自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
How to succeed in Business without really trying
演出・振付/ロブ アシュフォード
出演/ ニックジョナス ボーブリッジス マイケルウリエ ステファニーローセンベルグ
「努力の末に極みに至った『努力しないで出世する方法』」
努力をしないで出世する方法を初めてみたのは小学生のころだった。淀川長治さんがホストを務めていた日曜洋画劇場でズタズタにカットされた短縮版を見たのだった。なんだこれ、面白いぞ!それが1967年版の映画版「HOWTOSUCCEED」だった。これは1952年の芝居を1961年にミュージカルにし、1967年に映画版となって長く埋もれてきた作品である。
わかりやすくいうと、クレイジーキャッツ・植木等の原型がここにあるのだ。C調で人間関係をうまく泳いで出世するというお気楽ストーリーの原型だ。まさに1960年代だ!
ビデオもレーザーディスクでもDVDでも日本では再発されない。それが1995年にブロードウェイでマシューブロデリック(ハリウッド映画で山ほど出ている天才俳優)で再演された。それを見たのだ。どうも、それにはブレイク前のサラジェシカパーカーも出ていたらしい。
音楽がいい。ストーリーが面白い。こんなことありえないようなと思わずに現代のおとぎ話と思ってみればこんなに楽しい気持ちになれる作品はないだろう。マシューの演技も見事でこの作品でマシューはトニー賞の主演男優賞を受賞するのだ。
あまりにも強烈でもう15年もたってしまったのかと思ったけれども2011年3月27日にその作品がさらにブラッシュアップ。1995年のプロダクションに磨きをかけ、使われなかった楽曲も足して、ハリーポッターのダニエルラドクリフで再演。
正直、マシュー版にはかなうまいと思って見ようと思っていなかったのだが、今回のニューヨーク滞在は長くなんと16本の舞台を見られるので、見てみた。
俳優のお目当てはタフガイの役柄を映画でやってきたボーブリッジスであった。
驚いた。素晴らしい。マシュー版をも上回る大成功のプロダクションだ。
演出も振り付けも1995年版とベースは同じである。しかし、細かいところをものすごく工夫している。一番の工夫は悪役バドプランプ役を単なるライバルではなく、もっと強くしコメディ要素を足したことである。1995年版ではマシューブロデリックひとり舞台の感じがあったが、今回は総合的なアンサンブルで成功しているのが分かる。
驚いたのは主役のニックジョナス(Nick Jonas)である。全く知らない俳優だが、歌、踊り、演技がうまい。何よりもコメディのセンスが抜群だ。調べてみると何と19歳。信じられない。「キャンプロック2」というディズニー映画の主役をやってるらしいので見てみようと思う。「ヘアースプレー」などにも出ているが、なんと「レミゼ」のガブロッシュ、「美女と野獣」のチップを演じているというのだから10歳になるかならないかという年齢から舞台と映画、テレビで育ってきた芸人なのである。とにかく信じられないほどうまい。
彼の演技は見事である。ベースは、たとえば話し方からして、マシューブロデリックの影響をものすごく受けている。しかし、完全にニックのものにしているのだからいいのだ。俳優は他人から芸を盗んで大きくなるのだから。とにかく、この男。見事。
そして、バトフランプ役やったマイケルウリ(Michel Urie)のコメディアンぶりが一歩も引かず見事。演技の基本はミスタービーンの踏襲であるが、これが見事でオリジナルの演技となっている。観客の拍手もものすごくもらっていた。彼はブロードウェイデビューである。アグリーベティに出ているらしいが、あまりにも見事なので身震いした。
初のブロードウェイが大役で、出演者の中では無名なのに見事に演じ切り観客の支持も得た。すごいな、スター誕生である。時間と空間の把握が見事すぎて。でも昔の日本にはこういう俳優もいたよなあと思うと残念。今はいない。対抗できるとしたら、西田敏行さんくらい。あとは無理。
これらと比べると、目当てだったボーブリジッスは、先月見たジョージクルーニー主演の「ファミリーツリー」でもいい味を出しているが、こういう若い才能の前では見劣りしてしまう。
振付も演出も美術も新しいが1995年版の影響が強くある。1995年版では使われなかった楽曲もありほんとに楽しかった。もう1回見てもいい。僕は口をあんぐり開けて驚いて何か盗めないかとみていた。
しかし、この成功は、50年に渡ってこの作品を大切に育ててきたアメリカのエンタティメント界の勝利である。ひとつのもので作り上げたない。努力の末にたどり着いたエンタティメントの高き頂きである。日本ではこの作品は1995年版を宝塚がやった。違うんだよなあ。見てないけれど、そういうんじゃないと強く思った。
もしも、ニューヨークでミュージカルを見るのであれば、まずは最初にこの作品を選んでいただきたいです。
ダニエルラドクリフ版(トニー賞受賞テレビ番組でのパフォーマンス)
マシューブロデリック版(トニー賞授賞式テレビ番組でのパフォーマンス)
映画版(1967年)ロバートムーアによるもの
2012年4月8日@アルハシューフェルド劇場
演出・振付/ロブ アシュフォード
出演/ ニックジョナス ボーブリッジス マイケルウリエ ステファニーローセンベルグ
「努力の末に極みに至った『努力しないで出世する方法』」
努力をしないで出世する方法を初めてみたのは小学生のころだった。淀川長治さんがホストを務めていた日曜洋画劇場でズタズタにカットされた短縮版を見たのだった。なんだこれ、面白いぞ!それが1967年版の映画版「HOWTOSUCCEED」だった。これは1952年の芝居を1961年にミュージカルにし、1967年に映画版となって長く埋もれてきた作品である。
わかりやすくいうと、クレイジーキャッツ・植木等の原型がここにあるのだ。C調で人間関係をうまく泳いで出世するというお気楽ストーリーの原型だ。まさに1960年代だ!
