佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 劇団四季 ウィキッド 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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ブロードウェイミュージカル
劇団四季公演

 ブロードウェイに年に一度くらいは出かけて新作の芝居を見ている僕にとって、この作品は当日キャンセルを並んでも取れない難物なのです。もうオリジナルキャストでないので、東京で劇団四季版で予習してから海外で観りゃ良いやくらいの気持ちで観に行きました。もちろん、CDは山ほど聞いてもう口ずさめるくらいです。音楽は最高だというのは事前から知っていました。始めて入る海劇場は、緊縮財政の中で作られた劇場ですが、舞台そのものは豪華でした。昔の四季はミュージカルも音楽はテープでしたが、生演奏。この生演奏のレベルが非常に高かった。昨年末に「テイクフライト」を見たときも思ったけれど、日本のミュージシャンのレベルは本当に高い。
 作品は子どもから大人まで見て楽しめる作品だし、そして、徹底的にエンタティメントでありながら、現代社会が、いや人間が抱える根源的な問題に肉迫しているのです。いやあ、素晴らしい。本当に素晴らしい。泣けたし、劇作もするものにとって悔しくてたまらない。スゴい作品に出会ったと思ったのです。美術はお金をかけているけれど、お金をかけた以上の効果をもち、最高にサイケでゴージャスな衣装も素晴らしい。演出はスピード感がある。
この作品は2003年10月にニューヨークで初演されている。そうである。同時多発テロの後、アメリカがスゴくウルトラ右旋回している時代に生まれている。人種問題、宗教の問題、マイノリティ…。さまざまな背景をもった人たちのとてつもないエネルギーで発展してきたアメリカが、経済と軍事力を背景にアングロサクソンのキリスト教文化を頂点とした世界観に凝り固まっていた時代に生まれたのである。テーマは視点を変えれば、こうだと思っても実はこうだってさ。和解。許容。そういったことなのである。もちろん、そういったことが前面に出てきているわけではない。しかし、脈々と作品の根底に流れている。音楽、ダンス、美術、登場人物のキャラ、ストーリー展開…。全部最高である。観る人を幸せにするのだ。
 今日も、一幕90分が終了した時点で、会場中が息を飲む瞬間があった。観客の集中力が放たれた時間なのである。そして、多くの観客が興奮してスゴい作品を観に来たなあと口にするのである。感動に討ち震えながら、二幕の展開を見守るのである。そして、カーテンコール。何回も何回も。スタンディングオベーションの価値の十分あるパフォーマンスだった。
 これは、アメリカで生まれた作品であるが、日本人のパフォーマンスも素晴らしい。特にエルファバ役の樋口麻美の歌唱の素晴らしさ。リズム感、音程の正確さ、そして、パワフルな表現力。ブロードウェイで十分通用する素晴らしさなのである。また、マダムモリブルを演じた武木綿子のムチムチ感のある存在感と台詞の確かさ、オーラの出し方の良さ。僕は昨年塩沢ときさんがなくなって、ああいう面白いキャラの女優はもう出て来ないだろうと本当に哀しかったんだけれど、ここにいました!武さん。素晴らしい。そして、劇団四季は進化している。今日のアンサンブルキャストの素晴らしいこと。ホント、おひとりおひとりお名前と顔を一致させたいくらいだ。最初に劇団四季を見たのは1973年。子どもミュージカルだった。当時はアンサンブルで街の人を歌い踊っていた、市村正親さんも、鹿賀丈史さんも、いまは大御所。あの当時との差。いや、前回四季を見たのは、10年前に招待で見た「ライオンキング」と仕事で見た「異国の丘」。そして、2年くらい前の「ベニスの商人」なんだけど、何かこのアンサンブルのすごさは、また、何か越えているのだ。
 そうそう、オズの魔法使いを洒落っ気たっぷりに演じられていたのは飯野おさみさん。僕が始めて四季を見た時、そう子どもミュージカル「王様の耳はロバの耳」を見た時に、主役の床屋さんを演じていたその人だ。何かとてつもなく懐かしく思ってしまった。35年ぶりの再会って感じです。
 騙されたと思って観に行ってください。素晴らしいです。ブロードウェイの一般的なミュージカル公演のレベルと遜色ありません。むしろ、アンサンブルは日本の方が上かもしれません。
 
 
劇団四季の公式ページ 日本の公演の模様だけでなく、リンク先からはブロードウェイの動画も観られます。http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/index.html



2008年4月19日
電通四季「海」劇場



 春に見た劇団四季「ウィキッド」があまりにも良かったのでもう一度見た。昨日はキャッツを見たので、二日続けて劇団四。そんなの初めてだ。見ていて、何か前回と違うなあ、ダメなんだよなあと思ってみていたのだけれど、家に帰って調べたら、ダメだと思った人は前回とキャストが違ってた。それも大幅。前のはベストキャストに近かったんだろうな。今日のはダメ。
 例えば、四季のテキスト、台詞はとても難しい。とにかくはっきりと滑舌よく話すことが絶対的な第一課題となっている。唄でもそう。音楽でも音程と歌詞をきちんと伝えることが重要。
 で、たいていの役者さんはそこで終わる。四季の俳優でも終わる。その枠の中で役を膨らまし魅力的にできる人は限られているようだ。
 今日のマダムモリブルの森さんの台詞は酷かった。はっきりと口に出して言ってるだけで、そこに生きた人間はいない。前回の武さんとは大違い。それからオズの魔法使い。前回はベテラン飯野おさみさんが素晴らしい歌唱と演技をみせてくれたが、今日の松下武史さんてのは、中田カウスみたいなウソ笑いをずーっと続けているだけ。ただのチビ詐欺師ですなあれじゃあ。彼の哀しさとかが出ていないよ。名曲、ワンダフルのナンバーも、あれじゃノンワンダフル。そして、最大の問題は、フィエロをやった李さん。日本語ができていないことと、立ち振る舞いがなんか変なのだ。ハートがないっていうか。舞台上の役者間で立ち上がるものがないっていうか。昨日のキャッツの金子さんという中国人?キャストの方が素晴らしかったので期待したのですが、ホントに酷かった。あれじゃあ、廻りで俺にやらせろと言ってる人も少なくないはず。
 ミュージカルは唄って踊るだけではダメで、そこにドラマを作らなくては…ね。
 反対に前回と同じキャスト、エルファバの樋口さん、ポックの伊藤さん、ネッサローズの山本さんは良かったなあ。特に樋口さんの歌唱は本当に素晴らしい。でも、彼女の唄がいいだけじゃ感動できませんよね。お芝居はアンサンブルが良くないと。今日のアンサンブルの方達は本当に素晴らしいのに、メインの役者さんが総崩れでした。今回が2回目で良かったです。

 2008年6月4日マチネ

約1年ぶりに劇団四季のウィキッドを見た。アンサンブルは今回もスゴかったけれど、主要キャストの台詞のやり取りにヘンテコな間があったり、グリンダの最初のナンバーで高音が半音外れる箇所が何カ所もありちょっと驚いた。もちろんこちらは、最高峰のものを求めるからの驚きなのだ。

 2009年5月30日 ソワレ
 
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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