自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
作曲 ウォルフガング アマデウス モーツアルト
演出 ロベルト・デ・シモーネ
リッカルドムーティ指揮
ウィーン国立歌劇場管弦楽団/合唱団
もう数えられないほどコシはきいた。でも最高峰のひとつは、もう20年以上前にきいたロイヤルオペラのコシだろう。キリテカナワ!あなたは真のデームでした。多くの歌劇場が日本で名演を残してきたのだがウィーンがやるとなると別。ムーティがこだわるモーツアルト。シモーネの美しい演出も相まってとても気になる。芝居の稽古も始まっているタイミングだがこれだけは!という感じで行くのだ。今回の3演目のなかでこれだけに絞ったので許して下さい。
僕は人がいうほどムーティの指揮って好きじゃありません。そんなに魅力も感じない。けれど、今宵のモーツアルトは素晴らしかった。先ずはこの作品がナポリの辺りでの話であることを再度認識せてくれた美術衣装。そして音楽を壊さない品のいい演出。良かったなあ。歌手も素晴らしくケチを付けたいような人がいない。もちろん、ロイヤルオペラのキリテカナワ、トーマスアレンできいたときのようなカリスマ性はないのだけれど、ムーティのもとにみんなで作り上げた上演として本当に素晴らしいものだった。このような当たりに出会うことがあるから、オペラ通いが辞められない。
2008年10月21日
東京文化会館大ホール
演出 ロベルト・デ・シモーネ
リッカルドムーティ指揮
ウィーン国立歌劇場管弦楽団/合唱団
もう数えられないほどコシはきいた。でも最高峰のひとつは、もう20年以上前にきいたロイヤルオペラのコシだろう。キリテカナワ!あなたは真のデームでした。多くの歌劇場が日本で名演を残してきたのだがウィーンがやるとなると別。ムーティがこだわるモーツアルト。シモーネの美しい演出も相まってとても気になる。芝居の稽古も始まっているタイミングだがこれだけは!という感じで行くのだ。今回の3演目のなかでこれだけに絞ったので許して下さい。
僕は人がいうほどムーティの指揮って好きじゃありません。そんなに魅力も感じない。けれど、今宵のモーツアルトは素晴らしかった。先ずはこの作品がナポリの辺りでの話であることを再度認識せてくれた美術衣装。そして音楽を壊さない品のいい演出。良かったなあ。歌手も素晴らしくケチを付けたいような人がいない。もちろん、ロイヤルオペラのキリテカナワ、トーマスアレンできいたときのようなカリスマ性はないのだけれど、ムーティのもとにみんなで作り上げた上演として本当に素晴らしいものだった。このような当たりに出会うことがあるから、オペラ通いが辞められない。
2008年10月21日
東京文化会館大ホール
PR
原作 ポール・オースター
構成・台本・演出 白井晃
出演 仲村トオル/田中圭/三上市朗/小宮孝泰 ほか
すげー面白かった。白井晃さんの作品って今まで何本か見て、全部忘れてーって思うくらいに肌に合わなかったが、これはスゴいぞ。原作もいいのだろうけど、台本と演出がもう秀悦!センスがいいし、スピーディーだし、本質はがつっとつかんでいるし。衣装も美術も照明も存分に金をかけ、その成果を出していた。仲村トオルの素晴らしい演技。田中圭のパッション。三上市朗の見事な渋い演技。小宮さんのコミカルさ。全てが人生の万華鏡を彩るように素晴らしいアンサンブルとなっていた。だからこそ、あの終わり方も納得いくのだ。そう、人生ってそういう感じで幕が降りるのだろうと俺は思ったよ。
あああああああああああ、面白かった。良かった!!!!!
