佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 音楽 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ヘルベルト・ブロムシュテット指揮/バンベルグ交響楽団



85歳の若い老巨匠を得て水を得たように復活したバンベルグ響

ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」交響曲第7番
(アンコール)エグモンド序曲

 ジョナサンノット指揮でのバンベルグ交響楽団は少し沈滞した。このオケはドイツの名門オケが次々とインターナショナル化していくなかで、頑にドイツ的な何かを守ろうとしているオケなのだ。僕はヨッフム、ホルストシュタイン、そして、ノットでも聞いたきたのだが、若い指揮者に全幅の信頼を寄せないのだろうか?指揮者の意志が行き渡るというよりも、何か楽曲演奏の中心がどこにあるのか分からない演奏で緊張感がなかった。今回は85歳のブロムシュテットを得たことによって、大満足の演奏。このオケ、楽員の誰よりも演奏歴の長い人が来ると、何も言わずに従うのかな?そんなことないか。いづれにせよ素晴らしい!
 ブロムシュテットはつい数年前に、オスロで聞いたオスロフィルのブラームスで評価を変えた。それまではどうも面白くない演奏をする人だと思っていたのだ。最初にきいたのは、ドレスデンシュターツカペレとの来日。まだ社会主義時代の1980年代のことだった。あとはN響の指揮ということになるが、その頃のN響はドイツ人の巨匠が次々と指揮していたから、いまひとつパッとしなかったこともあるかもしれない。
 しかし、ブロムシュテットは85歳なのに若い。渋さよりも壮麗で、若々しいテンポで音楽をならしていく。4楽章の弦楽合奏だけで語られるところのアンサンブルの素晴らしさ、弦の音の美しさ。若々しいが、ブロムシュテットは余計なことを一切しない。ベートーベンに語らせる。そこが、若いティーレマンとの違い。こういう演奏をきくとべートーヴェンは21世紀にも生きていくだろうと確信する。
 ときおり、楽曲の冒頭で縦の線があわなかったり、管楽器がひっくり返ったり。ブロムシュテット/N響ではそんなことないのになあ。
 それにしても、こんなに良い演奏をしてくれるとは思わなかった。
2012年11月1日@サントリーホール

音楽界の勢力図が大きく変化している。そして、

モーツアルト/ピアノ協奏曲17番
ブルックナー/交響曲第4番「ロマンチック」

 ブロムシュテットは2011年秋のN響との定期演奏会でブルックナーの7番交響曲の名演を披露してくれているし、先週のベートーヴェンの演奏も良かったので、間違いなく素晴らしい演奏会になるだろうとは予想していた。
 しかし、その高いハードルも軽く飛び越す究極のブルックナーの演奏を聴かせてくれた。1日の演奏会であったような縦がずれるとか、金管などが揺らぐことも全くなく冒頭から深く強いアンサンブルを聞かせてくれるものだった。特に2楽章のボヘミア的ロマンチズムが溢れるところからは、この演奏はもうウィーンフィルやベルリンフィルなどでも聞かせることのできない、技術的、そして、高い音楽性をもった至宝の演奏であったといえるだろう。オーケストラの各パートはお互いを聞くとともに刺激し合い、有機的に高いレベルになっていくのだ。ブロムシュテットの微妙な変化に微妙に応えて行くのだ。唖然とする演奏とはこのことで、私は目の前にバンベルグ交響楽団とベルリンフィルの演奏会があって、どちらか好きなものをどうぞということになれば、バンベルグ交響楽団を間違いなく選ぶことになるだろう。ベルリンフィルはブランドは一流だし技術も特級だったが、今宵のバンベルグは技術は一流だし、個性と魅力はベルリンフィルを遥かにしのぐものだといえるだろう。最近の東京のオケの飛躍的な向上など、楽壇はいま大きく変わろうとしているような気がしてしかたがない。
 ブロムシュテットはいいという評価はあったとしても、カールベームなどと比較される様な指揮者ではなかったけれども、今回のバンベルグ響との来日で、少なくとも日本では、ベーム、カラヤンなどと比較される世界の音楽界の超一流指揮者として名声が確定したといえるだろう。
 ブロムシュテットは85歳だけれども若い。肉体的にも若いし音楽も瑞々しい若さがある。
 さて、今宵の演奏はこのブルックナーの交響曲を聴きに行ったのであってモーツアルトはおまけのような存在であったはずだった。しかし、その考えは全くの間違いであった。こんな化け物みたいなモーツアルトを聞いたことは私の経験ではない。17番のピアノコンチェルト。ソリストのピョートル・アンデルシェフスキというハンガリーとポーランドの血を引く若いピアニストの演奏がぶったまげるほどすごかったのだ。ピアニシモの美しさ、ピアニシモの中での微妙なゆらぎ、鋭角なリズム、こんな美しいピアノの音をきいたことがない。彼が丁寧な美しいピアニシモの音でオーケストラに襷を渡すと、それに呼応して非常に繊細な美しいピアニシモの弦が引き継ぐ。ああ、協奏曲でお互いに呼応するということはこういうことだよね!と思わせてくれる素晴らしいものだった。音楽は有機体としてライブに生きていた。モーツアルトが聞いたらきっと大喜びしただろう。僕は巨匠と呼ばれるピアニストを山ほどきいてきて、もうほとんどが亡くなってしまったし、ポリーニも一時期の生彩はないし、アルゲリッチは粗いだけになってしまったので、もうしょうがないなと思っていたけれど、あれだね。天才ってのは出て来るんだね。このピアニストの欠点は名前が覚えにくいことくらいだ。ああ、驚いた。
アンコールのバッハのフランス組曲のサラバンドも見事。コンサートがあったら他の予定を変更してでもいきたいと思った。
2012年11月6日@サントリーホール

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指揮:クリスティアン・ティーレマン
管弦楽:ドレスデン国立歌劇場管弦楽団


