自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
演出/出演 夏木マリ
振付 井手茂太 ほか
チケット代9000円。1時間20分。今まで見なくちゃと思っていたのだけれど初めて見る機会をもらった。ありがたい。会場の雰囲気がいつもの劇場と違う。それぞれの公演に集まる人々はいつも違う。今日は何だろ。でも、明らかに業界の人、ファッション系の人、ダンスの人、モデル系の人、仕事関係の人、ゲイの人、レズ系の人、ドラッグクイーンなどなど、通常の劇場ではあまりいない人たちがいて、それを見るのも面白かった。何しろ会場に入ったら客電が真っ赤。ここは怪しげな飲み屋か!って感じの雰囲気。
そして、感想をひと言でいうと、カールラガーフェルド!悪食、悪趣味の魅力って奴でした。8人の女性パフォーマーが夏木さん以外に出ているのであります。しかし、女性的なものをすごく剥ぎ取られている人もいて、激しい化粧もあって何か良く分からない。そこに夏木さんがたびたび出てくるのでありますが、マクベス夫人の狂気のようであり、近代能楽集の卒塔婆小町に出てくる老女のようであったり、ランメルモールのルチアの狂乱の場のようであったりで。もう、見ている僕に女性の魅力をみせてくれない。裏の部分とかそういうのばっかって感じで。
しかし、これが夏木マリさんの印象であり、それを具現化したものであるのだろう。それは透徹されていた。それがカールラガーフェルドの洋服を初めて見たときの印象と同じだった。こんな変態じみた服誰が切るんだ。カールラガーフェルドの姿を見て、何て悪趣味を透徹しているんだ!でも、それがこの人の趣味なんだよな。それとおんなじ印象。ここまでやるか!って感じの。
2009年4月4日
世田谷パブリックシアター
振付 井手茂太 ほか
チケット代9000円。1時間20分。今まで見なくちゃと思っていたのだけれど初めて見る機会をもらった。ありがたい。会場の雰囲気がいつもの劇場と違う。それぞれの公演に集まる人々はいつも違う。今日は何だろ。でも、明らかに業界の人、ファッション系の人、ダンスの人、モデル系の人、仕事関係の人、ゲイの人、レズ系の人、ドラッグクイーンなどなど、通常の劇場ではあまりいない人たちがいて、それを見るのも面白かった。何しろ会場に入ったら客電が真っ赤。ここは怪しげな飲み屋か!って感じの雰囲気。
そして、感想をひと言でいうと、カールラガーフェルド!悪食、悪趣味の魅力って奴でした。8人の女性パフォーマーが夏木さん以外に出ているのであります。しかし、女性的なものをすごく剥ぎ取られている人もいて、激しい化粧もあって何か良く分からない。そこに夏木さんがたびたび出てくるのでありますが、マクベス夫人の狂気のようであり、近代能楽集の卒塔婆小町に出てくる老女のようであったり、ランメルモールのルチアの狂乱の場のようであったりで。もう、見ている僕に女性の魅力をみせてくれない。裏の部分とかそういうのばっかって感じで。
しかし、これが夏木マリさんの印象であり、それを具現化したものであるのだろう。それは透徹されていた。それがカールラガーフェルドの洋服を初めて見たときの印象と同じだった。こんな変態じみた服誰が切るんだ。カールラガーフェルドの姿を見て、何て悪趣味を透徹しているんだ!でも、それがこの人の趣味なんだよな。それとおんなじ印象。ここまでやるか!って感じの。
2009年4月4日
世田谷パブリックシアター
原作 ストリンドベリ「令嬢ジュリー」
上演台本 笹部博司
演出 手塚とおる
出演 純名りさ 貴水博之
東京においてはtptなどで上演されている令嬢ジュリー。それを95分にぴしっとした二人芝居。これが濃密でセクシーで本質的で分かりやすい。純名りさの美貌は本当にスゴい。もう見ているだけで美しい。前に「ナイン」というミュージカルで見た時もキレイだなあと思っていたが、あの時は女優陣の個性がスゴくて美しいという部分以外に目がいかなかったが、この人の芝居は本当に上手い。そして、この作品にあっていた。相手役の貴水さんも、希代の二枚目であり、何をやっても絵になる。この二人だから許された空間なのだとも思ってしまうのだ。何しろ、物語は恋人同士が御芝居をしようという設定で始まるのだから。
