佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 オペラ 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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 ニューヨークでは、もう25年以上、通算100回は軽く見たでしょうし、東京の来日公演でも20回以上は見ているメトロポリタンオペラが来日します。
豪華絢爛。やり過ぎ。派手。まあ、S席64000円ととてつもないチケット値段となりますが、これはね、もう価格のこと忘れてみるしかないのです。舞台が大好きなんで。
 今回来日の作品で、ニューヨークで見た事ないのはルチアくらいなのですが、それでもまたまた見るのです。悪いか!!!

「ボエーム」

歌う歌手は違いますが、ニューヨークでももう5回も見たプッチーニの「ラ・ボエーム」。今回も見ます!!! 歌手はネトレプコ。ちゃんと来日するかな??


指揮:ジェイムズ・レヴァイン ⇒ ファビオ・ルイジ
ミミ: アンナ・ネトレプコ  ⇒ バルバラ・フリットリへ変更
ムゼッタ:スザンナ・フィリップス
ロドルフォ: ピョートル・ベチャワ(6/4, 8, 11)
       ジョセフ・カレーヤ(6/17,19)⇒マルセロ・アルバレスへ変更
マルチェッロ: マリウシュ・クヴィエチェン
ショナール: エドワード・パークス
コッリーネ: ジョン・レリエ
ベノワ/アルチンドロ: ポール・プリシュカ

「圧倒的な21世紀のメトロポリタンオペラの底力」
 震災の影響から空席だらけの公演であった。そして、ネトレプコは来日せず、フリットリのミミとなった。僕は聞けなかったのだが昨年7月にトリノ歌劇場来日公演でミミを歌ったときと比較してどうだったのだろう。
 今回、驚いたのはオケである。メトロポリタンオペラのオケは昔からやる気のあるなしで相当変わるのだが、今回はやる気ありありバージョンで物凄かった。1970年代のアメリカの超一級オケ、それもフィラディルフィアとか、クリーブランドとかを思わせる物凄い合奏力。ピッチは完全にあってるし、なんて言うんだろう。美しい原色がどかんどかんと飛んでくる感じ。迷いのない音というのかな。くっきりとした音。最初はそれが目についた。耳?についたりしたけれど、途中から、そうだ。メトは、誰もが避けたがる王道を行くオペラハウスなのだと思い出した。
 ボエームは、ニューヨークのメトでカルロスクライバー、フレーニ、パバロッティという究極の組み合わせで何回か聞いているのだけれども、この晩のそれは、決して遜色のないできでした。フリットリは1幕は声が少し安定しないところがあったけれども、3幕からは完璧。何だろ、声にもっと女らしさがあれば適役なのにと思いました。というのも、ミミはお針子という設定ですが、やっぱり匂いたつエロスが欲しいのです。原作には忠実ですけれど、そこが寂しい。その点、ネトレプコはとにかくエロな声と風貌ですからね。 



 ムゼッタも同様で、あれじゃお馬鹿さん。せっかくネトレプコじゃないのだから、もっと可愛い女を演じればいいのにと思いましたなあ。ちょっと芝居がでかすぎるというか。
 こんなこと言ってますけれど、皆さん声がきちんと出ていて気持ちいい。ロドルフォのベチャワ、マルチェロのクヴィエチェンなど初めての人ばかりですが、大きな声で立派。演技も型通りですが十分です。声もくっきり、芝居もくっきり。
 このプロダクションをニューヨークで最後に観たのはもう20年ほど前ですので当たり前なのでしょうが、衣装が新調されていて奇麗でした。20年前はすすけた衣装ばかりで残念だなあと思ったんです。オケと同じにこちらもくっきり原色系です。
 合唱も物凄く声が出ていて、驚いた。正直申し上げると、これほどまでの水準の公演はニューヨークでもなかなかないと申し上げていい。行ってよかったと思える公演でした。(6月8日鑑賞)
 
 今宵はロドルフォがベチャワからマルセロアルバレスに変わったことが違うところなのだが、ベチャワがとてもすごい声を持っていることが分かった。8日は3階の最前列で、今回は2階のサイドの前方で観たのだが、ベチャワは強い声もきちんと自分のコントロール下にあるのだが、アルバレスはもう大変そうで、聞いている方が楽しめない。相方が弱いとフリットリも時にアレレという感じもありまして。まあ、おととい歌ったばかりだし、ツアーも後半でお疲れだったのかもしれません。もしくは中一日でまた歌わなくてはならないので少しコントロールされていたのかも。8日のような絶唱ではありませんでした。ムゼッタのスザンナフィリップスは声の出し方が他の方と比べると粗があるというか、出るところとそうでないところがありすぎで、この役をやるのに如何かなと思いました。役への取り組みもおてんば娘みたいな元気良さだけで勝負するという、何か一色しかない役作りで他の人と比べると見劣りしたという印象です。
 音楽的にはそんな感じでしたが、前方で観たので、2幕の人の動かし方とかもよく観察できたし、熊のぬいぐるみなんかも出ていたんだと初めて認識できたり、3幕の照明が当たってない人の動きが全体の効果を高めていることが分かったりとか。
 8日が良かったので、評判をよんで、もう少しはお客さんが入るかなと思ったのですが、3階などは全滅の勢いで本当にお客さんがいないです。こんなにスカスカのNHKホールの公演を見るのは初めてというくらいでした。ジャパンアーツの経営が心配です。

NHKホール 2011年6月8日/17日


『ドン・カルロ』
指揮:ジェイムズ・レヴァイン ⇒ ファビオ・ルイジへ変更
エリザベッタ: バルバラ・フリットリ ⇒ マリーナ・ポプラフスカヤへ変更
ドン・カルロ: ヨナス・カウフマン ⇒ ヨンフン・リーへ変更
ロドリーゴ: ディミトリ・ホロストフスキー
エボリ公女: オルガ・ボロディナ ⇒ エカテリーナ・グバノヴァへ変更
フィリッポ2世: ルネ・パーペ
宗教裁判長: ステファン・コーツァン

