自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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台本 土田英生
演出 茅野イサム
出演 土田裕一 鷲尾昇 上原健太 黒川薫 小須田康人
土田英生のこの作品は、東京でも数多くの上演がされている。流山児☆事務所、花組芝居と個性の強い面々が上演してもびくともしないものを持っている。しかし、男の話だよなあ。若い女性客が観客の98%以上をしめるパニッシュの公演で果たして受け入れてもらえるのだろうかと思っていたら全くの杞憂だった。それどころか、この作品の肝をキチンとあぶり出しながら、社会に対して側面攻撃をしながら時代と向き合う土田の作品の滲み出てくる毒をきちんと観客に届けていた。
観客は多いに笑い面白がっていた。小須田さんが登場するまでが鍵なんだよなあと思っていて見ていたら、冒頭から芝居はアンサンブルを大切に地道に積み上げて行った。決してスタンドプレーはなかった。いつもは、踊りやコント、そして、ミュージカルを楽しんでいるであろう観客から逃げずに、しかも、笑いはあるものの硬質なこの作品と向かい合い、その本質を届けていた。
最初の30分ほど、地道に積み上げて行く。すこしづつ引き込んで行く。役者にとって観客が受け入れているかはとても気になることで、孤独と不安に苛まれるものなのである。しかし、それを手に入れるために、決してなにか変わったことをして人目を惹こうとするような姑息な手段を、演出の茅野イサムはしない。させない。今までもそうだった。むしろ、役者が発するものを芝居の中に取り入れて行くことを大切にする。役者がやりたいこと、得意技を封印するようなことはしないのである。だからこそ、観客と舞台が一体に成るまでの時間を耐え抜くパワーが役者に持続するのである。
しばらくは、いつの時代でもあるおふざけの様な設定のシーン。その4人だけで見せる部分で客を引き込み、小須田さんの登場とともに一気にフルスルットルとなる。なぜ、鉄塔にこの若者はいるのか。何が起きているのか。どんどん、ヤバい種明かしがされるのであるが、客はそれで、それでとなってしまっていたのである。客が引き込まれているのだと確信したのは、しばらくして、パニッシュの二人が舞台から消えるシーンである。客の95%以上は、土屋と鷲尾を観に来ているのである。二人が消えた瞬間に集中力が途切れてしまう可能性があった。しかし、その時点で、客は芝居にのめり込んでいたのである。
シンプルで、しかし、必要なものは全部揃っている美術も良く出来ていて、円形劇場の高さを上手く利用した美術は良かったし、衣装も気が利いていた。上原健太も、先月の「トラオ」とは、芝居の方法論を上手くギアチェンジして、このアウェイな世界で上手く受け入れてもらえていた。
どこが茅野イサムの演出なんだと言う人もいるかもしれない。この王道感のある演出。これが茅野イサムなのである。しかし、作品にマーキングしたがる演出家が多い中で、この座組を生かす舞台を提供し、適切な選択をし、交通整理をすることのできる演出家は数少ないのではないか。演出家は数多くいる中で、最近、茅野イサムが売れっ子な理由が本当に良く分かる。
2008年4月27日
青山円形劇場
演出 茅野イサム
出演 土田裕一 鷲尾昇 上原健太 黒川薫 小須田康人
土田英生のこの作品は、東京でも数多くの上演がされている。流山児☆事務所、花組芝居と個性の強い面々が上演してもびくともしないものを持っている。しかし、男の話だよなあ。若い女性客が観客の98%以上をしめるパニッシュの公演で果たして受け入れてもらえるのだろうかと思っていたら全くの杞憂だった。それどころか、この作品の肝をキチンとあぶり出しながら、社会に対して側面攻撃をしながら時代と向き合う土田の作品の滲み出てくる毒をきちんと観客に届けていた。
観客は多いに笑い面白がっていた。小須田さんが登場するまでが鍵なんだよなあと思っていて見ていたら、冒頭から芝居はアンサンブルを大切に地道に積み上げて行った。決してスタンドプレーはなかった。いつもは、踊りやコント、そして、ミュージカルを楽しんでいるであろう観客から逃げずに、しかも、笑いはあるものの硬質なこの作品と向かい合い、その本質を届けていた。
最初の30分ほど、地道に積み上げて行く。すこしづつ引き込んで行く。役者にとって観客が受け入れているかはとても気になることで、孤独と不安に苛まれるものなのである。しかし、それを手に入れるために、決してなにか変わったことをして人目を惹こうとするような姑息な手段を、演出の茅野イサムはしない。させない。今までもそうだった。むしろ、役者が発するものを芝居の中に取り入れて行くことを大切にする。役者がやりたいこと、得意技を封印するようなことはしないのである。だからこそ、観客と舞台が一体に成るまでの時間を耐え抜くパワーが役者に持続するのである。
しばらくは、いつの時代でもあるおふざけの様な設定のシーン。その4人だけで見せる部分で客を引き込み、小須田さんの登場とともに一気にフルスルットルとなる。なぜ、鉄塔にこの若者はいるのか。何が起きているのか。どんどん、ヤバい種明かしがされるのであるが、客はそれで、それでとなってしまっていたのである。客が引き込まれているのだと確信したのは、しばらくして、パニッシュの二人が舞台から消えるシーンである。客の95%以上は、土屋と鷲尾を観に来ているのである。二人が消えた瞬間に集中力が途切れてしまう可能性があった。しかし、その時点で、客は芝居にのめり込んでいたのである。
シンプルで、しかし、必要なものは全部揃っている美術も良く出来ていて、円形劇場の高さを上手く利用した美術は良かったし、衣装も気が利いていた。上原健太も、先月の「トラオ」とは、芝居の方法論を上手くギアチェンジして、このアウェイな世界で上手く受け入れてもらえていた。
どこが茅野イサムの演出なんだと言う人もいるかもしれない。この王道感のある演出。これが茅野イサムなのである。しかし、作品にマーキングしたがる演出家が多い中で、この座組を生かす舞台を提供し、適切な選択をし、交通整理をすることのできる演出家は数少ないのではないか。演出家は数多くいる中で、最近、茅野イサムが売れっ子な理由が本当に良く分かる。
2008年4月27日
青山円形劇場
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
HP:
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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