手塚とおるさんの演出は作品の肝にぐいぐいと迫るし、二人にいろんな空気を造り出すことを求める。そして、それがどんどんと変化していくスピード感。上手い。自分は見ていてこの二人の演者は素っ裸になって演じているなあと思うのだ。きっと自分の中にあるそういう部分をずばっと引きづり出して演じている。一瞬もウソがないし、引き込まれる。
上演台本の良さも光っていて、笹部さんという人のことを勉強不足で良く知らないのだが、若手で何か新機軸を見つけ出して新しい地平線を見つけ出す人ばかりをたたえる傾向があるのだが、こういう本物の作品に堂々と渡り合うことをしている演劇人を僕は注目したいと心から思っている。今回、観る機会があったのをとても喜んでいるし、ちょっと無理して観に行く価値のある作品だった。
2009年3月23日
赤坂RED/THERTER
上演台本 笹部博司
演出 手塚とおる
出演 純名りさ 貴水博之
東京においてはtptなどで上演されている令嬢ジュリー。それを95分にぴしっとした二人芝居。これが濃密でセクシーで本質的で分かりやすい。純名りさの美貌は本当にスゴい。もう見ているだけで美しい。前に「ナイン」というミュージカルで見た時もキレイだなあと思っていたが、あの時は女優陣の個性がスゴくて美しいという部分以外に目がいかなかったが、この人の芝居は本当に上手い。そして、この作品にあっていた。相手役の貴水さんも、希代の二枚目であり、何をやっても絵になる。この二人だから許された空間なのだとも思ってしまうのだ。何しろ、物語は恋人同士が御芝居をしようという設定で始まるのだから。
手塚とおるさんの演出は作品の肝にぐいぐいと迫るし、二人にいろんな空気を造り出すことを求める。そして、それがどんどんと変化していくスピード感。上手い。自分は見ていてこの二人の演者は素っ裸になって演じているなあと思うのだ。きっと自分の中にあるそういう部分をずばっと引きづり出して演じている。一瞬もウソがないし、引き込まれる。
上演台本の良さも光っていて、笹部さんという人のことを勉強不足で良く知らないのだが、若手で何か新機軸を見つけ出して新しい地平線を見つけ出す人ばかりをたたえる傾向があるのだが、こういう本物の作品に堂々と渡り合うことをしている演劇人を僕は注目したいと心から思っている。今回、観る機会があったのをとても喜んでいるし、ちょっと無理して観に行く価値のある作品だった。
2009年3月23日
赤坂RED/THERTER
作演出 松村武
出演 八嶋智人 松村武 ほか
1ヶ月という短い期間でエチュードから立ち上げた作品だという。この数年の松村作品と比べるとずいぶんとみやすくなっているが、作品は役者力に頼っている部分も少なくなく休憩を入れて2時間20分という長尺。松村武の意思が貫徹されると、時に作品は難解になる。松村は野田秀樹を薫敬しているのは良く分かるのだが、野田作品の明快さと思想性、そして、言葉の美しさよりも松村は肉体をもっと重要視しているように思えるのだが。
今回は分かりやすい作品なのだが、場面ごとの役者間の関係性に引きずられ、作品の流れに時々問題が起こる。エチュードで立ち上げのであれば、時間を十二分にかけて、最終的に作品に作り上げる作業を作家がやり遂げる事が必要なのだと改めて思った。
新人6人が入ったことが作品作りに大きな影響を与えると面白いのになとファンとしては思うのだ。次回は創立20周年という。新しいカムカムの作品を見たいと思う。
2009年5月2日
シアター1010
出演 八嶋智人 松村武 ほか
1ヶ月という短い期間でエチュードから立ち上げた作品だという。この数年の松村作品と比べるとずいぶんとみやすくなっているが、作品は役者力に頼っている部分も少なくなく休憩を入れて2時間20分という長尺。松村武の意思が貫徹されると、時に作品は難解になる。松村は野田秀樹を薫敬しているのは良く分かるのだが、野田作品の明快さと思想性、そして、言葉の美しさよりも松村は肉体をもっと重要視しているように思えるのだが。
