佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 文学座 メモリーズ 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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文学座アトリエでのテネシーウィリアムズ1幕もの4作品の上演。

作 テネシーウィリアムズ
演出 靍田俊哉
「財産没収」
「バーサよりよろしく」
「ロンググッドバイ」
「話してくれ、雨のように…」
出演 藤堂陽子 松岡依都美 佐川和正 亀田佳明 細貝光司 ほか


「文学座+T.ウィリアムズ…ああ、あまりにも高いハードル」
 文学座がテネシーウィリアムズを上演するということは見る側には大きな期待をさせ大変高いハードルとなる。何しろあの杉村春子が代表作のひとつに磨き上げた「欲望という名の電車」。杉村春子が亡くなって相当経つまで大女優は誰も手をつけなかったほどに仕上がっていたのだ。テネシーウィリアムズは文学座のお家芸といいたいくらい。
 今回の作品は短編4本をオムニバスのようにつなげた。「ロンググッドバイ」以外は名前も知らない作品だったが、テネシーウィリアムズの匂いプンプンの作品群であった。
 演出の靍田俊哉氏は1961年生まれだから、そうした杉村春子の名演なども舞台で十分という程、観ているはずである。ますます期待が高まる。しかし、僕のハードルがあまりにも高かったからか、細かいところがいちいち気になり、高い期待通りとまではいかない上演だった。
 1作目の「財産没収」には、ミニブランチのような女が出てくる。狂乱してしまうところまでは行っているのだが、そこに踏みとどまれない人間の業のようなものは出ていない。自らの世界にとどまって、相手役の男と絡まず一人で世界を作り上げている。出てくる地名など固有名詞の発するイメージもつかんでいないような気がした。大変重要な役柄だけに残念だ。相手役の亀田佳明は文学座の若手のトップランナーのひとりだ。役になりきり化ける事のできる俳優だ。しかし、相手役がああいう演技で来られちゃ、どうしようもない。何となく焦点のぼやけた芝居になってしまった。旨いんだけどね。深みというところまではいかない。
 2作目「話してくれ、雨のように…」の細貝光司はきちんと役柄をとらえ見事に演じていた。ベットに横たわる姿や立ち姿も美しく華も匂いもある役者だ。しかし、声が良すぎた。長台詞のところなど、台詞に寄りかかり、肉体と声のバランスがやや崩れ声が前面に出て来た印象。残念だ。松岡は前々から旨い。太地喜和子の持っていた女の可愛さを持つ女優になるかもしれない期待の☆だ。あまり濃厚に演じるよりもフラットなところに座標軸を取った。お見事。
 3作目の「バーサよりよろしく」は小野洋子の代役でベテランの玉井碧が藤堂陽子の相手役を演じたのだが、藤堂が入念に作り上げた底辺を生きる女を見事に演じていたのに対し、肉体で演じるところと長い台詞を語るところが旨くつながっていない様な気がした。素晴らしい台詞が出てくると、このようなベテランでも手こずるのかなあと。ここでも、ちょこっと出てくる松岡の立ち姿なんか非常に印象的。
 最後の「ロンググッドバイ」はニューヨークが舞台なのかな。面白い。亀田が1作目と違い演技の立ち位置もしっかりしていて、あまり開けっぴろげな演技をしない若いのに重厚な佐川と見事な掛け合いが出来上がっていて楽しめた。
 引越屋さんもいいアンサンブルを演じてた。 
 僕だけが不満なのかとも思ったが、午後のマチネだったこともあるからか、僕の廻りでは多くの人が舟をこいでいた。それもあっという間に。何艘もこぎ始めて驚いた。
2011年12月7日@文学座アトリエ
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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