佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 かもめ  忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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アントンチェーホフ作
栗山 民也 演出
出演 鹿賀丈史 麻美れい 藤原竜也 ほか


 まさにオールスターキャストで、ロシアからの来日組や、例えば90年代のピーターブルックが作るチェホフとも、また日本の新劇やチェホフ研究会みたいな劇団がやるそれとは違って、非常に分かりやすいある意味チェホフらしくない「かもめ」であった。それが良くないとはいってない。
 先ずは俳優の魅力を存分に引き出すことに演出の肝を老いたような気がする。藤原竜也を初めていいなと思うくらいに藤原竜也だったし、麻美れいなどはキチンとお客さんの笑いを取りに行くのだ。藤田弓子や藤木孝、中島しゅうなど脇役まで豪華である。もう一度申し上げる。栗山民也さんの演出は、初めて「かもめ」に触れる人にも分かりやすく丁寧に演出をしていた。大劇場の商業演劇でやる「かもめ」とはこういうものなのですね。
 しかし、この赤坂ACTシアターはストレートプレイをするにはほとほと不向きな劇場だと思った。私は1階後方で見ていたのだが、先ずは、舞台の額縁が大きすぎるのだ。この芝居は大劇場でやっても決して悪くない。しかし、その劇場の形状はとても大切だ。ここは、高さも幅もありすぎる。反対に奥がない。ロシアの何か途方もなく広がる中を表現するのに舞台は奥行きが必要だ。美術はその根本問題に四苦八苦したのか、でかい額縁をいろんな形で切り取っていた。終幕の部屋のシーンなどは、舞台空間の7割以上を切り取ってしまう。そもそもこの劇場を選んだのが間違いなのだ。
 そして、劇場自体が新しすぎて何か落ち着いていない感じがするのだ。長年やっている劇場はスタッフだけでなく、お客さんも勝手が分かっていて何となく居心地のいい家のように振る舞うのだから、そこにそういう空気が流れる。しかし、この劇場にはそれがない。チェホフのように古典をやるのにはそれに相応しい劇場が必要である。歌舞伎座で歌舞伎を見るのと、松竹の巡業公演で各地の公民館、公共ホールで歌舞伎を見るのでは何となく違う。それは劇場に流れる空気が違うからなのだ。
 そして、ここは、音楽ものをやるのに相応しい劇場なのだろう。劇場客席の容積が大きすぎる。これもストレートプレイには向かないのだ。
 見て損ではないが、どうしても見なくてはならない芝居でもない。そんな感想をもった。

2008年7月10日
赤坂ACTシアター

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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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