佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 東京バレエ団 ねむれる森の美女 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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13時開演キャスト
オーロラ姫:佐伯知香 デジレ王子:長瀬直義
リラの精:渡辺理恵 カラボス:矢島まい
カタラビュット(式典長):高橋竜太
王さま:永田雄大 王妃さま:小川ふみ
<プロローグ・第1幕>
乳母:森彩子 優しさの精:村上美香 やんちゃの精:岸本夏未 気前よさの精:大塚怜衣 のんきの精:森志織 度胸の精:阪井麻美
4人の王子:梅澤紘貴、杉山優一、柄本弾、森川茉央
オーロラの友人:上沼千尋、河谷まりあ、飯田鈴実、政本絵美
<第2幕>
宝石の精 金:縫谷美沙 銀:大塚怜衣 ダイヤ:森彩子 サファイア:河谷まりあ フロリナ王女と青い鳥:吉川留衣、梅澤紘貴 白い猫と長靴をはいた猫:森志織、吉田蓮 赤ずきんとおおかみ:阪井麻美、安田峻介 シンデレラとフォーチュン王子:村上美香、杉山優一 白雪姫:上沼千尋

主役の二人

16時開演キャスト(13時と違うキャストのみ記載)
オーロラ姫:二階堂由依 デジーレ王子:柄本弾
カタラビュット:松下裕次 王様:佐藤瑶 王妃:松浦真理絵
4人の王子:梅澤紘貴、永田雄大、杉山優一、森川茉央
オーロラの友人:小川ふみ、上沼千尋、河谷まりあ、政本絵美
<第2幕> 白雪姫:小川ふみ
 主役の二人

「若いダンサーの踊る喜びにあふれた舞台」
 かぶりつきのピット席が何と3000円。90分だというので昼夜行く事に。同じプロダクションのバレエを同じ日に2回も観るという事は今後もないだろう。自分でも驚き。配られた配役表のタイムテーブルをみると開演から終演まで確かに95分であったが、実際は1時間50分かかった。でも全く飽きなかった。同じ作品を2回も見た理由は簡単。配役がダブルだから。見比べてみたかった。
 「眠れる森の美女」というバレエだがそんなに多く観ているわけではない。最初にみたのが1995年ミラノスカラ座バレエ団(確かオペラの来日の前後だったかな?)の初来日(←NBS主催;瀑)。衣装がゴージャスすぎてクラクラした。ゴージャスなのはそのキャスト。何しろオーロラ姫がアレッサンドラフェリ、デジーレ王子がマニュエルルグリ、それに騎士役でロベルトボッレも出ていた。バレエを知らない人でも知ってるスター勢揃い。ああ、スゴかったなあーー。それが初見だからね。それから、10年以上前にロンドンでロイヤルオペラの公演(ロイヤルオペラが改築中の時)で観ている。記憶にあるのはこのくらいだ。まあ、そんな人間の戯れ言として読んでもらいたい。
 今回の公演は子どものためのバレエと副題がついていて、眠れる森の美女のハイライトに加えて、狂言廻し役がつく。それが式典長のカタラビュット。これが良かった。13時の回の高橋竜太はトークも旨い。笑いのポイントも随所に作って子どもも大人も大喜び。16時の松下裕次はコンパクトにやる。語尾の滑舌がちょっと良くないのが残念。僕はこの役にもっと踊るシーンを作ってもらいたかったなあと思ってみた。
 しかし、このプロジェクトは素晴らしい。いくつか理由があるが、ちょっと生真面目に書かせてもらうと…。
 その1、最高でも5000円(大人)2500円(子ども)という低廉な価格で、ファミリー向けのバレエ入門として最適なものに作っていること。これを観てバレエを始める子どももいるだろうし、価格が安いから初めてバレエを観る大人にも非常に受け入れやすい。美術は緞帳から書き割りなんだけれども、それが現代のなんて言うかパソコンで作ったファンタジーのような絵柄でこれが子どもたちにはとても受け入れやすいと思った。
 緞帳
 衣装はチャコットの協力を受けているらしいが、非常に美しい。
上演時間は短いし、分かりやすくするために工夫もしている、2幕の祝宴の踊りには、おとぎ話の登場人物に置き換える、着ぐるみ着用などしている。しかし、踊りはさすがの東京バレエ、いいものを作るということに徹している。
 その2、バレエを始める人が出てくれば、バレエの観客動員は増えるだろうし、バレエ学校の入学者も増えるから主宰のNBSにとってプラス。
 その3、キャスティングを観れば分かるが、バレエ団の若手を次々と抜擢しているので実力を磨くチャンス。ソロを踊って自分を表現するチャンスの増加につながる。バレエ団全体の実力向上につながるはず。
 他にもいろいろとあるだろうが、これはいろんな意味で素晴らしい。好循環が生まれていく可能性があるプロジェクトなのだ。
 書き割りだけのセットだが美しい。
 
