佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 NHK交響楽団の定期公演が池袋・東京芸術劇場に移ることによって起こること 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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NHK交響楽団から定期会員に手紙が届いた。
2020年ー22年のNHKホールの長期改修工事の期間中の会場についてのお知らせだ。

20−21年のシーズンはAプロは2月まで6プログラム、12公演をNHKホールでそのまま行う。そして、4月からサントリーホールで3プログラム6公演を特別公演として行うという。
Cプロはシーズンの最初、9月から池袋に移動する。9プログラム18公演を池袋の東京芸術劇場で今まで通り、金曜夜と土曜昼に行うという。
翌年の2021ー22年のシーズンは、A・Cプロとも全ての公演を池袋に移動する、サントリーのB定期はそのまま。
そういうことになった。





 東京在住の私にとって、一番怖れていたのは定期演奏会の横浜化である。遠い。遠すぎる。もう一つは東京文化会館の利用である。あそこはパフォーミングアーツを観る劇場だと思ってる。20代前半まではあそこでよくオーケストラの演奏会を聴いたが、なんか時代が30年以上も逆戻りだ。渋谷で地の利のいいオーチャードホールでもいいのだが、すでにオーチャード定期があるから無理だろうしな。そんな風に色々と思ってたのだ。
繰り返しになるが、NHKホールの改修の発表があった時からN響のAC定期演奏会の会場は可能性として、サントリーホール、すみだトリフォニーホール、東京芸術劇場、もしかしたら、東京文化会館や、オーチャード、思い切っての横浜移動(川崎含む)ということ以外には考えられないと思ってた。本当に横浜や川崎もあるかもと思っていた。何しろ、サントリーホール改修中にB定期の代替定期を音響的に大評判の、そして確かに音のいいミューズ川崎で3公演したこともあるから、横浜・川崎化もゼロではないと思って恐れてた。だから、池袋駅から歩いて3分程度の東京芸術劇場コンサートホールに落ち着いたことでほっとしている。あそこはいいコンサートホールだからだ、
 きっとNHK交響楽団事務局は全ての定期演奏会のサントリーホール化をまずは希望した、狙ったとは思う。しかし、あのホールは人気が高すぎる。日本フィル、東フィル、東京交響楽団、読売交響楽団、都響がすでに定期公演をしている。外来オケの公演も多い。すでに稼働率が高く空きがないのだ。週末の金土日に毎月4公演を抑えられるわけがない。そして、サントリーホールからもぎ取ることはやはりできなかったのだ。ただ、Aプロが2020−21シーズンは2月までで終わることで開催される、サントリーホールでの特別公演。3プログラム6公演。きっと平日なのだろう。N響はそれまで週末に聞いていた観客のうち、どのくらいの人数が平日の公演にくるか、来てくれるか、気になって仕方ないだろう。
 結果として駅からも近く、ターミナル駅である池袋芸術劇場に落ち着いた。これは最善の選択である。そして、今までサントリーホールも、NHKホールも遠いと思っていた、池袋ターミナルの観客、埼玉県の人など、新たな聴衆、定期会員を獲得することができるかもしれない可能性も秘めているのだ。
 そして、多くのN響ファン、定期会員がこうも思っているはずなのだ。池袋の芸術劇場のコンサートホールならその音響は今のNHKホールより抜群に良くなるな。そして、駅からも近いのは嬉しいな。
 しかし、渋谷から池袋に移ることで決定的な大きな違いがある。それは座席数の違いだ。これは、チケットの問題に直結する。


「間違いなく起こることは、全てのN響定期公演チケットの争奪戦、入手困難化が始まる」

 さて、池袋に移動する定期演奏会でどんなことが起こるだろう。一番気になるのは、会場のキャパなのである。NHKホールは1階席1090、2階席1335、3階席1175の3600席もある。東京芸術劇場は1階676、2階683、3階640の1990席なのである。つまり、NHKホールの座席より45%も座席数が減るのである。


NHKホール座席表(座席数3600)

東京芸術劇場座席表(座席数1990)

