自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ニューヨークでは、もう25年以上、通算100回は軽く見たでしょうし、東京の来日公演でも20回以上は見ているメトロポリタンオペラが来日します。
豪華絢爛。やり過ぎ。派手。まあ、S席64000円ととてつもないチケット値段となりますが、これはね、もう価格のこと忘れてみるしかないのです。舞台が大好きなんで。
今回来日の作品で、ニューヨークで見た事ないのはルチアくらいなのですが、それでもまたまた見るのです。悪いか!!!
「ボエーム」
歌う歌手は違いますが、ニューヨークでももう5回も見たプッチーニの「ラ・ボエーム」。今回も見ます!!! 歌手はネトレプコ。ちゃんと来日するかな??
指揮:ジェイムズ・レヴァイン ⇒ ファビオ・ルイジ
ミミ: アンナ・ネトレプコ ⇒ バルバラ・フリットリへ変更
ムゼッタ:スザンナ・フィリップス
ロドルフォ: ピョートル・ベチャワ(6/4, 8, 11)
ジョセフ・カレーヤ(6/17,19)⇒マルセロ・アルバレスへ変更
マルチェッロ: マリウシュ・クヴィエチェン
ショナール: エドワード・パークス
コッリーネ: ジョン・レリエ
ベノワ/アルチンドロ: ポール・プリシュカ
「圧倒的な21世紀のメトロポリタンオペラの底力」
震災の影響から空席だらけの公演であった。そして、ネトレプコは来日せず、フリットリのミミとなった。僕は聞けなかったのだが昨年7月にトリノ歌劇場来日公演でミミを歌ったときと比較してどうだったのだろう。
今回、驚いたのはオケである。メトロポリタンオペラのオケは昔からやる気のあるなしで相当変わるのだが、今回はやる気ありありバージョンで物凄かった。1970年代のアメリカの超一級オケ、それもフィラディルフィアとか、クリーブランドとかを思わせる物凄い合奏力。ピッチは完全にあってるし、なんて言うんだろう。美しい原色がどかんどかんと飛んでくる感じ。迷いのない音というのかな。くっきりとした音。最初はそれが目についた。耳?についたりしたけれど、途中から、そうだ。メトは、誰もが避けたがる王道を行くオペラハウスなのだと思い出した。
ボエームは、ニューヨークのメトでカルロスクライバー、フレーニ、パバロッティという究極の組み合わせで何回か聞いているのだけれども、この晩のそれは、決して遜色のないできでした。フリットリは1幕は声が少し安定しないところがあったけれども、3幕からは完璧。何だろ、声にもっと女らしさがあれば適役なのにと思いました。というのも、ミミはお針子という設定ですが、やっぱり匂いたつエロスが欲しいのです。原作には忠実ですけれど、そこが寂しい。その点、ネトレプコはとにかくエロな声と風貌ですからね。
ムゼッタも同様で、あれじゃお馬鹿さん。せっかくネトレプコじゃないのだから、もっと可愛い女を演じればいいのにと思いましたなあ。ちょっと芝居がでかすぎるというか。
こんなこと言ってますけれど、皆さん声がきちんと出ていて気持ちいい。ロドルフォのベチャワ、マルチェロのクヴィエチェンなど初めての人ばかりですが、大きな声で立派。演技も型通りですが十分です。声もくっきり、芝居もくっきり。
このプロダクションをニューヨークで最後に観たのはもう20年ほど前ですので当たり前なのでしょうが、衣装が新調されていて奇麗でした。20年前はすすけた衣装ばかりで残念だなあと思ったんです。オケと同じにこちらもくっきり原色系です。
合唱も物凄く声が出ていて、驚いた。正直申し上げると、これほどまでの水準の公演はニューヨークでもなかなかないと申し上げていい。行ってよかったと思える公演でした。(6月8日鑑賞)
今宵はロドルフォがベチャワからマルセロアルバレスに変わったことが違うところなのだが、ベチャワがとてもすごい声を持っていることが分かった。8日は3階の最前列で、今回は2階のサイドの前方で観たのだが、ベチャワは強い声もきちんと自分のコントロール下にあるのだが、アルバレスはもう大変そうで、聞いている方が楽しめない。相方が弱いとフリットリも時にアレレという感じもありまして。まあ、おととい歌ったばかりだし、ツアーも後半でお疲れだったのかもしれません。もしくは中一日でまた歌わなくてはならないので少しコントロールされていたのかも。8日のような絶唱ではありませんでした。ムゼッタのスザンナフィリップスは声の出し方が他の方と比べると粗があるというか、出るところとそうでないところがありすぎで、この役をやるのに如何かなと思いました。役への取り組みもおてんば娘みたいな元気良さだけで勝負するという、何か一色しかない役作りで他の人と比べると見劣りしたという印象です。
音楽的にはそんな感じでしたが、前方で観たので、2幕の人の動かし方とかもよく観察できたし、熊のぬいぐるみなんかも出ていたんだと初めて認識できたり、3幕の照明が当たってない人の動きが全体の効果を高めていることが分かったりとか。
8日が良かったので、評判をよんで、もう少しはお客さんが入るかなと思ったのですが、3階などは全滅の勢いで本当にお客さんがいないです。こんなにスカスカのNHKホールの公演を見るのは初めてというくらいでした。ジャパンアーツの経営が心配です。
NHKホール 2011年6月8日/17日
『ドン・カルロ』