「日本の上演史に残る名舞台」
 ドンカルロは強靭な歌手を6人も必要とする作品だけになかなか上演されない。僕自身の鑑賞経験で記憶に残っているのは、サントリーのホールオペラでの公演。そして、2001年のビスコンティ演出版の新国立劇場の公演。2009年にはミラノスカラ座の来日公演。そして、今回と同じ演出版を先年ニューヨークで観ただけである。今回のキャストは本当に期待していた。しかし、結局は、指揮のレヴァインだけでなく、ボロディナ、カウフマンを抜かれ、最後にはフリットリまでいなくなってしまうという何とも残念なキャストになってしまった、、、はずであった。
 ところが、実際にふたを開けてみると、オーケストラはニューヨークでもなかなか聞かせない締まった素晴らしい音を聞かせるし、ヨンフンリーは想像もしていなかった素晴らしい歌唱と、2階のS席で観ていたのだが容姿もぴったりで驚いた。むしろ、ホロストフスキーが霞んで見えるくらいに素晴らしい声なのである。高音から低い音まで美しく出て、フレージングなども勝手な解釈は加えていない。演技にちょっと問題点はあったものの、この公演はヨンフンリーの日本デビュー公演として長く語られるだろう。そして、ルイジの指揮の素晴らしいこと。時代はどんどん変わって行くのだなと痛感した。エリザベッタやエボリ公女は出だしこそ、フルスロットルではなかったがすぐに全開モードになりこれも素晴らしい。何だボロディナがいなくてもいいんだ!と思った。
 代役ばかりで残念だったが、期待を裏切らないメトロポリタンオペラの底力を感じた。そして、80年代からあるデクスターの美しい名舞台はきっとこの日本公演でお払い箱である。レーザーディスクで、20代の僕は何か長いよなあと思いつつドミンゴやフレーニの声を聞いたのを思い出す。一生忘れられない舞台となった。(6月10日)



  
 初日はゲルブ総裁が、開幕前に役は変わったけれども素晴らしい歌手を連れてきたからとヨンフンリーなどの名前をあげながら言い訳をしたのだが、今宵は簡単に済ませた。今宵もヨンフンリーは良かった。まあ、芝居はダメだし、10日に聞いた時は本当に驚いたけれど、今日もうーーーんいいなあと思ったくらい。今回のメトのツアーで思いでに残るのはヨンフンリーの日本デビューでしょう。昨年のNHK交響楽団の演奏会形式による「アイーダ」の時もラダメスを韓国人のサンドロ・パークが歌ったけれども、これからそういう時代になるのかなと思わせるものだった。日本人歌手も新国立劇場で聞く限り素晴らしい人が増えてきたし、藤村実穂子さんのような人もいるのだから頑張れアジア人という感じかな。しかし、今宵は女性陣がすごかった。初日よりもエリザベッタのマリーナ・ポプラフスカヤとエボリ公女のエカテリーナ・グバノヴァが好調で全体としては10日よりも良かった。今宵は1階のセンター後方という音も見栄えも最高の最高の席で聞けたのも良かったのかな(15日)
 
NHKホール 2011年6月10日/15日



『ランメルモールのルチア』
指揮: ジャナンドレア・ノセダ
ルチア: ディアナ・ダムラウ
エドガルド: ピョートル・ベチャワ(6/16, 19)
エンリーコ: ジェリコ・ルチッチ
ライモンド: イルダール・アブドラザコフ


 ルチアの記憶はほとんどない。僕は苦手なオペラだったのだ。ニューヨークでは確か、ジョンザザーランドとかで聞いてるはずなのだが、あまり感激した記憶がない。藤原歌劇団で という素晴らしい歌手で上演したのもダメ。フィレンツェ歌劇場の来日公演でも聞いているのだが、イマイチ。でも今回は良かったな。演出も古典と象徴主義のミックスみたいな感じで。1幕はスコットランド荒れ地のイメージの残る分かりやすい美しい舞台で、2幕も屋敷内を写実的にしたのに、3幕をスクリーンに月を写し、でかい半螺旋階段だけにしたのも正解。歌手も素晴らしいし、オケも良くなっていた。今回、本当に楽しめた。ダムラウの絶唱すごかった。

東京文化会館 2011年6月16日



例えば、モーツアルトの「魔笛」もこんなポップになるのです。演出は、舞台のライオンキングの演出もした さん!向こうで期待しないでみて面白かった。


続いて有名なビゼーの「カルメン」のハバネラ。これも、メトロポリタンオペラで見ました。
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新国立劇場2010/11シーズン
新国立劇場オペラパラス


 リヒャルトシュトラウス作曲「アラべラ」
 ウルフシルマー指揮

 かつてサバリッシュ指揮 バイエルン州立歌劇場来日公演できいたことがある作品だが、正直いって、まだRシュトラウスの作品の面白さが良く分からない時代でぴんとこなかった。その後、Rシュトラウスは好きになったのだが、この作品は今回もそのレベルで終わってしまった。作品の肝をつかめないのだ。もちろんウルフシルマーという実力者が指揮するピットから聞こえてくる音楽がかつての日本のオケのレベルでは出し得ないつややかなものであることや、外国人歌手に比較して日本人歌手の歌唱はすばらしこと、しかし、その演技は説明的すぎて学芸会レベル以下であることは分かる。しかし、それだけで、肝心なこのオペラの作品として、音楽として全体をとらえることができなかい。大人の男女の恋愛の機微を歌っているように思うのだが。ちょっと残念。他の言い方をすると、今宵の音楽は僕にこの作品にのめり込ませてくれなかったということでもある。
2010年10月8日 新国立劇場オペラパレス 

ワーグナー作曲「トリスタンとイゾルデ」
【指 揮】大野和士
【演 出】デイヴィッド・マクヴィカー
【美術・衣裳】ロバート・ジョーンズ
【照 明】ポール・コンスタブル
【振 付】アンドリュー・ジョージ
【トリスタン】ステファン・グールド
【マルケ王】ギド・イェンティンス
【イゾルデ】イレーネ・テオリン
【クルヴェナール】ユッカ・ラジライネン
【メロート】星野 淳
【ブランゲーネ】エレナ・ツィトコーワ
 新国立劇場合唱団/東京フィルハーモニー交響楽団

