佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 ニコラウスアーノンクール WCH来日演奏会 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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これは事件だ!

ニコラウス・アーノンクール指揮 
ウィーンコンツェントゥスムジクス 来日演奏会


ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
オーケストラ : ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
指揮: ニコラウス・アーノンクール

サントリーホール S¥28,000 A¥23,000 B¥18,000 C¥13,000 D¥9,000
プラチナ券¥33,000

J.S.バッハ : ミサ曲 ロ短調 BWV232
     ソプラノ1: ドロテア・レッシュマン
     ソプラノ2: エリーザベト・フォン・マグヌス
     アルト: ベルナルダ・フィンク
     テノール: ミヒャエル・シャーデ
     バス: フローリアン・ベッシュ
     合唱: アーノルト・シェーンベルク合唱団
2010年10月24日 午後6時開演 NHKホール


ハイドン : オラトリオ「天地創造」
     ソプラノ: ドロテア・レッシュマン
     テノール: ミヒャエル・シャーデ
     バス: フローリアン・ベッシュ
     合唱: アーノルト・シェーンベルク合唱団
2010年10月29日 午後7時開演 サントリーホール


モーツァルト : 交響曲第35番 ニ長調 K.385 「ハフナー」
モーツァルト : セレナード第9番 ニ長調 K.320「ポストホルン」
2010年11月2日 午後7時開演 東京オペラシティコンサートホール




 僕が9年ほど前に、ドイツを旅行中にベルリンフィルハーモニーを現地できいたとき、指揮者がアーノンクールでした。モーツアルトの曲などをやったのかな。よく覚えていません。マチネのコンサートで名前はきいていたこの伝説の指揮者の生演奏がきけるということで喜んで出かけたのです。先ずはどんな顔のひとなのか、次の映像をごらん下さい。



スゴい顔してますよね。これがアーノンクールです。もう80才です。何十年も既存のクラシック音楽の反逆児でもありました。音楽演奏の新しい潮流を作ったひとですが、それは新奇なのではなく、原点回帰でもあります。最初にきいたとき、ききなれた古典派の音楽がどれだけ新しく聞こえたか。ローマのシステーナ礼拝堂に2006年に20年ぶりくらいに往きましたが、古い汚れがすべて洗い落とされて、見違えるようなものになっていた。同じ作品とは思えないような壁画でした。それと同じような経験が音楽でできるのです。アーノンクールは飛行機嫌いで日本に対する誤解もあり来日は何十年もありませんでした。それが、2006年に日本に来日し奇跡の演奏会と伝説となりました。もう一度来日してくれることになったのです。宣伝では最後の来日となっています。聞き逃すわけにはいきません。
 生まれて初めて、高校の時にレコードできいて衝撃を受けたハイドン「天地創造」を生演奏できけるだけでなくバッハの「ロ短調ミサ」もきくことにしました。いま予習中です。チケット代は高いですが、これは行かなくてはいけないコンサートです。






バッハ作曲 ミサ曲ロ短調
 NHK音楽祭。NHKホールの巨大な空間に宗教音楽とは似つかないものなんだけれども、満員の観客は素晴らしい音楽体験をする悦びに浸っていた。バッハの音楽が活き活きと現代に動き出し、溢れる光を放つ。ホルンの調子がちょこっと悪かったのだけれども、全体を一貫する音楽の魅力はいったいどこから来ているのだろう。他の指揮者の音楽と演奏方法や楽譜へのアプローチがどう違うのだろう。
 ほぼ10年ぶりのアーノンクールは、光り輝いていた。万雷の拍手とはこういうやつだなあ。久々に座った3階席でのコンサート。遥か遠くの演奏者を斜に構えながら聴き始めた自分を惹き込んだ81才の革命児に圧倒された。2010年10月24日 NHKホール

ハイドン作曲 天地創造
 アーノンクールの演奏するこの曲を聴いているとハイドンのそのほかの交響曲やピアノソナタなどを聴いている時には感じられないロマン派の匂いが時々してくるから不思議だ。神が天地創造をする前などは、宇宙のビックバンを感じさせる無常観溢れる演奏。アーノンクールは右手で細かくリズムを刻み、身体をくねらせてグルーブ感を盛り上げる。素晴らしい合唱に、ソリスト。僕の人生の中でこれ以上の天地創造は聴けないんだろうなあと思いつつ、生涯一回の邂逅に身を委ねた。例のロマン派は生演奏だとさらにはっきりと突き刺さるように浮き上がる。他の奏者はどうしていたのだろう。無視したのか、読み飛ばしたのか、ハイドンが意図してやったとは思っていなかったんだろうか?僕はハイドンがいなくちゃ、ベートーヴェンもモーツアルトもあそこに辿り着けなかったかもしれないと思いつつきいた。この素晴らしい演奏に、会場から盛んの拍手。しかし、高額の席に関しては6割の入り。こんな素晴らしい演奏を大量の空席で決行した主催者側にもう少し考えて頂きたいと思う。28000円のチケット代はやはり高過ぎるのだ。もう少し値ごろ感のある価格にできなかったのか。
 そして、NHK音楽祭に天地創造を持っていき、サントリーの天地創造は一回ということであれば、もう少し入ったのではないか?そう、むしろ ロ短調ミサをサントリーで2回やるほうが懸命だったような感じです。まあ、そんな下世話な話はおいておいて、素晴らしい演奏にブラボー。
 2010年10月29日。サントリーホール

 モーツアルトプロ
 前日にウィーンフィルでモーツアルトの交響曲33番を聞いていた。同じウィーンのオケなのに、どうしてこう違うんだろう。こちらのモーツアルトには音楽の、いや生きる悦びが溢れている。音は快活に活動しほら音楽ってこんなに素敵じゃないか!って話しかける。ピリオド奏法が何かは分からないが、あの音楽を奏でる為には、楽員がみんな心を併せ、同じ呼吸をしていないと、きっと難しいだろうなと思う。非常に絶妙な息の併せ方が必要なのだ。それが微妙なニュアンスで伝わる。バイオリンとチェロ、木管は違う音を奏でるのに根っこが一緒なのが分かる。そして、録音では聞こえなかった楽器の音色が聞こえてくる。どこまでも幸福な音楽の時であった。アンコールピースが終わったと同時に、もうこのアーノンクールの演奏は聴けないんだと思うと無性に寂しくなった。体調が良くなく開演の1時間半前まで辞めようと思っていたが無理した。コンサートにタクシーで乗り付けるなんて事は僕の今までの記憶ではないけれど。ああ、そうして良かった。
 2010年11月2日 東京オペラシティコンサートホール
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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