指揮:ジェイムズ・レヴァイン ⇒ ファビオ・ルイジへ変更
エリザベッタ: バルバラ・フリットリ ⇒ マリーナ・ポプラフスカヤへ変更
ドン・カルロ: ヨナス・カウフマン ⇒ ヨンフン・リーへ変更
ロドリーゴ: ディミトリ・ホロストフスキー
エボリ公女: オルガ・ボロディナ ⇒ エカテリーナ・グバノヴァへ変更
フィリッポ2世: ルネ・パーペ
宗教裁判長: ステファン・コーツァン
「日本の上演史に残る名舞台」
ドンカルロは強靭な歌手を6人も必要とする作品だけになかなか上演されない。僕自身の鑑賞経験で記憶に残っているのは、サントリーのホールオペラでの公演。そして、2001年のビスコンティ演出版の新国立劇場の公演。2009年にはミラノスカラ座の来日公演。そして、今回と同じ演出版を先年ニューヨークで観ただけである。今回のキャストは本当に期待していた。しかし、結局は、指揮のレヴァインだけでなく、ボロディナ、カウフマンを抜かれ、最後にはフリットリまでいなくなってしまうという何とも残念なキャストになってしまった、、、はずであった。
ところが、実際にふたを開けてみると、オーケストラはニューヨークでもなかなか聞かせない締まった素晴らしい音を聞かせるし、ヨンフンリーは想像もしていなかった素晴らしい歌唱と、2階のS席で観ていたのだが容姿もぴったりで驚いた。むしろ、ホロストフスキーが霞んで見えるくらいに素晴らしい声なのである。高音から低い音まで美しく出て、フレージングなども勝手な解釈は加えていない。演技にちょっと問題点はあったものの、この公演はヨンフンリーの日本デビュー公演として長く語られるだろう。そして、ルイジの指揮の素晴らしいこと。時代はどんどん変わって行くのだなと痛感した。エリザベッタやエボリ公女は出だしこそ、フルスロットルではなかったがすぐに全開モードになりこれも素晴らしい。何だボロディナがいなくてもいいんだ!と思った。
代役ばかりで残念だったが、期待を裏切らないメトロポリタンオペラの底力を感じた。そして、80年代からあるデクスターの美しい名舞台はきっとこの日本公演でお払い箱である。レーザーディスクで、20代の僕は何か長いよなあと思いつつドミンゴやフレーニの声を聞いたのを思い出す。一生忘れられない舞台となった。(6月10日)
初日はゲルブ総裁が、開幕前に役は変わったけれども素晴らしい歌手を連れてきたからとヨンフンリーなどの名前をあげながら言い訳をしたのだが、今宵は簡単に済ませた。今宵もヨンフンリーは良かった。まあ、芝居はダメだし、10日に聞いた時は本当に驚いたけれど、今日もうーーーんいいなあと思ったくらい。今回のメトのツアーで思いでに残るのはヨンフンリーの日本デビューでしょう。昨年のNHK交響楽団の演奏会形式による「アイーダ」の時もラダメスを韓国人のサンドロ・パークが歌ったけれども、これからそういう時代になるのかなと思わせるものだった。日本人歌手も新国立劇場で聞く限り素晴らしい人が増えてきたし、藤村実穂子さんのような人もいるのだから頑張れアジア人という感じかな。しかし、今宵は女性陣がすごかった。初日よりもエリザベッタのマリーナ・ポプラフスカヤとエボリ公女のエカテリーナ・グバノヴァが好調で全体としては10日よりも良かった。今宵は1階のセンター後方という音も見栄えも最高の最高の席で聞けたのも良かったのかな(15日)
NHKホール 2011年6月10日/15日
『ランメルモールのルチア』
指揮: ジャナンドレア・ノセダ
ルチア: ディアナ・ダムラウ
エドガルド: ピョートル・ベチャワ(6/16, 19)
エンリーコ: ジェリコ・ルチッチ
ライモンド: イルダール・アブドラザコフ
ルチアの記憶はほとんどない。僕は苦手なオペラだったのだ。ニューヨークでは確か、ジョンザザーランドとかで聞いてるはずなのだが、あまり感激した記憶がない。藤原歌劇団で という素晴らしい歌手で上演したのもダメ。フィレンツェ歌劇場の来日公演でも聞いているのだが、イマイチ。でも今回は良かったな。演出も古典と象徴主義のミックスみたいな感じで。1幕はスコットランド荒れ地のイメージの残る分かりやすい美しい舞台で、2幕も屋敷内を写実的にしたのに、3幕をスクリーンに月を写し、でかい半螺旋階段だけにしたのも正解。歌手も素晴らしいし、オケも良くなっていた。今回、本当に楽しめた。ダムラウの絶唱すごかった。
東京文化会館 2011年6月16日
例えば、モーツアルトの「魔笛」もこんなポップになるのです。演出は、舞台のライオンキングの演出もした さん!向こうで期待しないでみて面白かった。
続いて有名なビゼーの「カルメン」のハバネラ。これも、メトロポリタンオペラで見ました。
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プロフィール
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佐藤治彦 Haruhiko SATO
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性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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