「世界最高水準のワーグナー上演」
 期待を何倍も上回る結果に感動した。最初の一音から今宵の東フィルはやるぞ〜と身震いしたのだが、その通りだった。あの弦の音は本当に東フィル?と思えるような重厚で深い音。ピチカートの入り方とか、スゴいんだよなあ。時々金管が綱渡り状態になるけれども、何かさ、スゴい。
 大野のオペラの指揮をきいたのは何年ぶりだろう?最初にきいたのは、ハンブルグ歌劇場の来日公演の「リゴレット」だったと思うのだけれど。もう10年以上前のことだ。大野の指揮は細かく明確でありゃオケをぐいぐい引っ張るよなあという感想。東フィルはいいけど、ワーグナーやシュトラウスは?と言われないなあ。これだけの演奏をするのであれば。世界の一級クラスの演奏でした。
 大野のトリスタンは今年の4月24日のメトロポリタンオペラのそれを聞き逃していたけれど、ニューヨークでの演奏はどうだったんだろうととても気になるくらいに素晴らしかったです。
 こうなると、歌手陣も手を抜けません。何しろ、東京のできて10年ちょいのオペラハウスでこんな音で来られちゃ。グールドもテオリンもツイトコーワも、もちろんマルケ王も素晴らしい。星野さん、悪くないけど、ちょっと損するなあこの布陣の中じゃ。他の日本人は、まあ、予想の範疇でしたけれども、10人出てきた上半身裸の船員チームとともに、演技が下手すぎる。船員チームは集中力がなく、余計なところで小芝居して作品を壊していた。良かったのは最後の徐々に退場していくところのみ。あとは、酷い。酷すぎる。動くなそこ、集中しろ!と言いたくなったなあ。
 それと同じで、メロートはまだしも、他の日本人のキャストは、何か卑屈な東洋人というステレオタイプの感じで、何かね。違うんです。
 合唱も含めて歌唱が世界レベルだったから、普段は気にならないこういった脇役などの演技や舞台の立ち方のヘタクソぶり、知らなさぶりが目だったのでした。
 演出は素晴らしい。照明、美術、衣装も含めて、ロマンチック!のひと言に尽きるのだけれど、ここまで透徹して美しい舞台ってのは、世界でも珍しいのではないか?僕は半分以上寝た、ウィーン国立歌劇場の1986年の公演(指揮ホルライザー)で、また2001年(指揮 ビシュコフ)にウィーンでも見た、美しい  の演出と並ぶくらいに素晴らしいそれで。前回見た2008年のビシュコフ指揮、ピーターセラーズ演出、パリオペラ座の来日公演のビデオ投影しまくりの「トリスタンとイゾルデ」も、バイエルンオペラのコンベンチュニーの演出も、ベルリン国立オペラのクッファーの演出も、アバドが指揮して、ベルリンフィルがピットに入ったザルツブルグイースター音楽祭来日バージョンのそれも上回った感がある。
 大きな月が登って沈むまでの流れの中で、月はいろんな色に変化し、舞台上に貼られた水に浮かび。。二幕のオベリスクのような塔の廻りのうねりのようなものも、たいまつも、まあ、とにかく美しくロマンチックで、関係性は分かりやすく、音楽に集中できるようなプロダクションだったのです。
 すっかり満足。すごいぞ、新国立劇場!と思った公演でした。きっと今年最後の舞台芸術鑑賞となると思うのですが、すっかり満腹満足した。


 2010年12月25日 新国立劇場オペラパレス


モーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」
指揮:ミゲルゴメル=マルティネス 演出:ダミアーノ・ミキエレット
合唱:新国立劇場合唱団 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

§キャスト§
【フィオルディリージ】マリア・ルイジア・ボルシ
【ドラベッラ】ダニエラ・ピーニ
【デスピーナ】タリア・オール
【フェルランド】グレゴリー・ウォーレン
【グリエルモ】アドリアン・エレート
【ドン・アルフォンソ】ローマン・トレーケル


 「世界に誇れる素晴らしいプロダクション」

 年末の「トリスタンとイゾルデ」ですっかり新国立劇場のオペラを見直した僕は新国のオペラを楽しみにしていた。ところが、震災の影響で「バラの騎士」など2本を観られなかった。まあ、中途半端な体制で上演されるよりはいいやと思っていた。実はこの「コジ」も指揮者に加えてソリスト6人のうち3人までもが降板する事態となっての上演だったので、キャンセルになっても構わないと思っていたものだ。だいたい「コジ」はつまらないとたまらない。3時間半の上演時間。本当に地獄のような苦しみとなる。それに、僕はもう素晴らしい演出を何本も観てきた。このブログでも紹介したが、2年前のザルツブルグ音楽祭のモダンな演出、その前年にはウィーン国立歌劇場来日公演の美しいプロダクション。さらに、80年代には、キリテカナワなどの黄金キャストによるロイヤルオペラのきらめくような来日公演、バイエルン国立歌劇場の来日でもサバリッシュ指揮によるアンサンブル上演のすばらしさも知っている。あと、メトロポリタンオペラや、小沢征爾のプロダクションもあったかな。何本か退屈なそれを観たけれども、地獄だった。
 それでも出かけたのはこの日は特等席を確保していたこともあるが、ダミアーノ・ミキエレットの演出、パオロファンティンの美術と衣装を楽しみにしていたからだ。
 ところが、序曲が始まったとたん、あれ、これ良いかも?と思ったのだ。東京フィルはこのブログで何回も書いたけれども、本当にこの10年で素晴らしくなり、見事な演奏をする。それでも、ワーグナー、Rシュトラウス、モーツアルトはなあと思っていたのだが、昨年暮れに、ワーグナーで見事なトリスタンを大野和士と演奏し、チョンミンフン指揮では昨年11月の定期公演で愛らしいモーツアルトの交響曲を披露していた。東フィルやるなあ!である。でも、そんな素晴らしい演奏は、両方とも世界でもトップクラスの指揮者だからなし得たのかもしれないぞと思った。今日のマルティネスという指揮者はイタリアものを指揮するスペイン人だそうだ。これからの人だろう。少なくとも前述の評価の定まった一流どころではない。ところが、この日も良かったのだ。先ずはオケのピッチがあっていた。フレージング、鳴らし方。とてもモーツアルトだったのだ。
 そして、降板して代役にたった歌手も特にフィオルディリージのボルシを始め見事な歌唱と演技を見せた。演出は予想通りに楽しく、ユーモアに富み、時代や場所は全く違うが、ダ・ポンテとモーツアルトの作品の本質を少しも揺るがす事なく表現したのだ。デズピーナの磁石が、心臓マッサージ用の電気ショック、仕事場はキャンプ場のbar。ドンアルフォンソはキャンプ場のオーナー。二幕以降にキャンピングカーの上に枝が乗り、ふくろうの剥製が乗っかっていたのはなんでか分からないけれどもね。
 いわゆる今風のギャルも出てきて楽しかったな。
 読み替えの演出もこれなら大成功。それも古めかしい演出でなく楽しい。
 新国立劇場のオペラは世界に紹介して何ら恥ずかしくない素晴らしい水準に達した。演出、出演する歌手、合唱、オケ、美術衣装など総合的に世界水準だ。
 6万円も出して来日中のメトロポリタンオペラを見に行って、こちらを観ないというのは、包装紙さえ良ければ中身はどうでもいいという人の選択。本当の通は、どちらも喜んでみられるはずだ。このプロダクション、日本のオペラファンとして大切にし、何回も再演してもらいたいと思わずにいられない。
2011年6月5日 新国立劇場オペラパレス


