佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 ナイロン100℃ わが闇 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ケラリーノサンドロヴィッチ 作演出
出演 ナイロン100℃



 ナイロン100℃「わが闇」を見てきました。タイトルからして、ヒットラーの「わが闘争」を思わせる感じだったので、何か3年ぶりに書いてスゴいことやるんだろうなと思っていたら、純文学な世界でした。今までもケラさんの近年の作品には、どうも、それまでのハチャメチャ破天荒な世界の究極のナンセンスから離れてきているような感じがしたいたんです。
 例えば、「労働者M」という芝居なんかでそれがスゴく感じられた。あれ、ケラさんなんか変わったぞって思ってた。何かキョンキョンが浮いてるんですよ。松尾スズキがぴったりみたいな。
 ケラさんは、人生そのものがナンセンス。人の生も性もそれ自体がナンセンスという境地に立ったのではないかと思いました。それらは、近年の作品に色濃く反映されていたのですが、とうとう劇作の中心にそれを据えて作品を書き上げた。ケラさんは、三人姉妹とか、永井愛の萩家の3姉妹とか。ウディアレンのインテリアとかハンナとその姉妹に影響を受けたみたいなことを書いているが、もちろんそうなのであろうが、僕からすると、作品のイメージはもう「火宅の人」、人の捉え方はドストエフスキーだった。
 ケラさんは、シアターコクーンで「どん底」をやるのだが、劇団でしか、重たいものできないみたいなことを書いていたけれど、ウソだよ、やるでしょう。どこでも。と思ったですね。そう表明しておかないとね。プロデューサー側はビビるもんな。でも結局は作家って好きなことやるんでしょうね。
 そうした純文学「わが闇」で時々噴出するギャグは何か前のケラさんの夕陽のように思える。もう、こういうの辞めるけど、ほら、これって面白い?って。お客の大部分はそれを待っていて、いちいち反応するし笑う。しかし、また直ぐに戻る重たい空気をどう感じていたのだろうか?
 いづれにせよ、こういう作品をやるのなら、ケラリーノサンドロヴィッチといった「ふざけた名前」やナイロン100℃といった「センスのいい名前」はちょっと会わない感じがした。
 マガジンハウスじゃなくて、岩波書店の匂いのする作品だったので。
しかし、ナイロン100℃の女優のすごさ!
 犬山さん、峯村さん、松永さん、長田さん。オソロシイほどの名演をする。技術も味もある。それをさらっとやってのけるからスゴい。そして、何より芝居のセンスがいい。ホントにメロメロになりました。 もちろん、みのすけさん、三宅さんもスゴかったし、坂井真紀は可愛かったし彼女だからこそ出せるものがあったと思った、女優はすごいなあ。が、ゲストでも岡田義徳さんはなぜこの人でなくてはならないのかは分かりませんでした。大倉孝ニさんは相変わらずべらぼうな美味さだし、この人どんどん二枚目に見えていくのはなぜなんだろう。ただ、見ていて感じたことなんだけど、昔のケラさん!まだ行くなよ〜って思ってるのではないかと思ってしまいました。ケラさんもそういう気持ちを分かって「ハッピーライフ」にしたのかなって。誰もそんな人生を歩んでいない芝居なのに。決して否定しているわけではないし、大倉さんがいたことで多くの昔のケラさんを待ってるお客さんは救われたと思います。
 一方、この人もべらぼうに上手い皆戸さん、相変わらず奇麗だし個性もある。技術もあるしスゴいのですが、最後の場面近くでの登場で、それもいい役なので、頑張りすぎな感じがしました。特に犬山さんとの掛け合いのところでは、犬山さんが自然にいろんなことをやっていくのに、皆戸さんは、ひとつひとつを決めるぞ。負けないぞ。笑いも欲しいぞってやってる感じが伝わってきた。そんなことなく必死にやってるだけなんだろうけど、他の人たちがべらぼうな上手さなので、こんなことも気になってしまったのです。自分を捨てることの大切さを感じました。


2007年12月
本多劇場


 本多劇場って席数が386。補助とかいれると、毎回400名のお客さんを集めているわけでして、それが東京だけで35ステくらいあって、6000円。8400万円。地方もいれて、招待を除けば、ちょうど1億円くらいの興行収入があるものなんだと思いまして、あたふたしました。そうか、でかくなるとこれだけの責任があるんだなと。
 自分もその規模のものに挑戦したいだけに、ずしっと計算しながら思ったわけです。今まではでかいっていっても600万円くらいの芝居でしたから。

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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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