ブラームス:交響曲第1番&第3番
(アンコール)ワーグナー:リエンティ序曲


この、ブラームスはお好き?
 ブラームスの交響曲。世界中の超一流オケの演奏でいろいろと聞いてきた。聞かせてもらってきた。
 しかし、このティーレマン/ドレスデンシュターツカペレの演奏は全く違う高みに達していた。僕の記憶の中に生涯残る、圧倒的な名演だった。
 オーケストラがあのような緻密な演奏をするのは、チェリビタッケが指揮した時のミュンヘンフィルの緊張感に共通するものがある。決してフォルテ、最強音に簡単に行かずに、ピアニシモと中庸の中で深いハーモニーと微妙に揺れるテンポ、ひとつひとつのフレージングを大切にしながら醸し出すオーケストラ演奏のひとつの頂点。
 個性はあるのに、伝統の音でもある。
 ドレスデンシュターツカペレは共産主義の東ドイツ時代、80年代の来日で2回、あれはブロムシュテット、90年代になりシーノーポリで何回か、そして先年は、ファビオルイジと3人の指揮者の演奏できいてきたが、全く違う境地にいたことは間違いない。
 NHKホールは音響的には東京の会場の中ではもはやトップクラスではない。その中であれだけのプレゼンテーションをする。NHKホールで聞いたオーケストラ演奏会では間違いなくトップ5に入る時間だった。
 ドイツの現存するオケとシェフの組み合わせで、僕の中で決定的に、ベルリンフィル/サイモンラトルよりは、魅力的な組み合わせであることを確信した。
 ティーレマンをオーケストラコンサートで聞くのは、サバリッシュの代理でウィーンフィルとやってきた2003年の来日、そして、ミュンヘンフィルと来日した2007年と聞き、今回は5年ぶりなのだが、感動の深みが違うのは僕だけだろうか?ミュンヘンフィルの時にもブラームスの1番を聴いたのだが、その時の記録では「良かった」くらいしか書いていないんだよね。
 この極みはなんだ!
 来月はかつてのシェフであるブロムシュテットがバンベルグ響とやってくる。ホルストシュタインの最晩年、バンベルグと何回かやってきて、ブラームスのいい演奏を聴かせてくれたなあ。
 しかし、昨日の演奏はスゴかった。スゴいのに、圧倒的なのに、力でねじ伏せられている感じは全くない。音楽の何か重要な肝の部分でひゅーっと吸い込まれて行くようだった。
 それだからか、金管の音の出だしがちょいとひっくり返り気味になるのが目立って仕方がなかった。もちろん、いったんメロディに乗っかってしまうと素晴らしいのだけれど、ああ、ホントに良かったなあ。
 こうなると、ティーレマンの唯一の欠点は見栄えだな。
何かあの顔、体型、髪を観ていると1940年代のドイツの純粋愛国的な若者を思い出してしまう。あと拍手を指揮台から乗り出すようにして、どうでした?って見る顔、あれはキャラヤンぽい。フォンキャラヤン!
 昨日のアンコールのワーグナー「リエンティ」序曲も良かった。大枚32000円!出して聞きに行く26日のブルックナーも楽しみだ〜!正直、チケット代に金使い過ぎだが、この体力のあるうちにいい演奏を聴くために金を使いすぎて、人生の終末で貧乏になりおかゆを啜るようになったとしても、後悔なんかしない。
2012年10月22日@NHKホール



ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』から“前奏曲”と“愛の死”
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調

ティーレマンとカラヤン
 カラヤンが設立したザルツブルグのイースター生誕音楽祭やジルベスターコンサートのドイツ国内のテレビ中継などが、ラトル/ベルリンフィルから、ティーレマン/ドレスデンシュターツカペレに変わりつつあるという。欧州の楽壇を制覇しつつあるこの50歳の若き巨匠の存在は極めてユニークだ。
 既にドイツ系の音楽を演奏する指揮者はすべて既に高齢である。ハイティンク、マゼール、デイヴィス、アーノンクール…すでに80歳代。ヤンソンスも70歳。デビッドジンマン75歳。アバドもムーティもまもなく80歳。50歳前後で彼のライバルとなる人はいない。全くいない。それもティーレマンは久しぶりの著名なドイツ人指揮者である。私がこの指揮者に驚いたのは2003年のウィーンフィルとの来日だった。伝統のウィーンフィルをいつも以上の緊張感をもたせ、がっちし名演をきかせてくれた。その時と同じプログラムが今宵のそれだ。
 ワーグナーでは、ブラームスの時に聞かせた、中音量から弱音のレンジにおけるテンションの高さ、微妙な表情の変化は聞く側にも高い集中力を求めるもので疲れたがティーレマンの将来を楽しみにさせるものだった。
 しかし、このブルックナーはどうだっただろう。
良さはある。同じく弱音などでの面白さだ。同じくフレージングを歌わせる。弦のアンサンブルも素晴らしい。しかしながら、どうして、こうブルックナーのスコアにティーレマン節を残して行こうとするのだろう。それは故意に残すキズのようなものだ。
 カラヤンは権力を楽壇の中で示そうとしたが、ティーレマンは演奏の中に自己を投影した。それは、将来の飛躍のための道中の表情なのだろう。これから熟成されて行くのだろうとは思うのだが、決して心地よいものではない。
 ブルックナーは自ら書いた交響曲を決して信じなかった。幾度も書き直し、神に問うた。あなたがこの世に残したい楽曲はこういうものなのでしょうか?と
 ブルックナーの音楽はロマン派の音楽が吹き荒れた音楽の世界で、バッハからブラームスに至るドイツ音楽の本流と対話し、自らを託して生み出した楽曲だ。その音楽は教会や神社に漂う神聖な空気が、地球の歴史の遥かかなたを思い起こさせる大自然に漂う透徹した大いなる力と結びついた音楽だ。その空気が全編を覆う。その意味でブルックナーの音楽はブルックナーであり、ブルックナーではないのだ。そこに50歳の若造の音楽性?個性?の投影を残して自分らしさと思うのならそれはあまりにも青い音楽でありブルックナーではないのだ。2012年10月26日@サントリーホール
指揮/シルヴァン・カンブルラン
管弦楽/読売日本交響楽団


合唱;新国立劇場合唱団
ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」(全曲)
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲)

楽曲の面白さには到達できなかった読響のラベル

 ラベルは難しい。クラシックの音楽でありながらジャズの要素がある。そのひとつの特徴は即興性。再生音楽ではなく、いまそこで生まれた様なアドリブ感と躍動感。そして、演奏者の個性が十分に放たれ、全体としてもひとつの求心力を求められる。楽曲をひとつの楽想で突き通すだけでなく、微妙な変化や音色が変わって行く面白さ。そういう万華鏡的色彩感がなければならない。
 テンポもリズムもスコアに書かれてあるから動いて行くのではなく、もっと内的なものから発した自己性を求められるのだ。フランスのオケが演奏するラベルは、その面白さが出ていることが多く面白いのだ。日本ではN響がデュトワとの長年の共演から面白い演奏を聞かせることが出てきた。
 しかし、今宵の読響はそういったラベルの面白さは伝わってこなかった。ひたすら、カンブルランの楽想に演奏者が寄りかかり演奏している感じがしたのだ。
 特に前半の「ラメールロア」は、高度の緊張感を持続させ微妙な変化。冬の厚い雲の中で陽射しがもれてくるような微妙な変化の面白さを聞かせなくてはいけないのだが、そこに音の面白さは見いだせなかった。僕には退屈な演奏になってしまった。後半の「ダフニスとクロエ」も90年代にN響がピーエルブレーズと、またシャルルデュトワと聞かせた様な面白さはない。カンブルランは懸命に指揮をするのだが、ラベルの面白さをオーケストラから引き出すことはできなかったと言えるのではないか。やっと終曲のフルートソロの部分からラベルになってきたという感じ。そこからは、オケ全体が有機的に変化しラベルだった。ラベルは難しいのである。合唱は非常に素晴らしかった。期待した演奏会だっただけに残念な結果だった。


2012年10月18日@サントリーホール
~オール・チャイコフスキー~
「エフゲニ・オネーギン」より3つのシンフォニック・パラフレーズ(フェドセーエフ編曲)
弦楽のためのセレナード
交響曲第6番「悲愴」
アンコール 「眠りの森の美女」より「パノラマ」&「白鳥の湖」より「スペインの踊り」

