佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 来日公演2011年 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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クリストフエッシェンバッハ指揮

2011年10月12日
シューマン作曲 ピアノ協奏曲 独奏ランラン
ブルックナー作曲 交響曲第4番「ロマンチック」
@みなとみらい大ホール

アンコール 
ランラン リスト/コンソレーション2番 ショパン/エチュード作品25−2
オーケストラ ヨハンシュトラウス/美しき青きドナウ

2011年10月19日
ブラームス作曲 悲劇的序曲
シューベルト作曲 交響曲第7番「未完成」
マーラー作曲 「少年の魔法の角笛」から
バリトン;マティアスゲルネ
@サントリーホール

アンコール
マーラー『少年の魔法の角笛』から「不幸なときのなぐさめ」
J.シュトラウスⅡ ワルツ『美しく青きドナウ』 op.314
J.シュトラウスⅡ ポルカ『雷鳴と稲妻』

 

「エッシェンバッハの魅力を再発見」
 ウィーンフィルの来日公演も震災、いや原発問題は大きな影響を与えている。ウィーンフィルのメンバーのことも詳しい人は、既に引退した人なども総動員して今回の来日公演を行った事を記している。それだけに、今回の来日はウィーンフィルの中でも今の日本の現状をふまえて是非来日したいという人だけで構成されていたということを先ずは記しておきたい。今回は2回の演奏会にいった。昨年の来日の後でエッシェンバッハと発表された時には正直がっかりしたものだ。エッシェンバッハの演奏は数年前にパリ管弦楽団との来日で久しぶりに聴いたのだが何の印象も残っていない。僕はエッシェンバッハではなく、マティアスゲルネのマーラー、そして、ウィーンフィルのブルックナー4番が聴きたくて出かけたのだ。
 12日の演奏では、ランランのますます冴え渡るあっけら感としたスケールの大きさに若さを感じたものだ。リストの世界にそのまま身を預けているのは分かるのだが現代の演奏として何を彼が考えているのか分からない。華麗な音楽のエロスを感じる以外に何もなかった。若いころのキーシンと比べてみたが、何か彼にはね、深みというか暗さが若い頃からあった。まあリストのピアノ協奏曲自体はそれほど演奏回数も多くないので良かったんだけれど。さて、ブルックナー4番。エッシェンバッハはテンポを遅めに取る。現代の演奏らしく一音一音大切にしながら進めていくのだが、曲の中に起きる変化の部分は特に慎重にことを進める。面白い。
 それは、未完成交響曲でも同じで、僕はこの曲をウィーンフィルとは1988年のシーズンにカーネギーホールでカラヤン指揮のそれで聴いて、それが特に印象に残っていた。ムーティの来日では聴いたのかな?忘れてしまった。いづれにせよ、今宵のエッシェンバッハのそれはとても印象に残った。極めて遅いテンポで進めるし、緊張感はピアニシモのときから極限となり、それがクレッシェンドになったりすると、解き放たれ感は極限となる。それは聴衆にも圧倒的に伝わってくる。各声部の唄わせ方は極めて丁寧で好感を持った。
 ゲルネとのマーラーも名演で、ここではエッシェンバッハは自らを主張するというよりもゲルネに相当合わせて演奏していように思う。ゲルネの声は、フィッシャーディスカウの知性とヘルマンプライの明るさと、いいところを持ちあわせている感じでじっくりと浸る事ができた。
 2つの交響曲を中心にエッシェンバッハの知性と美感を再発見する印象深い演奏会だった。そして、今回のウィーンフィルの演奏はいつにもなく緊張感を持った演奏会で、震災と原発でどん詰まりのわが国の聴衆を大いに慰めてくれたと思う。アンコールのウィンナワルツも含めて心から感銘を受けた演奏会だった。来年も来てくれるのかな。
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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