 ところで、子どもこそ一番難しい観客である。面白くなければすぐ騒ぐ泣く走り回る。ところが、今日観た2回の公演とも踊りが始まると子どもたちは集中して舞台に見入っていた。大声で騒ぐ子ども、泣く子どもは一人もいなかった。素晴らしい。それは東京バレエ団が子どもだからと手を抜かずに与えられた状況で最高のものを提供しているからだ。もちろん、これが生のオーケストラだったらなあとか思うけれども、先ずは母親と二人の子どもで1万円で観られる!これを維持するためには、音楽が録音でもしかたないだろう。

 本来はこのような公演は税金も投入して運営している新国立劇場バレエ団がやらなくてはならないことである。それを民間の東京バレエ団がやってくれることに謝意を示して欲しい。そして、他のバレエ団にとっても、これがどれほどバレエの未来に大きな意義を持っているかも分かって欲しい。

 出演者についてはカタラビュットについては既に述べたが、それ以外もリラの精の渡辺理恵がノーブルの極地の美しさを披露し観ているだけで嬉しい。何でこの人をもっとでかい役で使わないのかなあ。カラボス(悪い魔法つかい)の矢島まいがやりすぎない演技でとても良かった。この人は欧米人のような恵まれたスタイルの人で、踊りに華があるんだよなあ。もっと、もっと踊りを観たかった。
 長靴をはいた猫の森志織(のんきの精、も)、吉田蓮(1幕では招待客も)も良かった。吉田の跳躍は観ていて気持ちいいし、猫の仕草も丁寧。踊る喜びを舞台に発散させていた。青い鳥のパドドゥの吉川瑠衣と梅沢紘貴も良かった。憂いをもった役作りである。
 主役はちょっと差があった。
 オーロラ姫は、佐伯知香が丁寧に踊っていた。技術がホントにしっかり身に付いている。そのあとの二階堂バージョンと明らかな差になってしまったのが、例の1幕のバラのアダージョのシーン。ここは華麗な曲に乗りながら、4人の求婚者の前でくるくる廻ったり、握手したり、バラをもらったりする、まあそれだけのシーンなのだが、難易度の高いシーンとして有名だ(今だから言える)。僕が最初にこのバレエを観た時に記憶に残ったのがここでもあるのだ。というのも、バラもらったりするだけなのに、会場中からでかい拍手がきた。何で?と考えてみたら確かにスゴいシーンだねと思ったわけ。
 ここは、ハープが流れ、美しいメロディが流れている間、オーロラ姫は4人の王子に支えられながら廻ったりして優雅に踊り、バラの花束を受け取っていく。その時の格好が大変ンなんですよ、オーロラが片足でつま先立ちをしたまま、もう片方の脚は膝を直角に曲げて後ろに出したまま、ぐらぐらしない。顔も笑顔という。。。いわゆる、ポワント・アチチュードを続けるんだけど、特に腕を差し出し4人の王子の手を順に取る動作が見せ場なんですね。それも握手とバラの花をもらうのと2回あるから。すごい格好で微動だにしないだけでも大変なのに、それに加えて腕は動かさなくちゃいけないという、至難中の至難。それを佐伯の方は、アンオーでやった。アンオーというのは、両手を上にあげて丸くする奴です。それを、いちいちアンオーから握手、アンオーから握手って、もうこれスゴいんですよ。子どもなんか観たって分かんないのに、偉いなあ。