ああ、これぞロシアンサウンドの最高峰。

 実はフェドセーエフがソビエト時代の1973年からシェフをしているこのオーケストラでフェドセーエフを聞くのは初めてである。実はフェドセーエフ自体もほとんど聞いて来なかった。ロシアの名指揮者は山ほどいるが、現存する人では、テミルカーノフとゲルギレフの2トップだよ、オケの本陣はモスクワでなくサンクトペトルスブルグと思っていたからだ。
それは、間違いであった。
 トップは、フェドセーエフ/チャイコフスキーシンフォニーオーケストラ(旧モスクワ放送響)である。首都モスクワに本陣がいた!
 ここが最高である!
 ロシアのオケの魅力は何といってもオケが良く鳴る情熱溢れる爆音系。ピアニシモからフォルテまで抜群のハーモニーを聞かせる高度な合奏力。メリハリと繊細さが混ざり合う「目くるめく」音の絨毯。万華鏡。これがロシアサウンドの魅力である。もはやゲルギレフ/マリンスキー劇場管は灰汁の強さで攻めまくる、テミルカーノフ/サンクトペトルスブルグは垢抜けすぎてクールなサウンドで、情熱はもはやベルリンの壁でなくなった。いや、未だに残るムラビンスキーの呪縛からの反作用なのかもしれぬ。
 いづれにせよ、あの伝統的なロシアンサウンドをロシアのオケから聞けたのでホントに幸せであった。ピアニシモがきれいなんだよ、最強音でも音が雑にならないんだよ、振り幅は大きいけれど、無理に右から左、上から下になんかいかない。さすが80歳の巨匠。聞いて良かった。会場はこの秋の来日ラッシュのおかげで5割りくらいしかお客は入っていないが、1曲目からブラボーの嵐で出かけてホントに良かった。自分はホントにコンサートの選択、間違わないなあと思った次第。
 あと2つのコンサートに行けなくなったのが悔しいが、フェドセーエフの来年5月のN響への客演を楽しみにしよう。 2012年10月15日@サントリーホール
2012年10月
ロリンマゼール指揮
NHK交響楽団

NHK


 今年度のNHK交響楽団シーズンの最大の目玉の10月。Aプロのグラズノフのバイオリン協奏曲のソロのキュッヘルはご存知ウィーンフィルのコンサートマスターの中でもトップの存在。キュッヘルは2011/12のシーズン。震災後で多くの欧米の演奏家が来日を拒否しキャンセルする中、単独来日し、N響の5月のプログラムで特別コンサートマスターをしてくれた日本を愛してくれる世界の音楽界のトップ。そして、マゼールとはウィーンフィルで百回以上共演している仲です。もう期待が高まらないと言うのが無理な話です。4つそれぞれが音楽好きならたまらないプログラムになっています。

Aプロ  
 チャイコフスキー組曲3 グラズノフバイオリン協奏曲(キュッヘル)
 法悦の詩/ 無伴奏パルティータ2番 サラバンド(アンコール)

N響最高度の集中力でマゼールと共演
 マゼールとの初顔合わせは珍しいチャイコフスキーの組曲3番で始まった。冒頭は堅いなあと思わせたがすぐにN響はマゼールのあの溜める指揮棒に柔軟に対応し始めた。それにしても今宵のオーケストラの集中力はものすごい。この組曲は弦楽のアンサンブル、ハーモニーがとても大切で、マゼールの指揮とハーモニーの合奏のための聴くということが同時に進行して行く、素晴らしい選曲である。
 そして、コンマスのマロさまのソロ部分の美しいこと。マゼールはこの曲だけでなく、最初の顔合わせだからか、いつもの灰汁の強いマゼール節炸裂の演奏でなくむしろ中庸の良さを大切にした演奏だったと思う(彼にしては)。
 ウィーンフィルのキュッヘルさんを迎えてのコンチェルト。キュッヘルさんは昨年2011年の5月。世界の音楽家が来日キャンセルする辛い音楽環境のなかで、来日し尾高忠明指揮のもと、4回の定期演奏会に特別コンサートマスターとして演奏してくれた。その時の英雄の生涯のソロの美しかったことは忘れられない。ということで、世界的な音楽家ではあるがN響にとっては、親戚の様な存在。
 しかし、キュッヘルさん、この協奏曲にてこづっていた。音色も音量も音程もイマイチ感が拭えないまま終わってしまった。それでも観客は盛んに拍手をするのだが、彼自身が不調であることを分かっているためにスゴくバツの悪そうな感じ。
 巧みにコンサートの最後におかれたスクリャービンの名曲はなかなかいい演奏に出会わない。しかし、今宵はこの曲の魅力を思う存分、聞かせてくれる素晴らしい演奏だった。マゼールが来たからと何か特別の技術的飛躍があるわけではないが、マゼールの色づけとオケのいつもにも増しての集中力でとてもいい演奏会となった。2012年10月13日 @NHKホール
 
 N響はマゼールの芸術を表現する能力を完璧に備えて…
Cプロ:ワーグナー ニーベルングの指輪(声楽なし/マゼール編曲)
 ゲストコンサートマスターにアムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートマスター、ヴェスコエシュケナージを迎えての80分弱の音の饗宴。マゼールはNHK交響楽団に何の妥協も必要ない。ゆったりめのテンポでワーグナーのテキストを懇切丁寧に読み解いて行く、おなじみのメロディやモチーフはきちんと揃っていて、弦の奏者を厚めにそろえたこともあり、低音の美しさ。ハーモニーのすごさ。管楽器はちょいと怪しいところもあったけれども、すんばらしいいい。打楽器系も面白いほど決まる。それも、この巨大な音響の点では東京の他のオケが使わないホール。ここでこの演奏。すげーなーとしか言いようがない。N響の定期会員であることをホントに喜びと思った80分。2012年10月20日@NHKホール

 もはや旧知の仲、マゼール/N響の絶妙なハーモニーを満喫。
Bプロ:モーツアルト/プラハ交響曲、ウェーバー/クラリネッと協奏曲2番(Dオッテンザマー) スペイン狂詩曲 ボレロ 
 モーツアルトの38番交響曲。マゼールはモーツアルトで評価されている指揮者ではない。僕には例えばアンドレプレヴィン/N響でモーツアルトを聴いたばかりだから、この演奏にモーツアルトよりもマゼールの体臭のようなものを感じてしまう。しかし、同じオケがよくもこう1ヶ月で替わるなあと感心する。モーツアルト=小編成でまたもやオケの合奏力、アンサンブル力にギアを入れたマゼールは、享楽の音の世界を次々と披露する。
 決して有名曲ではないウェーバーのクラリネット協奏曲。そこにウィーンフィルの首席のオッテンザマーが入り、最小音から絶妙の表情がびしびしと決まる演奏。今年の最優秀ソリストの候補に入った。ザマー。会場が一気に湧く。
 そして、後半のラベル。先日の読響と比較すると光り輝き音が跳ねている。光と色彩豊かな印象派なラベルが聞けた!ピアニシモの中に輝くダイヤ。砂丘に吹く風のように微妙に変化が生まれて行く。これぞ、ラベル!ボレロは、テンポがやや速めなのと、各パートにジャージーにメロディを歌わせることもあってか、サックスなどミス連発。ちょい残念。しかし、この超名人芸はなんだ。こんな個性的な、こんなボレロ…も、、、、いいよ、いい!まるでN響はもう何回目かの共演のごとくマゼールの要求を見事に聞き入れ、名人芸であり、個性的な演奏を繰り広げる。
2012年10月25日@サントリーホール
 





NHK音楽祭 
 ベートーベン:序曲「レオノーレ」第3番 ハ長調
 グリーグ:ピアノ協奏曲 イ長調 作品16 アリスオット独奏
 チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 作品36
(アンコール)グリンカ作曲「ルスランとリュドミラ」序曲

