佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 演劇 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作演出 小池竹見
出演  今林久弥 ほか

双数姉妹の代表作です。小池氏の絶対の自信作です。新しいメンバーを数作品で鍛え上げ、外部から、そして劇団を離れた役者も呼び戻しての公演です。もしも一度も双数姉妹を見たことがない。この作品が代表作です。前に見たけど自分には…という方。この作品で決めて下さい。


 成体サイド、幼生サイドの両方で観劇した。とにかく二日間とも空席が目立つ公演で、それが胸に突き刺さり本当に辛かった。思うに、演劇の現場において、今や野田秀樹さんや阿佐ヶ谷スパイダースのように一部の圧倒的な勝ち組がいる一方で、それと同じようなクオリティの作品を上演しようとしても、見る側が観客として育っていない感じがした。例えばこの作品は観客にもの凄い集中力を求める芝居である。ストーリーは単純で分かりやすいが、その集中力を高めるために諸々の手練手管を使う必要があり、それは非常に微妙なところで成立したりしなかったりするものなのだ。例えば、役者の微妙な間合いや関係性の作り方であってみたりするし、このように聞こえて欲しい音と聞こえないで欲しい音が別れる場合、観客がもっと入っていれば音の聞こえ具合も違ったのではないかと思ったりもする。いけだしんを始めとする素晴らしい客演も迎えていたが、結果として興行的に成功しているように見えなかったのが本当に辛かった。演劇は興行であり、思想や運動ではないというのが僕の考えだからだ。
 個人的には作品として好きなものであった。

青山円形劇場
2008年7月31日&8月2日
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脚本  森崎一博
演出  加納幸和
出演  茂山正邦  茂山宗彦  茂山逸平



 70分の時間に圧縮した作品。背広にスタイリッシュな美術、スピード感のある脚本に、笑いもふんだんに取り入れられた作品だ。ただ見ていて思ったのは、今昔物語異聞というより狂言界のスター3人の魅力を思う存分前面に出したもので、プレイゾーンってこんな作品なのかな?と想像した次第。
 異界との境界での物語。だから真夏の今の時期にはぴったりの話ではあった…。

2008年8月2日
紀伊國屋サザンシアター
唐十郎 作
流山児祥 演出

 60歳を過ぎて流山児祥はますます危なくなってきている。久々の唐十郎の作品をどう料理していくのか興味がつきない。


 面白くなかった。冒頭のダンスシーンや個々の俳優の面白さはあったけれど、物語として演劇としてなんか盛り上がっていかないのだ。濃密な空気が立ち上がって来ないのだ。先日のザスズナリでの舞台があまりにも面白かったので高い期待をしていったのだが。流山児☆事務所の公演らしいなあと思った。
 流山児☆事務所の公演ってこういうことがあるんです。前は面白かったのに、今回はダメみたいな。それも、僕の記憶だとでかい会場、特に本多劇場で公演する時に失速することが多い。反対にスペース早稲田で公演するときは面白いことが多いんだよなあ。何でだろう。
 面白いシーンはたくさんある。迫力も美しさもある。たとえば、冒頭の河原乞食のシーンや、島原の乱のシーン、塩野谷さんの殺陣の美しさや、沖田乱の動きや存在感、栗原茂の歌、甲津拓平のザピーナッツ風の歌とか、などなど個々のシーンは美しく成立しているのが、それらが融合しひとつの芝居として流れを作り、ドラマツルギーとして観客の僕の血を煮えたぎるように立ち上がっていかない。きっと時おり入る長台詞、シーンとして長過ぎるところなどで失速するのではないか。いや、何でかは一度見ただけでは分からない。とにかく時計を何回も見てしまった。最初にみたのは芝居が始まって40分だった。まだ1時間以上あるんだと思った。演劇というものは本当に難しいなあと思った。
 

