佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 カムカムミニキーナ ダルマ 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作演出 松村武
出演  八嶋智人 松村武 藤田記子 山崎樹範 田端玲実 ほか
 
 ネットでの評判は良くないが、僕はきっと楽しんで観た。この作品は、とても哲学的で深遠で壮大な宇宙的な世界を松村武は切り開こうとしている宣言だ。作家として避けることはできないテーマ。生きるということは、死とはどういうことかを見据えていた。このような世界を中心に、現代的なポップなギャグ、言葉にもとことんこだわって提示しているのは日本では、他に野田秀樹くらいしか思い浮かばない。そう思って見ていると松村武は何回か出演した野田秀樹の世界を敬愛しながらも独自の作家性をどう確保して行くのかで、必死にモガイているようにも思える。こういうギャグは松村武らしいとか、こういう会話がカムカムぽいとか、そういう世間の評価もあるものだから、それも大切にする。それが2時間20分という長尺になる原因となっている。もっと切り込んで1時間50分であれば傑作になのにと思う。もちろん、思うのは簡単で自分でやってみろよ!と言われるとあわあわするのだが。
 観客は冒頭でこれは西遊記の話なのだと思い、そう構えている。しかしながら、40分もすると、それは全く違う世界に放り込まれ、どう見ていいのか分からなくなっていた。観客の反応は1時間もすると重いものになっていくのだ。観客の求めているのはもっとポップでナンセンスで不条理なギャグ。それを求めているように思える。
 それが、今回は松村武の死生観みたいなものを全面に提示されたので、え?こういう芝居なの??と慌てふためいたのではないか?
 宣伝はポップでとてつもないギャグワールドを楽しませてくれそうな感じがする。テレビの人気もののイメージもそれだから。しかし、時おりそういうものもあるけれど、全体を通して覆われるのはダークでティムバートンのような暗い世界。
 いっそ野田秀樹の軍門に下りましたと思って普通に書けば、松村武の世界は強固だからそのまま松村ワールドになるのに。大好きで敬愛する野田秀樹と距離感を保とうとしてかえって作品の完成度を低めているような感じがした。この作品をいつか再演して欲しい。1時間50分にして。
 
 役者陣はもちろんスゴい。今回は今井さんのダンスが面白かった。
 僕はこの作品で完全に松村武ワールドのファンになりました。ファン宣言!



2008年7月
シアターアプル
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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