 
 現在のN響定期でNHKホールが満席になることは少ないが、N響のチケットで通常販売される当日券というのは300枚程度と発表されることが多い。もちろん、そういう発表があったとしても3600席のうち3300枚が売れたということはないだろう。N響は留学生の招待など無料で出している席も多数あるからだ。しかし、今のNHKホールを使う、Aプロ、Cプロで、当日の空席率が45%以上ということもほとんどない。つまり、今の観客数が池袋に移動すると芸術劇場コンサートホールの座席はほぼ埋まる。いや、少し足りないかもしれないということなのだ。
 もちろん、渋谷のNHKホールから池袋に移るのなら、その間はお休みしようという人も少なからず出るはずである。しかし、逆に池袋に来てくれるのなら聞きに行こうという埼玉県や池袋ターミナルの聴衆もいるはずなのである。
 少なくとも間違いなく言えることは、N響定期のチケットは手に入りにくくなるということだ。今まではお気楽に聞けていた。世界でもこんなにお気楽に聞ける一流オケは他にないと言ってもいいくらいだ。その代表例がAプロとCプロのたった1500円(この10月から1600円)で聞けた自由席だ。これは池袋では無くなるはずだ。客席数2006のサントリーホールでのB定期に自由席がないのと同じである。他にもいろんなことが起こるだろう。

 まずは会員の中には、渋谷界隈にこだわる人が少なからずいるはずだ。渋谷あたりでN響を聞きたいという人だ。世田谷や大田区の人、特に横浜など神奈川方面の人などは池袋には行きたくない、遠くて行けない人もいるだろう。その人たちの選択肢として考えられるのが、それなら、サントリーホールのBプロで聞こうという人が出てくることだ。つまり、A・C定期会員からサントリーホールB定期への移動である。サントリーホールの年間定期会員券は、この数年はS席A席でまだ若干数の余裕がある。2日で200席くらいはあるのではないか。それが、きっと、このAC会員からサントリーBへの移動でほぼ無くなってしまうだろう。
 つまり、起こりうるひとつは、サントリーホール定期の1回券はほぼ買えなくなるということだ。プレミア化である。
 二つ目は渋谷と週末の演奏会の両方にこだわる人の選択である。サントリーも嫌だし、平日の夜に聞きにいくのも嫌だという人だ。これらの人はN響オーチャード定期への移動ということが予想される。
 オーチャードは渋谷だし、日曜など週末の午後3時30分開演だ。
 ただし、オーチャード定期の年間公演は5公演しかない。演奏される曲も多くは初心者向け、特に問題なのは5回のうち3回くらいは指揮者がN響の本定期に登場する前のお試し採用的な若手が多く含まれていることである。でも、まあそれでもいいから渋谷で週末の公演がいいので、オーチャード定期を選択をする人も少なからずいるだろう。そして、オーチャード定期にはかつて、NHKホールの公演では行われていた、開演前の室内楽演奏のサービスも続けられている。

 オーチャード定期も年間定期会員券には、今のところ200席くらいの余裕がありそうだ。これが1回券に出てくる。しかし、この座席も、きっと多くが埋まってしまうだろう。1回券に回る枚数は確実に減る。ということで、サントリーのB定期だけでなく、オーチャード定期の1回券も買いにくくなるということが予想される。




 さらに、2020−21シーズンはCプロは当初から池袋に移動するが、Aプロは2月までの6プログラム12公演はNHKホールに残る。ということで、土日の渋谷がここには残っているので、ここにCプロから移動してくる人も多数いるはずなのである。こうして、Aプロの定期会員数が増えることも予想される。
 そして、その自由席も今まで以上に早く売れてしまうだろう。何しろ月に2回しかないからである。また、それだけでなく今までは自由席でお気楽に聞いていた人の中には、D券あたりの会員になっておくかと考える人が出てくるはずだ。
 その理由は池袋に移ると自由席はなく、D席が最も気軽な価格の席になるが、その座席を確保するのは大変だと考えるからだ。確実に抑えるためには優先予約権がある、その前のシーズンの定期会員になっておく必要があると悟るからだ。こうして、今まで自由席で聞いていた人、当日券で聞いていた人が新たに定期会員になる人が出てくると予想される。


