佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作 レイクーニー
演出 加藤健一
出演 加藤健一 村田雄浩 石坂史朗 枝元萌 ほか

久々の加藤健一事務所。石坂さんも出ているので観に行かなくては!!!


 台本は極めてオーソドックスに書かれている。主人公が大ボラを吹いていろんな人を巻き込んで行く。そして、それが何とか収束する。自分の未来の出世がかかった大事なスピーチが1時間と少しあとにある。自分の過去のラブアフェアの結実である息子の存在をつきつけられる。いろんな人に気をつかい、その場だけをやり過ごそうとウソをつき、それがまたウソをつく理由になっていく。
 例えば、三谷幸喜の「アパッチ砦の攻防」とまったく同じ構造である。台本のお手本のような作品であるが、これが演じるのが極めて難しいのだ。間合い、テンポ、口跡、視線のひとつとっても難しい。それだけ美味い俳優が必要だということだ。加藤、村田のコンビは鉄板の強み。余裕をもって演じているからどんどん面白くなる。
 僕は本当にみながら背筋が寒くなるような気がした。何か書けそうで書けない。高き壁を感じてしまうのだ。シュチュエーションコメディの鉄板作品。20分の休憩をいれて2時間10分。お客さん、大喜び。石坂さんは肉体も駆使しべらぼうな上手さ。枝元さんは本当に憎めない可愛さがある。加藤健一の息子さんは、ちょっと一本調子だが、若者らしい疾走感があって良かった。



2009年6月6日
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監督/脚本 :Joel Hopkins
出演/Dustin Hoffman/Emma Thompson/Eileen Atkins/Richard Schiff
2009年アメリカ映画


 ダスティンホフマンとエマトンプソンの二大俳優による熟年恋愛物語。出会いから幸せになるまで非常に丁寧に作られている。これはもちろん二人の俳優の力量。ロンドンの美しい風景も背景に楽しめる作品となっている。

  



2009年5月20日
ポリーニポリーニ


 現代最高のピアニストの来日。もう何回聞いたんだろう。日本で、ロンドンで、ニューヨークで。
10回じゃきかないし、もう20年以上聞いている。そのピアノ道のスゴさ。年齢を重ねて来たので一回一回が貴重です。

 曲目 シューマン/ピアノソナタ第3番  幻想曲ハ長調 作品17
    シェーンベルグ/6つのピアノ小品 作品19
    ウェーベルン/ピアノのための変奏曲 作品27
    ドビッシー/6つの練習曲(練習曲集第二集)

 アンコール 
    ドビュッシー: 前奏曲集第1巻から 沈める寺
    ドビュッシー: 前奏曲集第1巻から 西風の見たもの
    リスト: 超絶技巧練習曲集から 第10番ヘ短調


 前半にシューマンをおき、後半には、シェーンベルグ、ウェーベルンなどの現代曲をはさみ、最後にドビッシーで締めるという曲目。アンコールも沈める寺やリストの超絶戯曲などを配し素晴らしい演奏会だった。
 この人のスゴいところは、一番魅力的に聞こえるのがシェーンベルグやウェーベルンになってしまうところだ。もちろんシューマンやドビッシーもいいのだが、現代の12音階のともすれば難解な曲が美しい光沢に輝く現代の名品。そう、美術は現代の不可思議な作品も受け入れる現代人なのに、何で音楽はだめなのだろうと思う。そして、ポリーニはその本質を見事にとらえ、我々に曲の魅力をあますところなく伝えてくれるのだ。
 シューマンについて思ったこと。ポリーニといえば、すごく音の粒が際立ち、素晴らしい音を奏でるイメージなのだが、そういったものがすっかり影を潜め、音楽の本質に迷わず向かって行く、音の面白さや魅力だけでなくフレーズや音楽の構築の面白さ、魅力に迷わず向かって行く造形の深さを感じさせた。もちろん、そうはいっても音自体の魅力も兼ね備えているのだからスゴい。
 空前絶後のピアニストの次の来日をまたまたまたまた楽しみにするばかりである。


 2009年5月19日
 サントリーホール


伊東四朗一座 熱海五郎一座合同公演
作 妹尾匡夫
演出 伊東四朗 三宅裕司

出演 伊東四朗 三宅裕司 ラサール石井 小宮孝泰 小倉久寛 春風亭昇太 中村メイコ 小林幸子 渡辺正行 ほか 



 2回見てしまった。とても面白くバカバカしくまとまっていて、舞台の楽しさ満載のステージだった。コント赤信号が再集結しコントを披露したり、中村メイコさんが田舎のバスを唄ったり、伊東四朗さんが随所に往年のギャグを織り交ぜ、今日のお客さんを喜ばせたり。三宅さんと小倉さんのコントも面白く。ああ、ああいいなあと思ったのでした。去年よりもずーっと芝居色が強く、ギャグのために流れが止まることが少なくて大好感。