世田谷パブリックシアター
2008年9月18日
構成・台本・演出 白井晃
出演 仲村トオル/田中圭/三上市朗/小宮孝泰 ほか
すげー面白かった。白井晃さんの作品って今まで何本か見て、全部忘れてーって思うくらいに肌に合わなかったが、これはスゴいぞ。原作もいいのだろうけど、台本と演出がもう秀悦!センスがいいし、スピーディーだし、本質はがつっとつかんでいるし。衣装も美術も照明も存分に金をかけ、その成果を出していた。仲村トオルの素晴らしい演技。田中圭のパッション。三上市朗の見事な渋い演技。小宮さんのコミカルさ。全てが人生の万華鏡を彩るように素晴らしいアンサンブルとなっていた。だからこそ、あの終わり方も納得いくのだ。そう、人生ってそういう感じで幕が降りるのだろうと俺は思ったよ。
あああああああああああ、面白かった。良かった!!!!!
世田谷パブリックシアター
2008年9月18日
指揮リッカルドムーティ
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
9月16日 ブルックナー作曲 交響曲第2番 ハイドン作曲 交響曲67番
9月18日 ヴェルディ作曲 オペラ「ジャンヌダルク」序曲/「シチリア島の夕べの祈りから」四季
ニーノロータ作曲 トローンボーン協奏曲/映画「山猫」から
ウィーンフィルハーモニーを聞く悦びは最上の音楽に身を浸す悦びです。ブルックナーやハイドンのあまり演奏されない曲目に加え、何とニーノロータ!ウィーンフィルで聞くことができるのはこれが最初で最後でしょう。愛するニーノロータとウィーンフィルが結実する。悦びの極地です。
16日 徹夜の仕事をしたあとで、正直申し上げると体調は最悪だった。眠らなきゃいいけどなあと思うほどの事態。1階のセンター後方の座席に座って仮眠をとるくらい。浩宮さまのご臨席ということもあり華やいだ雰囲気もある。しかし、渋い選曲だなあと思っていた。
そんな杞憂もハイドンの交響曲の最初の一音で消し飛んだ。やはりウィーンフィル。ダメな時もあるんだけれど、最上の演奏をする時には恐ろしい馬力を発揮する。いや、馬力というよりもふわーっと広がる薫りみたいなものなんです。素晴らしいアンサンブル、時には音が壊れることもあるけれど管セクションの品の良さ至上の音楽体験となった。
ブルックナーの2番もまあ最初で最後のウィーンフィルでの演奏でしょう。堪能させて頂きました。音楽を愛してきて幸せだなあと感じた一夜であるとともに、僕の知ってる多くの若者に聞かせて上げたかったと思った演奏会でもありました。
16日がオーストリアプロだとすると、こちらは完全にイタリアプロ。しかしね。渋い曲が並んだ。前半はヴェルディ。「ジャンヌダルク」序曲「シチリア島の夕べの祈りからバレエ曲」って、バレエシーンは普通カットだし、俺だって一回しかみたことのない作品だし。ヴェルディの世界なのだけれど、通俗的なものを取り去った感じがした。後半はニーノロータだよ。有名なビスコンティの「山猫」とかもちろん初めてきくトローンボーン協奏曲とか。しかしね。何かムーティがノリに乗って演奏しているんだよね。いやあ良かったです。アンコールはプッチーニのマノンレスコー間奏曲。先日のミラノスカラ座フィルでの演奏もきいたが、こちらの方が数段上。色気と品格があった。
サントリーホール
2008年9月16日/18日
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
9月16日 ブルックナー作曲 交響曲第2番 ハイドン作曲 交響曲67番
9月18日 ヴェルディ作曲 オペラ「ジャンヌダルク」序曲/「シチリア島の夕べの祈りから」四季
ニーノロータ作曲 トローンボーン協奏曲/映画「山猫」から