2008年8月11日
本多劇場
作演出 松村武
出演  八嶋智人 松村武 藤田記子 山崎樹範 田端玲実 ほか
 
 ネットでの評判は良くないが、僕はきっと楽しんで観た。この作品は、とても哲学的で深遠で壮大な宇宙的な世界を松村武は切り開こうとしている宣言だ。作家として避けることはできないテーマ。生きるということは、死とはどういうことかを見据えていた。このような世界を中心に、現代的なポップなギャグ、言葉にもとことんこだわって提示しているのは日本では、他に野田秀樹くらいしか思い浮かばない。そう思って見ていると松村武は何回か出演した野田秀樹の世界を敬愛しながらも独自の作家性をどう確保して行くのかで、必死にモガイているようにも思える。こういうギャグは松村武らしいとか、こういう会話がカムカムぽいとか、そういう世間の評価もあるものだから、それも大切にする。それが2時間20分という長尺になる原因となっている。もっと切り込んで1時間50分であれば傑作になのにと思う。もちろん、思うのは簡単で自分でやってみろよ!と言われるとあわあわするのだが。
 観客は冒頭でこれは西遊記の話なのだと思い、そう構えている。しかしながら、40分もすると、それは全く違う世界に放り込まれ、どう見ていいのか分からなくなっていた。観客の反応は1時間もすると重いものになっていくのだ。観客の求めているのはもっとポップでナンセンスで不条理なギャグ。それを求めているように思える。
 それが、今回は松村武の死生観みたいなものを全面に提示されたので、え?こういう芝居なの??と慌てふためいたのではないか?
 宣伝はポップでとてつもないギャグワールドを楽しませてくれそうな感じがする。テレビの人気もののイメージもそれだから。しかし、時おりそういうものもあるけれど、全体を通して覆われるのはダークでティムバートンのような暗い世界。
 いっそ野田秀樹の軍門に下りましたと思って普通に書けば、松村武の世界は強固だからそのまま松村ワールドになるのに。大好きで敬愛する野田秀樹と距離感を保とうとしてかえって作品の完成度を低めているような感じがした。この作品をいつか再演して欲しい。1時間50分にして。
 
 役者陣はもちろんスゴい。今回は今井さんのダンスが面白かった。
 僕はこの作品で完全に松村武ワールドのファンになりました。ファン宣言!



2008年7月
シアターアプル
作・演出 村上秀樹
出演 武田諭 須賀文香 ほか

 正直申し上げて僕には全くダメだった。
人気があるんですよね?この劇団。今回はいつもと違ったのかも…。
唯一良かったなと思ったのは武田さんの演技と存在。
どんな芝居も見るべきところを見いだして、そこに集中すれば何とかなるのだと1時間50分。
何でそう思うかは、相当細かい指摘とかなり、天に唾するようなものだから、裏で。
 


2008年7月25日
駅前劇場
作 赤堀雅秋
演出 G2+3軒茶屋婦人会
出演 篠井英介 深沢敦 大谷亮介 

 篠井さんの舞台を拝見するのは何年ぶりだろう。一時期は欠かさず見ていたのに。壱組印に大好きな伴美奈子が出演するので観に行った。大谷さんはスゴいなあと改めて思った。そして、篠井さんが声をかけてくれた。僕は「ローズさん!」と。そしたら、本当に久しぶりにご案内を頂戴して。拝見した。本当に心に沁み入る芝居ってこういうものだと思う。名うての3人に赤堀さんが書いた。シャンプーハットの時は何か演劇界に足跡を残してやるって強い気持ちを感じてしまうのだけれど、今回は違った。赤堀さんが3人の先輩を敬愛して書いているのが良く分かる。赤堀雅秋の作品ながら、赤堀らしさを前面にだすことはなく、ただひたすら芝居を面白くすることだけに専念してくれた。
 平日マチネの会場は本当にこの芝居に出会えて幸せという女性ばかり。見事な演技だったし、じーんとした気持ちは残るのだけれど、人生の教訓なんかひとつも残らない芝居だった。
 もうしばらくしたら、大谷さんとも話せるようになるかなあ。
 篠井さんも、敦さんも、大谷さんも大好きだなあ。本当に。観に行って良かった。今度はもうちっと近くでやって欲しいと思った。





ベニサンピット
2008年7月23日
作:工藤千夏(青年団リンク・うさぎ庵)
演出:水下きよし(花組芝居)
出演:溝口健二、山下禎啓、桂憲一、大井靖彦、各務立基、美斉津恵友、水下きよし

 この作品に不満なのはタイトル。男たちのお料理教室のお料理のおは要らないのではないか!いやあ素晴らしい台本。そして、リアルな世界のもつ説得力。役者さんはみんな素敵で、美斉津くんまで素晴らしく文句のつけようもありません。水下さんのやくざ役がやり過ぎ!山下さんの髪が伸び過ぎ!溝口さん、噛んだ!そういう些細なところを云々云々。
 再演したらますます面白くなる素晴らしい作品が生まれました!