 つまり、2020ー21年のシーズンから、サントリーB定期、オーチャード定期、20−21シーズンのA定期の会員数が増える。唯一6公演だけ残る、お気軽な1500円自由席も前売りの早い段階で完売してしまう。さらに池袋に移るCプロ会員も座席数が少ないので年間会員でほぼ埋まってしまう。少なくとも池袋のCプロ会員も価格の安いBーDまでの会員席は、サントリーB定期と同じく年間会員で埋まってしまうと思われるからだ。
 こうして、N響のチケットは今まで当日券でも気軽に1500円で買えていたのが、よほどのことがない限り、B会員までが定期会員席で完売してしまい、当日券は一気にA席7300円からとなる可能性が高まる。それでも買えるだけ良かったという場合も多くなり、今までサントリーB定期では良くあるものの、NHKホールのAC定期では年に数回しかない前売り完売公演が頻出するようになるだろう。




「N響をこれからも聞きたければ、そのベストな対策は2019−20のシーズンから定期会員になっておくことである」

 この流れを引き継いで2021ー22シーズンは「N響のチケットは前売りで早いうちに買わないと聞けない」という認識が高まり、池袋のAプロ、Cプロ、サントリーB定期、オーチャード定期ともチケットは前売り販売率が俄然上がり、N響定期のチケットのプレミアム化が進むと思われる。
 
 中には、N響から他の在京の交響楽団、例えば都響や東京交響楽団、東フィルなどに移る人もいるかもしれないが、N響の会員はN響が本当に好きなのだ。その数は限定的なものと思われる。

 さて、チケット争奪戦に勝つためには、この2019ー20のシーズンから定期会員になっておくことをオススメしたい。現役の定期会員こそが、次のシーズンの定期会員の最優先購入権利を得られるからである。
 これから、徐々に2020−21シーズンの演奏内容が公表されていく。最終的には2020年1月に全てが公表される。

その中にはパーヴォヤルヴィが毎シーズン演奏してきたマーラーの残りの演目。9番シンフォニーや大地の歌が入ってくるはずである。元気であれば、ブロムシュテットも引き続き演奏するだろうし、人気のソヒエフなど、N響ならではの世界的巨匠の演奏会が多数含まれるはずだ。すでに、2020年12月には、巨匠・マイケルティルソントーマスの客演が発表された。さすがN響である。今までは当日券、自由席などで気軽に聞けた時代、それはこの2019ー20のシーズンで終わりだ。2020年9月から、そう東京五輪の後からN響のチケットはずっと買いづらくなるはずである。

 そして、その時になって多くの音楽ファンが気がつくはずである。ベルリンフィルやウイーンフィル、シカゴ交響楽団、アムステルダムコンセルトヘボウ管。それらのオケと比べても双璧と言えるレベルのN響の演奏の素晴らしさを、それらのオケに振りにくるのと同じ指揮者がN響は毎月のように登場してくれるだけでなく、来日オケにありがちな凡庸なプログラムではなく常に刺激的な演奏会を提供してくれているということを。



 そして、NHK交響楽団の定期演奏会のチケット代は最高にいいS席でも定期会員なら1回7200円でしかないことのありがたさにも気がつくだろう。この秋のウィーンフィルの来日公演では最も安い席でも17000円、ベルリンフィルでは、18000円。S席はウィーンフィルで3万7千円、ベルリンフィルに至っては4万2000円だということを考えると、本当に驚くほど気軽に世界最高峰の演奏会のチケットを手に入れることができるのがNHK交響楽団の定期演奏会ということに気がつくのである。今まであまりにも気軽に格安でAプロ、Cプロのチケットが手に入っていたので、そういうありがたさにあまり気がつかなかったのである。 


最後にちょっとだけきになること。それはN響定期会員の年齢である。非常に高齢な方も多数いる。その方達は、これを機械に定期会員をやめるのかもしれないなとも思ってる。それだけはちょっと気になる。
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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