佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 フランクフルト放送交響楽団&エスコラーダを聞いて  忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ミューザ川崎で、フランクフルト放送響を聞いた。久しぶりだ。前に聞いたのはパーヴォヤルヴィの来日公演でもう10年近く前だと思う。今回はワーグナーの「リエンツィ」序曲で始まったのですが、冒頭のコントラバスの音が深く驚きました。とくに弦楽合奏は素晴らしい。しかし、エストラーダがテンポを上げると音が少し乱雑になってしまう。ちょっと残念です。
 今回の来日は、来週あるサントリーホールは完売。チョソンジンのラフマニノフ2番コンチェルトと巨人です。こちらは、さらに名曲コンサートみたいで、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲、ドヴォルザークの新世界。もう聞き飽きてよほどの演奏で無いと心は動きません。こちらはチケットがまだまだあるということ。会場に来てみると客席は9割くらい埋まっていて安心しました。で、バイオリン協奏曲です。

 今宵のスターは何といても独奏のバイオリニスト、ダニエル・ロザコヴィッチです。知りませんでした、何しろストックホルム生まれの17歳。見た目はアジアの血も混ざってるなあと思ったら9カ国の血が混ざってるとのこと。まあ、そんなことはどうでもいいのですが、会場に出て来た少年の緊張が伝わってきます。
 冒頭でちょっと音がつまずいたかと思ったのですが、聞いていて驚きました。僕はこの曲はそれこそ、子どものころからアイザックスターンやオイストラフのレコードで聞き始めた。スターンやヘンリックシェリングで始まったライブも、パールマン、ツインマーマン、ヒラリーハーン、クレーメル、ムターなどと世界最高峰を聞き続けて来た。今もヤンセン、みどり、樫本大進、五縞龍、庄治紗矢香、諏訪内晶子など本当に素晴らしい演奏を聴いて来ている。でもね、彼らは大きく捕えると、みんなスターンやオイストラフの系列なのです。もちろん個性はあるけれど、あのロシア系バイオリニストの系譜。雄弁に歌う系の奏法です。それはそれで大満足なのだが、この若いバイオリニストはちょっと違う。音量を大きく動かすことで音楽を語らない。むしろ小声で囁くように語る。ところが、耳を傾けると繊細で同じ四分音符でもギリギリまで粘る。フレージングの中でもいろんな色合いを見せてくれる。音譜の長さ、音の質感、色合いに対するこだわりがスゴい。

 公演チラシに水晶のような音とあったのだけれど、水晶ってどんなものか良く分からないが、クリスタルって感じです。それは、息をすることを許さないくらいの緊張感の中で、この少年が酸欠で煽れるのではないかと思うほどです。ヘンテコな息をしたら、奏でてる音楽が崩れてしまう。そんなギリギリ感が曲全体を支配する。それは、バカラのワイングラスに光が当ったとき、もしくは、ブルゴーニューの透明感のある赤、いや、黄金色の白ワインが注がれたものをグラス越しに光に課さす時に思う不思議な気持ち。グラスを廻した時に、グラスの脇に張り付いたワインが動くときの、そんなすごく繊細で表現するのが難しいものに似た音なのです。私も聞いていてヘタな息継ぎができなくなり、曲が終るとぐったりしてしまった。
 ランランが出て来てピアノの世界に新しい光を当てている。欧米を席巻している。このロザコヴィッチは、バイオリン界のランランです。この繊細さで演奏されるのであれば、シベリウス、チャイコフスキー、モーツアルト、ベルク、バルトーク、ショスタコーヴィチ、ラロ、サンサーンスなどいろいろと聞いて見たいです。
 後半は新世界交響曲でした。今宵の主役はロザコヴィチでした。
(2018年6月9日 ミューザ川崎にて)
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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