今回は分かりやすい作品なのだが、場面ごとの役者間の関係性に引きずられ、作品の流れに時々問題が起こる。エチュードで立ち上げのであれば、時間を十二分にかけて、最終的に作品に作り上げる作業を作家がやり遂げる事が必要なのだと改めて思った。
新人6人が入ったことが作品作りに大きな影響を与えると面白いのになとファンとしては思うのだ。次回は創立20周年という。新しいカムカムの作品を見たいと思う。
2009年5月2日
シアター1010
セミヨンビシュコフ指揮
ケルン放送交響楽団
田村響 ピアノ
ブラームス作曲 ハイドンの主題による変奏曲
モーツアルト作曲 ピアノ協奏曲第23番
ドヴォルザーク作曲 交響曲第8番
ビシュコフを最初にきいたのは1991年のパリ管弦楽団との来日演奏会で、「ファウストの劫罰」を聞いた時だった。巨大で華麗な音楽をどかーと操る腕に、なるほどカラヤンの影響を強く受けているなあと感じたものだ。ロシア系の指揮者である。
しばらく聞く機会がなく、2001年の5月にウィーンに出かけた時に、ウィーン国立歌劇場で「トリスタンとイゾルデ」を聞かせてもらった。この曲は今年のパリオペラ座の来日でもビシュコフの指揮できけた。山ほど演奏会に行っているので、他にも聞いているかもしれないが、すぐに思い出すのはこれくらい。全部巨大な作品ばかりなのだ。そして、それが素晴らしい。ワーグナーがとても良かったのを忘れない。
例えば、この1年の彼の活躍の場を見ると、ミュンヘンフィル、シカゴ交響楽団、ロイヤルオペラでの「ローエングリーン」、パリオペラ座での「トリスタン」。そして、このWDRケルン放送交響楽団が中心だ。そして、他のものと比べると明らかにこのオケは格が落ちる。今日も最初のブラームスなどをきいていると、この数ヶ月きいたオーケストラの名演と明らかに差があって、がっくりしてしまう。ブラームスなどは明らかに自分の集中力が切れてしまった。ケルン放送交響楽団の来日は今までも何回かあって、大した記憶がないのだ。正直ドイツの二流オケである。バンベルグやゲヴァントハウス、北ドイツ放送といったドイツの無骨な音をきかせてくれるドイツ節の特長もあまり感じさせてくれないし、ベルリンフィルのように国際的な洗練さもないどっちつかずのオケなのだ。
わざわざ来日演奏会を聞く価値がどれだけあるのかなあと思った次第。それでもビシュコフが聞きたくて出かけた。聞いていて思ったのだが、ビシュコフは指揮で団員を鼓舞するのだが、団員は結構冷めていて、反応が薄い。そして、何か守りの演奏ばかりしているように感じた。特にブラームス。解放された自由に流れる音に感じられないのだ。第一バイオリンなどはひ弱な音しか聞こえて来ない。
ブラームスよりは、アマチュアオケにも取り上げられることのあるドヴォルザークは、ずーっと良かった。管楽器はちょっと哀愁込め過ぎだと思うくらいに泣く音を出す人もいてちょっと驚いたし、ちょっと曲自体にどよんとする場所のある2楽章などは緊張感が薄れるのだが、全体的にはいい演奏だった。モーツアルトもオケとしての難しさはない。これもきちんと聞けた。そしえ、昔の日本人のようなステージングマナーの田村さんが、音楽でもそのまま無骨な演奏を聴かせてくれた。今の若いピアニストにとって技術的には何ら困難な場所のないモーツアルトだけに、音の一粒一粒が厳密に聞かれてしまうピアニスト泣かせの曲である。下手な情感を込めたり、テンポを動かさず、音楽の奥にある美しさをそのまま誇張せずに再現してくれればいいなと思っていた。やりたくなってしまうもののだ。色づけを。しかし、この若いピアニストはそういうところがなかった。ちょっと無骨すぎるぞと思うくらいの抑えた演奏で、大好きなバックハウスのモーツアルトのようだった。
田村さんはメンデルスゾーンのソロを、オケはブラームスの舞曲を2曲アンコールにもってきてくれた。めちゃ忙しいときに出かけて聞く価値があったのかと言われると、うーんないですねと言いたくなる演奏会。悪い演奏ではないが、わざわざ外国にまでやってきて披露する価値があるのかと言われれば、ない。特に東京には素晴らしいオケが山ほどあるのだから。
