自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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スパルタカス
音楽:アラム・ハチャトゥリアン
振付:ユーリー・グリゴローヴィチ
美術:シモン・ヴィルサラーゼ
音楽監督・共同制作:ゲンナージー・ロジェストヴェンスキー
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団
スパルタクス(剣奴、反乱の指導者):パヴェル・ドミトリチェンコ
クラッスス (ローマ軍の司令官):ユーリー・バラーノフ
フリーギア(スパルタクスの妻):アンナ・ニクーリナ
エギナ(娼婦、クラッススの愛人):マリーヤ・アレクサンドロワ
「ボリショイバレエのいま」
僕が最初にボリショイバレエを見たのは1983年の9月の来日で神奈川県民ホールだった。生まれて初めての「白鳥の湖」。バレエといえば、ボリショイ!というイメージが何でか分からないけれどあって、大変楽しみにしていたのを覚えている、ところが、当時、大韓航空機撃墜事件があり反ソビエトの空気が物凄いなか、厳戒態勢で行われた公演だった。安いチケットだったけれど、僕はこっそり1階の席に潜り込んでみたはず(今宵は1階前方前から2列目。素晴らしい席だった)。そこには、幻想的な世界があって、チュチュを着ためちゃくちゃ美しい(=哀しい宿命を背負ったような)ロシア美人が一糸乱れぬアンサンブルで踊っていた。機械の様ではないけれども、自らを機械にしようとしていた感じがした。
当時のソビエトの来日公演には、指揮者や演出、ソリストに、ソビエト政府から与えられた勲章などの呼称がついていた。全ソビエト芸術何とか何とかみたいな。
当時の僕も、バレエダンサー達が抑圧されている感じがした。自由はない。しかし、そこには何か芯が通っていたのも事実。きっとグリゴローヴィッチ監督の思いのままのバレエを舞台にあげていたのだろう。そこに、ダンサー自らの自主性はあまり求められていなかったのかもしれない。しかし、それは美しかった。
その後もボリショイは見ている。10年くらい前にも見た。
で、今回のボリショイを見て、ソビエトが崩壊して20年。本当に変わったなあと思ってしまったのだ。ソビエト時代のボリショイのあのコールドダンスの一糸乱れぬ動きはもうない。例えば、手を上にあげるのも止めも、タイミングが会わないし、フォームも若干違う。いや、振りを間違える人もいる。カーテンコールではおしゃべり。公演中、ダンサー達は自由を満喫し非常に楽しんで踊っているのが分かった。それはいいとして、緊張感は確実に83年のボリショイの方が上だ。
「スパルタカス」は30年前の来日でもきっと上演されたはず。ボリショイの十八番だ。ソリストは素晴らしい。特にエギナを踊ったアレクサンドロワは、オーラもカリスマ性もある魅力的なダンサーだ。ソリストの個性は素晴らしい。しかし、コールドバレエは昔の方がいいなあとも思ってしまう。戦いの場面に悲壮感がないのだ。
オーケストラはバレエの伴奏という意味合いでリズムをクリアにしたもので、バレエ公演の時のピットに入る時はこんな感じなんだろうなと。
いまやコールドバレエは、パリオペラ座や、ロイヤルバレエ、そして、東京バレエ団の方が上だなあ。振付けは30年以上前のもの。ボリショイバレエはもう世界のトップじゃないなと感じた。2012年2月1日@東京文化会館
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佐藤治彦 Haruhiko SATO
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男性
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演劇ユニット経済とH 主宰
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海外旅行
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演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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