大団円は祝祭的に
 今年の初めから待ちに待っていた。マゼール/N響の共演もフィナーレ。コンサートマスターはマロ、篠崎さんに戻り、何ヶ月も前から完売だった公演は超満員の観客の中で開かれた。マゼールのこだわりのあるベートーベンで始まり、アリスオットが美貌だけでなく、ピアニストとしてもなかなか優秀であるところを見せたグリーグの協奏曲。マゼールのつける音楽は華やかで繊細。そして、歌う。
 そして、4番交響曲。昨年9月のブロムシュテットとの5番も名演だったが、響のこれは個性豊かな名演。テンポは微妙に動き音楽が生き生きとしている。そして歌う。特に低音を丁寧にし、客を強音で驚かしてひきつけるのではなくピアニシモで引き寄せるようにして魅了して行く。マゼールマゼールマゼール。
 会場はブラボーというよりも歓声で埋まる。そして、アンコール。この夢の饗宴を惜しむように見事な楽しい名演であった。82歳のマゼールともう一度機会がありますように!2012年10月29日@NHKホール



東京芸術劇場リニューアル記念公演
チャイコフスキー後期交響曲チクルス

指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
管弦楽:読売日本交響楽団


ロジェベン、ロジェベン
最近読響の登板が少ないロジェベン。本当に久しぶりに聞いた。そして、このソビエト時代から活躍する大指揮者の演奏の魅力を再び満喫した。3つの交響曲は奇蹟の名演…というのはちょいと言い過ぎかもしれないが、これいつもの読響の音ではない。あの音は、20年以上前のソビエト時代のモスクワ/レニングラード系オケで奏でられた音だ。例えば、スヴャトラーノフとか、ムラヴィンスキーとか。テンポは遅く、丁寧にスコアをたぐって行く。そして、表現はでかく、音量はどでかい。爆音系なのだ。そして、ソビエト時代の厳しい合奏力も伺わせる。ロジェストヴェンスキーはこういうポピュラーな名曲はなかなか演奏してくれないので、生涯忘れられない貴重な演奏体験となった。時々粗い部分もあるが、きっとこのスケジュールだと短いリハーサルでやってるのだろうなと思う。
 一方協奏曲は酷かった。読響だけが演奏していると聞いていて気持ちいいのだが、特に息子のサーシャは楽譜を見ながらの演奏だっただけでなく、技術が追いついていない。出来が悪いのではなくもとから出来ないのが良くわかる。早いフレージングは最後の1音2音は音が出ない。テンポやリズムが安定していない。とにかくかね返せレベルの演奏。妻のボストコーニワも、ペダルを踏み続け演奏をごまかしている。ホントに酷い演奏だ。ロジェベンは引き受ける時にソリストを条件にしているのだろうが、自分の商品価値を下げていることに81歳にもなって気がつかないのだろうか?また、サーシャはどれだけ恥ずかしい演奏なのか分かっているはずだ。いつまでたっても親離れできない典型的な馬鹿息子である。


ピアノ協奏曲第1番 ロ短調、交響曲第4番 ヘ短調
ピアノ:ヴィクトリア・ポストニコーワ
2012年10月6日
幻想序曲「ロメオとジュリエット」、イタリア奇想曲、交響曲第5番 ホ短調
2012年10月7日
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調、交響曲第6番 ロ短調「悲愴」
ヴァイオリン:サーシャ・ロジェストヴェンスキー
2012年10月8日

@東京芸術劇場コンサートホール

指揮=スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
クラリネット=リチャード・ストルツマン
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
スクロヴァチェフスキ:クラリネット協奏曲(日本初演)
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」(デ・フリーヘル編)

 フケセン系クラオタとしてMrS白鳥の歌(予定)
 日本のクラオタは、今や2種類に分かれる。腐女子系なら、ランランなど若いイケメンの追っかけ。男子は、河村尚子、庄司紗矢香などアイドル系演奏家の演奏を求めている。これ新種である。しかし、それ以前からあった、自らを本格的音楽ファンと信じているクラオタの王道は、フケセンである。80歳以上の高齢演奏家を珍重し至芸と信じて拝聴させていただくというそれである。
 日本のファンの間で、話題となっていたスクロヴァチェフスキが、ザールブリュッケンと来日した時に初めてきいた。2つか3つのプログラムを聴いた。プログラムはブルックナーだったが、ギュンターワントのレベルとは違うなと思ったのである。
 僕はスクロヴァの熱狂者にはならなかった。

 告白する。個人的に音楽のトラウマがある。結局カールベームの生演奏を聴き損なったことだ。聴こうと思えば聴けた最晩年のウィーンフィルとの来日。チケットは高額ということもあって完売でなかった。行きたかったのに、行かなかった。
 カールベームが亡くなった時に、ああ、俺はもうベームの音楽が好きだったのに聴かなかった、、、と後悔した。強い後悔となって、それから、気になる高齢演奏家のコンサートを最優先して聴くようになったのだ。こうしてフケセンのクラオタになっていった。
 ということで、フケセン指向なのであるが、それも、前述のスクロヴァで終わるなと思った。さらに、先日の読響/ゲルトアルブレヒトのブラームスで完全に終わった。ああ、歳とってもう制御できなくなっても指揮棒を振る人っているんだ。いろんな人がいるんだと。中には老害、耳が遠い、短気指揮者もいるのだろうと。
 3月に聴いたスクロヴァのベートーヴェンもイマイチだった。ということで、僕はスクロヴァを聞く最期の機会になるだろうと思って今宵でかけたのだ。
 「魔弾の射手」ではオケの出だしが会わない。縦が揃わない。ああ、そういう指揮なんだと、ちょっとがっかり感が増し始めた。スクロヴァの曲は面白くなかったけれど、ストルツマンのクラリネット演奏はよかったので、今日はこれで良しとしようと思った。
 トイレにいきつつ、来年の読響の会員継続は、なしかもなあと思ったのだ。(プログラムもいまひとつなのだ)

 で、後半。これがよかった。
 弦も木管も金管も素晴らしかった。
 超一流の演奏であった。

トリスタンとイゾルデの物語がそこに立ち上がってくるわけではないのだが、純粋に管弦楽として素晴らしい演奏をしたのだ。特に弦は深いが重くなく艶やか。ソリストも素晴らしく、1時間のこの曲を満喫した。こんな音を読響から引き出せるのかと驚いた。

 こうなると、スクロヴァとお別れすることができなくなってしまった。
 Mr.Sの白鳥の歌と思って聴いたのだが、ちょっと予定変更である。

 実はこの1週間、体調が悪く、先週は3つもチケットを無駄にした。今宵も日曜の演奏会をチケットを替えてもらって聴いたのだ。来て良かった。

 2012年9月24日@サントリーホール


2012年9月定期
アンドレプレヴィン指揮
NHK交響楽団


Aプログラム マーラー作曲   交響曲第9番

プレヴィンのマーラー観をN響は見事に受けとめ演奏した
 さあ、2012年〜13年のシーズンが始まった。愛するN響の定期で始まる。
 去年が歩行器での登場だったが、今年は杖と介助の人に腕を借りながらの登場。昨年は素晴らしいものの、時おりアンサンブルが乱れた演奏だった。祈る様な思いで客席で最初の一音を聴いた。そして懸念は的中。ブラスセクションはミスが目立ち、弦のセクションもいつものN響ではない。しかし、だんだんと持ち直す。そして、2楽章以下は今まで聴いたことの無い様なアンドレプレヴィンのマーラーが立ち上がった。
 そこには、アンサンブルや合奏の、そして、音楽の美しさはあるけれども、いわゆるマーラー節はない。よく言われる死への憧れと恐怖もない。
 むしろ、もっと達観した音楽だけに向き合う世界があった。いつものマーラーの演奏は内面をさらけ出し、叫び泣きわめく。そういう思いは全て表現の向こう側に押し込んでいた。4楽章のビオラやバイオリンの、チェロのソロの美しいこと。弦の合奏の見事なこと。ブラスセクションの抑制のきいた見事な世界観はプレヴィンそのものなのだ。音楽は生き生きと跳ね、唄い、光り輝いていた。
 2012年9月15日(土)@NHKホール
 





