佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 音楽 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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カラヤン、アバド時代の栄光のオーケストラでなくなったBPO

もちろん、音楽関係者は口が裂けても言えないだろう。
だから、私が申し上げる。



ベルリンフィル&サイモンラトルのベートベンチクルス第1夜に行った。
交響曲第1番と3番。
その演奏は、あまりにも、普通でした。
チケット代が42000円(私は37000円のA席)という異常なものなので、それに見合った、演奏も神々しい後世に残る名演を期待しましたが、第一バイオリンはコンマスの音ばかりが飛び出して聞こえてくる。第1交響曲の3楽章ではティンパニの音がずれる、ホルンの音が決まらないといったがっかりポイントが山ほどあり、絶好調のNHK交響楽団や東京交響楽団はもちろん、東京都交響楽団など在京の一流オケではありえないようなことが山ほどありました。

第3番の3楽章くらいから、奏者の集中力も高まりましたが、昨日はいびきも散発、第3番では途中退場者もでるような有り様でした。きっと演奏が退屈したのではなく、疲れていたり予定があって帰られたのでしょうが、少なくとも、予定を変更させる力は演奏にはなかったということです。

 先日もヨーロッパ在住の音楽好きと話しましたが、いまやベルリンフィルはドイツ一のオーケストラではないのです。カラヤンやアバドがいた頃の圧倒的な栄光のオーケストラではないのです。
演奏力なら、ティーレマンのドレスデンシュターツカペレ、バレンボイムのベルリンシュターツカペレに、完全に越されてしまいました。音楽の味わいなら今秋来日する、ブロムシュテットが指揮するバンベルグ交響楽団のベートーヴェンには適わないでしょう。



 私は思い出しました。
 ホロヴィッツが初来日したときに、NHKホールで5万円のピアノリサイタルを開いたということで、テレビのワイドショーまでが駆けつけた。それはもう酷い演奏で、吉田秀和氏の生涯でもっとも有名になった名言「割れた?ひびの入った?骨董品」が出た以外は、専門家(業界関係者)はみな絶賛しました。
 私はひとりがっかりしてました。何しろ期待が大きかった、チケット入手も困難を極めた。何しろ、きっとあれが生涯で1回こっきりの徹夜して手に入れたチケットだったのです。
 それはそれは酷い。音大のピアノ科の中くらいの生徒の演奏の方が圧倒的に上手かったからです。いい悪いの前に技術が壊れていたのです。
 会場の外で、ホロビッツを見たことだけで満足している人が、紅潮の趣で絶賛コメントをしていました。そんな人たちを取材するテレビクルーに苦虫を噛み締めながら眺めていた私に、新聞記者が声をかけてきたので答えました。それが、生まれて初めて新聞(日刊スポーツ)に自分のコメントが載った晩でした。23歳くらいのことだったと思います。自慢じゃないけど、その記事に並んで批判して出たのが坂本龍一氏でした。あとは大絶賛。バカだなあと思いました。


 今回もそれと同じことが起きています。
 ベルリンフィルが酷いといってるのではありません。
 42000円も払って行く公演ではない。かつてのカラヤンやアバドがいた頃の演奏とは格が違う。きっと他のオケが圧倒的に上手くなったと申し上げているのです。

 カラヤンとベルリンフィルとの最後の来日公演はサントリーホールだったのですが、それは聞いていないです。ですから、私にとって、サントリーで聞いたベルリンフィルの名演奏は、今でもアバドが振ったマーラーの交響曲第2番こそが、圧倒的に一番です。ああいうレベルの演奏を聴かせてこそ、42000円の価値があるというものです。



 お願いです。
 42000円出して行く経済力があるのであれば、東京のオケの定期会員になって下さい。バンベルグ交響楽団の演奏会に行って下さい。何で2月のバレンボイムのあの素晴らしいブルックナーチクルスに行かなかったのですか?私は2晩行きましたが空席が山ほどありました。

 ベルリンフィルがクラシック音楽の最強ブランドだった時代は終わったのです
 そして、ベルリンフィルは、ポストラトルに、またもや若手を起用してしまった。10年後は分りませんが、少なくともこれからの数年は、バレンボイムやティーレマンのいるオケがドイツナンバーワンでしょう。ベルリンフィルは楽員たちの民主的な合議制によって運営される非常に自主性の高い団体だということはよく知られています。しかし、今回はカリスマ性の強い専制君主を迎えて、かつての栄光を取り戻すべきでした。そのチャンスも捨ててしまった。


神々でさえ黄昏れたのです。
ベルリンフィルが黄昏れても決して不思議ではありません。
そして、昨夜はその決定的瞬間に立ち会ってしまったと思います。

 私は、ベルリンフィルは東京や横浜ではもちろん、ロンドンやベルリンなどでも聞いてきました。カラヤン、アバド、アーノンクール、バレンボイム、ラトル、小澤、ヤンソンスなどなど。かつては、日常聞いているオーケストラとは、別のものだと思ったものです。ブラボーとも叫びました。しかし、栄光の時代は終わったんだなあと思いました。

多くの人が素晴らしい演奏だったと言うでしょう。
しかし、それは仕事がらみの発言、普段あまり演奏会を聞いていないので比較的できない人の感想、ベルリンフィルの栄光の時代を知らない人の感想だったりします。悪気があるとは思いません。しかし、そう、そういうものです。