プッチーニ「蝶々夫人」
【指 揮】イヴ・アベル 【演 出】栗山民也 【美 術】島 次郎
キャスト
【蝶々夫人】オルガ・グリャコヴァ 【ピンカートン】ゾラン・トドロヴィッチ
【シャープレス】甲斐栄次郎 【スズキ】大林智子 【ゴロー】高橋 淳 
【合 唱】新国立劇場合唱団【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

「日本美にあふれた素晴らしい名舞台」
 蝶々夫人はプッチーニの名作でありながら上演機会はそれほど多くない。日本国内では上演される事は少なくないが決していいものばかりでないと記憶する。僕の記憶に残るものは、サントリーホールの開館記念の時に、ジョゼッペシノポリとフィルハーモニア管弦楽団で演奏会形式で上演されたもの。80年代の終わりに初めてミラノスカラ座に出かけた時にみた浅利慶太演出でネロサンティ指揮のそれ。その舞台をそのまま借りてきた小沢征爾指揮で新日本フィルの上演。シドニーに仕事に行った時にあのシドニーのオペラハウスで水面を張ったプロダクションを観た、それは、すごく違和感が残ったのを覚えている。
 浅利慶太の演出は素晴らしい物で、開場時間中に木と畳と障子の家が建てられて行く。石でできた西洋の建物と完全に違う事を開場時間中に示してしまう。素晴らしい物だった。今回の演出 栗山民也、美術 島次郎の舞台は、よく観ると能舞台のようなしつらえになっている。美術はシンプルで、人の動きも最小限に制約され、時に文楽の人形かと思うくらい気持ちがわずかの動きで伝わってくる。だからといって、それを公演全体に無理矢理押し通そうともしない。あるべきものはすべてあり、無くていいものは徹底的にそぎ落としているから音楽とドラマに集中できるのだ。
 特に後半、蝶々さん、スズキ、ケートが3人になるところなど人の配置だけでこれだけ効果が出るのかと感心してしまった。
 これが主役3人の素晴らしい歌唱(スズキの大林も素晴らしかった)と、東京フィルの見事な演奏があるのだから名舞台にならないはずがない。世界に通用する素晴らしいプロダクションだ。特に東京フィルの充実した演奏は、美しく艶やかで語るような弦、決して咆哮しないブルージーな管楽器、内面の思いが時に爆発する時にも抑制がされ、見事に美しい。来日しているメトロポリタンオペラ管弦楽団に劣らない世界でもトップクラスのピットだ。もうこのオケに新国立劇場管弦楽団の名称を与えるべきだと思うのだが如何だろう。
 日曜日の午後に心にしみいる名舞台をみることができたことに感謝している。




 2011年6月12日 新国立劇場オペラパレス

指揮:シュテファン・ゾルテス 管弦楽 東京都交響楽団
演出:ペーター・コンヴィチュニー
オランダ/ネザーランド・オペラ及びスウェーデン/エーテボリ・オペラとの共同制作
サロメ/林 正子 ヘロデ/高橋淳 ヘロディアス/板波利加 ヨカナーン/大沼 徹 ナラボート/水船桂太郎


 先ずは演奏を褒めたい。僕なんかはコンヴィチュニーの演出だけを楽しみにしていた。知り合いからS席を1万円だかの優待チケットがあるけれども?と言われて、そんなら行ってみるかくらいで行ったのだ。そしたら、演出よりも演奏の方が良かった。絶品ではないが、十分楽しめるっていう感じです。
 演出もつまらなくはないのだが、7つのベールの踊りを、何か良くわからないダンスにされちゃあ、ちょっとね。ヨカナーンを殺さなかったのは面白かったけれど。
 2011年2月22日 東京文化会館
マリンスキーオペラ来日公演 ワシリーゲリギレフ指揮