2008年7月20日
東京ガス横浜ショールーム 4F
脚本・演出 比佐廉
出演:小林美江 枝元萌 金子マリア ほか



 やはり小林美江は、存在感、演技力とも圧倒的だ。枝元萌さんも頑張っていた。この二人の女優を観るためにだけに出かけたのかもしれない。たっぷり観られて良かったです。

2008年7月16日
赤坂RED/THEATER
作演出 マキタカズオミ
出演  酒巻誉洋 永山智啓 ほか




公演中止!

ホームページより

elePHANTMoonから皆様へ 公演中止のお知らせ

急なご連絡となり誠に申し訳ありませんが、このたび2008年7月16日~21日まで
王子小劇場で予定していた公演elePHANTMoon#6「心の余白にわずかな涙を」を、
創作上の都合により中止することにいたしました。

突然の公演中止で、関係者の皆様はもちろん、公演を楽しみにしてくださっていた
皆様を裏切ってしまった事を、心よりお詫び申し上げます。

劇団員一同、誠実な態度をもって皆様への対応をしていきます。
(以下略)


2008年7月
王子小劇場



 ヘンテコな作品を無理矢理上演するより、こちらの方が誠実だよね。多大な赤字を背負うことになったはず。大変だなあ。  佐藤
アントンチェーホフ作
栗山 民也 演出
出演 鹿賀丈史 麻美れい 藤原竜也 ほか


 まさにオールスターキャストで、ロシアからの来日組や、例えば90年代のピーターブルックが作るチェホフとも、また日本の新劇やチェホフ研究会みたいな劇団がやるそれとは違って、非常に分かりやすいある意味チェホフらしくない「かもめ」であった。それが良くないとはいってない。
 先ずは俳優の魅力を存分に引き出すことに演出の肝を老いたような気がする。藤原竜也を初めていいなと思うくらいに藤原竜也だったし、麻美れいなどはキチンとお客さんの笑いを取りに行くのだ。藤田弓子や藤木孝、中島しゅうなど脇役まで豪華である。もう一度申し上げる。栗山民也さんの演出は、初めて「かもめ」に触れる人にも分かりやすく丁寧に演出をしていた。大劇場の商業演劇でやる「かもめ」とはこういうものなのですね。
 しかし、この赤坂ACTシアターはストレートプレイをするにはほとほと不向きな劇場だと思った。私は1階後方で見ていたのだが、先ずは、舞台の額縁が大きすぎるのだ。この芝居は大劇場でやっても決して悪くない。しかし、その劇場の形状はとても大切だ。ここは、高さも幅もありすぎる。反対に奥がない。ロシアの何か途方もなく広がる中を表現するのに舞台は奥行きが必要だ。美術はその根本問題に四苦八苦したのか、でかい額縁をいろんな形で切り取っていた。終幕の部屋のシーンなどは、舞台空間の7割以上を切り取ってしまう。そもそもこの劇場を選んだのが間違いなのだ。
 そして、劇場自体が新しすぎて何か落ち着いていない感じがするのだ。長年やっている劇場はスタッフだけでなく、お客さんも勝手が分かっていて何となく居心地のいい家のように振る舞うのだから、そこにそういう空気が流れる。しかし、この劇場にはそれがない。チェホフのように古典をやるのにはそれに相応しい劇場が必要である。歌舞伎座で歌舞伎を見るのと、松竹の巡業公演で各地の公民館、公共ホールで歌舞伎を見るのでは何となく違う。それは劇場に流れる空気が違うからなのだ。
 そして、ここは、音楽ものをやるのに相応しい劇場なのだろう。劇場客席の容積が大きすぎる。これもストレートプレイには向かないのだ。
 見て損ではないが、どうしても見なくてはならない芝居でもない。そんな感想をもった。

2008年7月10日
赤坂ACTシアター

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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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