佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 パリオペラ座来日公演 2008 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ジェラールモルティエ総裁
パリオペラ座管弦楽団/合唱団

ポールデュカス作曲
アリアーヌと青ひげ
演出 アンナ・ヴィーヴロック
指揮 シルヴァンカンプルラン
出演 デボラポラスキ ウィラードホワイト

 パリオペラ座来日公演初日に言ってきた。この深い感銘はなんだろう。演出家や台本を書いた方には申し訳ないが、僕は筋などをあまり追っていない。その時おりの登場人物の舞台上での関係性とそれぞれが発するさまざまなエネルギー。例えば喜怒哀楽の、疑念とか、絶望とか…。そういうものを感じ取るだけなのだ。そして、このワーグナーのように深淵で、ラベルのように繊細であるフランス哲学のようなオペラを本当に楽しんだのだ。フランス哲学は知的水準が高いだけでなく、大切なことを直感で捉えようとするから、ドンドン先に非線形的に跳んで行く。そんなフランス文化と思想の最先端を行くような作品だった。
 ポールデュカスといえば魔法使いの弟子!きっと写実的で分かりやすい音楽だと思いきや、最初の一音からワーグナーのように深遠であることを提示し、それでもフランス的な直感力。それは廻りからみると受け入れられないとウザイものでしかないが。その醍醐味を味わわせてくれる。歌手の3人は望みうる最高のキャスト。もう声がうごうごすごい。そして、オラオラオーラ。
 美術、照明、効果、衣装。演出もされていて、こころからこの現代的であるけれど、19世紀ともつながる。つまり人間の根本的なところに根ざしたオペラを楽しんだ!

 ブラボー!!!!!!!
 




2008年7月23日
オーチャードホール



ワーグナー作曲
トリスタンとイゾルデ
演出 ピーターセラーズ
指揮 セミヨンビシュコフ
出演 クリフトンフォービス ビオレッタウルマーナ



 最高にいい席で拝見した。18列目6番!58000円。高い。三ツ星レストランのフランス料理のように!しかし、モルティエはパリから最高のものをもってきてくれた。
 音楽はビシュコフ!私はこの人のトリスタンをウィーン国立歌劇場で2001年に聞いている。天井桟敷のボックス席で舞台がほとんど見えない席だったが、この指揮者の辣腕ぶりに驚いたものだ。今日もそれは言えて、それも、パリのオペラハウスのオケは休暇も取れるように二編成が交替でやってるらしいのだが、それらから選抜したメンバーらしく、パリオペラ座の最高峰の技術力でこの大作に対峙してくれた。これらが生み出す音楽の官能は人類が生み出した最高峰のものであった。
 私のトリスタン初体験の1980年代のウィーン国立歌劇場来日公演のトリスタン、眠ってしまった。2000年のアバド指揮ベルリンフィルとのイースター音楽祭の来日公演でのそれ。初めて面白さが分かった気がした。そして、バイエルンはコンベンチュニーの演出。ベルリン国立歌劇場も素晴らしいそれを聞かせてくれた。そして、生まれて初めて非ゲルマン系の国のオペラハウスのトリスタンを聞いたのだ。何て色っぽい音なんよ!
 そして、会場中をくまなく使う。コーラスは一階の最後列や、廊下から。ソリストは3階のバルコニーから、管楽器も同じく。1階のど真ん中にいた私はピットから聞こえてくる音も含めて360度美しいエロい音楽に囲まれた。
 音楽はそれほどエロいのに、ピーターセラーズの演出はむしろ禁欲的なのだ。でかいスクリーンとあとはなにも無い舞台。スクリーンでは美しい風景や、男女が出会って完全裸体になったり、水を浴びたり、まあいろんな映像が映され、それは、さまざまな隠喩であることは分かる。
 しかし、舞台上では歌手がほとんど目を合わせたり、対峙したりというよりも、何か狂言や能の手法を使い最小限のモメントの中に押し込んでしまったような感じがする。ただし、動きは最小なのだが、演技し唄っているわけで、歌手(役者?)の内部で起こっている感情の起伏はどかん!どかん!と表現される。それらは、相手役と見事にシンクロしているものだから。ね、ホント、能のような舞台でした。

2008年7月27日
オーチャードホール

べラ・バルトーク作曲
青ひげ公の城
演出 ラ・フラ・パウス
指揮 グスタフクーン
出演 ウィラードホワイト ほか

 なにもない真っ暗な空間に半裸の男の上半身だけが舞台から出ている。そして唄われる内面の告白のヤナーチャク、同じく真っ黒の素舞台に映し出される鮮烈な映像!そして名唱。正直、映像を多用するオペラで良かったと思った試しが無かったのだが、今回のパリオペラ座は違った。特に青ひげ公に関してはガルニエのパリオペラ座自体をある種の腐敗と権力の象徴にしていた。それをぶち壊すようなオペラばかりをするパリオペラ座の立ち位置は。オペラハウスが林立しそれこそ、ミラノスカラ座やウィーン国立歌劇場などと真正面から戦ったら負けてしまうパリオペラ座ならではの立ち位置を確保している。3晩とも素晴らしいオペラ体験であったが、S席58000円という高額なチケットを買ったオペラ初心者の方や年に一度の場ととして楽しみにきたご夫人たちが求めていたものとあまりにも違ってがっかりされていたことも事実。
 パリオペラ座が観客のために行う商業主義的な発想でなくオペラのためにおこなうオペラハウスであることを証明した。そして、その精神に従う観客だけを求めていることもはっきりしたのだ。このようなオペラ公演は少ない。ぜひともまた来日して欲しい。



同時上演
ヤナーチェック作曲
消えた男の日記
指揮、演出など同じ

2008年7月30日
オーチャードホール


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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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