佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 2008年2月に見たお芝居から 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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 古川オフィス「シェイクスピアの人々とロンドンミュージカル」〜アダルト編〜
 銀座みゆき館で。先日の「ベゴニアと鈴らん」に出演してくださった岡田静さんが、4月の帝劇公演「ラマンチャの男」でカラスコ役を演じる福井貴一さん、東宝等のミュージカルのアンサンブルのトップクラスの人として出演している有希九美さんと3人でライブ。シェイクスピアのリーディングとロンドンミュージカルを唄うという嗜好。福井さんが朗読も歌も絶品で僕は思わずブラボーと言ってしまったくらいです。驚いたのはリチャード3世の第一幕ニ場のシーンでグロスター公を演じた福井さんは、悪漢なイメージを全く出さない、むしろ誠実な人間のような空気で演じられた。それがものすごい迫力なのだ。悪漢は自分の行う卑劣な行為を当然のこととしてやってしまうものだ。それに対するアンは感情むき出しでちょっと損でした。有希さんは、本当に少女みたいな方なんだと思ってしまいました。岡田さんにはきっと合わないマクベス夫人。それがテキストに身を委ね普通に演じられる。ものすごくマクベス夫人の恐ろしさが出ていた。
 後半の歌。岡田さんは1曲目のオペラ座の怪人では高音の音程が怪しかったりするのだけれど、「私はイエスがわからない」「夢破れて」などもう完璧な美味さ。声は出るし味はあるし絶品だった。岡田さんに歌を書いたという大それたことを良く出来たようなあと思った次第。そして、驚いたのは福井さん。美味いとは思っていたけれど、ファントムのミュージックオブザナイトやキャッツの終幕に唄われる劇場猫なんかは、2時間半の芝居が見渡せるように唄って見せてくれた。福井さんと岡田さんにブラボーです。有希さんは、泣かないでアルゼンチーナ、メモリーなどを名曲を唄うから、どうしても名舞台のそれと比較してしまう。台本でも選曲でも損をされていたと思いました。ご自分の属するオフィスの主催公演なのだから、もっとわがままを言えばいいのにと思いました。
 銀座みゆき館という小さな空間で福井さんや岡田さんらを見られるのは本当に贅沢です。


日本工学院専門学校 俳優/声優科卒業公演 「デンキ島」Bキャスト。6号館1階で有馬自由演出。これは、工学院の俳優声優課の卒業公演。これが良かった。蓬莱竜太さんの骨太な台本を若いひとならではのとにかく思い切り!で見せてくれた。面白かった。 何か泣けちゃいました。きっと、モダンスイマーズもワンオアエイトも学生時代はこんな勢いで芝居やっていたのだろうなと思ったのです。出演している人たちも来年になったら何人芝居やっているのかなとも思ったりしていたのだけれど、やっている本人は今の芝居をヤリきることだけを考えて疾走している。思い切り叫び、走り、身体を動かす。有馬自由は余計なことをさせない。この若者たちのもっている芯の部分だけで勝負させる。それがいいのです。美味く見せてやろうと思った瞬間に敗北してしまうのだから。 いやあ、良かったです。蒲田の街をしばらく離れたくなくてぶらぶらしてしまいました。みな良かったんだけれど、特に小森碧、多田聡、高橋昭伍、寺井慧、坂入絵里奈、桂木健之朗、高橋千絵が良かったです。

 からっぽの湖
 俳優力で見せた芝居。野間口湖にネッシーみたいなノッシーがいるいない?そんな話だけでもないか。もう別にストーリーにこだわる物語系お芝居を観に行った人は面食らったかもしれない。むしろ、それはどうでもいいくらい。登場する人間関係のあれそれで見せて行く。台本を元ネタに俳優たちが、そこに人間の何を発見するかを見いだすのだ。
 ウェルメイドなコメディとか、いつものアガペなものを望んでいる人には不満なのかもしれないけどね。僕は松尾さんの芝居は、BIZシリーズがとにかく好きなんです。あと、地獄八景みたいな落語もの。一行レビューでの酷評はいったいなんなのか、良く分からないです。
 http://www.g2produce.com/agape/12/com_matsuo.mov

