自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
「美術収集家の目的と限界」
日曜日の午後1時まではドネーションで入場できる鉄鋼王フリックの私邸を美術館にしたフリックコレクション。それこそ20年以上ぶりに入った。アッパーイーストの5番街70丁目。フリックコレクション=鉄鋼王フリックの私邸のアドレスである。ニューヨークでも最高級の場所である。そして、僕はここからワンブロックのところに半年ほど住んだ経験もある。それも20代後半のころに。
美術館の展覧会を日本で開催しても、美術館そのものは持ってこられない。フリックコレクションは3枚のフェルメールをはじめとして素晴らしい逸品があるのだが、建物そのものが美術であり、一番の美しさは概観、中庭を含めたこの建物だ。
19世紀から20世紀の事業家の美術への鑑識眼の限界も含めてここにはアメリカ資本主義の、ヨーロッパへの劣等感の混じる憧れと自尊心の尊大さを感じさせる。
2012年4月の旅行で20世紀初めのユダヤ人スターン一家のモダンアートに対するコレクションも見たが、新しい時代の美術を観る力まではフリック自身は持っていなかった。だから、古い欧州の美術のメジャーで集めてしまう。
彼が何でこの作品を金を出して買ったのかという視点で見ていくととても面白い。
ニューヨークに出かける人で日曜日の午後1時までいこの美術館に来られる人はぜひ寄ってもらいたい。なぜなら、その時だけ任意の入場料で入れるからだ。つまり、1ドルでも10ドルでも払えばみせてくれる。そして、所蔵品の日本語ガイドは無料で貸してもらえる。13時前に入ればいいのであるが、それ以降は少し入場者数が減るので、むしろ午前中よりも空いてていいかも?
で、肝心の中身。フリック氏、バルビゾン派の絵までは堂々と集めていたようだ。
中心は、フェルメールから始まる古典の評価の確定した大家の作品が多い。
今回はボストン美術館やオルセーから借りた数点とともにルノアールの作品が10枚くらい特別展示されている。ところがルノアールでさえ、この屋敷に飾ってあると浮いて見える。彼はルノアールにも追いつけなかった。ドガの踊り子の絵を自分の寝室に飾っていたらしいが、それを客間に飾る事はなかった。
彼のコレクションは20世紀の初め当時に欧米であった美術の価値基準にそって集めたのであり、欧州への憧れと氏の財力の誇示でもあったのだ、そんな鉄鋼王のコレクションと彼の限界を残酷な視点でゆっくり見るのもいいものです。ソファーもありますからどうぞゆっくりと。
2012年4月8日 フリックコレクション ニューヨーク
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佐藤治彦 Haruhiko SATO
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男性
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演劇ユニット経済とH 主宰
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演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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