 昨晩の観客の多くは、日本社会での経済的成功者です。何しろ2時間の演奏に42000円を払うことができる。そして、子どものころから親しんできたクラシック音楽は、栄光のドイツグラモフォンレーベルのカラヤン&ベルリンフィルの演奏であってもおかしくない。ベルリンフィルは世界一という思い込みと、夫婦で8万4000円のチケットを買える自分の成功へのプライドをくすぐれる、そんな素晴らしいイベントだったのかもしれません。


 私はそんなことには興味はありません。いい演奏に出会いたいだけです。いい演奏なら、どこの団体でもかまいません。ベルリンフィルは、カラヤン、アバドと生演奏で聞いてきて、ラトルになって、ベルリンフィルは黄昏たということです。これからもベルリンフィルの演奏は聴きたいとは思いますが、私は馬鹿ではありませんので、4万2000円も払って聞くようなおろかな行為はいたしません。それなら、他の公演に行く。もしくは、日本のオケに寄付します。

もう、いいかげん。多くの人に気づいて頂きたいです。

 日本のオケは素晴らしくなった。音楽を愛するのなら、少なくとも自分の感性でどの団体が素晴らしいのか、真摯な演奏しているのか少しは探ってみる努力をするべきです。かつてのブランド名や、チケット代の高さでその価値を計るのはやめましょう。それが、音楽を愛するものができる、真摯に演奏してくれる演奏家に対してできる、誠実でまともな行為だと思うのです。




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"Conductor in Residence"就任記念はエキサイティング・チャイコフスキー
―インゴ・メッツマッハー Conductor in Residence就任披露公演―
ムソルグスキー作曲(R.コルサコフ編) 歌劇『ホヴァーンシチナ』前奏曲「モスクワ川の夜明け」 *
スクリャービン作曲 法悦の詩 op.54 *
チャイコフスキー作曲 交響曲第5番ホ短調 op.64

2013年9月14日@サントリーホール
尾高忠明指揮 5月11日@NHKホール
ウラディミールフェドセーエフ 指揮 5月18日@NHKホール

三善晃作曲 ヴァイオリン協奏曲(1965)
ストラヴィンスキー作曲 バレエ組曲『プルチネッラ』   
メンデルスゾーン作曲 交響曲第4番イ長調『イタリア』 op.90
2013年7月26日@サントリーホール


2013年7月15日@東京オペラシティコンサートホール
2013年7月20日@サントリーホール
ロシア人指揮者というと、ぶっちぎり系演奏の人も多い。軸はあっても詳細なところは荒れれのれ。その代表格がロジェストヴィンスキー。詳細までがっちり制御するのがムラヴィンスキー。2009年の春、旅でよったザグレブの夜。クラシックコンサートがあるというので、出かけたザグレブフィルの定期で、確かチャイコフスキーを聴かせてくれたのが、キタエンコだった。名前は知っていたけれど初めて聴いた。何か、いいのだ。骨は太いのだが、興奮してテンポが異常に早くなることも、最初から最後まで大げさに歌ってみせたりもしない。きちんと組み立て、心を込めて音楽を作って行く。クール&ビューティ。フレージングはしっかりするし、ボーイングも大切にする(ロシア系結構と雑)、個々の名人芸も尊重する。でも骨はどかーんとある。
 帰ってきてN響の定期に出演すると喜んでチケット買ったのに行けなかった。そんで、ずーっとお預け。東京交響楽団の定期のラインナップ見て好きな指揮者がぎょうさんいた。その一人が、キタエンコ。もうひとりが来月のミッシェルプラソン。
 そのキタエンコ登場の定期が6月最後の日、日曜のマチネにあった。
 もちろんプロコフィエフのチェロ協奏曲も良かったけれど、楽員と2回のコンサートとは思えないほどの充実なラフマニノフ交響曲第2番。
 このメロウなロマンチックな音楽は、この作曲家の心の幻想が花火のように無造作に飛び出てくるから、楽想が急に変わったりするギアチェンジや、細かいところにこだわらないと面白くない。それがね、何かすごく良かったんですよ。俺の愛するN響も今年ウンジャンという指揮者と取り組んだけれど、東京交響楽団のそれは、指揮者とオーケストラの一体感がさらに強くてよかったな。
 東京交響楽団。ジョナサンノットが音楽監督を受け入れた理由が、たった2回のコンサートで分かったような気がする。2013年6月30日@サントリーホール


指揮 シャルルデュトワ

【プログラムA】
シベリウス: 「カレリア」組曲 op.11
ドビュッシー: 海
    ***
バルトーク: バレエ「中国の不思議な役人」op.19 組曲
ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲

2013年6月25日@文京シビックセンター

【プログラムB】
ウェーバー: オペラ「オイリアンテ」序曲
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
               (ヴァイオリン:イェウン・チェ)
    ***
ベルリオーズ: 幻想交響曲 op.14

2013年6月26日@東京文化会館
チョンミンフン指揮 
ベートーベン作曲 交響曲第2番
ロッシーニ作曲 スターバト・マーテル

2013年6月14日@NHKホール

2013年4月27日@東京芸術劇場コンサートホール
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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