ウィーンフィルハーモニーを聞く悦びは最上の音楽に身を浸す悦びです。ブルックナーやハイドンのあまり演奏されない曲目に加え、何とニーノロータ!ウィーンフィルで聞くことができるのはこれが最初で最後でしょう。愛するニーノロータとウィーンフィルが結実する。悦びの極地です。
16日 徹夜の仕事をしたあとで、正直申し上げると体調は最悪だった。眠らなきゃいいけどなあと思うほどの事態。1階のセンター後方の座席に座って仮眠をとるくらい。浩宮さまのご臨席ということもあり華やいだ雰囲気もある。しかし、渋い選曲だなあと思っていた。
そんな杞憂もハイドンの交響曲の最初の一音で消し飛んだ。やはりウィーンフィル。ダメな時もあるんだけれど、最上の演奏をする時には恐ろしい馬力を発揮する。いや、馬力というよりもふわーっと広がる薫りみたいなものなんです。素晴らしいアンサンブル、時には音が壊れることもあるけれど管セクションの品の良さ至上の音楽体験となった。
ブルックナーの2番もまあ最初で最後のウィーンフィルでの演奏でしょう。堪能させて頂きました。音楽を愛してきて幸せだなあと感じた一夜であるとともに、僕の知ってる多くの若者に聞かせて上げたかったと思った演奏会でもありました。
16日がオーストリアプロだとすると、こちらは完全にイタリアプロ。しかしね。渋い曲が並んだ。前半はヴェルディ。「ジャンヌダルク」序曲「シチリア島の夕べの祈りからバレエ曲」って、バレエシーンは普通カットだし、俺だって一回しかみたことのない作品だし。ヴェルディの世界なのだけれど、通俗的なものを取り去った感じがした。後半はニーノロータだよ。有名なビスコンティの「山猫」とかもちろん初めてきくトローンボーン協奏曲とか。しかしね。何かムーティがノリに乗って演奏しているんだよね。いやあ良かったです。アンコールはプッチーニのマノンレスコー間奏曲。先日のミラノスカラ座フィルでの演奏もきいたが、こちらの方が数段上。色気と品格があった。
サントリーホール
2008年9月16日/18日
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
サイモンラトル 指揮
ブラームス交響曲全曲
ついにこの日がやってきた!という感じだ。国内外でいろんなブラームスをきいてきた。そして、世界最高峰のオケ、数少ない天賦の指揮者ラトルによる組み合わせできくブラームスの交響曲のすべて。しっかり準備してのぞみたいと思う。しかし、いったいどんな音楽体験ができるのか。30年以上聞いてきた音楽ライブ。40代で聞くひとつの頂点となるのだろう。
聴いて来た。やはりベルリンフィルの演奏力は物凄いものがある。天才サイモンラトルは、そこに何とか自分の痕跡を残そうと必死に食らいつく。ピアニシモ、インテンポ、アクセント。妙に唄わせたり。しかし、そのような必死の格闘もブラームスのスコアと欧州一のオーケストラの技術と伝統の前には何の役にもたたない。あのカラヤンでさえ、演奏が始まったら流れに身を任せているてなことを言っていたけれど。ホントにそうだなあ。ブラームスの演奏として忘れ難いものがあった。
11月25日/26日
サントリーホール
サイモンラトル 指揮
ブラームス交響曲全曲
ついにこの日がやってきた!という感じだ。国内外でいろんなブラームスをきいてきた。そして、世界最高峰のオケ、数少ない天賦の指揮者ラトルによる組み合わせできくブラームスの交響曲のすべて。しっかり準備してのぞみたいと思う。しかし、いったいどんな音楽体験ができるのか。30年以上聞いてきた音楽ライブ。40代で聞くひとつの頂点となるのだろう。
