佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 桟敷童子  海獣 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作演出 東憲司
出演 池下重大 板垣桃子 鈴木めぐみ 原口健太郎 桑原勝行 もりちえ 稲葉能敬 小野瀬弥彦 ほか



 何年かぶりで桟敷童子を観に行った。変わっていないだろうなあと思って出かけたら、やっぱり、前とまったく変わっていなかった。東憲司さんの台本も演出も世界観も基本的には5−6年前と同じで変わらない。劇構造もおおよそのストーリーも、哀しい人間が山ほど出て来て、最後は屋台崩し的で終わるのも変わらない。客入れも客だしも劇団員総出で行うのも変わらない。客電が点くまえにとにかく誰かがお客さんを送り出せるところに行くのも変わらない。ホントに変わらないなあとポジティブにもネガティブにも思いながら見ていた。ただ大きく変わったことがある。それは、長年いる役者が自信にあふれ迷いなく演じていることだ。自分も含め観客の多くは、いや人間てものは勝手に中途半端に生きて行くものだと思う。そういう人間にとってこんなに自信に満ちあふれた時間なんかほとんどない。きっと役者の人たちの日常だってそうだ。桟敷童子の舞台に立っている時以外は、きっとそうだ。でも、桟敷童子の舞台に立っている時は、本当に自信に満ちあふれて輝いている。それが、圧倒的な説得力をもつのである。比較的若い役者は台詞も少なく舞台にだまって立っている人もいるが、そこが全然違う。演出で後ろの方に立たせているのだけれどあれれで目だつ。
 前は池下重大や板垣桃子っていうメインの役者の良さばかり感じていたものだけれど、昨日は鈴木めぐみや原口健太郎の何気ない表情や視線の動かし方、佇まいにほれぼれしてしまった。前から面白かったけれど稲葉能敬の「ちきしょー」ってのと座ったり立ったりするのは、ひとつの芝居で同じような台詞が何回も出て来て、もし自分でこの台本を書いていたらおそろしいのだけれど、役者稲葉がそのどれもをリアルにやるものだから観れてしまう。前にもトングをもって歩いているだけで面白かったけ。桑原勝行のおどけた顔も何回も何回もあるのだけれど、別にそれはお約束でそこで笑いを取ろうというようなものではないのに繰り返されるのだが、いやなものではない。ヨネクラカオリの絶望感、狂気の空気もそう。もりちえは本人にドラマは起きずに最初から最後まで同じ人間で通すのだけれど、そう。外山博美もそう。
 そんな感じで観客の中で相当クールに見ていた自分だけど、一瞬ウルっと来たところがあった。それは、カーテンコールで、小野瀬弥彦が「これからも劇団桟敷童子をよろしくお願いします」と頭を下げたところだ。こんなカーテンコールをされたら堪らない。カッコつけないで、気持ちを裸にして感謝の気持ちを伝えていた。桟敷童子は真心でお客さんを満足させて返す。錦糸町の駅から遠く遠く歩いて来て良かったと思わせる。たいしたものである。

2009年12月9日
鈴木興産第二スタジオ
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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