地元の人たちに、地元のホールで、主に定期演奏会の会員によって毎月聞いてもらう、そう、コーヒーとか、パンのように毎月毎月聞かれていればいいオケなのである。
ビシュコフは音楽家成功すごろくの中で上手く立ち回り、回り道せずに頂点に駆け上がっていきそうな人ではない。ちょうど、録音メディアがビジネスとして成立しなくなった時でカラヤン流のビジネスモデルが通用しなくなった時の人だということも関係しているのかなと思う。しかし、今日の指揮ぶりと結果をみていてやはり一流の指揮者だということも再認識した。そして、この二流オケを合格水準まで導いたのだからいい指導者でもあるのだろう。
さて、ビシュコフは2010年の2月に少なくとも6回の演奏会をNHK交響楽団と行う。日本のオケを振るのは初めてのことだろう。しかし、ケルン放送交響楽団よりは格段に技術的にも柔軟性にもとむNHK交響楽団だけに、その組み合わせがどのような結果をもたらすのかとても楽しみになった。
今回の来日で細かい演奏曲目なども最終的に決定されたであろう。楽しみだ。僕にとって、今日の演奏会は、NHK交響楽団との演奏を比較するにはいい体験だったかもしれない。
サントリーホール
2009年3月5日
ケルン放送交響楽団
田村響 ピアノ
ブラームス作曲 ハイドンの主題による変奏曲
モーツアルト作曲 ピアノ協奏曲第23番
ドヴォルザーク作曲 交響曲第8番
ビシュコフを最初にきいたのは1991年のパリ管弦楽団との来日演奏会で、「ファウストの劫罰」を聞いた時だった。巨大で華麗な音楽をどかーと操る腕に、なるほどカラヤンの影響を強く受けているなあと感じたものだ。ロシア系の指揮者である。
しばらく聞く機会がなく、2001年の5月にウィーンに出かけた時に、ウィーン国立歌劇場で「トリスタンとイゾルデ」を聞かせてもらった。この曲は今年のパリオペラ座の来日でもビシュコフの指揮できけた。山ほど演奏会に行っているので、他にも聞いているかもしれないが、すぐに思い出すのはこれくらい。全部巨大な作品ばかりなのだ。そして、それが素晴らしい。ワーグナーがとても良かったのを忘れない。
例えば、この1年の彼の活躍の場を見ると、ミュンヘンフィル、シカゴ交響楽団、ロイヤルオペラでの「ローエングリーン」、パリオペラ座での「トリスタン」。そして、このWDRケルン放送交響楽団が中心だ。そして、他のものと比べると明らかにこのオケは格が落ちる。今日も最初のブラームスなどをきいていると、この数ヶ月きいたオーケストラの名演と明らかに差があって、がっくりしてしまう。ブラームスなどは明らかに自分の集中力が切れてしまった。ケルン放送交響楽団の来日は今までも何回かあって、大した記憶がないのだ。正直ドイツの二流オケである。バンベルグやゲヴァントハウス、北ドイツ放送といったドイツの無骨な音をきかせてくれるドイツ節の特長もあまり感じさせてくれないし、ベルリンフィルのように国際的な洗練さもないどっちつかずのオケなのだ。
わざわざ来日演奏会を聞く価値がどれだけあるのかなあと思った次第。それでもビシュコフが聞きたくて出かけた。聞いていて思ったのだが、ビシュコフは指揮で団員を鼓舞するのだが、団員は結構冷めていて、反応が薄い。そして、何か守りの演奏ばかりしているように感じた。特にブラームス。解放された自由に流れる音に感じられないのだ。第一バイオリンなどはひ弱な音しか聞こえて来ない。
ブラームスよりは、アマチュアオケにも取り上げられることのあるドヴォルザークは、ずーっと良かった。管楽器はちょっと哀愁込め過ぎだと思うくらいに泣く音を出す人もいてちょっと驚いたし、ちょっと曲自体にどよんとする場所のある2楽章などは緊張感が薄れるのだが、全体的にはいい演奏だった。モーツアルトもオケとしての難しさはない。これもきちんと聞けた。そしえ、昔の日本人のようなステージングマナーの田村さんが、音楽でもそのまま無骨な演奏を聴かせてくれた。今の若いピアニストにとって技術的には何ら困難な場所のないモーツアルトだけに、音の一粒一粒が厳密に聞かれてしまうピアニスト泣かせの曲である。下手な情感を込めたり、テンポを動かさず、音楽の奥にある美しさをそのまま誇張せずに再現してくれればいいなと思っていた。やりたくなってしまうもののだ。色づけを。しかし、この若いピアニストはそういうところがなかった。ちょっと無骨すぎるぞと思うくらいの抑えた演奏で、大好きなバックハウスのモーツアルトのようだった。