聴いて来た。やはりベルリンフィルの演奏力は物凄いものがある。天才サイモンラトルは、そこに何とか自分の痕跡を残そうと必死に食らいつく。ピアニシモ、インテンポ、アクセント。妙に唄わせたり。しかし、そのような必死の格闘もブラームスのスコアと欧州一のオーケストラの技術と伝統の前には何の役にもたたない。あのカラヤンでさえ、演奏が始まったら流れに身を任せているてなことを言っていたけれど。ホントにそうだなあ。ブラームスの演奏として忘れ難いものがあった。
11月25日/26日
サントリーホール
作・演出 西山 聡
出演 服部弘敏 酒巻誉洋 竹岡真悟 カトウシンスケ ほか
クロム舍の頃の西山作品をふたつくらい見たことがあるが、もう全然ワープ!。きっと4年くらいはこうして自らのフルロングな作品を世に問うことはなかったのだと思うけれど、素晴らしい作品になっていた。ロック!ロックな男臭い空気がぎらぎらとしている。設定はシンプル、話は疾走し、大本に無駄がなく、いい意味での遊び心にあふれている。ロードムービーのような爽快感。ま、そんな病気も、そんな保険もありませんと突っ込みどころはあるが、芝居には関係ない。ロック!ロック!ヘナチョコな酒巻青年が成長して行くのだ。世の中に自分を開いて行くのだ。ギャラリールデコで見た全ての芝居の中で圧倒的な存在となった。服部弘敏という俳優も面白いし、竹中慎吾という俳優も良かった。カトウシンスケも。何かロックでない俳優が混じっていると目立つな。ヤバいよ、あれ。とにかく、西山聡すげー。今年の期待を上回った作品としては、指折りに入る作品となった。
2008年9月4日
ギャラリールデコ
出演 服部弘敏 酒巻誉洋 竹岡真悟 カトウシンスケ ほか
クロム舍の頃の西山作品をふたつくらい見たことがあるが、もう全然ワープ!。きっと4年くらいはこうして自らのフルロングな作品を世に問うことはなかったのだと思うけれど、素晴らしい作品になっていた。ロック!ロックな男臭い空気がぎらぎらとしている。設定はシンプル、話は疾走し、大本に無駄がなく、いい意味での遊び心にあふれている。ロードムービーのような爽快感。ま、そんな病気も、そんな保険もありませんと突っ込みどころはあるが、芝居には関係ない。ロック!ロック!ヘナチョコな酒巻青年が成長して行くのだ。世の中に自分を開いて行くのだ。ギャラリールデコで見た全ての芝居の中で圧倒的な存在となった。服部弘敏という俳優も面白いし、竹中慎吾という俳優も良かった。カトウシンスケも。何かロックでない俳優が混じっていると目立つな。ヤバいよ、あれ。とにかく、西山聡すげー。今年の期待を上回った作品としては、指折りに入る作品となった。
2008年9月4日
ギャラリールデコ
作 三島由紀夫
演出 鈴木勝秀
出演 加納幸和 篠井英介 小林高鹿 石井正則 ほか
今年度最大の演劇的事件のひとつ。加納さんと篠井さんが共演するのだ。この芝居をみるために今年は篠井さんのお芝居を数年ぶりに見ている。テレビも見ている。もちろん加納さんも!二人がどんな一年を過ごしつつこの戯曲に臨むのか。興味津々である。これを観ずして今年の演劇は語れない!
あまり火花が散らなかった感じがする。お二人は上手いし魅力的だけれど、三島の書いた物語の方がもっとでかかった感じがする。特に長い台詞になると、この現代女形の二大看板が三島の後ろに二歩も三歩も下がってしまうような気がしたのは何故だろう。面白かったし大満足なんだけど、期待の大きさが無限大にあったからかな?
2008年10月
東京グローブ座
演出 鈴木勝秀
出演 加納幸和 篠井英介 小林高鹿 石井正則 ほか
今年度最大の演劇的事件のひとつ。加納さんと篠井さんが共演するのだ。この芝居をみるために今年は篠井さんのお芝居を数年ぶりに見ている。テレビも見ている。もちろん加納さんも!二人がどんな一年を過ごしつつこの戯曲に臨むのか。興味津々である。これを観ずして今年の演劇は語れない!
