自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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東山魁夷の生誕100周年記念展を鑑賞してきた。東京国立近代美術館なので、常設に行けば、岸田劉生や安井曾太郎、フジタなど作品も見られるしなあと思ってである。いや、招待券をもらっていた。いつ見ても東山魁夷の作品は美しい。優しい。それは印刷物で見ても。そうである。本物もそうだった。日本人の美意識にとてもあっている。それを具現化していると言ってもいい。非常に大規模な回顧展で、例えばヨーロッパで書いた作品もある。例えば、フィンランドの森の絵があったり、ドイツの赤煉瓦の古い街並の絵があったりする。それを日本人的な美意識。それを日本人なら誰もが好きな美しい色彩に彩ってみている。美しい。本当に美しい。
でもそれだけだ。僕はこんなに観客で会場が埋め尽くされた美術展は初めてだ。前に進めない。みんなキレイだね。良いよねと言っている。僕ははい分かりました。どれもこれも同じ。みんなみんなキレイ。自分の作風をぶち壊そうとしたことはなかったのか?自分を疑ってみたことはなかったのか?と聞きたかった。美との戦い、対峙というよりも、宗教的に自己の内部にあったものをどんどん深めて行った。そんな感じなのだ。もう一度いうけれど、美しい。でも、自然そのものは、もっと美しい。一瞬にしか見られなくても、それは息づいていて、変化していて、そう生きているのだから。もっと美しい。
美術作品の中から葛藤が見られないのが残念だと思った。そう思って会場を去りかけた時に、急に色が消えた。僕は日本の美術は、西洋の美術家たちが認めたように、北斎などの浮世絵と、横山大観のような水墨画がいちばんだと思っているのだが、東山魁夷画伯が得意としてきた、赤も緑も消し去って、墨だけで書かれた屏風絵があった。それは、本当に素晴らしいもので、自然をただ見ていても見えて来ないものがそこにはあった。それこそが美術家が表現するべきものだし、僕がみたいものなのだ。
ただ被写体、自然や人物を見ていても見えて来ないものが、キャンパスにはドカーンとある。それ。
生誕100周年 東山魁夷展 ホームページ
http://higashiyama-kaii.com/index.html
さて、企画展を後にして久しぶりの常設展?に行くと美術の教科書に出てくる日本画壇の偉い方々の重要文化財な絵がやまほどあった。
そして、いちいち。はい、マチス!ゴッホ!ボナール!と誰に影響されたのか。いや誰の作風の作品なのかをいちいち言いながら、日本が明治に開国して西洋の政治も、経済も、学問から芸術まで取り入れて来た歴史の中に位置づけられるよなあと思った。21世紀になって、ポップアート、工業デザイン、アニメ!な世界で世界の美術に貢献し始めたんだよなあ。これって、江戸時代以来だよなあと思いながら見ていたのだ。
しかし、ここでも例えば、川合玉堂のこの日本的な作品のもっている美しさをみるとハッとさせられたりした。日本美術を見て行くと、僕らの西洋コンプレックス史を見ているようであり、自分の内面にあるものが浮き上がって来たりして、面白いなと思ったのだ。
2008年5月4日
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プロフィール
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佐藤治彦 Haruhiko SATO
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男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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