Bプログラム モーツァルト作曲  交響曲 第1番
交響曲 第41番 「ジュピター」
       ハイドン作曲    交響曲 第102 番

「至福」
 僕がこれだけN響に肩入れするようになったのは、プレヴィンのモーツアルトを聴いたときからだった。N響から醸し出される音楽は、自我を排した音楽の前に何も飾らず、しかし必要なものは全てある音楽のように思えたからだ。
 日本のオケは素晴らしい。しかし、例えば、ドイツ語にウムラウト、フランス語に巻き舌やアとマの間の音があるように、欧州音楽に必要な肝というものがある。それがあることによって、より本物に近づくというか。
 それをプレヴィンはN響で表現してくれたのだ。
今宵音楽をきいていて、残響のいいサントリーホールのひとつひとつの音がまろやかに、消えて行く瞬間瞬間を心から楽しんだ。そして、プレヴィンが来てからN響に、決して自我を出して、モーツアルトやハイドンの作った、いや音楽そのものが持つ美しさに何か付け足して自我の痕跡を残すようなことをしないプレヴィンの音楽である。それは、まったく普通である。しかし、その普通がなかなかないものなのだ。至福の時間を過ごし、プレヴィンの健康が続き、またこの至福の時間を聴く機会があることを心から祈るのであった。


弩級圧倒的
世界の楽壇で最高峰に上り詰めたN響2012/13のラインナップ
NHK

ものすごいです。何かニューヨークフィルの布陣みたいです!チケット争奪戦が確実!?。BプロCプロは年間会員券で完売してもいいような感じです。僕は3階自由席1500円の範囲をもう少し狭めて1回2000円くらいの指定席化を希望します。
 

クラシック音楽を生演奏で聞かれない方へ。
せっかくこの世に生まれてきて、すぐ近くにある究極の音の素晴らしさを自らの肉体の五感を使って、いや時には霊感まで使って受けとめないのはあまりにも勿体ないです。それも100人を超えるプロの音楽家が奏でる2時間弱の音楽をN響ならたった1500円で(N響NHKホール定期演奏会の場合)手にする事ができるのです。
以下は、2011年4月。世界的名指揮者ズビンメータが東日本大震災に苦しむ日本のために単身来日し、急遽NHK交響楽団ともったベートヴェンの第9交響曲の第4楽章の模様である。






2012年9月
「巨匠2人の重量級大作とプレヴィンの至宝モーツアルト」

 この15年N響に新境地を開いたアンドレプレヴィン。加齢から体調のことを考えるといつ最後の公演になってもおかしくありません。1回1回が大変貴重な公演です。
 

 思い返せばプレヴィンとN響の出会いは偶然のものでした。
「サウンドオブミュージック」や「メリーポピンズ」の主演で有名なジュリーアンドルースが1993年8月にNHKの招きでコンサートを開くことになったのです。その時の伴奏をしたのがN響(一部でサウンドオブオーケストラという人がいますが、それはコンサートの名称です)だったのです。
 アンドレプレヴィンはハリウッドでも活躍し1960年代には何回もアカデミー賞をもらってる人ですし、ジャズのピアニストとしても高い評価をもってるマルチな才能の持ち主です。ウィーンフィルなどにも頻繁に呼ばれる存在の彼は、もはやポップスコンサートの伴奏の指揮をする存在でなかった。そんなアンドレプレヴィンですが、ジュリーアンドルースとも旧知の仲ということで、特別にそのコンサートの指揮者となったのです。指揮だけでなく、コールポーターやクルトワイルの名曲のピアノ伴奏をしたりと語りぐさになってるコンサートです。
 この時、ジュリーアンドルースも2時間近く唄ってばかりはいられません。衣装替えも必要です。そこで、ラベルのヴァルスとラプソディインブルーがジュリーアンドルースの衣装替えなどのつなぎとしてN響とアンドレプレヴィンは演奏したのです。
 すでに欧米の超一流のオケしか指揮していないプレヴィンですが、ここで一気に距離が縮まり1990年代の半ばからN響を指揮する様になったのです。面白い出会いでした。何回かの定期演奏会は毎回至福の時間、あれから、まだ10数年ですが、もう80歳を越えてしまったプレヴィンは2011年の演奏会では歩行器を使っての登場となってしまいました。もちろん座っての指揮。指揮ぶりも最低限の指示だけになっています。それまでの指揮とは大きく違います。身体が弱っていくのが手に取る様に分かります。もちろん流れてくる音楽は素晴らしいのですが…。こういうわけですから、ひとつひとつの演奏会が貴重だと思うのです。
 今回もN響側の気の使い方をみて下さい。通常ひとつのプロを2日間やったら、1日くらいの休暇のあと、すぐに次のプログラムの稽古、本番となります。
 しかし、このシーズンでこの9月だけはAプロとBプロの間に別の指揮者を入れてプレヴィンに十分な休息を取れる様に配慮しているわけです。当初は未定となっていたその枠にスラトッキンが入ったのは2012年1月の名演があったからでしょうが、嬉しいですねえ。

 さて、新しい2012/13のシーズンはマーラーの大作第9番交響曲で幕を開きます。NHKホールでマーラーの9番と言えば、僕に取ってはレナードバーンスタインがイスラエルフィルと1985年の秋に来日したときの超名演が忘れられませんが、それと並ぶ名演が期待で来ます。もちろん両日とも行きたいです。
 さらにプレヴィンとモーツアルトやハイドンを奏でる時のN響の音といったら!ウィーンフィルがモーツアルトを演奏するときの音楽にもひけを取りません(そういえば、プレヴィンはウィーンフィルにものすごく愛された指揮者ですよね)。美しい弦のアンサンブル。管楽器の素朴な音…。モーツアルトの最初の交響曲と一番最後の交響曲を聴けるのは幸せですねえ。さらに100を越えるハイドン交響曲から何と102番。選びに選びましたね。是非聞いて下さい。1楽章の最初から溢れる静謐な音楽。それをN響とプレヴィンが別れを惜しむ様に奏でるでしょう。
 そして、2012年1月に、ふたつの定期演奏会と外部公演で3種類のプログラムを指揮してN響と抜群の相性を証明したスラトッキン。ニューヨークフィルを始め世界の最高峰のオケしか指揮しない名匠とこれまた来日公演ではなかなか演奏されないショスタコーヴィッチの大作。次はいつ来てくれるんだろうと多くの人が思っていたことでしょう。それがたった8ヶ月で再登場。嬉しいです!
 