あまり火花が散らなかった感じがする。お二人は上手いし魅力的だけれど、三島の書いた物語の方がもっとでかかった感じがする。特に長い台詞になると、この現代女形の二大看板が三島の後ろに二歩も三歩も下がってしまうような気がしたのは何故だろう。面白かったし大満足なんだけど、期待の大きさが無限大にあったからかな?
2008年10月
東京グローブ座
作 三谷幸喜
演出 佐藤B作
出演 あめくみちこ、佐渡稔、小林美江、市川勇、山本ふじこ、角間進、中沢裕子 ほか
三谷幸喜作品群の中でも屈指の傑作を東京ヴォードヴィルショーのベテランを中心に豪華なゲストを迎えて上演。個人的には久々に拝見する小島慶四郎さん、かわいい中澤裕子さん、おちゃめな山本ふじこさんを舞台で観られることと、ベジャールのバレエで素晴らしい踊りを披露していた小林十市の俳優としての仕事を観るのが楽しみ!
面白かった。僕はこの作品の原作となっている東京ヴォードヴィルショー本公演「アパッチ砦の攻防」の再演版を紀伊國屋サザンシアターで見ている。それはスゴかった。伊東四朗さんに、松金よねこさんといった名うての客演を呼び、佐藤B作さんを始めとするヴォードヴィル軍団が笑いの超王道のど真ん中を演じきった。
それだけに実は2006年の公演「戸惑いの日曜日」の新しいキャストが心配で観なかったのだが、朝日新聞で三谷幸喜さんが自賛していたのをみて、大好きな作品であることもあり、今回拝見した。今回は主役であった佐藤B作さんが演出に廻り升毅さんを代役に立てるということで、オリジナルキャストのメイン部分がほぼ入れ替わったことになった。それでも、この作品はびくともしなかった。会場中は笑いに包まれた。ベタな上にベタな作品。誰もがどこかでこういうコメディってあったよなと思えるくらいの王道作品の五つ星作品があた。
その緻密な作劇と見事な演技に3時間があっという間に過ぎていくのだ。今回も小島慶四郎さんと、小林美江さんが笑いのミサイルを客席に投げ込むのだが、山本ふじこ、市川勇、佐渡稔、市瀬理津子といったヴォードヴィルショーの名優たちの創りだす笑いの土台のスゴいこと。そして、この作品でもあめくみちこさんは美しく面白い、日本のコメディアンヌとしての最高峰としての他に換え難い逸材であることを立証する。例えば、さすがの三谷さんも辻褄が合わなくなったのか、あめくさんが発する「あ、目眩が!」といって倒れるところ。引っ張り方、間合い、声のトーン、倒れ方、倒れたあとの姿形。見事である!!
ちょっと古いかもしれないが、あめくみちこは、日本のゴールデンホーン、メグライアンのような存在だと思うのだ。
また、中澤裕子の可愛さ、小林十市の品のよさなども特筆すべき作品に仕上がっている。西郷輝彦、石野真子もステージを重ねているだけにぶれの少ない演技で。どうも今日、小島さんが間違った台詞を笑いとして取り込む余裕もあったようだ。観客の誰もが8500円を払ってみて良かったと思っているそんな作品になかなか出会うことはできないはずと僕は思うのだ。
ビリーワイルダーが見たら、喜ぶだろうなと思う、そんなお芝居。家族揃って、友達、恋人と、誰とみても、ひとりでみても楽しい傑作です。こういう作品を初めに観ると演劇が好きになるものなのです。
2008年9月1日
サンシャイン劇場
演出 佐藤B作
出演 あめくみちこ、佐渡稔、小林美江、市川勇、山本ふじこ、角間進、中沢裕子 ほか
三谷幸喜作品群の中でも屈指の傑作を東京ヴォードヴィルショーのベテランを中心に豪華なゲストを迎えて上演。個人的には久々に拝見する小島慶四郎さん、かわいい中澤裕子さん、おちゃめな山本ふじこさんを舞台で観られることと、ベジャールのバレエで素晴らしい踊りを披露していた小林十市の俳優としての仕事を観るのが楽しみ!
