佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 東京フィルハーモニー管弦楽団 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ペーターシュレイダー指揮

ベートーヴェン作曲 交響曲第4番
ワーグナー作曲 ニーベルングの指輪より



 こういうコンサートを出会うのが楽しみで演奏会通いをしている。
東京フィルはいまや新国立劇場のオケピットに入る仕事も多く、まさに新国立歌劇場管弦楽団でもあるのだ。そのオケが、ウィーン国立歌劇場、バイエルン州立歌劇場、メトロポリタンオペラハウスといった世界の超一流オペラハウスの指揮者として長年の経験を積むペーターシュナイダーを指揮者に迎えた。ペーターシュナイダーは1986年のウィーン国立歌劇場来日公演のときに「ばらの騎士」を聞いたのが初めてだった。公演を告げるチラシには新進の素晴らしい天才指揮者といったように書かれていたと思うのですが、同じ時に来日時に「マノンレスコー」を指揮したジョゼッペシノポリーがあまりにも鮮烈で、なんて凡庸なんだと思ったのを覚えています。クリスタルートビッヒなどの名歌手の歌だけを聞いていたのですが、長くて途中で退屈してしまったんだと思います。銀行員の激務の中での鑑賞だったのでちょこっと寝てしまったことを覚えています。
 ということで、シュナイダーというと退屈というイメージがついていたのですが、その次にきいたのは、それから10年以上は経ってからだと思います。ハンブルグかバイエルンで生をきいて、手堅い!と思ったのを覚えているのです。音楽家はどんどん進化していくのだから一度で決めてしまってはダメだなあと思うのです。
 そして、昨年の初台の新国立歌劇場での「ばらの騎士」。東京フィルから、素晴らしいリヒャルトシュトラウスの音色を紡ぎだしていました。僕は本当に驚いた。東京フィルの定期演奏会の会員になったのは、こういう演奏をこのオーケストラから聞けるのだと知ったからです。
 
 ところが、シュナイダーはオペラの指揮では活躍していますがコンサートの指揮者としてはほとんど無視された存在です。しかし、ヨーロッパの指揮者の王道は、若い時からオペラの指揮者として経験を積み、コンサート指揮者になるものと言われています。シュナイダーも70歳。きっといろいろの思いがあるんだと思うのです。しかしながら、1980年代の初めにブレーメン交響楽団というドイツの地方の二流オケの音楽監督以外の経験はありません。その地位を捨てて、ウィーン国立歌劇場にデビューしたわけです。

 先ずは今宵のメインであり十八番のニーベルングの指輪の演奏は素晴らしかった。新国立劇場はニーベルングの指輪の初演の時にはNHK交響楽団が演奏しましたが、今年と来年は東京フィツとエッティンガーという東フィルコンビがピットに入ります。シュナイダーを指揮者に仰いだときの東京フィルの見事なワーグナーの演奏。世界中のどのオペラ歌手も満足して彼らの演奏で唄うでしょう。そして、驚くでしょう。アンサンブルも、ワーグナーとしての地響きのようなうねりも感じられた。これもシュナイダーの指揮で演奏していることによる迷いのなさだと思うのです。東フィルのメンバーが指揮者を完全に信頼し音作りを任せ彼に言われたことは躊躇なくスパーッと演奏する。
 シュナイダーも一生懸命演奏する彼らに非常に喜んだことでしょう。エッティンガーも楽しみですが、新国立歌劇場は次回のニーベルングの指輪の時にはシュナイダー&東フィルの演奏で上演すべきだと強く思います。

 今宵の僕のメインは別にありました。40分に満たないベートーヴェンの第4交響曲を聞くことなのです。そして、僕はこの70歳の指揮者がすっかり好きになりました。それは、カールベームの演奏につながる音楽への奉仕の精神に溢れていたからです。バイオリンなどのピッチは今月聞いたニューヨークフィルやシカゴ交響楽団のそれと比べると聞き劣りするし、管楽器も初歩的な音がひっくり返るといったようなこともあるのですけれど、シュナイダーの指揮には嫌らしいところがない。スコアに書かれたことを書かれたままに普通にやろうじゃないかという演奏なのです。
 サイモンラトルやロリンマゼールに聞かせたいですね。それよりもチョンミュンフンとか、あいつあいつだ。ゲルギレフ。ゲルギレフはこの前のプロコフィエフは良かったけれど。この素朴な演奏があなたにできますか?って聞きたい。
 きっと今回も練習時間の大半をワーグナーに注いだのだと思います。ベートーヴェンにもっと時間をかけてくれたら、そういった技術的なミスも少なく本当に素晴らしい名演になったのだと思うのです。東京フィルにお願いです。どうかどうか、ペーターシュナイダーを毎年呼んでください。そして、ドイツ物のシンフォニーや交響詩を演奏して下さい。毎年の楽しみになりますから!!!
 聞き逃したみなさん。日本のオケはとても安いチケット代で音楽を楽しめます。どうか、こういう演奏を聴いてもらいたいなと思います。

 


東京オペラシティシンフォニーホール
2009年1月29日
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HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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