Aプロ:15(土)・16(日) / アンドレ・プレヴィン
 マーラー交響曲第9番

Bプロ:26(水)・27(木) / アンドレ・プレヴィン
 モーツアルト交響曲1番&41番「ジュピター」ハイドン交響曲102番

Cプロ:21(金)・22(土祝) / レナード・スラットキン
 ショスタコーヴィッチ 交響曲第7番「レニングラード」ほか

2012年10月
 「巨匠中の巨匠マゼールがN響と驚愕の初顔合せ」

 ロリンマゼールは過去50年間、欧米の楽壇の最高峰に常にいた名指揮者です。カラヤンやベーム、バーンスタインが君臨していた時代であっても年齢は若くても互角の存在。そのマゼールがNHK交響楽団に初登場です。日本では東京交響楽団と読売日本交響楽団に1日だけの特別演奏会のような形で登場したことがあります。廻りでは短い稽古時間で1日だけの演奏会。やっつけだよなあと陰口を言う人がいます。が、今回のN響との演奏会はそれらと全く違います。1ヶ月間N響に張り付いて3つの定期と今年のNHK音楽祭という四つのプログラムを振るのです。プログラムの質も違います。マゼールは2012年にウィーンフィルとウィーンの定期だけでなく公演旅行に出かけますが、その時のプログラムがそのままN響にも組まれました。マゼールがどれほどN響に期待しているかの現れでしょう。
 マゼールは2010年年末に亡くなった岩城宏之さんが行っていた大晦日のベートーベンの9つの交響楽を一挙に演奏する催しに特別な代役で出演されましたが、その時の特別編成のオケの主要メンバーはNHK交響楽団。とても評判になりました。マゼールも気に入った。そうして出演となったのです。
 以下の4つの演奏会は誰もが注目していますので、きっとチケットの奪い合いになるのは必須です。今年度のNHK交響楽団シーズンの最大の新規の目玉は10月です。Aプロのグラズノフのバイオリン協奏曲のソロのキュッヘルはご存知ウィーンフィルのコンサートマスターの中でもトップの存在。キュッヘルは2011/12のシーズン。震災後で多くの欧米の演奏家が来日を拒否しキャンセルする中、単独来日し、N響の5月のプログラムで特別コンサートマスターをしてくれた日本を愛してくれる世界の音楽界のトップ。そして、マゼールとはウィーンフィルで百回以上共演している仲です。もう期待が高まらないと言うのが無理な話です。4つそれぞれが音楽好きならたまらないプログラムになっています。


Aプロ:13(土)・14(日) / ロリン・マゼール 
 チャイコフスキー組曲3 グラズノフバイオリン協奏曲(キュッヘル)
 法悦の詩

Bプロ:24(水)・25(木) / ロリン・マゼール
 モーツアルトのプラハ交響曲、ウェーバー/クラリネッと協奏曲2番(Dオッテンザマー) スペイン狂詩曲 ボレロ

Cプロ:19(金)・20(土) / ロリン・マゼール
 ワーグナー ニーベルングの指輪(声楽なし/マゼール編曲)

NHK音楽祭 10月29日/指揮ロリン・マゼール
 ベートーベン:序曲「レオノーレ」第3番 ハ長調
 グリーグ:ピアノ協奏曲 イ長調 作品16 アリスオット独奏
 チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 作品36


2012年11月
名匠ワールトが提示した期待のプログラム」 

 エドテワールトは前に2009年にN響に登場しています。オランダ出身で世界で活躍する指揮者で、通常の年ならば、今月が最注目になってもおかしくないのです。しかし、今年は毎月がスゴすぎてなんか損をしてますよね?ワールトは2012年6月にもオランダのオケと来日しマーラー等を演奏してくれますが、11月にはN響との期待のプログラムです。
 ワールトはオペラの指揮者としても高い評価。そして演奏会でよく取り上げる組曲「ニーベルングの指輪」も日本でも高い評価となっています。(今年はマゼールが演奏するわけですが)そして、今回のAプロでは武満徹作品に加えワーグナーの「ワルキューレ」の第一幕を演奏してくれます。亡くなったホルストシュタインが演奏会形式でN響と演奏したワーグナー(パルジファルなど、1990年前後だと思うのだけれど)は今でも語り草。新たな伝説が生まれようとしている予感がします。
 Bプロは、近年高い評価を受けているN響のブルックナー。2011/12シーズンもブロムシュテットが究極の演奏をして話題となりました。ワールトは8番で勝負します。Cプロは聞きやすい曲が並んでいるだけでなく、ワールトのさまざまな局面を聞かせてくれる期待大のプログラム。おなじみのフィンガルの洞窟に始まって、リヒャルトシュトラウスの名曲、そして楽しんで聞いてもらうのがちょっと難しいブルッフのバイオリン協奏曲。名バイオリニスト・ヤンセンの登場も楽しみです。


Aプロ:10(土)・11(日) / エド・デ・ワールト
 ワーグナー「ワルキューレ」第一幕 武満徹作品

Bプロ:21(水)・22(木) / エド・デ・ワールト
 ブルックナー 交響曲8番 ノバーク版

Cプロ:16(金)・17(土) / エド・デ・ワールト ジャニースヤンセン
 フィンガルの洞窟 Rシュトラウス/家庭交響曲 ブルッフバイオリン協奏曲
  
2012年12月
巨匠デュトワがゴージャスな音の絢爛絵巻を披露

 音楽好きでN響の昔を知っている人は誰もが認めるでしょう。N響を変えたのはデュトワだ!世界のトップクラスのオケしか演奏しないデュトワが初めてN響をしたときの喜びはもう20年以上前になるのでしょうか?元々素晴らしいオケでしたが、その時のベルリオーズの「ファウストの刧罰」を今でも忘れていません。これN響か!
 それからN響を世界最高水準に引き上げた最大の功労者であり、世界の楽壇から引っぱりだこのデュトワがこのところの例年通り12月に登場してくれる演奏会です。
 Aプロはデュトワが毎回N響に課す面倒くさいプログラムです。毎年のように頻繁に演奏される曲で通常の練習で簡単に演奏できる曲ではありません。ほとんど演奏されない曲です。ですから、N響には挑戦だったり、正直、面倒かもしれませんが音楽ファンには、なかなか聞けない名曲を世界最高峰の組み合わせで聞けるのですから幸せです。2011年はマーラーの8番交響曲「1000人の交響曲」とバルトークの「青ひげ公の城」の演奏会形式で2回も面倒な演奏会があって大人気でした。特にマーラーはチケットが早々に売り切れになり、ネットでの争奪戦が繰り広げられました。そして、今年は何と行ってもこれ!
 Aプロでのデュトワお得意のラベル。歌劇「子供と魔法」(演奏会方式)そして、これまたお得意のロシアものストラヴィンスキーの「夜鳴きうぐいす」(演奏会方式)。日本で過去あまり演奏されたことのない、この曲ですが、演奏史上最高峰が期待されます。僕は子供と魔法は1980年代の終わりにアムステルダムコンセルトヘボウホールで、コンセルトヘボウ管弦楽団とデュトワの組み合わせで聞きましたが、忘れられない演奏会でして、楽しみでたまらないです。とても楽しい曲ですので行くかどうか迷っている人はCDなどで早めに予習しましょう!
 Bプロはサントリーホールという交響楽には理想的なホールで、デュトワがN響と毎年行う濃密で繊細な演奏会です。デュトワの十八番と言えば、これだろ!といえる「春の祭典」。実は僕が生まれて初めて海外で演奏会をきいたのが、デュトワとサンフランシスコ交響楽団との組み合わせできいた「春の祭典」でした。フィラディルフィア、モントリオール響などとも聞いて来たデュトワのハルサイですが、N響との組み合わせも最高です。まあ、1回券は売り出しはないでしょうから、あまりいうと行けない人に可哀想ですよね。これだけでスゴいのに、2012/13のシーズンで、いまや世界最高のバイオリニストの一人、ワディムレーピンによるシベリウスのバイオリン協奏曲もあるわけです。この曲2011年9月の定期でも、竹澤恭子とブロムシュテットで名演がされたばかり。いやはや何かメインだらけの豪華なBプロです。
 ちなみに今年のN響はバイオリニストに素晴らしいソリストの客演が山ほどあるバイオリンソリスト当たり年です。
 Cプロは華麗なリストのピアノ協奏曲と、ローマの3部作に謝肉祭。もう豪華でゴージャスな音の曼荼羅、絢爛絵巻。親しみやすい名曲でオーケストラをきく楽しみを誰にでも伝えてくれるでしょう。それも、世界の巨匠のデュトワとNHK交響楽団。期待が高まります。12月の演奏会は年末で忙しいのですが6回とも行きたいなあというのが正直なところ!!
 
