自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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セミヨンビシュコフ指揮
ケルン放送交響楽団
田村響 ピアノ
ブラームス作曲 ハイドンの主題による変奏曲
モーツアルト作曲 ピアノ協奏曲第23番
ドヴォルザーク作曲 交響曲第8番
ビシュコフを最初にきいたのは1991年のパリ管弦楽団との来日演奏会で、「ファウストの劫罰」を聞いた時だった。巨大で華麗な音楽をどかーと操る腕に、なるほどカラヤンの影響を強く受けているなあと感じたものだ。ロシア系の指揮者である。
しばらく聞く機会がなく、2001年の5月にウィーンに出かけた時に、ウィーン国立歌劇場で「トリスタンとイゾルデ」を聞かせてもらった。この曲は今年のパリオペラ座の来日でもビシュコフの指揮できけた。山ほど演奏会に行っているので、他にも聞いているかもしれないが、すぐに思い出すのはこれくらい。全部巨大な作品ばかりなのだ。そして、それが素晴らしい。ワーグナーがとても良かったのを忘れない。
例えば、この1年の彼の活躍の場を見ると、ミュンヘンフィル、シカゴ交響楽団、ロイヤルオペラでの「ローエングリーン」、パリオペラ座での「トリスタン」。そして、このWDRケルン放送交響楽団が中心だ。そして、他のものと比べると明らかにこのオケは格が落ちる。今日も最初のブラームスなどをきいていると、この数ヶ月きいたオーケストラの名演と明らかに差があって、がっくりしてしまう。ブラームスなどは明らかに自分の集中力が切れてしまった。ケルン放送交響楽団の来日は今までも何回かあって、大した記憶がないのだ。正直ドイツの二流オケである。バンベルグやゲヴァントハウス、北ドイツ放送といったドイツの無骨な音をきかせてくれるドイツ節の特長もあまり感じさせてくれないし、ベルリンフィルのように国際的な洗練さもないどっちつかずのオケなのだ。
わざわざ来日演奏会を聞く価値がどれだけあるのかなあと思った次第。それでもビシュコフが聞きたくて出かけた。聞いていて思ったのだが、ビシュコフは指揮で団員を鼓舞するのだが、団員は結構冷めていて、反応が薄い。そして、何か守りの演奏ばかりしているように感じた。特にブラームス。解放された自由に流れる音に感じられないのだ。第一バイオリンなどはひ弱な音しか聞こえて来ない。
ブラームスよりは、アマチュアオケにも取り上げられることのあるドヴォルザークは、ずーっと良かった。管楽器はちょっと哀愁込め過ぎだと思うくらいに泣く音を出す人もいてちょっと驚いたし、ちょっと曲自体にどよんとする場所のある2楽章などは緊張感が薄れるのだが、全体的にはいい演奏だった。モーツアルトもオケとしての難しさはない。これもきちんと聞けた。そしえ、昔の日本人のようなステージングマナーの田村さんが、音楽でもそのまま無骨な演奏を聴かせてくれた。今の若いピアニストにとって技術的には何ら困難な場所のないモーツアルトだけに、音の一粒一粒が厳密に聞かれてしまうピアニスト泣かせの曲である。下手な情感を込めたり、テンポを動かさず、音楽の奥にある美しさをそのまま誇張せずに再現してくれればいいなと思っていた。やりたくなってしまうもののだ。色づけを。しかし、この若いピアニストはそういうところがなかった。ちょっと無骨すぎるぞと思うくらいの抑えた演奏で、大好きなバックハウスのモーツアルトのようだった。
田村さんはメンデルスゾーンのソロを、オケはブラームスの舞曲を2曲アンコールにもってきてくれた。めちゃ忙しいときに出かけて聞く価値があったのかと言われると、うーんないですねと言いたくなる演奏会。悪い演奏ではないが、わざわざ外国にまでやってきて披露する価値があるのかと言われれば、ない。特に東京には素晴らしいオケが山ほどあるのだから。
地元の人たちに、地元のホールで、主に定期演奏会の会員によって毎月聞いてもらう、そう、コーヒーとか、パンのように毎月毎月聞かれていればいいオケなのである。
ビシュコフは音楽家成功すごろくの中で上手く立ち回り、回り道せずに頂点に駆け上がっていきそうな人ではない。ちょうど、録音メディアがビジネスとして成立しなくなった時でカラヤン流のビジネスモデルが通用しなくなった時の人だということも関係しているのかなと思う。しかし、今日の指揮ぶりと結果をみていてやはり一流の指揮者だということも再認識した。そして、この二流オケを合格水準まで導いたのだからいい指導者でもあるのだろう。
さて、ビシュコフは2010年の2月に少なくとも6回の演奏会をNHK交響楽団と行う。日本のオケを振るのは初めてのことだろう。しかし、ケルン放送交響楽団よりは格段に技術的にも柔軟性にもとむNHK交響楽団だけに、その組み合わせがどのような結果をもたらすのかとても楽しみになった。
今回の来日で細かい演奏曲目なども最終的に決定されたであろう。楽しみだ。僕にとって、今日の演奏会は、NHK交響楽団との演奏を比較するにはいい体験だったかもしれない。
サントリーホール
2009年3月5日
ケルン放送交響楽団
田村響 ピアノ