田村さんはメンデルスゾーンのソロを、オケはブラームスの舞曲を2曲アンコールにもってきてくれた。めちゃ忙しいときに出かけて聞く価値があったのかと言われると、うーんないですねと言いたくなる演奏会。悪い演奏ではないが、わざわざ外国にまでやってきて披露する価値があるのかと言われれば、ない。特に東京には素晴らしいオケが山ほどあるのだから。
地元の人たちに、地元のホールで、主に定期演奏会の会員によって毎月聞いてもらう、そう、コーヒーとか、パンのように毎月毎月聞かれていればいいオケなのである。
ビシュコフは音楽家成功すごろくの中で上手く立ち回り、回り道せずに頂点に駆け上がっていきそうな人ではない。ちょうど、録音メディアがビジネスとして成立しなくなった時でカラヤン流のビジネスモデルが通用しなくなった時の人だということも関係しているのかなと思う。しかし、今日の指揮ぶりと結果をみていてやはり一流の指揮者だということも再認識した。そして、この二流オケを合格水準まで導いたのだからいい指導者でもあるのだろう。
さて、ビシュコフは2010年の2月に少なくとも6回の演奏会をNHK交響楽団と行う。日本のオケを振るのは初めてのことだろう。しかし、ケルン放送交響楽団よりは格段に技術的にも柔軟性にもとむNHK交響楽団だけに、その組み合わせがどのような結果をもたらすのかとても楽しみになった。
今回の来日で細かい演奏曲目なども最終的に決定されたであろう。楽しみだ。僕にとって、今日の演奏会は、NHK交響楽団との演奏を比較するにはいい体験だったかもしれない。
サントリーホール
2009年3月5日
作演出 ノゾエ征爾
出演 伊藤ヨタロウ 加藤直美 カオティックコスモス 町田水城 鈴真紀史 滝寛式 井内ミワク 竹口龍茶 ほか
10周年ということ。周年とか言いながら、たいていの劇団はなにもしない。それが、例えば、はえぎわであれば おなじみの屋台崩しでボリュームアップみたいなとこでスペシャル感を出して逃げるようなことをしてしまう。はえぎわは違った。そこいら辺の今までやってきたことは、敢えて捨てる方向に傾き、10年先とまでは言わないが、次のはえぎわを見据えた作品を持って来た。そこが、違う。大したものだ。
そして、それが面白かった。作劇としては、ストーリーはあるのだが、いつも以上に、解体され、無意味化した、いつも以上にフェリーニのようなめくるめく世界で、上手く行かないとぐちゃぐちゃになってしまう芝居なのに、展開も早く見事でとても面白かった。
フェリーニ的なと書いたけれど、視覚的よりも、空気とか登場人物の内面とかでめくるめくにしていたのが、これも今までのはえぎわの殻を突き破っている。
つまり、いままでのはえぎわは、視覚的な面白さも最大限取り込むことをしてきたのだ。かぶりもの、屋台崩し、そういう諸々のこと。でも今回はそれは必要最小限にしてしまった。
これは、ノゾエ征爾さんのイメージが明確で、役者がスゴく上手いから成立するんでしょう。ノゾエ君の感性には何か貴族的な、ドイツオーストリア系の薫りがするのだが、今回はそれを隠さずに曝けだして挑んだ。世界のエグイ話をこれでもかとやるところなんか分かりやすい例。次に書く机に座る4人の女性とそこに割り込むひとりの男優のコントラストも分かりやすい例。
はえぎわは、役者がスゴい。鈴さんや加藤直美さんらが4人で机に並んで会議するとこがあるんですが、もうアドリブにしか聞こえない腕前です。そして、今回のカオティックコスモスさん、最高ですね。パッキャラマドのネタバラしに行くところなんか、もう見事なシフトチェンジ。砂に埋まるところの声!音量!幾つかの役をやるのですが、同じ俳優と思えないほど化ける。中身的に。すごいな。
滝さんも今までで一番といっていいほど、乗りまくって演技していた。格闘シーンなんかも顔色ひとつ変えずに。スゴいです。
