佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 東京バレエ団 眠れる森の美女  忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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見事な東京バレエ団の踊りとマラーホフ存在感だが

50周年記念、そして、アーチスティックアドバイザーに就いた マラーホフ自身の振付けである。プティパの振付けももちろん山ほど残っているが、マラーホフのアイデアいっぱいのものである。いいか悪いかは分からないが、少なくとも東京バレエ団ひとりひとりの気合いがいつも以上。そりゃあ、マラーホフとじっくり作り上げるのだからそうなるだろう。それがひしひしと伝わってくる踊りであり演技であったことを先ずは申し上げておきたい。
 上野水香のオーロラ姫などは、彼女のひとつひとつの舞台にかける思い、この舞台を最高のものにする、との決意がひしひしと伝わってくる。一幕のローズアダージョの場面等は、恥じらう若い姫というよりも、4人の王子の誰よりも力強く、くっきり踊るので、あれじゃ誰とも結婚できないやと笑ったくらい。いや、それほどスゴいのだ。
 眠れる森の美女の、難しいところは30分もあるプロローグだ。その間は主役は一切出て来ない。1幕が始まって15分くらいして、やっとオーロラ姫が出てくるという次第。つまり、最初の3分の1をどう飽きさせずに見せるかというのが難しいのだ。それを、プロローグおしまいにマラーホフが登場すること、カンパニーのテンションの高さで乗り切った。見事である。
 上野オーロラに対して、デジレ柄本弾であるが、もうすっかりこのカンパニーの男性ダンサーの第一人者として堂々とした演技であるが、安定感ありすぎ。若いのだからもっとヤンチャにやって欲しいなあと思う。オーロラとのフィッシュダイブなどを、安定感ある中で見事に決めまくるのはブラボーなのだが、例えば、ひとりでグランジュデ?で舞台を廻って行く時などは、安定感よりも追い込み感が欲しいのだ。そういう演技を見ている方が客はワクワクする。もっと高く、もっと強く飛んでくれよ、弾のように、主役なんだぜ、頼むぜ!と思ってしまう。ギリギリ感。もしかしたら、失敗するかもしれないギリギリまで追い込んでいる感が欲しいのだ。その点、青い鳥を踊った梅澤紘貴などは、跳躍する喜びを感じさせる。俺はもっとできるかも?もっと、もっとと追いつめている感じが伝わり楽しい。相手役の沖はコケティッシュに決めてお上手。 
 予想以上に良かった奈良春夏のリラの精は、真面目で華麗なバレエの醍醐味を感じさせる見事な演技で、上野、奈良は世界のどの舞台でこの役柄を演じても大喝采を受けるだろう。
 第3幕の宝石たちも、見事に決めて行く。この人たちは全幕もので主役を務める級でやるわけで、特にダイヤモンドの渡辺は、もっと大きな役で見てみたいと思わせるもの。
 そして、今回は3階の1列目で見ていたのだが、やはり、あの男。吉田蓮は目を引いた。ソロではないので悪目立ちをするようなことはしないし、皆と見事に合わせるが、非常に楷書の美しい踊りを見せる。この人のダンスへのテンションはいつも高い。この吉田さんをいいなあと思ったのは、数年前の子どものためのバレエ「眠れる森の美女」で、猫を踊ったときだった。今回は、演技力抜群、クセのある役なら俺に任せておけ系の氷室友が踊ったのだが、振付けがちょっと保守的だった。パドシャに関しては、結婚披露宴でのお祝いのダンスでありながら、途中から脱線して行くオモシロさが会った方がいいと思うのだが、マラーホフ様の振付けだから、誰も文句は言えない。氷室にあった役柄なのに、その良さは封印であった。残念。カラボスのマラーホフを見て、すげえなあと思ったのはどれほどいたのだろう。超難技は一切ないのだが、通常の眠りの出番の50%増くらいの扱いで舞台を見事に引っ張ったのだ。カラボスの廻りにいた悪党?どもなど、もう命がけで踊っていた。でも、この扱いだと、マラーホフがいないと成立しない振付けだなあと思った。毎回、マラーホフを呼ぶわけにもいかないだろうし、このプロダクション、、、使い捨て?のわけないはずなのになあと。しかし、公演全体に関しては使い捨てにした方がいいかもしれないと思った。責任はワレリーコングロワの美術と衣装にある。

 眠りの森の美女のバレエを何回か見ていてストーリーを知っている人ならまだしも、初めて観る人にはアレレであり、見事な東京バレエ団のダンスの足を引っ張ったと言いたい。
 先ずは装置。舞台を王宮の庭のローズガーデンにした。それを森の中にも転用するのは無理がある。ストーリーを知らない人は何が起きているのか分からない。2幕など、初見者は森の中とは思わないだろう。特に城全体が眠りに落ちる時に、みんなオーロラを置いてきぼりにしてどこかに消えて行く設えになってしまって、あれれ????となるのだが、それもこの装置のおかげである。さらに、色が良くない。全部中間色なのである。主役もソロもコールも。フラワープリントの衣装らしいが、客席からはシミにしか見えない。各衣装の色が曖昧で何色も使う。右半身、左半身で微妙に違う。だから、見ていてバランスが良くない。強い色と弱い色が衣装に混ざっているのだ。バレエ衣装の素晴らしい、パリ、ミラノ、ローマなどでは絶対にやらない愚行である。ロイヤルやロシアのカンパニーでもあんなバカなことはしない。
 宝石たちにも、いろんないろんな色を使うので、強さがまったくない。ルビーは赤、エメラルドは緑 一番美しい赤と緑を捜してきて、それ一色で攻めるのがバレエ衣装の王道である。あとはダンサーに任せればいいのである。ソリストが曖昧色で、混ざるとコールドとも区別がつかず、コーラルの良さも際立たない。どんな色だろう、どんな模様だろうと衣装に注目させたいのか?一瞬にして、登場人物を説明尽くすものでなくては衣装はいけないのである。せっかくメリハリのある踊りをしても、曖昧な色合いの衣装が足を引っ張るのである。また、女性衣装の丈がイマイチなので、ぱたぱたして見えるし、スタイルが良く見えない。全く何であんなのにしたのか分からない。それも、舞台が薄汚れたグリーンである。もう、衣装をキレイに見せることは見えない=ダンサーが美しく見えない仕組みなのである。
 デジレ弾も何か蝶ネクタイした曖昧な姿で王子の衣装ではない。もう一度言う。初めて観る人は2幕が森の中だとか、オーロラの幻想をデジレが見ているとか、妖精たちが出て誘っているとは全く見えない。衣装や舞台が全部曖昧だからだ。そうそう、猫にも虎の毛皮のようなものを着せていた。なんじゃあれ!
 休憩中に若い女性が、マラーホフの演技をみて、全盛期は過ぎているからねえと言っていた。何か華麗なバレエの技を披露する?とでも思っていたらしい。カラボスはああいう役柄なのである。私はマラーホフの存在感のスゴさに驚いた次第。
 全体の感想をまとめます。ダンス一流、衣装装置、独りよがりで残念なものでした。あの装置と衣装は大劇場のグランバレエでやるものではありません。中劇場までにして下さい。最後にピットのオケについて。オブジャニコフはいつもは良い仕事をしているが、今回はリズムをくっきりさせることに終始し、演奏に繊細さが欠けていた。東京シティフィルはもっとできるオケであります。
 2015年2月7日@東京文化会館
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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