面白かった。僕はこの作品の原作となっている東京ヴォードヴィルショー本公演「アパッチ砦の攻防」の再演版を紀伊國屋サザンシアターで見ている。それはスゴかった。伊東四朗さんに、松金よねこさんといった名うての客演を呼び、佐藤B作さんを始めとするヴォードヴィル軍団が笑いの超王道のど真ん中を演じきった。
それだけに実は2006年の公演「戸惑いの日曜日」の新しいキャストが心配で観なかったのだが、朝日新聞で三谷幸喜さんが自賛していたのをみて、大好きな作品であることもあり、今回拝見した。今回は主役であった佐藤B作さんが演出に廻り升毅さんを代役に立てるということで、オリジナルキャストのメイン部分がほぼ入れ替わったことになった。それでも、この作品はびくともしなかった。会場中は笑いに包まれた。ベタな上にベタな作品。誰もがどこかでこういうコメディってあったよなと思えるくらいの王道作品の五つ星作品があた。
その緻密な作劇と見事な演技に3時間があっという間に過ぎていくのだ。今回も小島慶四郎さんと、小林美江さんが笑いのミサイルを客席に投げ込むのだが、山本ふじこ、市川勇、佐渡稔、市瀬理津子といったヴォードヴィルショーの名優たちの創りだす笑いの土台のスゴいこと。そして、この作品でもあめくみちこさんは美しく面白い、日本のコメディアンヌとしての最高峰としての他に換え難い逸材であることを立証する。例えば、さすがの三谷さんも辻褄が合わなくなったのか、あめくさんが発する「あ、目眩が!」といって倒れるところ。引っ張り方、間合い、声のトーン、倒れ方、倒れたあとの姿形。見事である!!
ちょっと古いかもしれないが、あめくみちこは、日本のゴールデンホーン、メグライアンのような存在だと思うのだ。
また、中澤裕子の可愛さ、小林十市の品のよさなども特筆すべき作品に仕上がっている。西郷輝彦、石野真子もステージを重ねているだけにぶれの少ない演技で。どうも今日、小島さんが間違った台詞を笑いとして取り込む余裕もあったようだ。観客の誰もが8500円を払ってみて良かったと思っているそんな作品になかなか出会うことはできないはずと僕は思うのだ。
ビリーワイルダーが見たら、喜ぶだろうなと思う、そんなお芝居。家族揃って、友達、恋人と、誰とみても、ひとりでみても楽しい傑作です。こういう作品を初めに観ると演劇が好きになるものなのです。
2008年9月1日
サンシャイン劇場
作 イヨネスコ
演出・美術 佐藤信
出演 柄本明 佐藤オリエ 高田聖子 ほか
鴎座もいいのですが、佐藤信さんにきちんとした予算を渡せばここまでの作品を作り上げてくれるということをきっと証明してくれるのではないかと思います。イヨネスコは言葉だけで、いままで対峙したことのない作家です。それを佐藤信さんという知性だけに頼らない感性の持ち主を通してみる。壊すことを厭わない。巨匠になることを拒み続ける巨匠によって作られる楽しみがここにはあります。
難しそうだと怖がらずにぜひご覧あれ!こういう壁の高いものこそ超一流のスタッフキャストで観なければ乗り越えることはできません。ちょうど、シュトックハウゼンの音楽の最高のインタープリターがマウリッィオポリーニであるように。
2008年9月
あうるすぽっと
最終日に見た。やっぱり見ておかなくちゃと思ってみた。スゴかった。こんなに面白い作品だと思わなかった。ある国王の臨終までの葛藤を描いた作品で、生にしがみついていた国王が次第に死を受け入れて死んで行くまでの話なのだ。それが、柄本明という肉体と精神を通して本当に面白く本質的で現代的な作品になっていた。佐藤オリエ、高田聖子さんという二人の女優さんも素晴らしく、今年屈指の傑作。
演出・美術 佐藤信
出演 柄本明 佐藤オリエ 高田聖子 ほか