影のない女 Rシュトラウス作曲 演出 ジョナサンケント
皇帝:オレグバラショフ/ヴィクトル・リュック(バラショフ体調不良のため2幕から)皇后:エレーナ・ネベラ 乳母:エレーナヴィトマン バラク:エデム・ウメロフ バラクの妻:エカテリーナ・ポポワ
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 東京文化会館1階の17列センターブロックで見たのだが、1階席で見るとしてももっと前かもっと後ろが多い、でも、このあたりの座席の良さを痛感した。オペラを見るのにはもっとも適している。細かい表情や仕草も分かるし、全体も観られる。音響的にも何かの音ばかりが聞こえるということもなり。
 さて、ゲルギレフ。正直言ってゲルギレフには辟易していたのだが、前に来日した時のプロコフィエフチクルスで評価が変わった。もう一度!と思った口であった。
 それでも、オペラはきっとロシアもの以外はなあと思っていた。過去何回かの来日公演でことごとくロシアもの以外は裏切られた。オランダ人、カルメン、ワルキューレなどは途中で帰ったくらい。これでもかというほど、ロシア的、どかーんと来て、メリハリばかりが耳について不愉快だった。良かったのはヴェルディの大作「運命の力」くらいだったかなあ。
 そう、ゲルギレフは他の人が手に負えないほどのどでかい作品があっているのだ。この作品もそうだった。東京文化会館で20年近く演奏して来ているものだからホールの音響の特質なども心得ているのだろう。まあ、すごくこのリヒャルトシュトラウスの音楽を明解に提示してくれた。
 この話の寓話性などの部分を感じることはできなかったが、シノポリ/ウィーン国立歌劇場、サバリッシュ/バイエルンオペラ(猿之助演出)、昨年の新国立劇場版と比較してみても、非常に分かりやすくいいプロダクションだった。バラクのセットと幻想の世界のセットは同じ人が創ったものかと思うほど明確に違っていて、そうだよな、こうじゃなきゃと思ったくらい。バラクの家はリアルな洗濯屋。それもコインランドリーというか今風のクリーニングマシーンが並び、横には食卓があり、車がおかれていたりする。最近、日本で飽きられたゲルギレフであるが、こうやって実績を積み重ねてまた新しい新境地を創り上げて欲しい。

2011年2月13日 東京文化会館


トゥーラントッド プッチーニ作曲
マリアグレギーナ、ウラディミールガルーシン、ヒブラゲルズマーワ
 きっとダメだと思ったけれどもとにかくチケットがダンピングされていて、S席が2万円という破格値だったこともあって出かけてみた。そしたら、グレギーナ、もちろん最盛期の(僕が初めてMETで彼女のトゥーラントッドを聞いた時のような)声はないものの、プロ中のプロ。どこで聞かせるべきかを心得ているのである。演技力もまし十分楽しめた。それよりはガルーシンがイマイチ。ゲルズマーワは水準以上。演出は回り舞台を中心に作られていた。まあ、そこそこのものでした。
2011年2月20日 NHKホール

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 18年ぶりの来日らしい。18年前は行かなかった。確か、フィガロ、コシ、ドンジョバンニのモーツアルト3部作という鉄板興行で大コケしたはず。そりゃ、そうだ。酷いんだもん。当時、ロイヤルオペラは民営化の流れのなかで1980年代までの栄光から墜ちたオペラハウスだったかからだ。その後、僕は、ロンドンに出かけたときも、民営化で大幅値上げされた一等席3万円を越える価格で、わざわざこの価格なら東京できけばいいし、もっといいオペラをきけるよなと思ったりしたものだ。一度、バレエのロミオとジュリエットをロンドンで見たときの演奏などは、これは日本のアマチュアオケのほうがましじゃないかなと思うような有様だった。ロイヤルオペラハウスは1990年代に改装して、受付とカフェは素晴らしくなったのだが、演奏は荒れた。特別な公演の時は素晴らしい演奏をすることもあるのだけれど、アレレなことが多い。パッパーノは次世代の期待の指揮者である。いったいどんな演奏をするのか愉しみである。
2010年9月11日@上野文化会館 



マスネ作曲 歌劇「マノン」@上野文化会館
アントニオパッパーノ指揮 ロランベリー演出 シャンタルトーマス美術 
マノンレスコー/アンナネトレプコ デグリュー/マシューボレンザーニ ほか

英国ロイヤル・オペラ 2010年日本公演 「マノン」全5幕
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:ロラン・ペリー
美術:シャンタル・トーマス

ギヨー・ド・モルフォンテーヌ:ギ・ド・メイ
ド・ブレティニ:ウィリアム・シメル
プセット:シモナ・ミハイ
ジャヴォット:ルイーゼ・イネス
ロゼット:カイ・リューテル
宿屋の主人:リントン・ブラック
レスコー:ラッセル・ブラウン
警官:ドナルドソン・ベル、ジョン・ベルナイス
マノン・レスコー:アンナ・ネトレプコ
騎士デ・グリュー:マシュー・ポレンザーニ
伯爵デ・グリュー:ニコラ・クルジャル
ロイヤル・オペラ合唱団 / ロイヤル・オペラハウス管弦楽団

◆上演時間◆

第1幕(転換)第2幕:15:00 - 16:20
休憩 25分
第3幕(場面転換あり):16:45 - 17:45
休憩 25分
第4幕(転換)第5幕:18:10 -18:55

※下線で示したキャストは、当初発表させていただいたキャストが変更になったものです。
当初、「マノン」の伯爵デ・グリュー役で出演を予定しておりましたクリストフ・フィシェッサーは、喉頭炎のために出演できなくなりました。
代わって、伯爵デ・グリューはニコラ・クルジャルが演じます。
なにとぞご了承のほどをお願い申し上げます。
また、警官役はプログラムの記載より変更となっております。

以下は来日前にあったロンドン公演での盗撮もの。違法ですから、すぐに観られなくなると思います。でも日本公演もほぼ同じセットです。主役を歌ってるのはネトレプコ。



 蘇生したロイヤルオペラハウスの記念碑的公演。

 直前に、とてもいい条件で1階席のS席チケットを手に入れる事ができて、急遽観に行くことにした。正直いってマスネという作曲家のオペラでワクワクした経験が一度もない。最初にマスネのオペラをみたのは1980年代終わりのメトロポリタンオペラハウス、亡くなったアルフレードクラウスの生を聞いたのが最初かな。おそらく「ウェルテル」。しかし、退屈で退屈で。「マノン」も見てはいる。でも退屈で、ほとんど覚えていないのだ。何で今回見に至ったのかは分からない。積極的に観に行ったわけではない。
 オケピットから最初の音が聞こえてきた時に、ああスゴいのが観られるぞと思ったくらい。パッパーノに導かれたオケは90年代に沈滞していたオペラハウスのイメージを一掃するような明るく活き活きとした音楽を鳴り響かせた。よくきいてみるとマスネの音楽はやはり変化に乏しく、曲調も単調で面白い物ではない。しかし、スコアの中から現代と結びつける物を探し出し、それを客に上手く伝えることができればきっとやはり歴史に残って行く作品なのだろう。パッパーノの指揮はまさにそれだった。
 措置や演出は単調だし、奇をてらった物ではない。まあ、それはそれでいい。安っぽい美術も予算もあるだろうから仕方ない。それでも、さすがはシャンタルトーマスの担当だけ会って、衣装は本当に素晴らしい物だった。20列目くらいから見ていても生地や仕立てが違う事がはっきり分かる。そして、群衆シーンなどになると、微妙に異なる色合いの衣装の人たちがうまく立っていてとてもキレイだったりした。
 歌手もネトレプコはますます磨きがかかり、ボレンザーニやプレティニをやったシメル。モルフォンテーヌのメイなど水準も非常に高かった。しかし、演じる方も必死に最上のものを届けようとしていた。しかし、それを可能にしたのは、パッパーノが導いて、メリハリがあり、絶妙のフレージング、テンポのとりかたが現代的で、細かいところもピッチがあっていたオケが勝者だと思った。
 2010年9月11日(上演時間4時間)