ブラームス作曲 ハイドンの主題による変奏曲
モーツアルト作曲 ピアノ協奏曲第23番
ドヴォルザーク作曲 交響曲第8番
ビシュコフを最初にきいたのは1991年のパリ管弦楽団との来日演奏会で、「ファウストの劫罰」を聞いた時だった。巨大で華麗な音楽をどかーと操る腕に、なるほどカラヤンの影響を強く受けているなあと感じたものだ。ロシア系の指揮者である。
しばらく聞く機会がなく、2001年の5月にウィーンに出かけた時に、ウィーン国立歌劇場で「トリスタンとイゾルデ」を聞かせてもらった。この曲は今年のパリオペラ座の来日でもビシュコフの指揮できけた。山ほど演奏会に行っているので、他にも聞いているかもしれないが、すぐに思い出すのはこれくらい。全部巨大な作品ばかりなのだ。そして、それが素晴らしい。ワーグナーがとても良かったのを忘れない。
例えば、この1年の彼の活躍の場を見ると、ミュンヘンフィル、シカゴ交響楽団、ロイヤルオペラでの「ローエングリーン」、パリオペラ座での「トリスタン」。そして、このWDRケルン放送交響楽団が中心だ。そして、他のものと比べると明らかにこのオケは格が落ちる。今日も最初のブラームスなどをきいていると、この数ヶ月きいたオーケストラの名演と明らかに差があって、がっくりしてしまう。ブラームスなどは明らかに自分の集中力が切れてしまった。ケルン放送交響楽団の来日は今までも何回かあって、大した記憶がないのだ。正直ドイツの二流オケである。バンベルグやゲヴァントハウス、北ドイツ放送といったドイツの無骨な音をきかせてくれるドイツ節の特長もあまり感じさせてくれないし、ベルリンフィルのように国際的な洗練さもないどっちつかずのオケなのだ。
わざわざ来日演奏会を聞く価値がどれだけあるのかなあと思った次第。それでもビシュコフが聞きたくて出かけた。聞いていて思ったのだが、ビシュコフは指揮で団員を鼓舞するのだが、団員は結構冷めていて、反応が薄い。そして、何か守りの演奏ばかりしているように感じた。特にブラームス。解放された自由に流れる音に感じられないのだ。第一バイオリンなどはひ弱な音しか聞こえて来ない。
ブラームスよりは、アマチュアオケにも取り上げられることのあるドヴォルザークは、ずーっと良かった。管楽器はちょっと哀愁込め過ぎだと思うくらいに泣く音を出す人もいてちょっと驚いたし、ちょっと曲自体にどよんとする場所のある2楽章などは緊張感が薄れるのだが、全体的にはいい演奏だった。モーツアルトもオケとしての難しさはない。これもきちんと聞けた。そしえ、昔の日本人のようなステージングマナーの田村さんが、音楽でもそのまま無骨な演奏を聴かせてくれた。今の若いピアニストにとって技術的には何ら困難な場所のないモーツアルトだけに、音の一粒一粒が厳密に聞かれてしまうピアニスト泣かせの曲である。下手な情感を込めたり、テンポを動かさず、音楽の奥にある美しさをそのまま誇張せずに再現してくれればいいなと思っていた。やりたくなってしまうもののだ。色づけを。しかし、この若いピアニストはそういうところがなかった。ちょっと無骨すぎるぞと思うくらいの抑えた演奏で、大好きなバックハウスのモーツアルトのようだった。
田村さんはメンデルスゾーンのソロを、オケはブラームスの舞曲を2曲アンコールにもってきてくれた。めちゃ忙しいときに出かけて聞く価値があったのかと言われると、うーんないですねと言いたくなる演奏会。悪い演奏ではないが、わざわざ外国にまでやってきて披露する価値があるのかと言われれば、ない。特に東京には素晴らしいオケが山ほどあるのだから。
地元の人たちに、地元のホールで、主に定期演奏会の会員によって毎月聞いてもらう、そう、コーヒーとか、パンのように毎月毎月聞かれていればいいオケなのである。
ビシュコフは音楽家成功すごろくの中で上手く立ち回り、回り道せずに頂点に駆け上がっていきそうな人ではない。ちょうど、録音メディアがビジネスとして成立しなくなった時でカラヤン流のビジネスモデルが通用しなくなった時の人だということも関係しているのかなと思う。しかし、今日の指揮ぶりと結果をみていてやはり一流の指揮者だということも再認識した。そして、この二流オケを合格水準まで導いたのだからいい指導者でもあるのだろう。
さて、ビシュコフは2010年の2月に少なくとも6回の演奏会をNHK交響楽団と行う。日本のオケを振るのは初めてのことだろう。しかし、ケルン放送交響楽団よりは格段に技術的にも柔軟性にもとむNHK交響楽団だけに、その組み合わせがどのような結果をもたらすのかとても楽しみになった。
今回の来日で細かい演奏曲目なども最終的に決定されたであろう。楽しみだ。僕にとって、今日の演奏会は、NHK交響楽団との演奏を比較するにはいい体験だったかもしれない。
サントリーホール
2009年3月5日
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
HP:
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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