青山劇場
2009年5月17日/29日
ブロードウェイミュージカル
レスリブリュッカス 作詞台本
フランクワイルフォホーン 作曲
山田和也演出
出演 鹿賀丈史 朝海ひかる 光枝明彦 鈴木綜馬 浦井健治 岡田静 ほか




 12600円のS席で見たからか、今日も相当不満です。先ずは自分が悪いのですが、レスリーブリュッカスの名前をクレジットに見つけたので彼の音楽かと思いきや、ブリュッカスは作詞と台本。音楽は違うんですね。鹿賀丈史はあくまでも大劇場用の演技なのに、そこに魂も載せて見事なんですが、声がかすれる、音程があやふや。大仰な息継ぎ。きっと役作りでそうされていたのだ。そうされているんだ。そう念じながら見てました。
 レスリーは(ジギル&ハイドも作詞だけなんですね、作曲でも、クリスマスキャロル、ドリトル先生不思議な旅、チップス先生さようならなどなど実績ありの大作曲家。60年代は席巻しました。正直言って、アンドリューロイドウエッバーが出てくるまではイギリスNo.ワンだった人で、アンドリューロイドウエッバーで一番割を食った人です)岡田静ソロ部分は全くなかったです。鹿賀丈史などと絡むシーンなどは結構あるのですが、何しろ歌を聴かせてくれないと、ちょっと残念。役柄はロクサーヌの侍女みたいな役でした。良かったのは光枝明彦、鈴木綜馬、金澤博も良かったですね。
 
 2009年5月15日
 日生劇場

ブロードウェイミュージカル




 いったいこんな悪趣味な芝居を作ったのは誰なんだろうと、本チラシを見返してみたのだけれど、演出も振付けも出演者の名前も載っていない。トニー賞4部門ノミネートというけれど、ね。出演者の歌や踊りの腕は確かだった。しかしね、たった9人でやるミニミュージカルをあんなに大仰にやらなくても良いんじゃね。それに話がホントにふざけている。台本も酷いし美術もなってない。説明台詞を言って、好きですって言って、唄って。ヘンテコな神様が出て来てワイワイやって、俺も好きだって行って、なぜならって説明台詞があって、歌と踊りがあって、山ほどミラーボールが降りてくるのにキラキラしないで。80年代西海岸のゲイ文化ってこんなんだったんですよっていう感じの悪趣味ミュージカル。いやはや、ホントに。何だこれ!


2009年5月14日
赤坂ACTシアター

 作演出/松居大悟
 出演/目次立樹 青木直也 星野秀介 堀善雄 加賀田浩二 ほか



 久々にレビューしたい若手劇団に出会った。何の前知識もなくチラシを見て面白そうだなと思い、ネットで予約して入場券を買って観る。そしたら、面白かった。
 入場した時に美術が一時期のポツドールのようで、ああいうのだったら嫌だなあと思ったらちゃんとウエルメイドなコメディになっていて、台詞もよく、センスもあり、役者陣も総じて頑張っていて何しろカンパニーが楽しそうなのである。開始直前のアナウンスに上演時間1時間35分ときいて、こいつらできるんだと思ったのだ。お客さんもきちんと笑っているし、役者もなかなかやるのである。しかし、残念なのが、1時間35分で納められなかったこと。ほぼ2時間近い上演時間でいったい何が起こったのだろうと思ったくらい。女子が再び訪ねてくる。ノック。これでおしまいにすれば良かったのになあと。もう、1時間30分以降はその前のシーンでやったような構造で同じような笑いを繰り替えしたり、長かったり。これが惜しい。作演出をひとりでやると、自制心がなくなるのである。若いってそういうことだから良いのかもしれないけれど。

今日出ているような役者がオーディションで来てくれるようになったら良いなあと思った。
 あと、2階の部屋のはずなのに、住所の部屋番号が101ってのはどういうことなのかと思った。おかしくネ?