ヴェルディ「椿姫」
動画 ロイヤルオペラのジェーンエア演出の動画



 このたびの英国ロイヤル・オペラ「椿姫」におけるアンジェラ・ゲオルギューの降板、それをうけて代役をつとめたエルモネラ・ヤオが、初日、3日目の公演で途中降板して、第2幕からアイリーン・ペレスに代わるという予期せぬ事態になったことに対し、観客の皆さまに深くお詫び申し上げます。
 エルモネラ・ヤオの不調をうけ、ロイヤル・オペラ側から「椿姫」最終公演のヴィオレッタ役の発表がありました。オペラ・ディレクター、エレイン・パドモワのコメントを下に載せましたが、「マノン」の最終公演を終えたばかりのアンナ・ネトレプコが、22日のヴィオレッタ役を演じることになりました。(最終出演者は22日の会場での発表とさせていただきます。)
 なにとぞ、このような事情をご理解のうえ、ご了承のほどお願い申し上げます。

財団法人日本舞台芸術振興会


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 英国ロイヤル・オペラの18年ぶりの日本ツアーも、明日最終日を迎えます。
 今回の「椿姫」においては、大変残念ながらアンジェラ・ゲオルギューが愛娘の手術に立ち会うことを余儀なくされ降板せざるを得なくなってしまいました。彼女の降板の意志はたいへん固く、それからすぐに私たちは代役探しに奔走いたしました。そしてエルモネラ・ヤオを確保することできました。ところが、彼女は初日と3日目の公演で、突発性のアレルギーによる音声障害によって、第1幕のみで降板するハプニングに見舞われました。両公演にお越しいただいた皆さまには、このような予期せぬ事態になりましたことを、心よりお詫びしたいと思います。

 当初、ロイヤル・オペラとしてはゲオルギューの降板をうけて、あらゆる可能性を考え、アンナ・ネトレプコを含め、さまざまな歌手にあたりました。当然、ネトレプコは今回「マノン」に出演していますので、全公演には出演できません。しかし、通常中2日休んで出演しているところを、「マノン」の最終公演を無事歌い終えた後に調子がよければ、(中1日しかなくても)「椿姫」最終公演のみ歌えるかもしれないとのことでした。ですから、我々も最終決定を今まで待たなくてはなりませんでした。

 ロイヤル・オペラとしては、二度にわたるエルモネラ・ヤオの途中降板をうけ、再びネトレプコに打診しておりましたところ、ネトレプコから明日のヴィオレッタを歌うという確認をもらいましたので、ここに皆さまにお知らせしたいと思います。

 ネトレプコはすでに2年前ロンドンにおいて、このリチャード・エア演出の「椿姫」に出演し、大成功を収めています。

 日本の観客の皆さまのご理解をお願い申し上げます。明日の英国ロイヤル・オペラの日本公演の最終公演をお楽しみいただければ幸いです。


英国ロイヤル・オペラハウス
オペラ・ディレクター 
エレイン・パドモワ




アンナネトレプコの評価を決定づけた2005年ザルツブルグ音楽祭のネトレプコのヴィオレッタ



英国ロイヤル・オペラ 2010年日本公演「椿姫」全3幕
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:リチャード・エア

ヴィオレッタ・ヴァレリー:アンナ・ネトレプコ
フローラ・ベルヴォワ:カイ・リューテル
ドビニー侯爵:リン・チャンガン
ドゥフォール男爵:エイドリアン・クラーク
医師グランヴィル:リチャード・ウィーゴールド
ガストン子爵:パク・ジミン
アルフレード・ジェルモン:ジェームズ・ヴァレンティ
アンニーナ:サラ・プリング
ジュゼッペ:二―ル・ギレスピー
ジョルジョ・ジェルモン:サイモン・キーンリサイド
使いの男:シャルベル・マター
フローラの召使い:ジョナサン・コード

ロイヤル・オペラ合唱団 / ロイヤル・オペラハウス管弦楽団

◆上演時間◆第1幕:17:00 - 17:40 休憩 30分 第2幕(場面転換あり):18:10 - 19:20 休憩 25分 第3幕:19:45 - 20:20 2010年9月22日@NHKホール


ネトレプコの栄光の日

僕と椿姫
 4月に歌舞伎座が閉館する時に大騒ぎになった。ホロヴィッツの初来日の時に大騒ぎになった。公演が始まる前に観客の興奮が盛り上がり異様な空気になる公演がある。18年ぶりのロイヤルオペラの来日公演、最終公演の9月22日の椿姫はまさにそのような公演となった。今回の椿姫4公演のうち3公演は本来の出演予定だったゲオルギューの格下の歌手がさらに降板するというハプニングがあった。
 ネットの時代で、世界中で起きていることがメディアの情報を通さずに観客同士のネットワークでガセネタも含まれながら瞬時に世界に広まる時代である。8月後半から「マノン」のネトレプコがキャンセルするだろうという噂がネットに広まっていた。実際は8月下旬に「椿姫」のゲオルギューの降板が発表された。病弱の娘のそばにいてやりたいという理由だったのだが、親の死に目にあわずとも舞台に穴をあけないというのと真逆。それも、ゲオルギューは愛娘のそばにいたのではなく、旦那のオペラ歌手アラーニャとバカンスを楽しんでいることが報道されもした。NHKホールで54000円のS席という高額のチケットを「ゲオルギュー」が出るのならと購入した人はどう思っただろう。交換返金不可なのである。これなら、もう亡くなったマリアカラス霊界から出演予定!ともできるわいな!少なくとも悪意があれば相当あくどい商売もできる。
 1970年代に読売日本交響楽団が巨匠カールベームを定期演奏会に呼ぶとして騒然となった。老齢のカールベームは予想通りキャンセルとなり、カールベームをきくために定期会員になった人が大騒ぎになった。しかし、読売日本交響楽団は、代役として幻の指揮者と言われていたジョルジュチェリビダッケが登板。大評判となった。僕は遠巻きに見ていただけだが、いやあ、面白い。ドラマです。観客も喜怒哀楽含めたドラマに巻き込まれるのも公演の楽しみと考えたいものです。