鴎座もいいのですが、佐藤信さんにきちんとした予算を渡せばここまでの作品を作り上げてくれるということをきっと証明してくれるのではないかと思います。イヨネスコは言葉だけで、いままで対峙したことのない作家です。それを佐藤信さんという知性だけに頼らない感性の持ち主を通してみる。壊すことを厭わない。巨匠になることを拒み続ける巨匠によって作られる楽しみがここにはあります。
難しそうだと怖がらずにぜひご覧あれ!こういう壁の高いものこそ超一流のスタッフキャストで観なければ乗り越えることはできません。ちょうど、シュトックハウゼンの音楽の最高のインタープリターがマウリッィオポリーニであるように。
2008年9月
あうるすぽっと
最終日に見た。やっぱり見ておかなくちゃと思ってみた。スゴかった。こんなに面白い作品だと思わなかった。ある国王の臨終までの葛藤を描いた作品で、生にしがみついていた国王が次第に死を受け入れて死んで行くまでの話なのだ。それが、柄本明という肉体と精神を通して本当に面白く本質的で現代的な作品になっていた。佐藤オリエ、高田聖子さんという二人の女優さんも素晴らしく、今年屈指の傑作。
作・演出 中屋敷法仁
出演 深谷由梨香 玉置玲央 七味まゆ味 中林舞(快快) 佐藤みゆき(こゆび侍) 須貝英(箱庭円舞曲)武藤心平(7%竹)ほか38名
初見の劇団。出演者に誘われて拝見。とにかく38名も出ているのである。1時間45分、いろんな力量とバックボーンの38名の役者を巧みな演出で飽きずに観させてくれたことは特筆に値するといっていいだろう。何しろ一番年上がダントツで武藤心平なのだ。完全に新世代。それだけでいいじゃないかと思ってしまう。客席を見ていると面白がっているところと、ぽかーんとしているところと、明らかに気持ちがアレレになっている人と別れている。それも、それでいいのだと思う。
一見すると、野田秀樹の芝居のようでもある。役者は頻繁に出入りし、ハイテンションで動き回る。叫び続ける。うまい役者は舞台上に腰を据えて中軸を担う。この芝居は1時間45分のハイテンションを要求するので、そのテンションが途切れてしまいそうなものは、すぐに引っ込んで行く。上手い方法だ。何しろ立っているだけの時に素になってしまっているひともいる。大勢いれば目立たないが少人数だとやばいのだ。そういうことを巧みに計りながら演出をつけていくところはさすがである。勉強になった。
自分が注目すべきと思った役者で名前が分かったのは上述の人たちだ。女の子たちは存在感もあるし見栄えもいい。七味さんはアルトの感じで、20代も面白いが30代が楽しみな女優。深谷さんは美女で、メイクで顔をぐちゃぐちゃにしたり、きわどい台詞をいっても汚くない。ずるいなと思った。二人とももう少し台詞がはっきり聞こえたらなお良いのになと思うが、きっとこれからドンドン上手くなるのだと思う。玉置君は前に見た客演のときも存在感があったが、今回はさらにあった。この男が舞台の中央にいると、こんな話ありかよ!と思える設定も何となく受け入れてしまうのだ。笑いのセンスもありそうだし、身体能力もある。ほとんど全裸になっても鍛えているのが良く分かった。3人とも若さ爆発でありました。武藤心平は相変わらず上手い。おいしいところを作りさらっていく。偉い。
野田芝居のようだと言ったが、その世界観の大きさはまったく違う。若いからか。そう、25歳くらいの若者が書いている作品らしい。もうなにも言うまいって感じだ。若いセックスに無限の興味のある世代が、興味の枠組みをセックスで固定化して、その中で遊んでいるのだ。面白いじゃないか。
2008年8月28日
吉祥寺シアター
出演 深谷由梨香 玉置玲央 七味まゆ味 中林舞(快快) 佐藤みゆき(こゆび侍) 須貝英(箱庭円舞曲)武藤心平(7%竹)ほか38名