 OFFOFFシアター
 2009年5月10日
作演出 ケラリーノサンドロヴィッチ
出演 みのすけ 峯村リエ 大倉孝二 水野美紀 長田奈麻 藤田秀世 ほか




 ケラ作品を解くキーワードにあるものは、例えば、バンド活動だったり、別役だったり、小津だったり、ウディアレンだったり、1980年代だったりするわけである。これはケラの原点だ。そして、この作品も別役実への深い敬意が現れているような気がする。さらに、最近急速にそこに加わりつつあるものがロシア文学。ドストエフスキーとか、ゴーリキーとか。それは、人間の根源に肉迫する思想。本音の思想、ひねりのないそれなのである。
 ロシアの長い冬と生命力の乏しい夏の中にある無限に続くような滞留した時間の中から編み出された思想なのである。根源的なものと真正面にぶつかる。ずれない。対峙するのである。ずれとか笑いとかのケラ作品に、真正面に取り組むキーワードが加わったのだ。
 野田秀樹作品が社会に対して開かれた明るさを持つのと対比すると、ケラの軽さの中に重量感のある重石が加わったことはとても面白い。社会で起きることもきちんと人間の根源に照らし合わせて思考していくわけなのだ。
 役者は相変わらず面白く、むかしは三枚目にしか見えなかった大倉孝二がJ列からだと二枚目に見えてしまって不思議だった。水野美紀がメチャクチャ芝居が巧くてキレイだった。でも、峯村リエの魅力には叶わない。この堂々たる佇まい。本当に素晴らしい。チェホフを彼女で見たいですな。正統派のクラシックな演出で。藤田さんの狂言廻し役も何かロシアっぽく感じさせる一因だったのかもしれない。しかし3時間はやはり長い。ロシア文学のようだ。
 あと、6年くらい前にオッホのワークショップにいた猪股君が某劇団を経て、何とナイロン100℃の研究生になっていた。そして、起用。それも、上手い!大阪から出て来て良かったねといいたい。もちろんケラ流の乾いた笑いもずれも健在だった。

本多劇場
2009年5月4日
一、恋湊博多諷(こいみなとはかたひとふし)毛剃(けぞり)
 団十郎 菊之助 藤十郎 秀太郎 ほか
二、夕立
 菊五郎 時蔵
三、神田ばやし
 三津五郎 海老蔵 梅枝 
四、鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)おしどり
 海老蔵 菊之助 松緑

 都民劇場の歌舞伎サークルに入った。愛着のある歌舞伎座ともお別れなのでせいぜい多くのものを見ておきたいと思ったからだ。これなら一等席も1万円ちょっとで見られるわけで。今日は前から9列目。ほぼ真ん中の席で大満足。例年5月は団菊祭のはずなのに、そういう名前は外れたのかな?それでも、団十郎や菊五郎など大御所も顔を揃えた。実は今回拝見する四演目はすべて初見。歌舞伎座でこんなことは珍しいのでいやはや面白かった。おしどりだけは他でも見たこと会ったかも。
 団十郎が大病の後で、何かいろんなものが削げ落とされて良くなった感じがするのは僕だけだろうか。技術だけでなく一役一役大切に演じていることが良く分かるし、良い意味で力が抜けた。ご贔屓の亀蔵が毛剃と神田ばやしに出演しているのだが、何かどうでもいい役柄で勿体ない。
 夕立はとても美しい20分あまりの清元で菊五郎が良い意味で老けていい感じだった。神田ばやしは、目下若手男前歌舞伎役者ナンバーワンの海老蔵が馬鹿者を演じているのが面白い。三津五郎も老け役がとても美味く、最初はこれが三津五郎かと思ったくらい。梅枝って人の女形。最近ちょこちょこ見るのだが、市井の街娘をとても巧く演じるので感心してしまう。おしどりは平成の三の助勢揃いで豪華。もう海老蔵の二枚目ぶりがスゴくてこりゃファンが増えるのも当たり前だって感じ。菊之助が何か一段と良いですね。何かあったのかな?松緑さんは、ここでは相撲力士の役柄なんだけど、こういうのをやらせたら、現役トップのひとりになったなあ。口跡もとても良くなったと思うのだけれどどうなんだろ。
 歌舞伎はいつも大満足させてくれるので、とても嬉しいですな。

2009年5月3日
歌舞伎座

ファビオルイジ指揮
ドレスデン国立歌劇場来日演奏会
リヒャルトシュトラウス作曲「ツアラトゥストラはかく語りき」「アルプス交響曲」

ドレスデン

 ルイジの指揮での演奏を初めて聞いたのはもう10年以上前だろうか。スイスロマン度管弦楽団の来日演奏会の横浜公演で、テレビの仕事も兼ねていた。当時から未来の巨匠と言われていたが、その時の印象はあまりにも薄かった。それがオペラハウスとの来日で印象が変わったのだ。ドレスデン国立歌劇場は、近年ではジョゼッペシノーポリのワーグナーやリヒャルトシュトラウスの色彩あふれる名演で記憶があるし、それ以前の来日では、社会主義時代も含めてブロムシュテットなど手堅い指揮者がシェフを勤めて来た。
 それと比較して、ただの感想でしかないのだが、往年のオーケストラの黄金期が再び興隆しようとしている印象を受けた。ファビオルイジは、何か強い個性を使って作品に新しい視点を聴衆に提示しようというのではなく、偉大な作品をそこにただ存在させることに全力を傾けているように思える。
 そして、それにオーケストラが応えていた。弦の分厚く美しいハーモニー。管楽器は吠えるし唄う。ファビオルイジのそういった音楽をきいていて、僕が過去の巨匠と結びつけたのはカールベームだった。淡々と美しい音楽を奏でる姿はまさに最高の技工士になる感じがしたからだ。


サントリーホール
2009年5月1日
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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