンフィルの最盛期を思わせる鉄壁な演奏。
驚いた。こんなすごい演奏が35年以上聞いて来たNHK交響楽団の、それもNHKホールでの定期演奏会で聞けるとは夢にも思っていなかった。
プログラムの前半、ラフマニノフのピアノ協奏曲は41才のノルウェー生まれのレイフ・オヴェ・アンスネスを招いての演奏。この演奏は高校のころだったか、ホロヴィッツのライブ盤が発売されて話題になった。アンスネスの演奏はそれとは違うが音の粒をひとつひとつおざなりにしない彼の演奏はホロヴィッツの音作りと共通するところがある。ただ、アンスネスは抜群の技術をもちながらも、それを華麗で豊麗な音で埋め尽くして圧倒するような演奏にはしないことだ。知性と品性のある演奏なのだ。だからこそ、カデンツアで超絶技巧を聞かせるときの聞き手の興奮は頂点に達する。この協奏曲は何回か生演奏をきいてきたけれど、NHK交響楽団の見事なアンサンブルもあって、この曲のライブ演奏ではベストのものとして長く記憶に残るだろう。
正直、前半で疲れきってしまう程驚いた。しかし、当夜のメインディッシュは後半にあったのだ。
チャイコフスキーの5番交響曲。第一楽章が始まった時に、これとてつもない演奏になるかもしれないぞと思ったのだが、前の週のブロムシュテットの新世界の時と同じく、先ずは世界の超一流のオケにひけを取らない見事な弦楽アンサンブルが心を鷲掴みにしていく。そして、奇跡は第二楽章に決定的なものとなった。そのアンサンブルに、ホルンがテーマを吹いたとき、その格調の高さとメランコリックに流れない知性のある演奏が、ロシアのオケでは演奏できない、かつてのカラヤン/ベルリンフィルが栄華を極めた時代の演奏のそれに匹敵する完璧さで迫って来たのだ。ホルンはオーボエなどと絡みながら他の楽器に主題を譲っていくわけだが、それぞれが見事としかいいようのない音楽を聴く楽しみを再認識させてくれる名演だ。
中間部でのクラリネットと弦の呼応の見事さ。ブロムシュテットは北欧生まれのアメリカ人だ。カラヤンの演奏に比べるともう少し淡白ですきっと聞かせる。真ん中で弦のピチカートが入り、弦が再びオーボエなんかと唄うところがあるけれども、そのピチカートのくっくりさと、弦の唄わせ方がカラヤンよりも品がいいんだよなあ。特にここの第一バイオリン。こんな音をベルリンフィル、シカゴ交響楽団、ウィーンフィルといった世界のトップオブトップ以外から聞いた事がなかった。それが、あなた、NHKホール(最悪音響空間)のNHK交響楽団から聞けたんで驚いたわけですよ。
3楽章は、乱れとまでは言わないが、二楽章の奇跡的な演奏に比べるとやや普通の演奏だったけれども、4楽章はまたまた奇跡がおきた。終幕の大合奏のすごかった事。ブロムシュテットはやや遅めのテンポで始めてたっぷり唄わせて、終幕にむけて通常のテンポくらいまで微妙に変えていく。いやあ、80代なのに、格調は高いのに若い。枯れていない。そこがいいところですなあ。ベームは晩年、チャイコフスキーを録音したけれど、もう枯れていて何かね、艶やかな魅力がなかったからな。
この演奏はオーケストラ音楽の極みへ聴衆を連れて行ってくれました。まさに見事。見事。NHK交響楽団、いま世界でももっとも旬な演奏団体になったようです。
この文章を書く時にカラヤン/ウィーンフィルのCDを聞きながら書いているのだが、正直、NHK交響楽団の演奏の方がいいなあ。
2011年9月16日 NHKホール
Bプロ
シューベルト/交響曲 第7番 ロ短調 D.759「未完成」
ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調(ノヴァーク版)
台風のため未完成は聞けなかった。客席は2割ほどの入りしかなく、どうもいつものサントリーホールよりも残響が良かった感じ。それが、ブルックナーの演奏にぴったり。第二楽章はワーグナーの死に捧げたとも言われる楽章であるが、そこでのホルンの見事なこと。おったまげ。これがN響の弦楽合奏かと驚いた次第。2楽章で火がついた演奏は最終楽章まで衰える事なく続く。ブロムシュテットは、感情でぐいぐいおしていくのではなく、あくまでも冷静にテンポも強弱もコントロールしていたように思う。なんだろう。僕は、オイゲンヨッフムがコンセルトヘボウやバンベルグ響とやったもの、ハイティンクなどの名指揮者が演奏したウィーンフィルとの演奏がブルックナーの名演奏として心に残っているのだが、少なくともそれと並ぶ名演だったと思う。とにかくオケから聞こえてくる音が日本のオケとは思えないのだ。すごい。
指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
2011年9月21日 サントリーホール
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佐藤治彦 Haruhiko SATO
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性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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