自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作 チェーホフ
演出 坂口芳貞
「現代口語演劇との深い交流を経験した文学座のチェホフへ」
ホールのロビーには過去の文学座の三人姉妹の公演ポスターなどが貼ってある。80年代には、新橋耐子さん、田中裕子でやったんだなあと思うとぞくぞくする。劇団は時代とともに変わるから、それと同じようなものを求めたりはしないのだけれども、演出は敬愛する坂口芳貞さん。期待せずにはいられない。僕は自ら招いてこの方の演出を受けた事があるのだが、俳優だけあって俳優の整理をすごく大切にされるのである。
きっと俳優がやってくることを根本からねじ曲げて自分の世界に引きずり込もうと等とはされない。だから俳優にもきっと評判がいい。人づてに聞いただけなのだが坂口さんは三人姉妹がチェホフの中でも特にお好きだとも聞いていたので期待していった。文学座はこの10年で現代口語演劇の、平田オリザ、青年団との交流を物凄くもった。それも若い世代だけでなく劇団全体として尋常成らざる交流をもった。
そのポスト現代口語の公演としてどうなるんだろうと興味津々だった。
何しろテキストも坂口さんの奥様が訳しなおされている。言葉が現代のそれになっているのだ。舞台の美術は1幕が奥に長いディナーテーブル、手前にソファ。すべてを作り込むというよりはシンプルな美術。そこで物語が立ち上がるのである。
僕の感想は、確実に現代口語の影響は受けたと思う。
しかし、一幕の冒頭などでは、従来の大演劇の台詞廻しに引きずられた気がする。それは、句読点の息継ぎのポイントがちょっと不自然なところに取る事から特に感じてしまう。口語であれば、そこで息継ぎはないだろう というところで息継ぎがはいるのだ。
チェホフのテキストは新劇の俳優にとって偉大な金字塔であろうし、諸先輩が演じた三人姉妹を自分が演じるというプレッシャーもあるだろうが、自ら発するテキストを、はい、名台詞でございますと感じられてしまうような、いわゆる台詞廻し的な言い方と取られないように意識的にもっと現代口語の演劇スタイルに近づいても良かったのではないかと思う。
俳優が稽古場で立ち上げるスタイルを坂口さんは最大限に尊重したのだと想像する。それでも、ポスト青年団、現代口語演劇の あとの 文学座のチェホフだけに、21世紀のチェホフ像を提示するくらいの大胆さがあっても良かったのではないかと思う。
他の感想は、音楽の使い方がとても旨く、スピード感のある展開、転換も美しく、素敵だった。照明も奇麗だった。そして、もちろん、面白かった。
次回はいつ「三人姉妹」を上演するのだろう。そのときは、もっと現代口語演劇のスタイルに近づいて欲しい。それは、三人姉妹のことを深く分かっている文学座だからこそできるのだ。
2012年2月16日 紀伊国屋ホール
演出 坂口芳貞
「現代口語演劇との深い交流を経験した文学座のチェホフへ」
ホールのロビーには過去の文学座の三人姉妹の公演ポスターなどが貼ってある。80年代には、新橋耐子さん、田中裕子でやったんだなあと思うとぞくぞくする。劇団は時代とともに変わるから、それと同じようなものを求めたりはしないのだけれども、演出は敬愛する坂口芳貞さん。期待せずにはいられない。僕は自ら招いてこの方の演出を受けた事があるのだが、俳優だけあって俳優の整理をすごく大切にされるのである。
きっと俳優がやってくることを根本からねじ曲げて自分の世界に引きずり込もうと等とはされない。だから俳優にもきっと評判がいい。人づてに聞いただけなのだが坂口さんは三人姉妹がチェホフの中でも特にお好きだとも聞いていたので期待していった。文学座はこの10年で現代口語演劇の、平田オリザ、青年団との交流を物凄くもった。それも若い世代だけでなく劇団全体として尋常成らざる交流をもった。
そのポスト現代口語の公演としてどうなるんだろうと興味津々だった。
何しろテキストも坂口さんの奥様が訳しなおされている。言葉が現代のそれになっているのだ。舞台の美術は1幕が奥に長いディナーテーブル、手前にソファ。すべてを作り込むというよりはシンプルな美術。そこで物語が立ち上がるのである。
僕の感想は、確実に現代口語の影響は受けたと思う。
しかし、一幕の冒頭などでは、従来の大演劇の台詞廻しに引きずられた気がする。それは、句読点の息継ぎのポイントがちょっと不自然なところに取る事から特に感じてしまう。口語であれば、そこで息継ぎはないだろう というところで息継ぎがはいるのだ。
チェホフのテキストは新劇の俳優にとって偉大な金字塔であろうし、諸先輩が演じた三人姉妹を自分が演じるというプレッシャーもあるだろうが、自ら発するテキストを、はい、名台詞でございますと感じられてしまうような、いわゆる台詞廻し的な言い方と取られないように意識的にもっと現代口語の演劇スタイルに近づいても良かったのではないかと思う。
俳優が稽古場で立ち上げるスタイルを坂口さんは最大限に尊重したのだと想像する。それでも、ポスト青年団、現代口語演劇の あとの 文学座のチェホフだけに、21世紀のチェホフ像を提示するくらいの大胆さがあっても良かったのではないかと思う。
他の感想は、音楽の使い方がとても旨く、スピード感のある展開、転換も美しく、素敵だった。照明も奇麗だった。そして、もちろん、面白かった。
次回はいつ「三人姉妹」を上演するのだろう。そのときは、もっと現代口語演劇のスタイルに近づいて欲しい。それは、三人姉妹のことを深く分かっている文学座だからこそできるのだ。
2012年2月16日 紀伊国屋ホール
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
HP:
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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