佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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滝田洋二郎 監督
小山薫堂 脚本
久石譲 音楽 
山崎努 本木雅弘 広末涼子 余貴美子 出演

 素晴らしい作品だった綿密に張り巡らされたエンタティメントであり、心の襞に振れる根源的な人間の生と死の哀しみを静かに語る作品でもある。松竹映画の長い伝統の流れの中でどっしりと佇む作品だ。日本映画はこういうものを生み出せるのだと世界にアピールしたいくらいだと思っていたら、あっさりアメリカアカデミー賞の外国語映画部門賞にノミネートされた。英語以外の言語で作られる映画のなかで世界でたった5本しか選ばれないノミネートだ。

 吉行和子がとてもいい。余貴美子がとてもいい。広末涼子がとてもいい。
 俳優がいいのだ。
 山崎努がいいのは当たり前だけれども、ホントに本木雅弘が素晴らしい仕事をしたと思う。
男子としてこれほどきちんとキャリアを積み上げて行く本木の生きざまもここにきっと結実しているのだろう。仕事の選び方も素晴らしい。アイドルもアバンギャルドもアーチストもやるアクターなのだ。とても羨ましい。生き方として、外人ならマークウォーバーグ。日本人なら本木雅弘だな、とても尊敬する。時おり昔の本木雅弘の表情を見せるのが面白い。

 でも、何よりもこの映画で驚いたのは、ラストのクレジットで見つけた「脚本 小山薫堂」の文字だった。小さく、多くのクレジットの中にまぎれこみそうな扱いだったけれど。映画の最後にこの素晴らしい脚本はいったい誰が書いたのかと。そればかり思っていたものだから。
 一緒に何回も仕事をした。小山薫堂といえば、トレンディーという言葉とともに括ることもきるくらい時代と寄り添って来た人なのに、これほどしっとりとした脚本を書く人だったのだ。その衝撃。
 自分の生き方の浅薄さを改めて反省したのだった。 



2009年1月15日

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茅野イサム演出

 まるっきりウエストサイド物語であり、歌あり踊りありのミュージカル仕立てだった。先ずはそれを見ように酔っては素舞台に近い美術で、舞台を上下させる方法であの巨大な空間を縦横無尽につかったアイデアを買いたい。歌唱や踊りもブロードウェイの直後だけにアレレなのだが、そこに若い役者が込めようとしている気持ちや、ステージ上で役者通しが非常に信頼しあって演技しているのも伝わってきた。
 脚本にはもう少し工夫も必要だし、音楽もいまひとつと思ったし、あれだけやるのならオープニングはもっと上手く見せられたのではないかとも思うのだが。若い観客にこの作品はたまらない魅力を持っていることも良く分かるのだ。




青山劇場
2009年1月25日
ロジャース&ジャーマスタイン作詞作曲
バレットシール演出



 最近の50年代ミュージカルのリバイバル上演は現代の時間に会わせるために、人間関係の進展も、挿入される音楽のテンポも、早くコンパクトにされてしまう。そしてたいてい2時間30分位に収める。こちらは堂々3時間。オープニングでおけピットの天板をとってみせて30人のオーケストラが奏でているところを見せる。確かに通常の倍近くの編成で音楽も分厚い。美術は素晴らしいし、この南太平洋を味わえる音楽のテンポ。オペラ界から歌唱力のある人間を呼んで魅惑の宵を唄わせたのも正解だ。 トニー賞を8部門も受賞したのも良く分かる。それは、原作を丁寧にきちんと作り上げたからだ。それが今のブロードウェイの上演では新しさを感じさせたのかもしれない。

 しかし、この舞台の主人公は映画版でミッチーゲイナーが演じたはじけるようなお色気のあるヤンキー娘というよりは、ネクラなおばさんで、明るくない。そして、ブラッディメリー役の人はメイクもヘンテコで、何か宗教掛かっていておどろおどろしい。歌もあまりよくない。


画像はトニー賞授賞式の時の画像。舞台の雰囲気は味わって頂けると…。



ビビアンバーモント劇場(ニューヨーク)
2009年1月21日
ディズニープロダクション



もうディスニーものの舞台はいいやと思っていたのだが、見たかった作品が次々とクローズした直後の訪米だったので、見たことのない大作は取りあえず見とこうというくらいの感じで観に行った。音楽はいいし、装置は華やか。音楽はカリブ音楽。スムーズな動きをだすために海の魚たちはみんなローラースケートで移動。踊りも楽しく、ディズニーの罠にはまって行く自分がいた。
 

