佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 文学座アトリエ60周年記念上演 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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『トロイアの女たち』
2010年9月7日(火)~ 20日(月)
作 ■ エウリピデス  訳 ■ 山形治江  演出 ■ 松本祐子
出演■ 倉野章子、藤堂陽子、山本道子、つかもと景子、塩田朋子、奥山美代子、 佐藤麻衣子、頼経明子、松岡依都美、吉野実紗/増岡裕子、木下三枝子 /坂口芳貞、石田圭祐、細貝光司、清水圭吾

『カラムとセフィーの物語』
2010年10月1日(金)~14日(木)
原作 ■ マロリー・ブラックマン 脚色 ■ ドミニク・クック
訳 ■ 中山夏織 演出 ■ 高瀬久男
出演■ 山本郁子、山崎美貴、鬼頭典子、添田園子、渋谷はるか、鈴木亜希子、下池沙知、千田美智子/大滝寛、押切英希、沢田冬樹、鈴木弘秋、林田一高、亀田佳明、上川路啓志、柳橋朋典、藤側宏大




「トロイアの女たち」
 観に行って良かった。ベニサンピットがなくなってしまって、このような設えの小空間を信濃町でみることができたのはとても嬉しいなあと思う。美術がとても美しかった。あと、照明。渋い色使いであるが細かく繊細、時に大胆。
 さてお芝居自体である。ギリシア古典を演じる時には、なぜか独特の台詞回しがある。何年か前に新国立劇場にギリシアから来日して確か「王女メディア」をやった時はそんな風には感じなかったし、外国ではギリシアもののお芝居を(オペラはあるけれど)見たことがないので良く分からないのだが、日本でやる時には、朗々と語り上げる独特の台詞回しがある。
 今回の公演で坂口芳貞(タルテュビオス)が圧倒的に面白いのは、それを一度捨てているからである。普通に演じたらどうなるだろうかというところか始まっている。それは、例えば、メネラオスの石田圭祐やアンドロマケの塩田朋子、ヘレネの松岡依都美、また後半のヘカベの倉野章子にもいえる。結果として鈴木忠志的な感じになるとしても、型から始まっていない、もしくは、そこに頼らないからである。ただし、コロスはそういうわけにはいかなかったように思えて仕方がない。
 古典劇の面白さはコロスの正否にかかっているといってもいいと思う。そこが面白いと芝居が断然湧いてくるのである。今回のコロスはせっかく年齢も体型も雰囲気も違う女性を集めた文学座の精鋭チームである。こんな贅沢なコロスが他でできるかというくらいである。山本道子、藤堂陽子、佐藤麻衣子とおなじみも少なくない。この8人の演技の方向性があまりにも一緒過ぎて面白みにギアが入らない。また、例のギリシア劇の型の中にいすぎるものだから、何か世界でも一番上手い演劇少女たちをみているような気までした。コロスはあくまでもハーモニーが面白い。旋律をみんなで歌うのではなく四部合唱、いやこんな8人なら8音が聞こえて来て、それがひとつのハーモニーを作るようなコロスであって欲しいと思うのだが如何でしょう。あと、唄が入ったときのテンションがそれまでとつながらなさ過ぎで変テコになる。そして今宵は台詞を多くの人が噛んでしまっていた。記念Tシャツ2000円がとても良質。喜んで購入。上演時間95分。2010年9月17日

『カラムとセフィーの物語』
文学座の圧倒的勝利宣言。2時間45分の上演時間をきいて、開演前にうんざりした人は少なくないのではないか?不勉強で作者も内容もほとんど知らないに近い状況で、ただただ、文学座がアトリエで上演するのが楽しみで出かけていったのだ。ほとんど素舞台に近い状況で、今回はビブラホン(木琴)ふたつを中心に生演奏。現代の問題が凝縮されたような物語はスピーディーである。現代の話であり普遍的。愛憎が生まれ均衡が崩れる。誤解を癒すものは大きな自己犠牲でしかなかったり。家族や社会の問題も含まれる。役者は技術と魅力にあふれ、高瀬久男の演出は余計なものを徹底的に削ぎ落としたドライなもの。うーーーん、唸ってしまう。きっと、そんなに多くの注目も集めず、今年のベスト10の芝居にも入らないだろうけれど、こんな素晴らしい芝居を劇団として上演できる文学座。その勝利宣言でもあるような舞台だ。老舗だけれど最前線、最高峰。すごい。すごいや。杉村春子さんを始めとする鬼籍に入られた方々がきっと微笑みと歯ぎしりをもって見つめているだろう。2010年10月12日
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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