初見の劇団。出演者に誘われて拝見。とにかく38名も出ているのである。1時間45分、いろんな力量とバックボーンの38名の役者を巧みな演出で飽きずに観させてくれたことは特筆に値するといっていいだろう。何しろ一番年上がダントツで武藤心平なのだ。完全に新世代。それだけでいいじゃないかと思ってしまう。客席を見ていると面白がっているところと、ぽかーんとしているところと、明らかに気持ちがアレレになっている人と別れている。それも、それでいいのだと思う。
一見すると、野田秀樹の芝居のようでもある。役者は頻繁に出入りし、ハイテンションで動き回る。叫び続ける。うまい役者は舞台上に腰を据えて中軸を担う。この芝居は1時間45分のハイテンションを要求するので、そのテンションが途切れてしまいそうなものは、すぐに引っ込んで行く。上手い方法だ。何しろ立っているだけの時に素になってしまっているひともいる。大勢いれば目立たないが少人数だとやばいのだ。そういうことを巧みに計りながら演出をつけていくところはさすがである。勉強になった。
自分が注目すべきと思った役者で名前が分かったのは上述の人たちだ。女の子たちは存在感もあるし見栄えもいい。七味さんはアルトの感じで、20代も面白いが30代が楽しみな女優。深谷さんは美女で、メイクで顔をぐちゃぐちゃにしたり、きわどい台詞をいっても汚くない。ずるいなと思った。二人とももう少し台詞がはっきり聞こえたらなお良いのになと思うが、きっとこれからドンドン上手くなるのだと思う。玉置君は前に見た客演のときも存在感があったが、今回はさらにあった。この男が舞台の中央にいると、こんな話ありかよ!と思える設定も何となく受け入れてしまうのだ。笑いのセンスもありそうだし、身体能力もある。ほとんど全裸になっても鍛えているのが良く分かった。3人とも若さ爆発でありました。武藤心平は相変わらず上手い。おいしいところを作りさらっていく。偉い。
野田芝居のようだと言ったが、その世界観の大きさはまったく違う。若いからか。そう、25歳くらいの若者が書いている作品らしい。もうなにも言うまいって感じだ。若いセックスに無限の興味のある世代が、興味の枠組みをセックスで固定化して、その中で遊んでいるのだ。面白いじゃないか。
2008年8月28日
吉祥寺シアター
最新記事
(01/06)
(12/25)
(08/05)
(06/30)
(12/16)
(08/21)
(04/10)
(09/25)
(11/30)
(11/18)
(11/03)
(10/04)
(09/19)
(08/28)
(06/25)
(06/10)
(12/30)
(02/21)
(12/31)
(09/28)
(06/09)
(05/12)
(12/31)
(09/08)
(06/02)
プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
HP:
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
カテゴリー
カレンダー
01 | 2025/02 | 03 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
フリーエリア
最新CM
[08/24 おばりーな]
[02/18 清水 悟]
[02/12 清水 悟]
[10/17 栗原 久美]
[10/16 うさきち]
最新TB
ブログ内検索
アーカイブ
最古記事
(12/05)
(12/07)
(12/08)
(12/09)
(12/10)
(12/11)
(12/29)
(01/03)
(01/10)
(01/30)
(02/13)
(03/09)
(03/12)
(03/16)
(03/17)
(03/19)
(03/20)
(03/20)
(03/22)
(03/22)
(03/23)
(03/24)
(03/28)
(04/01)
(04/01)
カウンター