そして、ゲストの伊藤ヨタロウさん、存在感だけでなく芝居がいいんです。ヨタロウさんの楽曲も泣かせる曲で、ライブも聞かせてもらってオトク感もありありの、とても贅沢な芝居だった。
さらに美術、照明も非常に良かった。照明は、狙いが明確。ドライでシャープな光だと思った。スゴく攻撃的、挑戦する照明だった。この芝居は気持ちに余裕があり、感性がぴんぴんしているときに見ないとダメです。疲れた身体はホントにダメ。はえぎわ。次も見ようっと。
下北沢ザスズナリ
2009年2月26日
出演 伊藤ヨタロウ 加藤直美 カオティックコスモス 町田水城 鈴真紀史 滝寛式 井内ミワク 竹口龍茶 ほか
10周年ということ。周年とか言いながら、たいていの劇団はなにもしない。それが、例えば、はえぎわであれば おなじみの屋台崩しでボリュームアップみたいなとこでスペシャル感を出して逃げるようなことをしてしまう。はえぎわは違った。そこいら辺の今までやってきたことは、敢えて捨てる方向に傾き、10年先とまでは言わないが、次のはえぎわを見据えた作品を持って来た。そこが、違う。大したものだ。
そして、それが面白かった。作劇としては、ストーリーはあるのだが、いつも以上に、解体され、無意味化した、いつも以上にフェリーニのようなめくるめく世界で、上手く行かないとぐちゃぐちゃになってしまう芝居なのに、展開も早く見事でとても面白かった。
フェリーニ的なと書いたけれど、視覚的よりも、空気とか登場人物の内面とかでめくるめくにしていたのが、これも今までのはえぎわの殻を突き破っている。
つまり、いままでのはえぎわは、視覚的な面白さも最大限取り込むことをしてきたのだ。かぶりもの、屋台崩し、そういう諸々のこと。でも今回はそれは必要最小限にしてしまった。
これは、ノゾエ征爾さんのイメージが明確で、役者がスゴく上手いから成立するんでしょう。ノゾエ君の感性には何か貴族的な、ドイツオーストリア系の薫りがするのだが、今回はそれを隠さずに曝けだして挑んだ。世界のエグイ話をこれでもかとやるところなんか分かりやすい例。次に書く机に座る4人の女性とそこに割り込むひとりの男優のコントラストも分かりやすい例。
はえぎわは、役者がスゴい。鈴さんや加藤直美さんらが4人で机に並んで会議するとこがあるんですが、もうアドリブにしか聞こえない腕前です。そして、今回のカオティックコスモスさん、最高ですね。パッキャラマドのネタバラしに行くところなんか、もう見事なシフトチェンジ。砂に埋まるところの声!音量!幾つかの役をやるのですが、同じ俳優と思えないほど化ける。中身的に。すごいな。
滝さんも今までで一番といっていいほど、乗りまくって演技していた。格闘シーンなんかも顔色ひとつ変えずに。スゴいです。
そして、ゲストの伊藤ヨタロウさん、存在感だけでなく芝居がいいんです。ヨタロウさんの楽曲も泣かせる曲で、ライブも聞かせてもらってオトク感もありありの、とても贅沢な芝居だった。
さらに美術、照明も非常に良かった。照明は、狙いが明確。ドライでシャープな光だと思った。スゴく攻撃的、挑戦する照明だった。この芝居は気持ちに余裕があり、感性がぴんぴんしているときに見ないとダメです。疲れた身体はホントにダメ。はえぎわ。次も見ようっと。
下北沢ザスズナリ
2009年2月26日
作演出 横内謙介
出演 中原三千代 杉山良一 藤本貴行 鈴木利典 川西佑佳 高木トモユキ 累央 犬飼淳治 伊阪達也
紀伊國屋ホールでの初演の時はイマイチ乗れなかったのだが、今回、いろんなものを削ぎ落としたのか、展開が非常に早く、見ていて引き込まれる。非常にエンタティメント性が高いものをきちんと残しているが、横内謙介の劇作家としての核となるものはズドーンと前に出てくる。ダンスは格段に上手くなっているし、歌も良くなった。小劇場と言われる劇団がここまでの作品を作り上げたことに驚きを禁じ得ない。また、客演陣も魅力的でその生かし方も素晴らしい。東京で公演していたらもう一度見たいのになあ。これが3000円というのはとにかく破格。神奈川県、本当にありがとう!!!!
