佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 ウィーン国立歌劇場来日公演2012 サロメ 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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演出 ユルゲンフローゼ
指揮 ペーターシュナイダー←(フランツウェルザーメスト)

ヘロデ:ルドルフ・シャシンク
Herodes Rudolf Schasching
ヘロディアス:イリス・フェルミリオン
Herodias Iris Vermillion
サロメ:グン=ブリット・バークミン
Salome Gun-Brit Barkmin
ヨカナーン:マルクス・マルカルト
Jochanaan Markus Marquardt
ナラボート:ヘルベルト・リッペルト
ENarraboth Herbert Lippert


最高のウィーンサウンドは至宝ペーターシュナイダーの手腕
 ウィーン国立歌劇場第8回来日公演「サロメ」。このオペラハウスが1980年に初めて日本にやってきた時にも上演した「サロメ」。プロダクションが素晴らしい。まだ世界史が始まったばかりの中東での物語、作曲された世紀末のウィーン、その雰囲気を併せ持った絶妙の美術は、下敷きにクリムトの世界が反映されている。1幕ものの舞台だけに特に何が起きたりするわけでないが、絶妙の照明でポイントとなるところがハイライトされる。
 世界中で1000回近くオペラの実演をきき、ウィーン国立歌劇場もウィーンや東京での来日公演で30回以上聞いてきたが、幾らウィーン国立歌劇場といっても、今日のような豊麗なサウンドが聞ける体験はほとんどない。1980年代の第2回来日公演の時に「バラの騎士」を振った時に初めて聞いたペーターシュナイダーの功績大。彼はそれこそ歌劇場叩き上げの指揮者で、独自の解釈や個性で楽曲と演奏に痕跡を残していくタイプではない。あくまでも音楽への奉仕者である。だからこそ、日本人が求める伝統に基づくいい意味での中庸な演奏を聴くことができる。作曲者の意図と彼らがスコアを書く時に彼らの意識の中で鳴っていたサウンドを聴くことができる。こういういい指揮者が少なくなった。僕は思う。イタリアオペラの指揮ならネロサンティ、ドイツものでは今日のペーターシュナイダーが最高峰で、二人とも交響曲をやらしても、同じように素晴らしい演奏をするのだが、いわゆるスター性がないためか、CD業界からも、マスメディアからも、楽壇の第一線からも大きくは取り上げられない。
 しかし、真の意味でのカペルマイスター、人間国宝的な職人技の持ち主なのである。何で日本人はこういう人たちをもっと高く評価しないのだろう。昔の日本人はもっともっと高く評価していたのに。例えば、カールベームを評価したように、そして、世界中のどの国よりも早くウォルフガングサバリッシュを評価したように、である。ペーターシュナイダーが指揮した、新国立劇場での「バラの騎士」は素晴らしかった。今年春の「ローエングリン」も良かった。さらに、東京フィルの定期公演でのベートベーンの隠れた名曲、交響曲第4番も聞いた。その品のよさ。
 今回の来日公演「サロメ」は当初からペーターシュナイダーでキャスティングして欲しかった。代役なんて失礼だよと強く思った。
 来年のミラノスカラ座の来日公演。こちらも若くて個性のある二人の指揮者が振るのだが、どうして、ネロサンティでの来日を一度も考えないのだろう?僕はミラノスカラ座を現地できいたのは一度だけだが、その時の指揮はネロサンティだった。「蝶々夫人」。やっぱり鳴るんだよね。この指揮者、80〜90年代にニューヨークで山ほどきいたメトロポリタンオペラでもネロサンティが大活躍。イタリアオペラを満喫した。ローマ歌劇場来日公演でもネロサンティよかったな。
 今回の「サロメ」の成功はペーターシュナイダーのおかげ。
 日本のオケはペーターシュナイダーをもっと招聘すべきだ。彼からドイツ=オーストリア系の音楽の醍醐味を仕込んでもらうべきだ。世界がこの巨匠の存在、貴重さに気づく前に。
 指揮者が良ければ歌手も唄いやすい。ナラボート役のリッパート以外は初めて聞く名前の歌手ぞろいだったが、期待以上の歌唱であった。サロメもヨカナーンも強靭な声で楽しませてくれた。
 そして、最後にもうひとこと。平日のマチネということで心配したが、久しぶりの満席の東京文化会館で観劇し、ああ、日本人はまだ文化にお金を使う余裕があるのだと思って本当に嬉しかった。ただ、59000円は高いなあ。
2012年10月16日@東京文化会館

あまりにも感動したことと、割と安めのチケットが手に入ったのでもう一度、観に行ってしまった。16日の1階センターやや後方という最高にいい席と反対で、お安い席=今日は天井桟敷。オケの音が上に向かって上がってきてドかーんと響き、舞台奥で唄う歌手の声は極端に聞こえない。同じ公演を短い間にこうやって聞くと座席による音の違いが鮮明すぎるほど分かると思った。
 ところで、今日はヘロデ王が急遽変更、ミヒャエル・ロイダーとなった。この人は低音が不得意らしくほとんど出ない。さらに役作りが映画「ジーザスクライストスーパースター」のヘロデ王みたいに、何か繊細芸術家系というかちょいオカマ系の役作りであまりいいものでなかった。手を叩いて下男を呼んだりするのだが、その音もうるさい。つまり、芝居も歌唱も良くなかった。
1012年10月19日@東京文化会館
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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