 恋はコメディ
 加納幸和さんの品の良さが光った演出。何かヘンテコな山場などは作らないんですね。台本がしっかりしているからいいではないか!とそれだけで。見た直後はその良さに気がつかなかった。しかし、あとからじわりと来る舞台。王道なコメディ。正統な話。こういうお芝居は役者さんのものすごい集中力とアンサンブルの妙みたいなものが大切です。3人の女優も2人の男優もやはりプロの仕事。レベルは高いし、作品と俳優の良さを大切にする加納さんの演出も派手ではないけど見事なんです。こういうのって、実はヘタクソな著名な演出家っていますよね?
 秋吉久美子さんの自由奔放さ、浅岡ルリ子さんがいろんなことを背負って演じ、渡辺えりさんがメチャクチャ可愛い。可愛いんです。天使だなあの方は!そういう素晴らしい女優3人のおかげで、男優二人はのびのびと美味しいところを取りまくり。
 浅岡さんは帝国劇場で座長公演を何本もされた方だと思うと、9800円というチケ代も高くないと考えなくてはならないのか。これだけのキャストでガラガラの客席はやはりチケ代を受け入れてもらえなかったのか。劇場をPARCOでやったらもっと良かったのになと思いました。

 ファミリー大戦争〜オヤジの嫁さん〜
 キャスティングが素晴らしく、素晴らしいからこそ欠点も見えたものでした。先ずは赤井英和さんの演技が上手いのか下手なのかが良く分からないです。朝丘雪路さんが台詞を噛んでいるのかわざとやっているのか。台詞を間違えたのか、ふりをしているのか分かりません。役名まで(わざと?)間違え全部客席の笑いとして、どんどんどんどん和やかな客席になるのがスゴい。超魅力的な女性であり女優であることは間違いない。可愛いです。そういったエイリアンがトップ二人です。そんな中で正司花江さんをおくことで舞台をどかんと引き締めた。暴投かと思うものも受け取るキャッチャーす。大好きです。かしまし娘。
 このお芝居には、今はなくなった藤山寛美さんや、でんすけさんがやっていた時代の芝居小屋での演劇の空気が残っていまして、そりゃあ古いタイプの芝居かもしれませんが、それが悪いわけではないのです.何しろお客さんが大喜びなんですから!
 男3兄弟は内海光司さんが、ちょっと抑えたポジションになり、後輩の中村俊太さんと工藤大輔さんが目立つようにしていてデカイところを見せてました。が、女3姉妹がもう少し美人がいたり、太っていたりと個性が欲しい。何かダメでした。3人とも芝居もややヤバいしなあ。このキャスティングがイマイチでした。まあ、僕の好みってことかもしれませんけど。
 知り合いの中村俊太さんは、こういう現場もこなせる力量があるのかと感心しました。あっ、言っちまった!って両手で口を抑えるところ。それをこの登場人物の癖としてやってるわけですが、これがね。もうスゴいのなんのって。ウォーキングスタッフのときとは別人のようで別人でないのです。芝居の中で肝になっていました。見事。

 やっぱり猫が好き&恋愛日記
 演出家和田憲明さんの勉強会の発表会です。ファミリー戦争の中で、これ、ホントにアドリブだというか、そういうシーンがあるんです。洗濯干しているシーンなんですけど、お客も湧くのですが、アドリブに見える。おそらくホントにアドリブ。朝丘さんがボケて、正司さんが見事に受ける。きっとアドリブでしょう。それが稽古して、アドリブに見えるくらいにしてしまうのが、こちら。いやあ、少しでも集中力が切れると何もかもぶちこわしな舞台なんですけど、それがね。上手く行っちまうんですよ。いやあ。広瀬麻衣ちゃん可愛いし、ますます上手く。見事。自分のハードルをあげて越えて行く人はホントにスゴいです。後半の女の子二人はメチャクチャ美人で嬉しくなるくらいでした。もうそれだけで見ている方は嬉しいのですが、芝居も見事。ただ、これって等身大でやってる感じなんです。向田邦子さんの台本なんかをやったらどうなるのか見てみたいと思いました。

