佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 ジョンソン&ジャクソン「窓に映るエレジー」 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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誰が見ても笑えて面白い作品は、紛れもない才能の結実。

「窓に映るエレジー」@CBGKシブゲキで鑑賞して来た(7月31日夜)。2時間あまりの作品はバラエティに富み面白かった。ブルー&スカイがメインで作っているのだろうが、ちょいと違う。それが大倉孝二の味なのだろうか。 ジョンソン&ジャクソンいづれにせよ、ブルー&スカイと大倉孝二という紛れもない現代演劇界の才能の科学反応は大変素晴らしく、ボッシュの絵画、ウディアレンの映画のように変幻自在に楽しめるようにできた上質のコメディであり、劇場作品であった。
 冒頭は中2レベルの下ネタから入る。ここで、会場の緊張が緩む。そして、さて芝居が進むかと思うと、ウェルメイドな音楽が演奏されたのには驚いた。さて物語は…と、ここで少々、あらすじを書いてもいいのだが、つまらない新聞の劇評と同じようになってしまうし、これから見る人には邪魔だし、見ない人にはどうでもいい話なので書かない。ただ言えることは全編笑いである。笑いでありナンセンスである。ナンセンスで物語は紡がれて行く。節約、仕事、格差、リア充。幸せを必死に求めて、確実に不幸になって行く人間を笑い飛ばすだけでなく、社会と現代そのものも笑い飛ばして行く作風に舌を巻く。誰が見ても面白く笑える。そして2時間の劇場作品として一流のそれに仕上がっていた。
 会場の笑いは大倉孝二や池谷のぶえが作り出す分かりやすく一級の笑いに反応しているのだが、村岡希美が真面目に必死に生きている女を演じていることがこの作品の軸となっており、ときどき笑いに走るかなというところで踏みとどまる池田成志の抜群のバランス感覚のある名演で芝居は締まり、人間のむだな懸命さが愛おしくなってしまうことに観客は気づいていないかもしれない。笑いながらも哀しい。そんな作品なのである。ブルー&スカイ自身も役者として演じるが、その抑えた演技は素晴らしい。やり過ぎや無駄な主張は常に演者のための高揚感であり作品や観客にとって喜ばしい自体ではないからだ。
 物ごとの表現は常に削ぎ落とすことによって純化していく。観客との繋がりは、削ぎ落とされた部分に観客の心が共鳴することによって埋まって行くからだ。
 ブルー&スカイという作家は同世代でも特別な才能である。他がドリフターズやひょうきん族などのテレビでのコントに大きな影響を受けて、作品をバラエティショー化して演劇だと言い張っている時代に、前述のような作品を生み出して来た。ナンセンス、ばかばかしさ、その先には常に人間そのものを笑い飛ばしてきたのだ。
 多くの人の理解を得たのかどうかは分からないが、まさに一級品なのだ。
 演劇の公演でグッズなど買わない僕が、なぜか買ってしまっていまでもちゃんと持っているものがひとつある。それは割り箸だ。演劇弁当ネコニャーがどんどん追い込まれて、中野のウエストエンドで公演を打った時に買ったもので、確か500円。五膳だから、1膳100円。こんなに高い割り箸は買ったことがない。
 だいたい演劇弁当という名前を劇団の名前の前につけたのも、みんな食うのが大変だから弁当屋やってバイトしながら演劇するためにつけたとフライヤーで言っていたけれど、芝居だけでなく自分も劇団も笑いの対象にしてた。面白い。劇団としては無くなったとしても、この割り箸は、将来きっと価値がでると思って買い求めたのだ。
 というように、ブルー&スカイは若い時から不思議な世界観、空気感を作れる作家であり演出家だなと思った。きっと世の中のメインストリームになるだろうなあと思った。時代が追いつく、もしくは、もっと年を取れば老成していろんなことを知ってちょうど良い売れる作品を作り出すようになるかもしれぬ。それはもちろんある程度自分というものを残しながらなのだけれども、作り出すだろうなと思っていた。もう10年くらい前の話だ。
 どうなんだろう。そんな作家になるのかもしれないし、ならないのかもしれない。何か無理してでも売れてやろうという気迫ばかりが演劇の作家からは感じることが多いが、ブルー&スカイはもっと独自の道を歩むのかもしれない。例えば、イッセー尾形のような、いやイッセー尾形ならいいのだが、マルセ太郎だと食うのに困る。 まだまだ見てみたい才能なのである。大倉孝二という俳優についてはもはや私なんぞが語る必要がないだろう。一度、松竹の映画作品、それもプログラムピクチャーで見てみたい俳優だ、とだけ言っておきたい。
 作品は2時間をふと思い出しながら、必死に演じて笑われた登場人物が客席をずーっと見続ける形で終わる。それは、観客自身の姿であることを分かってねという感じなのかな。いや、そこまでは言ってないのかな。でも、それがエレジーであることは間違いない。
 2014年7月31日@CBGKシブゲキ
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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