佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 東京バレエ団「白鳥の湖」 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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オデット/オディール:小出領子 ジークフリート王子:後藤晴雄
王妃:松浦真理絵 悪魔ロットバルト:柄本武尊 道化:小笠原亮
指揮:井田勝大 演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


 ロベルトボッレをメインに今回の公演を組み、中日に後藤晴雄と小出領子をメインにしたプログラムを組んだが、ボッレは原発問題で降りてしまう。となると、公演自体のメインはこの中日になってしまった。小出さんのオディール/オデットが今日が初役らしく注目されたのだ。ネットの情報によると実生活でも夫婦らしくそりゃ話題になるよなという感じ。僕が東京バレエ団を観たのは1986年4月の「ザ・カブキ」の初演。東京文化会館に外国人がものすごく多く来てるのに驚いた物だ。ベジャールの全幕物の初演だったので注目されたのだろう。それ以来、東京バレエ団といえば、ベジャール中心にみてきた。僕のイメージはアジアのベジャールバレエ団。
 それが昨年、いわゆるグランドバレエのジャンルに入る「オネーギン」を観た。作品が珍しかった。バレエは世界的に上演される作品は限られているので、今回のがしたら次はいつ観られるのだろうとも思ったわけ。チャイコフスキーの3大バレエ以外の作品ということでも興味があった。これが思いのほか良かった。そして、考えてみたら東京バレエ団は古典も上演しているのに、これはアンバランスだと思って見に行った訳です。
 「白鳥の湖」。最初に観たのは大韓航空機事件があったばかりの1983年の9月。来日中のボリショイバレエ団で初めて見た。まだソビエト時代。グリゴローヴィッチという振付家の下での上演だった。(ちなみに初めてバレエを観たのは高校2年くらいの時で、キエフバレエ。くるみ割り)。いわゆる白いチュチュを着たロシア美女が大挙して黙って躍るわけです。その美しさとエロさに目を奪われたわけです。それ以外に「白鳥の湖」を観たのは限られています。ロイヤルバレエ団の来日公演でシルヴィギエムがオデットを踊ったものを家族で見に行ったし、パリに行った時にガルニエでパリオペラ座のそれを観た。主なものはその3回。あと何回か観ているけれど。それだけ。で、今宵の東京バレエ団。
 思っていたよりも素晴らしかった。東京バレエ団美女が増えたなあという感じ。こんなフェミニンなバレエをこの団体で観た事がないから凄く新鮮だった。第一幕のコールドバレエ団の水準の高さに驚いた。別の公演ではオデットとジークフリートを踊るようなダンサーがコールドバレエを踊っていたりする。高橋竜太とか物凄い技術を持った人が、公演全体を通してコールドバレエしかやってなかったりする。いやあ、その水準にみんな併せようと必死になるわけだ。その上、東京バレエ団は世界中に公演旅行に行っているし、世界的なダンサーと共演する事が日常茶飯事だから、どんどん水準が上がるんだろうね。
 もう重箱の隅をつつくようなことしか見つからない。3幕を中心として良かった。
 2幕で有名な四話の白鳥の踊りなんだけど、今まで観た物ではもっとダイナミックな踊りなんです。頭を下げたり、あげたり、横を向いたり。何かね、ほとんど動かない。それが優雅さとか繊細な表現に見えるのかというとちょっと逃げているような感じがした。その点、そのすぐ後で踊る矢島まいなどが入った三羽の白鳥たちはダイナミズムがあった、小出領子はオディールとオデットの演じ分けが素晴らしく、表情も豊か。もっと身体が柔軟だったらなあとか、冒頭は回転の時にちょっと軸がずれている感じがしたけれども、まあ、素人なんで適当です。小柄ながら素晴らしかった。後藤のジークフリート王子だけれども、まあ世界中の他のジークフリートと同じように、フェミニンな王子なのである。もっと現代的な男っぽいジークフリートを作ってもいいのになと思ってしまう。何か女々しいんです。仕草とか。それがバレエだと言われればそうなんだろうけど。ディズニー映画の「シンデレラ」とか「白雪姫」に出てくる王子さまなんだよね。でもオディール(ブラックスワン)に浮気するわけじゃないですか。何かもっとね、違う人間像を作り出してもいいのになと思ってしまう。
 僕が今宵感心したのは、道化を踊った小笠原亮です。背丈は小さいし、ノーブル感も全くない人なので演じられる役柄は限られているでしょうが、ものすごい技術力と演技力でした。冒頭の着地でちょこっと決まらなかったけれども、あとはもう凄い。1幕も良かったけれども、3幕のナポリでの小笠原の凄さ。止めと動きがピシピシ音が出るように決まり、その鋭さがお見事。他の日には道化を演じる松下裕次のチャルダッシュも良かった。視線まできちんと計算され尽くされていた。スペインでは再び矢島まいが踊り観ていてウキウキする。そして木村和夫と柄本弾が踊ったが、今日は木村の真摯で真面目な踊りが凄かった。柄本さん、ちょっと背が低いし顔がでかいなあと思った。まあこれからスターになる人であることは間違いないけれど。二階堂由衣は素晴らしかったです。
 まあ、いろいろと言いましたが世界水準の踊りです。でもね、ちょっと美術と衣装は頂けなかった。最初の紗幕の絵の酷いこと。書き割り?の下手な事。ロイヤルバレエ団とか素晴らしいです。白鳥はこれからも何回も上演するんだろうからもう少し良い物をと思ってしまう。3幕のシャンデリアとか目に入るとがっかりしてしまう。
 それから衣装。女性のものはまだしも男の衣装の色合いの悪いこと、デザインの陳腐なこと。道化の赤なんか、ダンサーに失礼だと思うくらい安っぽい。
 最後に強いて問題点を言えば、王妃役の松浦さんでしょうか。若すぎる。やっぱりもっと歳をとった、現役時代には大スターだったと風格のある人に演じてもらいたいものです。王妃の優雅さとか演じるんじゃダメなんだと思ったです。湧き出てくる物じゃないと。東京シティフィルは大健闘。
初役を成功させた小出領子。

【第1幕】
家庭教師: 佐藤瑶
パ・ド・トロワ:乾友子、吉川留衣、松下裕次
ワルツ(ソリスト):西村真由美、高木綾、田中結子、加茂雅子、小川ふみ、二階堂由依

【第2幕/第4幕】
四羽の白鳥:高村順子、村上美香、吉川留衣、河合眞里
三羽の白鳥:西村真由美、乾友子、矢島まい

【第3幕】 司会者:宮崎大樹
チャルダッシュ (第1ソリスト):西村真由美-松下裕次
(第2ソリスト):村上美香、岸本夏未、氷室友、岡崎隼也
ナポリ(ソリスト): 河合眞里-小笠原亮
マズルカ(ソリスト): 奈良春夏、田中結子、宮本祐宜、長瀬直義
花嫁候補たち:乾友子、佐伯知香、阪井麻美、渡辺理恵、川島麻実子、大塚怜衣
スペイン:高木綾、矢島まい-木村和夫、柄本弾

2011年6月18日 ゆうぽうと簡易保険ホール
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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