そして、近年ますますチケット完売で取りにくいN響の第9ですが、今年はさらに至難中の至難。N響と行っているベートーベンプロジェクトで絶大な人気を誇っているノリントンが第9に登場です。2012年4月と12月と年に2回も登場してくれるとは嬉しい限りですね。


Aプロ:01(土)・02(日) / シャルル・デュトワ
 夜鳴きうぐいす 子供の魔法 演奏会形式

Bプロ:12(水)・13(木) / シャルル・デュトワ
 シベリウスバイオリン協奏曲(ワディムレーピン)「春の祭典」
 武満徹 ノベンバーステップス 

Cプロ:07(金)・08(土) / シャルル・デュトワ
 リストピアノ協奏曲第2番(ルイ・ロルティ)ローマ三部作 ローマの謝肉祭

シャルルデュトワは12月16日(日)のオーチャード定期も振る事になりました。
ピアノ:児玉 桃
ラヴェル:優雅で感傷的なワルツ
サン・サーンス:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 作品22
リムスキー・コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」


第9演奏会 指揮 ロジャーノリントン
12月22日、23日、26日@NHKホール 27日@サントリーホール



2013年1月
「巨匠ジンマンの☆☆☆演奏会と若手アクセルロッドの勝負」

 2012年1月は年末のノリントンと並んで欧米でピリオド奏法の巨匠として評価が定着したジンマンが登場します。なんて幸せなオーケストラと聴衆なんでしょうか!最高の年明けですね。Cプロはマーラーの大作「夜の歌」そして、Bプロはブゾーニ、シェーンベルクという現代の息吹をN響から引き出してくれるとともにブラームスのピアノ協奏曲2番という交響曲にもひけをとらない重厚な音楽。うーーん、いいです。アクセルロッドは近年注目のアメリカの中堅指揮者で、N響とは既に何回か共演を重ねて来ています。2010年1月の定期で初登場していますが、この時はロレンスフォレスターという名匠の代役でした。2012年夏にも演奏会があります。こうした積み重ねがあって、今回は最初からお呼びのかかった定期演奏会の登場ですが、正直言ってアクセルロッドに取っては勝負の演奏会です。なぜならこれほど名匠が並ぶ今年のN響の定期演奏会の中でアクセルロッドが評価されるには超名演を結果として残さなければならないからです。彼自身も今年のN響のラインナップをみて、何で俺が入っていいの?と思ってるのではないでしょうか?
 曲目もアメリカ人指揮者として評価を問われる逃げられないプログラムが用意されています。

Aプロ:26(土)・27(日) / ジョン・アクセルロッド
 ショウタコーヴィッチ交響曲5番 バーンスタイン交響曲2番「不安の時代」ほか

Bプロ:16(水)・17(木) / デーヴィッド・ジンマン エレーヌグルモー(ピアノ)
 ブゾーニ「悲しき子守唄」清められた夜 ブラームスピアノ協奏曲第2番

Cプロ:11(金)・12(土) / デーヴィッド・ジンマン
 マーラー交響曲第7番「夜の歌」

2013年2月
「メルクル首席指揮者への関門と注目ウルフの2月」

 NHK交響楽団にとって2月の定期はひとりの指揮者が全部を振るということは少ないです。N響が未来にむけての関係を強めるべき指揮者の候補を呼んで来て演奏会を開くことが多いのです。例えば、2011年はド・ビリー1回とノセダ2回、2010年にはジョナサンノットが1回、2009年はビシュコフが全部振りましたが、2008年はエリシュカ、下野竜也、リッツイといった具合です。何人かの指揮者で受け持つ事の多い月です。
 今年は、長くフランクフルト放送交響楽団のシェフだったヒューウルフが1回振り、もうひとりは準メルクルです。N響は2012年に実現したいこととして、新しい首席指揮者、もしくは芸術監督を任命したい方向と公式に表明しています。それもドイツ系を希望している様で、その中で準メルクルは最大の候補のひとりのはずです。そういう意味合いで、この演奏会はN響、またヨーロッパで既に高い評価と地位を得ているメルクル、両者にとって大きな決断をするのに大切な演奏会になるのです。


Aプロ:09(土)・10(日) / ヒュー・ウルフ
 皇帝協奏曲(ポールルイス)プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」抜粋 ほか

Bプロ:20(水)・21(木) / 準・メルクル ヘルベルトシュッヒ
 サンサーンス交響曲3番 リストピアノ協奏曲1番 前奏曲

Cプロ:15(金)・16(土) / 準・メルクル ダニエルミュラーショット
 サンサーンスチェロ協奏曲1番 ダフニスとクロエ ほか
 

2013年4月
「これは嬉しいスター・ビシュコフの再登板

 セミヨンビシュコフが2010年2月にN響に初登場した時、僕自身は今シーズンのマゼール初登場と同じくらいの驚きと喜びを感じたものです。ロシア出身ながら、名門パリ管のシェフ。僕がウィーン国立歌劇場で2001年に現地できいた「トリスタンとイゾルデ」は感涙ものでした。2008年のパリオペラ座初来日のメインの公演としても演奏され高く評価されました。いまでもヨーロッパの超一流楽団で指揮をするビシュコフが再びNHK交響楽団に超嬉しい登場です。Cプロではヴェルディのレクイエム。近年国難に瀕している日本にとって最高の癒しの演奏会となるでしょう。もちろん2日続けて聞きにいきたいです。Bプロは幻想交響曲というビシュコフお得意のプログラムも注目ですがラベック姉妹(妹さんがビシュコフの妻だとか!)を迎えての良くわからない曲も実は楽しみです。
 ピーターウンジュンは過去四半世紀における室内楽の最高峰・東京カルテットの第一バイオリンメンバーとして活躍した人で近年指揮者に転じてさまざまなオーケストラを指揮している人です。特にヴィクトリアムローヴァという人気も実力もあるソリストを迎えてのショスタコーヴィッチ、そして、ウンジャンがよく指揮をするシドニー交響楽団の十八番でもあるラフマニノフの最高に人気のある第二交響曲とウンジャンの指揮者としての真価を問われる演奏会です。



Aプロ:13(土)・14(日) / ピーター・ウンジャン
 ショスタコーヴィッチバイオリン協奏曲1番 Vムローヴァ独奏
 ラフマニノフ交響曲2番

Bプロ:24(水)・25(木) / セミョーン・ビシュコフ
 幻想交響曲 
 デュビュニョン作曲2つのピアノとオーケストラの協奏曲(ラベック姉妹)