 僕らは今を変えられますか?
 Nの2乗の公演です。永峰明さんはテレビや吉本の世界で大重鎮でスゴい人です。ものすごい人なのです。その人がうつ劇団なので、ものすごい期待をして観に行った。向田邦子級の、そういう出会いがあるのだと思って観に行きました。
  芝居の作り方は誠実でした。台本に抑えが山ほどある。多くの登場人物をさばいて行く腕前も見事でやはりプロの仕事はすげえなあと思ってみてました。後半から芝居が展開して行くところは、この芝居に客がのめり込んでいないと、芝居がつく嘘を受け入れてもらえなくなります。ストーリーを追うように見て行くと、そんなことは起きない。起こらないとなってしまうことがあるのです。今回の芝居で、分かり易くいうと、人間は廻りで危険なことが起きていれば逃げるもの。避けるもの。自分が助かるために行動する。芝居ではそうならないことがある。誰ひとり逃げない。おかしいです。しかし、芝居にのめり込んでいると、そういうことを全部受け入れられます。演出はそういう嘘を客が許容してくれる空気を創りだせたら勝ちです。残念ながら僕はのめり込んでいけずに、そこに引っかかってついていけなくなりました。
 それは、役者の力というかそういうことにも関係しているのかもしれません。このお芝居は設定した舞台の空気がどんどんと濃密になっていくことが絶対的に必要で、そのためには全員のアンサンブルが必要なんです。舞台にでている役者の何人かがそこから逸脱していると全部を壊してしまうのです。今回は田村通隆や比嘉礼子といったうまい役者もいましたが、そうでない人もいました。しかし、劇団なのでいろんな力量の人に舞台に立ってもらう必要もあるのだと思います。そういう人が、いたことでのめり込めなくなったのだと思います。僕は稽古していてちょっとでも空気が淀むなと思ったら、直ぐに台本をカットしてしまいます。永峰さんはどうなんだろうと思いながら見ていました。
  芝居を観に行って、あの永峰さんが、いろいろと気を使いながら劇場にいたことがとてもびっくりしました。僕はちょっと挨拶しただけで直ぐに帰ってしまいましたが、今回のようにまた誘って頂けたらもう一度観に行ってみたいなというのと、稽古している現場を見てみたいです。気になる演劇集団です。

 星屑の街 新宿歌舞伎町編
 前川清さんの歌がスゴい!歌をきいてるだけで楽しめる!先ずはそこでした。星屑のメンバーの活躍の仕方がイマイチでファンとしては残念でした。コマという劇場はとても特殊な殿堂のような劇場です。いまや帝国劇場でもほとんどできなくなった座長芝居以外を受け入れる劇場ではないのです。いまや座長公演で1ヶ月お客を埋められる大スターはほとんどいないというか。観客がいなくなった。高齢化?劇場に行かない?まあ、そういうことです。今の若い観客は役者に魅力は求めるし、役者を追うけれど、それ以上に芝居自体を求める。アンサンブルを求めるようになったのだと思います。前川清さんはそういう意味で座長のできる数少ないスターです。その証拠に、梅沢富美男さんと長いことやっている明治座の公演は今でも大人気で、明治座の夏を彩る名番組です。そして、歌のスゴさ。僕は別にクールファイブのフアンでも前川さんのフアンでもありません。ラサール石井さんや小宮孝泰さん、星屑メンバーを見たくて劇場に行ったのです。しかし、聞いてみると、やはり、この芝居の一番の魅力は前川清さんの圧倒的な歌力でした。スゴいです。ああ、こういう大スターがコマには合うのだよと思った。星屑の街は、素晴らしいアンサンブルで作り上げて来た名シリーズです。小宮さんらは、それをしっかり守ろうと大活躍。一方で清水宏さんは、このコマ劇場っていう空間を楽しもうぜと、コマ劇場教に改宗したような光を放つ。いやあ、芝居って面白いですね。お願いは、星屑の街シリーズをこれで辞めるということだけはしないで欲しい。最後がコレはちょっと違うかなと思いました。あと、演劇ファンにS席12000円はちと高かったです。

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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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