累央、とても苦手な役者だったのだが、全身全霊をかけて役を演じていた。きっと本来はクールに行きたいと思っているのだろうが、山田役の伊阪さんという被るキャラの青年が入ったことで火がついたのか。二人でものすごいオーラ出しまくり合戦を繰り広げる。女の子にはたまらないだろう。
中原三千代が、人生のクライマックスに続いて素晴らしい。ブロードウェイのミュージカルを見ていても作品を深め盛り上げるのは、デブだったり、おばさんだったり、おじいちゃんだったり、まあ作品のど真ん中にいない人で、その人がどれだけ魅力的かによって作品の面白さが相当異なる。この作品で中原三千代が若いキャストに混じって負けまいと踊っている姿は本当に素晴らしく、そして、作品に深みが出た。ブロードウェイなら、きっとソロダンスのシーンや歌のシーンがある役柄だ。素晴らしい。三千代さんブラボー!。そして、杉山良一さんが最後の決めゼリフを言うのもやはりいい。その場でひとつひとつ沸き起こってくるようなあのような台詞まわしじゃないと、青年の気持ちに火をつけたことにならない。ザ説得力の存在感だ。
鈴木利典は相変わらず作品をまとめることに徹していて、日本のお父さんになってきた。的確、外さない。早く老けないかなあと思う。父娘の物語なんかをみたい。扉座の貴重な存在だなあ。3役やるのだが、全部面白い。
鈴木理沙と上原健太がどっしりとしてきた。多くの商業演劇の経験が生きているのだと思う。堂々とした風格を持つようになった。藤本貴行はまだ新人であるが、とにかくいい。この作品に必要な出演者が肉体を酷使することを何の手も抜かずやっている。それは、舞台の端でホントに見えないところで唄ったりリアクションをしているときもそう。それは、川西佑佳にも言える。とても一生懸命踊り唄っていた。ひとりで放つ台詞はほんのひとつか二つなのだが、皆の中で演じている時にも懸命に役をやり続ける姿はみていて清々しかった。
安達雄二が面白い。ひとつひとつの動きにセンスがある。音楽がある。串間保彦がいい。この人は舞台に誠実に立っていることを感じさせる。反面、期待の二人。江原由夏と高木トモユキにはとても期待しているのだが、何かなあ。何か足りないんだよなあと思ってしまうのだ。なぜだろう?分からない。期待し過ぎなのかなあ。
伊阪逹也さんという俳優は初見だが、なるほど人気があるのが分かる。二枚目をやることの覚悟ができている。劇団公演に乗り込むのは、ホームでやるのと違うものがあるはずで、数々の劇団公演で悲惨な結果を見て来た。しかし、この青年はカンパニーに溶け込んだとともに、背負わされた責任を果たしていた。スゴい。
AKBの4人はもう手放しで素晴らしい。事務所がいいんだろうなと思う。とにかく拍手。
そして、エアリアルをされる桧山宏子さんは、芝居がとにかく素晴らしい。美形な上に、身体の動きのひとつひとつがキレイなのでもっと見たいと思わせてくれるのだ。小牧さんも同様に素晴らしいのだ。
これだけ素晴らしいので、何てことのないシーンで集中力を欠かしちゃうと全部丸見え。恐ろしいなあ。例えば、蛇腹の開け閉めをやってる研究生。ただ開け閉めする黒子なのか、演技するのか、場面によって違うのでアレレと思ってしまうのだ。唄ったりしているときは悪くないのに勿体ないです。さすが劇団員はそういうおそろしさを知っているのでしょう。隙を見せません。
2009年2月27日
神奈川県立青少年センターホール
出演 中原三千代 杉山良一 藤本貴行 鈴木利典 川西佑佳 高木トモユキ 累央 犬飼淳治 伊阪達也
紀伊國屋ホールでの初演の時はイマイチ乗れなかったのだが、今回、いろんなものを削ぎ落としたのか、展開が非常に早く、見ていて引き込まれる。非常にエンタティメント性が高いものをきちんと残しているが、横内謙介の劇作家としての核となるものはズドーンと前に出てくる。ダンスは格段に上手くなっているし、歌も良くなった。小劇場と言われる劇団がここまでの作品を作り上げたことに驚きを禁じ得ない。また、客演陣も魅力的でその生かし方も素晴らしい。東京で公演していたらもう一度見たいのになあ。これが3000円というのはとにかく破格。神奈川県、本当にありがとう!!!!
