佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 オスロフィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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オスロフィルハーモニー管弦楽団
指揮 ヘルベルトブロムシュテット
曲目 ハイドン作曲 交響曲101番「時計」
   ブラームス作曲 交響曲第1番

 このオーケストラが日本に来日すると、シベリウス、グリーグ、もしくは、ドヴォルザークやチャイコフスキーの演奏会ばかりになってしまう。北欧のオーケストラに課せられた宿命みたいなものだ。オスロに行ったついでに、長い夜をどう楽しもうかと思いでかけた。主な理由はホールを見るのがそれだったが、こんなに素晴らしい古典派の音楽を聴かせてくれるとは!予想を遥かに越えた名演だった。ブロムシュテットは北欧系のアメリカ人指揮者である。ライプチヒ歌劇場管弦楽団やサンフランシスコ交響楽団の音楽監督を勤め上げたあと、今はフリーの立場の70代である。
 堅実な演奏をする人というイメージが強かったのであるが、何でも2007年にオスロへどこかのオケとやってきて演奏したものが大成功で招聘されたのだと聞く。それだからか分からないが、楽団員ひとりひとりが非常に熱心にブロムシュテットの解釈を探ろうとする、浅薄なセンチメンタルでなくロマンにあふれた音楽を醸し出していた。異様なフォルテシモはないのに、まるで魂の発情とともに沸き起こる大きな音はそこにある。テンポもリズムもアンサンブルもしっかりしているが、ブロムシュテットの微妙な指示や変化にもついていこうとする発意が、自然なグルーブ感を生んでいた。そう、この音楽には自由さがあったのだ。
 ハイドンも素晴らしかったが、ブラームスの交響曲1番はこれ以上の名演は、もう聞けないのではないかと思うようなもの。ベルリンフィルやウィーンフィル、アムステレルダムコンセルトヘボウや、今のベルリンシュターツオパー、シカゴ交響楽団できくのと同じような技術的な完璧さがあっただけでなく、音楽をする喜びがあふれていた。だから、あの木管楽器の暖かい音、金管楽器の渋輝きの音が聞けたのだ。3楽章から涙が自然とあふれ、自分が音楽を愛していることの幸せを感じていた。多くの人はブラームスの素晴らしい交響曲を知らずにこの世を去って行くのだから。そして、ブラームスの交響曲を16歳から生演奏で山ほど聞いて来たけれども、このような名演についに出会ったのだと言う喜び。オスロの夜は忘れられない音楽の悦びに彩られることになった。
 演奏終了後から10分以上に渡って、ブロムシュテットは何回も呼び出され、会場は徐々に全員が立ち上がって拍手するスタンディングオベーションに変わって行った。もちろん空き席も多数会ったのだが、この素晴らしいオケは欧州旅行を重ねているらしいので近いうちに欧州の至宝として大切にされるようなるだろう。
 ホールは2000人ほど入れるような大ホール。舞台後方にも座席はあるが、ワインヤード方式ではない。木質のホールであるが、反響も残響も気になる欠点のあるホールではなかった。デザインは北欧風のシンプルな感じ。
 ブロムシュテットは、NHK交響楽団にもよく客演する。ぜひ、N響ともこのレベルの演奏を披露してもらいたいと思った。ああ、出かけて行って良かった!!








オスロフィルのホームページ

オスロコンサートホール
オスロ フィンランド
2008年5月9日
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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