 さて、今回の18年ぶりの来日公演。僕は春にニューヨークのメトロポリタンオペラの一等席でゲオルギューとヴァレンティの「椿姫」をきき、初めて椿姫の魅力を感じた物だ。今まできいてきたもののなかで主なものはもう15年前のリッカルドムーティとスカラ座の豪華絢爛な来日公演、当時はムーティのお気に入りで注目を浴びたティツィアーナ・ファブリッチーニという人だったらしい(全く覚えていない。2回のうち1回は亡くなった母を連れて行ったのだが、がっかりしていた。)。線が細く声はきれいだけれども何か心に迫って来ないというのが印象。つまり詰らなk立ったのだ。2回きいたんだけどね。ローマ歌劇場初来日のときは名古屋の愛知芸術劇場まで遠征して聞きに行った。開場に併せて名古屋だけでの公演だったのだ。なんか良く分からない鏡を山ほどつかった演出で、確か指揮はネロサンティ(あと、「トスカ」もやったはず)で、これもイマイチ。椿姫って、冒頭の乾杯の歌が終わったら、あとは退屈だなあと思ったのです。モンテカルロ歌劇場やフェニーチェ歌劇場の来日公演も、豪華絢爛、ゼッフェレリ演出のメトロポリタンオペラ(現地)でも見たのだが、途中で寝てしまう始末。
 もうこのオペラは自分に合わないからいいやと避けていたのですが、数年前に芝居のためにミュージカルの発声を主に生業にしている人に発声を習ったら、先生に一環として第二幕のバリトンの名アリア「プロバンスの海と陸」をやれとなり、曲をきくヘソができましたな。2007年にスイスのチューリッヒ歌劇場の来日公演で初めて集中して聞けたのです。指揮:フランツ・ウェルザー=メスト、ヴィオレッタ:エヴァ・メイ アルフレード:ピョートル・ベチャーラ ジェルモン:レオ・ヌッチできいてなるほどねとなったのです。最初にスカラ座の生をきいてから12年、やっと聞けたって感じですね。
 2010年4月にニューヨークに観劇のために出かけたとき、あんまり面白い舞台の出し物がなくて、「椿姫」があるけれど、どうしようと、230ドル(2万円くらい)で1階の半ばのど真ん中の素晴らしい席があったので、きいたらば、先述のようにもう脳天にきましたな。ゲオルギューの歌唱と演技のすばらしさ、舞台は豪華絢爛だしね。バレンティというテナーは歴史に残るような歌手ではないかもしれないがヴィオレッタを演じたゲオルギューがやりやすそうで、聞いてる方も何ら不都合はなかったので楽しみにしていたのです。

 2010年9月22日「椿姫」
 ゲオルギューが降板しアンナ何とかという格下の歌手を54000円、いや2万円の席だろううが聞いている人は、自分を納得させる為に必死だったと思う。僕は仕事もあり、チケットは勝っていたものの行くのをやめようか、3時間の休憩時間にしようか悩んでいましたな。とにかく代役が酷いときいていたのです。ところが前日にネトレプコが登板するとなり、これはどんな歌唱を聴かせるのか楽しみになりました。しかし徹夜。3階席だし、これは寝ちゃうかもしれないなあと思いつつ座席につきました。ところが、パッパーノの指揮はまたまた躍動。こりゃ聞く人の下半身に来る演奏。肌で感じる演奏であります。コーラスと時々づれるのですが、なんのその。脇役のアジア系の歌手がでかい声は出すけれど下品な歌唱をしましたが、ネトレプコの歌唱は、NHKホールにも関わらずピアニシモから高音まで安定した歌唱。強い声なのに、キンキンしていないんですよ。いやあ、いいですね。そして、色気があるのです。ジェーンエアの演出は分かりやすくシンプルです。シルエットを使った1幕と終幕も美しい。いや、何よりも大勢の人たちの人の動かし方が素晴らしいのです。
 ネットではジェルモンのキーンサイトの評判がいいのですが、「プロヴァンスの陸と海」ではイタリア語がきれいに歌えていないことと、アリアの最後の高音も避けてちょっとがっかり。しかし、ネトレプコが美しく色気があり、それが歌唱と相まって最高の公演になりました。もちろん練ることもなく、そのあとの仕事も滞ることありませんでした。行って良かった。きっと語り継がれる公演になったでしょう。こりゃ、内容についてはほとんど触れていませんね。まあ、いいや。とにかくパッパーノによってロイヤルオペラは再生し、ネトレプコがマノンとヴィオレッタの公演で日本のオペラファンを席巻した来日公演でした。次の来日は5年後くらいかな?ロンドンに行くことがあったら、またロイヤルオペラハウスでもオペラを楽しもうと思いました。オペラハウスは本当に生きものです。良くなったり悪くなったり。一度の経験で評価を決定づけるのは危険だなと思いました。



