自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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2010年10月13日
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、目前に迫っている日本ツアーに際し、更なる変更のお知らせをしなければなりません。病気のため、日本ツアーを降板した小澤征爾氏に代わり、アンドリス・ネルソンス氏と二人で「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2010」を指揮する予定だったエサ=ペッカ・サロネン氏は、自身のコントロールの及ばない事情のため、急遽予定されていた一連の演奏会をキャンセルせざるを得なくなりました。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、我々が深い信頼を寄せる三人の指揮者、ジョルジュ・プレートル、フランツ・ウェルザー=メスト、アンドリス・ネルソンスの各氏が、川崎、西宮、宮崎および東京の演奏会の開催を可能にしてくださったことに心より感謝申しあげます。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 楽団長
クレメンス・ヘルスベルク
サロネンがキャンセル。いやはや今年は最後の最後までどうなるか分かりませんが、86才のジョルジュプレートルが来日することが決まるやいなや、11月10日のチケットはプレミアムチケットとなりました。ネットでも高く売られていたり。いやはや。曲目も、ベートーヴェンの3番、英雄が入ったことで人気が出たんでしょう。その反面、割りを食ったのが、次代のホープとしてもてはやされた1978年生まれのアンドリスネルソンス。そのチケットの暴落が始まりました。仕方がないです。新世界やモーツアルトという人気曲目をいれて小澤キャンセル後にそこそこ人気がでたのですが、首都圏での演奏会がもう一回増えてしまったからです。サロネンはブルックナーやマーラーでしたから。
11月1日、2日、5日と3回となり暴落中です。クラシック音楽の演奏会に3万円以上だして聴いてもいいやと思う人がどれくらいいるかが如実に分かりますね。大していないんです。
20世紀の巨匠音楽が次々と世を去った今。実は見渡してみると、マリアカラスとの50年代からの名演が残っているプレートルや、ピアニストのチッコリーニなどフランス人には素晴らしい巨匠が残っていてくれるのですね。
2010年11月1日(月)19:00開演(18:20開場) 指揮:アンドリス・ネルソンス
モーツァルト:交響曲第33番 変ロ長調 K319
アンリ・トマジ:トロンボーン協奏曲(トロンボーン:ディートマル・キューブルベック)
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 B178「新世界より」
アンコール
ブラームス(ドヴォルザーク編):ハンガリー舞曲第20番ホ短調 第21番ホ短調
2010年11月9日(火)19:00開演 指揮:フランツウェルザーメスト
ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死
ブルックナー 交響曲第9番
2010年11月10日(水)19:00開演(18:20開場) 指揮:ジョルジュ・プレートル
シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D125
ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 op. 55 「英雄」
※マーラー:交響曲第9番 ニ長調 から上記2曲に変更になりました
アンコール ブラームス :ハンガリー舞曲第1番 ト短調
J.シュトラウスⅡ:トリッチ・トラッチ・ポルカ
小沢征爾が指揮するはずだったところが降板。かり出された二人の指揮者。僕はサロネンとウィーンフィルの演奏を2009年のザルツブルグ音楽祭できいている。あのときもブルックナーの交響曲6番。そしてベルグだった。ベルグがあまりにも良くて、ブルックナーの印象があまり強くない。ああ、ウィーンフィルのサウンドだよなあ〜くらい。さて、どんな演奏になるのか愉しみだ。
モーツアルトの交響曲はこの若い指揮者が何をどうしてもびくともしない。それがウィーンフィルの伝統だ。このモーツアルトは非常に美しい。色彩感溢れるモーツアルトだった。ネルソンズはまるで若い頃の小沢征爾のように飛び跳ねるように指揮をする。決してウィーンフィルをこうしてやろうという野心はない。僕はそういう野心をもって欲しい。伝統を知らないからこそ起こせる音楽ってのが若者にはできるのだ。ドゥメダルが何で人気なのかってそこじゃないですか。自分自身の指揮者すごろくのことに興味を持つのではなく、モーツアルトやウィーンフィルと対峙して欲しかった。トマジの音楽は20世紀のフランスの作曲家なのだけれど、旋律がきちんとあって聞きやすい。トロンボーンも魅力にも溢れまた聞いてみたい曲だった。新世界は本当に美しい演奏だった。考えてみると、ウィーンはボヘミアのはずれにあるようなものだし、ウィーンフィルの音色を楽しんだ。しかしね、何か素朴さとかは感じられないんだよね。3曲とも原色で描かれた感じ。陶器の味わいって古いものにあるじゃないですか。100年前の職人によって丁寧に作られ、100年間大切に使われてきた陶器にある味わい。同じヘレンドやウェッジウッドでもそう。それがここにはない。最新の高級な陶器かもしれないけれど、そこに何かね、ないような感じがした。2010年11月1日 サントリーホール
11月9日 フランツウェルザーメストの指揮による演奏会を最初に聞いたのはいつだったか。きっと10年くらい前で、まだ20世紀の巨匠が何人か活躍している時代だったと思う。感心もせず、放ったらかしにしていた。それが、チューリッヒ歌劇場の2007年の来日公演で「椿姫」と「ばらの騎士」を振ったのをきいて、演出はヘンテコなものだったけれど、管弦楽が素晴らしく、へえ!と感心したのである。それが、今年の秋からはウィーン国立歌劇場の音楽監督だし、2011年のニューニャーコンサートのシェフも勤めるという。
今宵聞いた音楽は大変満足のいくものだった。どこそこのホルンの響かせ方が良かったとか、弦のピッチが絶妙だったとかそういう専門的なことは分からないけれども、音楽の核心に迫ろうとしているのが良く分かった。それは、ドイツーオーストリア音楽の中心地であるウィーンの音楽の伝統に身を委ねているということでもある。2010年11月9日 サントリーホール
そして、プレートル。ネットの記録によると前回の来日は1998年のパリ管弦楽団との演奏会らしい。それは僕もきいている。確か大宮のソニックシティ大ホールまで聞きにいったと記憶しているんだけれど、どうだったかなあ。パリ管はそれこそ1980年ごろにバレンボイムで来日したときから度々きいているんだけれども、プレートルのそれがあまりにも良くてびっくりしたことがある。氏はマリアカラスとの伝説的録音が有名でオペラ指揮者と認識されてんだよな。日本では。
僕は見てもいないけれど、2008年と10年のニューイヤーコンサートが話題になり、今回、最後にプレートルの名前が出て来て東京中の音楽ファンは驚がくしたみたい。ネットでも高嶺がつくプレミアムチケットになった。
パリ管との12年前の演奏会では指揮棒を細かく揺らしていたのを覚えているんだけれども、今宵はまるであのカールベームの最晩年の来日の時のようにに、指揮棒に無駄な動きは一切ない。手のひらで表情をつけたり、腕を高々と挙げ音楽の流れの極みを指示するといった。シューベルトの交響曲第2番は演奏会のために予習する為に始めてきちんと聞いたんだけれど、何てチャーミングな曲なんだろう。すっかり好きになってしまった。英雄交響曲は一生ものの演奏だった。それは、音楽の芯をがっちりつかんで揺らさないウィーンフィルの演奏だった。拡張高く過去から現在に演奏され、それが将来にも引き継がれる音楽であることを体得させる演奏だった。2010年11月10日 サントリーホール
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佐藤治彦 Haruhiko SATO
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男性
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演劇ユニット経済とH 主宰
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演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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