ビデオもレーザーディスクでもDVDでも日本では再発されない。それが1995年にブロードウェイでマシューブロデリック(ハリウッド映画で山ほど出ている天才俳優)で再演された。それを見たのだ。どうも、それにはブレイク前のサラジェシカパーカーも出ていたらしい。
音楽がいい。ストーリーが面白い。こんなことありえないようなと思わずに現代のおとぎ話と思ってみればこんなに楽しい気持ちになれる作品はないだろう。マシューの演技も見事でこの作品でマシューはトニー賞の主演男優賞を受賞するのだ。
あまりにも強烈でもう15年もたってしまったのかと思ったけれども2011年3月27日にその作品がさらにブラッシュアップ。1995年のプロダクションに磨きをかけ、使われなかった楽曲も足して、ハリーポッターのダニエルラドクリフで再演。
正直、マシュー版にはかなうまいと思って見ようと思っていなかったのだが、今回のニューヨーク滞在は長くなんと16本の舞台を見られるので、見てみた。
俳優のお目当てはタフガイの役柄を映画でやってきたボーブリッジスであった。
驚いた。素晴らしい。マシュー版をも上回る大成功のプロダクションだ。
演出も振り付けも1995年版とベースは同じである。しかし、細かいところをものすごく工夫している。一番の工夫は悪役バドプランプ役を単なるライバルではなく、もっと強くしコメディ要素を足したことである。1995年版ではマシューブロデリックひとり舞台の感じがあったが、今回は総合的なアンサンブルで成功しているのが分かる。
驚いたのは主役のニックジョナス(Nick Jonas)である。全く知らない俳優だが、歌、踊り、演技がうまい。何よりもコメディのセンスが抜群だ。調べてみると何と19歳。信じられない。「キャンプロック2」というディズニー映画の主役をやってるらしいので見てみようと思う。「ヘアースプレー」などにも出ているが、なんと「レミゼ」のガブロッシュ、「美女と野獣」のチップを演じているというのだから10歳になるかならないかという年齢から舞台と映画、テレビで育ってきた芸人なのである。とにかく信じられないほどうまい。
彼の演技は見事である。ベースは、たとえば話し方からして、マシューブロデリックの影響をものすごく受けている。しかし、完全にニックのものにしているのだからいいのだ。俳優は他人から芸を盗んで大きくなるのだから。とにかく、この男。見事。
そして、バトフランプ役やったマイケルウリ(Michel Urie)のコメディアンぶりが一歩も引かず見事。演技の基本はミスタービーンの踏襲であるが、これが見事でオリジナルの演技となっている。観客の拍手もものすごくもらっていた。彼はブロードウェイデビューである。アグリーベティに出ているらしいが、あまりにも見事なので身震いした。
初のブロードウェイが大役で、出演者の中では無名なのに見事に演じ切り観客の支持も得た。すごいな、スター誕生である。時間と空間の把握が見事すぎて。でも昔の日本にはこういう俳優もいたよなあと思うと残念。今はいない。対抗できるとしたら、西田敏行さんくらい。あとは無理。
これらと比べると、目当てだったボーブリジッスは、先月見たジョージクルーニー主演の「ファミリーツリー」でもいい味を出しているが、こういう若い才能の前では見劣りしてしまう。
振付も演出も美術も新しいが1995年版の影響が強くある。1995年版では使われなかった楽曲もありほんとに楽しかった。もう1回見てもいい。僕は口をあんぐり開けて驚いて何か盗めないかとみていた。
しかし、この成功は、50年に渡ってこの作品を大切に育ててきたアメリカのエンタティメント界の勝利である。ひとつのもので作り上げたない。努力の末にたどり着いたエンタティメントの高き頂きである。日本ではこの作品は1995年版を宝塚がやった。違うんだよなあ。見てないけれど、そういうんじゃないと強く思った。
もしも、ニューヨークでミュージカルを見るのであれば、まずは最初にこの作品を選んでいただきたいです。
ダニエルラドクリフ版(トニー賞受賞テレビ番組でのパフォーマンス)
マシューブロデリック版(トニー賞授賞式テレビ番組でのパフォーマンス)
映画版(1967年)ロバートムーアによるもの
2012年4月8日@アルハシューフェルド劇場
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
HP:
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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