Cプロ:19(金)・20(土) / セミョーン・ビシュコフ
 ヴェルディのレクイエム、

2013年5月
「真価が問われるN響挑戦の5月」

 5月の定期演奏会はド派手な2012/13の定期演奏会のラインナップの中で、ある意味で普段着の地味さを感じさせるプログラムである。しかし、それは交響楽団としてのN響のこだわりを感じさせるプログラムとなっており、演奏団体としての真価が問われるプログラムとなっている。
 NHK交響楽団は20年ほど前はもっと日本人指揮者の活躍する枠がありました。しかし、世界的水準になったこのオケを指揮できる日本人指揮者は限られています。病気療養中で過去にトラブルもあった小澤征爾は別格として、大野和士ら数人はいるとしても特筆できる存在ではありません。NHK交響楽団は地方公演などでも日本人指揮者から外国人指揮者に託す様になってきています。N響を日本人が指揮する機会は少ないのです。だからN響の正指揮者としてのタイトルがあるにも関わらず外山雄三さんはもはや地方公演専任といった感じです。N響夏、ミュージックトゥモローなどの特別演奏会も欧米で注目し、今後定期に登場していいかどうかを試したい指揮者の試用の機会となりつつあります。そういう中で尾高忠明さん(もうひとりのN響正指揮者)はN響で2008/9から毎年定期演奏会を死守している唯一の日本人指揮者です。小澤さんと比べると派手さはないかもしれませんが、イギリスを中心に欧米での活躍も長い職人肌の演奏家で僕自身も2010/11のシーズンで初めてきいてその音楽の作り方の丁寧さに感動したひとりです。
 尾高忠明
 そして、ありがたいのは、名作曲家の家庭に生まれたこともあって、日本では、いや世界でも馴染みの浅い隠れた名作を高い水準で演奏してくれることです。特にイギリスものは特筆です。今回も楽しみな演奏会です。Bプロは交響楽団にとって、お客のニーズを向いての演奏会ではないかもしれません。しかし、一流の交響楽団は現代の作曲家に新作を依頼し演奏していくということがとても大切です。N響は定期演奏会以外でもそのような機会を作っていますが定期演奏会ではそのような機会はこの数年ますます少なくなってきましたが、久しぶりに現代作曲家の最高峰、タンドゥンの登場で定期演奏会で現代音楽の最先端が作曲家自らの指揮によって披露されます。
 その新作「涙の書」はN響とアムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団と3つのトプオーケストラの共同委嘱作品です。そして、これが世界初演。そして、そのハープの演奏をする早川さんは、そのご母堂もN響の名ハーピストとして長くご活躍された方です。僕の亡くなった母が若きころ、早川家でお世話になった事からも母を弔いながら聞かせて頂きたいと思ってます。
 Cプロはロシアの名匠フェドセーエフの登場です。1932年生まれ。80歳を越えたモスクワ放送交響楽団のシェフです。ロシアの巨匠をN響はかつてよく呼んでいました。その代表はスビャトラーノフだったり、コンドラシンだったりするわけですが、フェドセーエフは現存する巨匠としてはロシア音楽をソビエト時代から振っている数少ない名指揮者のひとりです。実は80年代にN響を振る予定があったのですが、反りが会わなかったのでしょうか、キャンセルしてしまいまいた。ということで25年ぶりくらいに仕切り直しの演奏会となります。こういう流れもあってこの演奏会はコアなN響ファンにとって、ド派手な今シーズンの中で秘かに楽しみにしている人が多い演奏会です。曲目もロシアもののちょっとこだわり感の感じられる曲目が揃っています。 

 そして、どうでもいいことかもしれませんが、このフェドセーエフやチョンミュンフンですが、東京フィルを振ることが多かったのですが、東京フィルが日本人指揮者を中心に演奏会をする傾向とになって、N響に来る時間ができたのかもしれません… 

Aプロ:11(土)・12(日) / 尾高忠明
 ウォントン交響曲1番 ヴォーンウィリアムズ テューバ協奏曲

Bプロ:22(水)・23(木) / タン・ドゥン作曲/指揮  涙の書

Cプロ:17(金)・18(土) / ウラディーミル・フェドセーエフ

 ショスタコーヴィッチ交響曲1番 だったん人の踊り チャイコ/セレナード

2013年6月
巨匠ミョンフンで華麗なフィナーレ&誰もが楽しいAプロ」

 ド派手な2012/13NHK交響楽団の定期演奏会のフィナーレは韓国出身ながら欧米で小澤征爾を上回る活躍と評価を得ているチョンミョンフンが登場です。チョンミュンフンは2年ほど前まで東京フィルのミュージックアドバイザーを務めていたのですが、その任を離れてN響との距離が急速に縮まっている超人気指揮者です。前回の登場は2011年2月のAプロCプロでしたが、巨大なNHKホールの4回の演奏会のチケットが事前完売になりチケット争奪戦が起きました。2011年Cプロはマーラーの交響曲3番でしたが、今回はBプロで第5番交響曲を披露します。音のいい、しかし座席の少ないサントリーホールでの演奏会ですので、チケット争奪戦は必須です。NHKホールでのCプロはロッシーニのスターバトマーテル。オペラ指揮者としても高い評価のミュンフンは声楽曲付きの大曲で大きな評価を得ています。この曲はドイツグラモフォンでの録音も高く評価されており、今回も完売が予想されます。
 そして、Aプロでは下野竜也の登場です。下野竜也は次代の日本の指揮者の最高峰を狙える指揮者として高く注目されています。いまは読売日本交響楽団の正指揮者として活躍するだけでなく、小澤征爾さんの代役としてオペラや交響楽をサイトウキネンオーケストラで指揮したこともご存知でしょう。本来、NHK交響楽団のAプロ定期は誰でも楽しめる聞きやすいポピュラー性の高い曲で、あまりクラシック音楽を聴く機会のない人に来てもらおうと思っている枠です。しかし、このシーズンは大指揮者が多く2月のA定期とこの6月の定期くらいしかポピュラーな曲だけで組まれている演奏会はありません。特にこの下野さんとのAプロは、おなじみ「惑星」とシューマンのロマン性高いピアノ協奏曲と誰もが楽しいと思うのです。4月もラフマニノフの交響曲2番は聞きやすい曲なのですが、ショスタコーヴィッチは好き嫌いがあると思うのです。そういう意味で2012/13の全ての定期演奏会の中で初心者にもっとも聞きやすいのが6月のA定期といえると思います。


Aプロ:08(土)・09(日) / 下野竜也 ネルソンゲイナー
 惑星 シューマン ピアノ協奏曲 バッハ 幻想曲とフーガ


Bプロ:19(水)・20(木) / チョン・ミョンフン
 マーラー交響曲第5番 ほか

Cプロ:14(金)・15(土) / チョン・ミョンフン
 ロッシーニ/スターバトマーテル
指揮:ファビオ・ルイジ
PMFオーケストラ
ヴァイオリン:デイヴィッド・チャン
チェロ:ラファエル・フィゲロア

曲目
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
R. シュトラウス:アルプス交響曲

「音楽を聴く幸せを満喫できた夜」
 二重協奏曲はなかなか聞く機会のない難曲だが味わい深い名曲である。ソリストはMETのコンサートマスターと首席なのだが、あまり個性があるというよりも、無難に演奏している感じである。ブラームスの音楽とは?と難しくきくといろいろとあるのだろうが、このオケは若く音楽を演奏する喜びを発散させて演奏してくれる。マエストロの意図を何とか十全に表現しようと必死である。それが、真摯な演奏につながって聞いていて嬉しくなってくる。ああ、こういう態度必要だよなと思わせてくれるのである。
 特に後半のアルペン交響曲は素晴らしかった。一流の演奏である。将来、ここから次世代のオーケストラの中核となる逸材が出て来るのだろう。野村証券は22年前に始めたこのフェスティバルは花開き、日本が世界の音楽に貢献する素晴らしいものとなった。社会貢献とはこういうことである。
2012年7月30日@サントリーホール
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男性
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演劇ユニット経済とH 主宰
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演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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