自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
今年、最も必見の展示。ベーコン回顧展
ベーコンは1992年に亡くなった20世紀を代表する画家であるが独特のフォルムの崩し方はそれ以前のどの画家とも断絶した個性をもっていると思う。この展覧会では1949年から晩年までを30数点の傑作、ベーコンの全容を概観するのにまさにうってつけの作品群で構成されている。見事な企画だ。数もとてもいい。多すぎない。そして、3作で構成される3幅対、スフィンクス、教皇といった強烈なキーワードの作品に関しては1点だけで終わらせずに、きちんと比較しずしんと見るものの感性と知性に挑んでくる展覧でもある。去年のポロック展に続き春の東京国立近代美術館は、その年のもっとも注目すべき展覧会をやるのだなと強く思った。この展覧会をみずして都内の展覧会の何をみるというのだ!
ベーコンは、例えばぶれた写真から、対象の中心をつかみとる。境界を作ってみたと思ったら、逆にわざと描かないことで、見るものに挑んでくる。そして肉体とはなんだろう?存在するということはどういうことだ!と問いかける。しゃれこうべのような顔に白とそれに属する色を微妙にぬったようなもの。教皇という追い込まれた対象へ挑んでみたりもする。タイトルに習作と書きつつ、肝に値する部分以外は削いでみせて完成作品以上の効果を放射する。形をゆがめるたり、浮かんだものを画面に暴力的に入れ込む事で見えてくる調和というものが心に浮かんだりもする。圧倒的な展覧だ。それも現代的、くどくど全部集めない。だらだら見せない。エクシビション自体がベーコン的なのだ。2013年4月13日@東京国立近代美術館
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佐藤治彦 Haruhiko SATO
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演劇ユニット経済とH 主宰
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演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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