累央、とても苦手な役者だったのだが、全身全霊をかけて役を演じていた。きっと本来はクールに行きたいと思っているのだろうが、山田役の伊阪さんという被るキャラの青年が入ったことで火がついたのか。二人でものすごいオーラ出しまくり合戦を繰り広げる。女の子にはたまらないだろう。
中原三千代が、人生のクライマックスに続いて素晴らしい。ブロードウェイのミュージカルを見ていても作品を深め盛り上げるのは、デブだったり、おばさんだったり、おじいちゃんだったり、まあ作品のど真ん中にいない人で、その人がどれだけ魅力的かによって作品の面白さが相当異なる。この作品で中原三千代が若いキャストに混じって負けまいと踊っている姿は本当に素晴らしく、そして、作品に深みが出た。ブロードウェイなら、きっとソロダンスのシーンや歌のシーンがある役柄だ。素晴らしい。三千代さんブラボー!。そして、杉山良一さんが最後の決めゼリフを言うのもやはりいい。その場でひとつひとつ沸き起こってくるようなあのような台詞まわしじゃないと、青年の気持ちに火をつけたことにならない。ザ説得力の存在感だ。
鈴木利典は相変わらず作品をまとめることに徹していて、日本のお父さんになってきた。的確、外さない。早く老けないかなあと思う。父娘の物語なんかをみたい。扉座の貴重な存在だなあ。3役やるのだが、全部面白い。
鈴木理沙と上原健太がどっしりとしてきた。多くの商業演劇の経験が生きているのだと思う。堂々とした風格を持つようになった。藤本貴行はまだ新人であるが、とにかくいい。この作品に必要な出演者が肉体を酷使することを何の手も抜かずやっている。それは、舞台の端でホントに見えないところで唄ったりリアクションをしているときもそう。それは、川西佑佳にも言える。とても一生懸命踊り唄っていた。ひとりで放つ台詞はほんのひとつか二つなのだが、皆の中で演じている時にも懸命に役をやり続ける姿はみていて清々しかった。
安達雄二が面白い。ひとつひとつの動きにセンスがある。音楽がある。串間保彦がいい。この人は舞台に誠実に立っていることを感じさせる。反面、期待の二人。江原由夏と高木トモユキにはとても期待しているのだが、何かなあ。何か足りないんだよなあと思ってしまうのだ。なぜだろう?分からない。期待し過ぎなのかなあ。
伊阪逹也さんという俳優は初見だが、なるほど人気があるのが分かる。二枚目をやることの覚悟ができている。劇団公演に乗り込むのは、ホームでやるのと違うものがあるはずで、数々の劇団公演で悲惨な結果を見て来た。しかし、この青年はカンパニーに溶け込んだとともに、背負わされた責任を果たしていた。スゴい。
AKBの4人はもう手放しで素晴らしい。事務所がいいんだろうなと思う。とにかく拍手。
そして、エアリアルをされる桧山宏子さんは、芝居がとにかく素晴らしい。美形な上に、身体の動きのひとつひとつがキレイなのでもっと見たいと思わせてくれるのだ。小牧さんも同様に素晴らしいのだ。
これだけ素晴らしいので、何てことのないシーンで集中力を欠かしちゃうと全部丸見え。恐ろしいなあ。例えば、蛇腹の開け閉めをやってる研究生。ただ開け閉めする黒子なのか、演技するのか、場面によって違うのでアレレと思ってしまうのだ。唄ったりしているときは悪くないのに勿体ないです。さすが劇団員はそういうおそろしさを知っているのでしょう。隙を見せません。
2009年2月27日
神奈川県立青少年センターホール
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
HP:
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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