 それがね、二階堂さんの方は、もう求婚者の手から離れるだけでもつらそうで、はい、つぎ!はい、次!って辛そうだった。 佐伯とペアを組む長瀬直義もピケターン(廻りながら移動するやつ)、グランジュデ(脚を拡げてジャンプするやつ)、あとなんて言うか分かんないけど熊川哲也でおなじみのジャンプしながら回転し舞台を一回りするやつ。全部お見事。例えば、ピケターンなんかでは、加速度をつけてくれるわけ。これが観ている側は興奮するんだよなあ。長瀬はノーブルな感じだし腐女子の人気があるのが分かる。
 柄本、二階堂組について書かせてもらうと。二階堂さんは佐伯さんよりも恵まれた体つきをもっている。スタイルが抜群なのだ。日本人離れというか人間離れしている。顔小さすぎ!美しい手足長過ぎ!というくらいのもので、それはこの世のものとは思えないくらい美しい。そして、柔らかくしなやかな肉体、優雅でダイナミックな動き。こうした天賦の才を持っている。ロンデジャンプ(脚を上まであげるやつ)グランパドゥシャ(開脚ジャンプ)なんかホントに美しい。優美でねえ。ぜひ、もっと精進して技術を向上してもらいたいなあと思うのだ。
 彼女を最初にみたのは、東京バレエ団の代表作である「ザ・カブキ」。それは、このブログにも書いてあるから読んで欲しい。その時も相手役というか、由良介という主役をやっていたのが、20歳になったかならないかの柄本弾だ。この人を最初に観た時に、先に書いたミラノスカラ座バレエ団で観たロベルトボッレを思い出した。日本人離れした風貌に放つオーラはスターの素質抜群。今回も踊ることを心底愛しているのが分かった。特に音楽を良く聴いている。イチイチ音楽と肉体がシンクロし決まっていく。キメキメに決めていく。これはスゴい。観ている方は気持ちがいい。しかし、例えば長瀬が見せてくれるピケターンの加速度はない。フェッテアラセンアゴール(脚出しながらくるくる回る奴)もね(笑)。柄本ってジャンプ力はあるし華もあるし、何だろうなあ、ジョルジュドンとか、ジルロマンとかが取り憑かれた様に踊る感じをもってもらいたいなあ…と、日本なら後藤晴雄が時おりそんな感じである。
 東京バレエ団の若手のダンサーをあのミラノスカラ座バレエ団の来日公演の時の印象と比べているわけで、でも東京バレエ団はもはや世界のトップクラスのバレエ団なんで、よろしくお願いします。すいません、俺バレエオタクでないので、専門用語なんかは、調べながら書いたので間違ってたらごめんさい。
 2012年3月3日@目黒パーシモンホール
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同感です!!
同じ日に見ていたようで…。
読んでいて、うんうん!と思ってしまいました。

事後報告なのですが、リンクさせていただきました。今後もレポ楽しみにしています!
高杉 明日香 URL 2012/03/04(Sun)19:51:26 編集
同感です!!
同じ日に見ていたようで…。
読んでいて、うんうん!と思ってしまいました。

事後報告なのですが、リンクさせていただきました。今後もレポ楽しみにしています!
高杉 明日香 URL 2012/03/05(Mon)21:59:18 編集
二階堂さん退団
二階堂さんはスタイルを活かして、バレエ団で身に着けた踊りと、声楽を+して、宝塚の男役目指してほしかったです。
20歳じゃ、もう音楽学校受験無理かな。。
おばりーな 2014/08/24(Sun)12:24:45 編集
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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