佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 流山児☆事務所 ユーリンタウン 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ブロードウェイミュージカル
演出 流山児祥
台本 坂手洋二
出演 千葉哲也 大久保鷹 塩野谷正幸 三ツ矢雄二 伊東弘子 遠山悠介 関谷春子 /奥山隆 ほか


 演出は非常にオーソドックスで安心してみられる。そこには、流山児祥が、自分の痕跡をあえて塗りたくろうとしていないことが成功している。大久保鷹や千葉哲也といった強烈な個性が、東宝版ユーリンタウン(演出 宮本亜門)より成功している由縁かもしれない。若い主役の2人が無名だけあって、物語から浮き上がってくるのがとても自然で、最初からスターを配し最初から目立ちお約束のように大きな存在になる商業演劇と一線を画しているのも成功した由縁だろう。
 ただ、遠山の歌唱には一部音程的に大きな問題があり許容の範囲を超えている。千葉や塩野谷が歌唱でも大健闘している分、余計勿体なく思える。
 問題は当初は3時間以上だったという台本だろう。相当削って2時間45分(休憩をのぞくと2時間20分)にしたのが、これは好みにもよるだろうが、狂言廻しが最初から最後まで芝居の外に出て行き、冷ややかに芝居を言うのは果たして必要だろうか?狂言回しも物語の中に組み込まれていくのが常道だけど。何か話の流れがそこで切れてしまうのが勿体なく感じられた。それから、左翼的な言葉があまりにも多くあり興ざめ。このユーリンタウンでの出来ごとは政治運動ではなく、民衆の叫びだしちょっとした暴動のようなもの。決して階級闘争ではないと思うのだけれど。

 この芝居を盛り上げていたのはアンサンブルだ。何しろ民衆の話なのだ。民衆が主人公でなければつまらない。商業演劇では考えられない50人ほどの有象無象の出演者がいた。その中で不思議と、劇団300の奥山隆がとても良かった。ホントにアンサンブルのひとりなのだが、身体のキレ、ダンス、佇まい、少ない台詞は尖っていて、存在感があった。注目の俳優だ。
 そして、5ピースの生バンドでこれだけの音楽がつくりだせるのかと驚き。非常にいい演奏だった。

 流山児☆事務所の芝居はワーグナーのような。行くまでは行きたくねえ、面倒だと思うのだけれど見てしまうと爽快感に包まれる。ホントに不思議だな。見にいて良かった。

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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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