リトルマーメイドオフィシャルサイト 音楽も映像も楽しめます。





2009年1月17日
ルナフォンエーン劇場(ニューヨーク)
リンマニュエルミランダ 作詞作曲/原案/出演



何しろ2008年のトニー賞のベストミュージカル賞を受賞しているし、会場は沸いているのだが、僕は嫌な予感をもっていた。でも見とかなきゃと思ってみた。そして、的中した。ブルックリンのラテン系の街のニューヨークでの成功を夢見る人たちのお話だというだけで、何の新鮮さがない。そして音楽やダンスが、ラテンの音楽で楽しいと思いきやそれが何曲何曲も同じようなものが続くとホントに退屈になってくるんだなあと改めて思わされた。
 とても周到には作ってある。老婆の使い方とか、親子の対立とか、従来からのミュージカルの王道の人間関係に上手くラテンの音楽を埋め込んだというだけ。正直言って2008年はミュージカル不作の敏だったんだなと思いたくなるくらいだった。1幕はちょっと寝てしまったくらい。




リチャードロジャース劇場(ニューヨーク)
2009年1月20日

グルッグ作曲
マークモリス プロダクション
ジャームズレバイン 指揮
ステファンブライツ ハイディグランドマーフィ 他 出演

 ヨーロッパのバロックオペラブームがニューヨークにも飛び火していた。レヴァインが指揮していたこともあるが、メトのオケはしっかりしたアンサンブルで緻密な音を出していたし、歌手も良く、合唱の衣装も面白く、さらにダンスも楽しかった。そして、メトならではの豪華な美術と衣装。90分の短いオペラを堪能した。しかし、最初に見るオペラがこれだと、ちょっとツライかもなあ。この日の上演はテレビカメラに収められたのでいづれDVDなどで発売になるはず。興味があったら見て下さい。




2009年1月17日
メトロポリタンオペラハウス(ニューヨーク)
キャメロンマッキントッシュ&ディズニープロダクション




この舞台版がロンドンで上演され始めたころ。2005年と思うのだが、その時にも見ているが、これほど原作の味わいを消し去った作品も少なくないと思った。音楽も新曲が中心となり…と文句ばかりとたれていた。今回ニューヨークで再度見て、その思いはあまりかわっていない。音楽に関してはオリジナルのものも中心となっていたが、ストーリーも味わいもやはり壊されたままだった。
 一番の問題点はメリーポピンズそのものにある。この作品は乳母と子供の関係をきちんと描かなくてはならない。敢えていうなら、メリーポピンズが主役ではいけないくらいだ。しかし、ここでは、あまりにも踊り唄い独りでかき回すだけだ。子供への愛情などなにも感じられない。それが台無しにしているのだと思う。ロンドン版と相当違うのかな。ニューヨーク版は味わいもなにもなくなっている。
 映画版やPLトラバースの原作とは全く違うものとして見た方がスッキリする。映画の舞台化は難しいのだとつくづく感じた。
 

メリーポピンズオフィシャルサイト 映像も音楽もあります!



2009年1月15日
ニューアムステルダム劇場(ニューヨーク)
あのウディアレンがクラリネットを吹いている伝説のジャズバンド。

 70分の演奏は名曲揃い。ユーモアたっぷりのニューオルリンズジャズを7人編成できかせてくれる。高級ホテルのカーラライルカフェの150人くらいのお客の半数以上は音楽をききにきているよりは生ウディアレンを観に来ていた。カメラのすごいこと。でもフラッシュは…と思いながら見ていた。最後の20分は我慢できなくなって僕も写真をフラッシュなしで撮っていたけれど。何か今宵はおまけらしく、ウディアレンの生歌もきけた。音楽も生アレンも堪能した。




2009年1月19日
カーライルカフェ(ニューヨーク)
スティーブンスピルバーグ総指揮
DJカルーソ監督
シャイラアブーフ、ミシュルモナハン、ブリーボブソーントン出演



 巻き込まれ型サスペンスの作品で良くできている。見ていて飽きないしアクションもでかい。しかし、歴史に残る作品なのかと言えば、そうでもない。やはり、ヒッチコックなどの作品に比べると作品の風格というものがないのだ。それは、ひとえに登場人物の俳優力の弱さ。特に廻りのサポーティングアクターたちの灰汁の弱さかなと思う。そして、台本にもうひと工夫会ったら良かったのにと思う。この作品をDVDで見ると、手に汗握るというよりも、途中で止めてトイレにいったり、ビールを飲みながらワイワイやりながら見るのに相応しい。何か画面に引き込まれて時間も忘れてしまうような作品に出会いたいものだ。



2009年1月24日

デヴィッド・コープ監督/脚本
リッキー・ジャーヴェイス 主演


コープといえば、脚本家として『ジュラシック・パーク』『スパイダーマン』『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』といった大作を任される俊英である。彼が脚本と台本を手がけたファンタジーコメディがこの作品である。イギリス出身でマンハッタンにすむ歯医者が、7分間の臨死状態から生還したあと霊が見えるようになってしまったという話。ニューヨークだからこそリアリティのある変な人が山ほど出て来るのだが、まあ楽しく見られるのであります。見どころは主演のジャーヴェイスのヘンテコな個性です。


2009年1月23日
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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