リヒャルトシュトラウス作曲
デニスクリフ演出

 演奏も歌唱も良かったのだけれど、演出も美術もちょっと平板というか、アイデア倒れで終わっていて見ている側が飽きてしまう。ちょっと参った公演だった。


2010年6月2日
モーツアルト作曲
ポールネドラー指揮
ジュリータイモア演出

歌手はあまり知らない人ばかり。しかし、実力派ばかりでいいアンサンブルだった。
メトロポリタンオペラの魔笛は保守的な歌劇場の中でアートに身を委ねるみたいな伝統があって、シャガール版美術、デビットホックニー美術版と過去40年間、美しい美術で彩られてきた。この作品もそういう意味でアフリカや東洋の演劇や美術を持ち込んだ作品となっていて、次々と変わる舞台上の変化は見ていて空き内容に工夫されていた。メトロポリタンオペラの底力を感じさせる名舞台だった。僕は1階席で見たからいいけど、このビジュアルプレゼンテーションは、舞台から遠い席の人にはちょっとツライかなとも思った。


2010年4月15日 メトロポリタンオペラ

 
ベルガモ・ドニゼッティ劇場来日公演
ドニゼッティ作曲 
愛の妙薬

指揮 スティファノモンタナーリ
演出 フランチェスッコ ベロット

アディーナ リンダカンパネッラ
ネモリーノ ロベルトイウィアーノ
ベルコーレ レオナルドガレアッティ
ドズルカマーラ マッティオペイローネ



 2007年の来日時にも観た劇場が再来日。何となく観に行った。このオペラハウスはイタリアの地方の劇場で、ミラノスカラ座などのトップクラスのオペラハウスと比べることはできない。オケの技術を考えても東京の一流の交響楽団に比べれば数段落ちる。合唱も普段の新国立劇場の方がいまや上だろう。だからこそ、技術よりも、いい意味でのイタリア的なサウンドを求めていくのである。素朴で情熱のあるイタリア的な悦びにあふれた音楽を求めるのである。
 しかし、この10年あまりイタリアからの来日組をいろいろときいてみて、イタリアのミュージシャンは疲れているんだなあといつも思う。スカラ座やボローニャ、いい時のフィレンツェなどはのぞくと、どこもかしこもボロボロなのである。疲れていて音楽をやる喜びもない、技術もハートもないから、幕開けの音楽はだらしなく緩んだサウンドだ。今回も例外ではなかった。


 それでも、この夜のモンタナーリという指揮者は決して一流とはいえないメンバーを統率し実力を出し切るために一生懸命鼓舞しそれはある程度成功した。音楽は後半につれて活き活きし、良く鳴っていくのである。歌手はみんなそこそこ。期待したイウリアーノは、音域によってムラがあるし、かすれた声をごまかしてばかりいた。輝かしいテノールの快感は最後まで聞くことができなかった。
 ドゥルカマーラのペイローネは、歌手というよりもコメディアン。それも、節度をわきまえていないので、カンパニーの統率を崩してしまう。余計なことをしすぎてしまう。演出がもっとしっかりして欲しい。
 しかし、これだけオーソドックスな美術と演出だと、超一流の歌手と音楽でないと僕はもう満足できないな。何かなにもかにも中途半端なレベルでちょっとがっかり。ホントにつまらない凡庸なのだ。オペラを聴き始めたばかりの人にはいいかもしれないが、僕はもうつまらなくて仕方がない。
 モンタナーリという指揮者はきっとここを足場にしてもっと上のオペラハウスを振るようになるんだろうな。。。そんなことを思ったくらいの公演だった。

 2010年1月19日
 武蔵野市民文化会館
 
 
ミラノスカラ座来日公演
ヴェルディ作曲 アイーダ ドンカルロ
指揮 ダニエルバレンボイム ダニエルガッティ

スカラ


イタリアオペラの総本山。つまりオペラの最右翼。ミラノスカラ座がこの秋6度目の来日をします。チケット代は高いのですが、やはり最高級が期待できるのでついつい見てしまいます。来日公演でみたものだけを考えても、リゴレット、椿姫、西部の女、ファルスタッフ、トゥーラントッド、運命の力、オテロ、マクベスと聞いて来た。印象に残っているのは2003年のオテロは本当にスゴく、もう一生これ以上のオテロに出会えないかもと思ったものだ。それも2回も聞きに行った。リゴレットは哀しく、ファルスタッフは歌もそうだが演出が美しかった。椿姫は豪華絢爛。トゥーラントッドは初スカラだったこともあり、NHKの3階席の本当に後ろからあんぐりしながら見ていたものだ。もう20年以上も前のこと。ミラノの本拠地スカラ座でも一度だけ聞いたことがある。もう20年くらい前のこと。浅利慶太さん演出の「蝶々夫人」。指揮はネロサンティだった。
 今回は「アイーダ」と「ドンカルロ」。チケット代は最高が67000円。高いなあ。それでも行ってしまうのかから仕方がない。



 感想…金曜日の午後5時開演のミラノスカラ座「アイーダ」の開幕!平日の午後5時だというのにNHKホールは満杯。最高席は67000円!僕のチケットも5万円以上です。旅行行けますよ。幕があくと豪華絢爛なこの世の最もゴージャスな舞台がそこにはありました。100人を超える世界でトップのオーケストラ。特に歌劇では!。200人を超える世界最高の合唱団と役者、そして、美しいイタリア人勢揃いのバレエダンサー(ミラノスカラ座バレエ団)。イタリアの伝統と美意識の極地を行くために、ここまでやるかというくらいに金をかけた衣装と美術!もちろん、世界最高峰の美声を聞かせる歌手たち!4時間の公演があっという間に終わりました。
 この公演の演出はフランコゼッフェルリ。ビスコンティの愛弟子で、映画監督としては「ロミオとジュリエット」(オリビアハッセー!)が代表作。貴族の末裔で、豪華絢爛な舞台では世界一。ワールドカップなどで使われて一般の人にも名高い、あの有名な凱旋行進曲のシーンでは、馬や象なども登場させたことのある人です。実は、ゼッフェルリ演出のアイーダは、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場、東京の新国立劇場オペラハウスでも、ありまして、基本的なコンセプトは同じなんですけどね。微妙に衣装や美術、バレエなんかが違ったりですけど。
 僕はフィレンツェ歌劇場の「アイーダ」もズビンメータの指揮できいたりしています。
 ここまで書いたのだからさぞ喜んだのだろうと思いきや違うんです。
世界最高峰のそれを求めていますからね。歌手の音程がふらついたりすると、いちいちイライラ来ますし、何だよこれ!ってね。特に幕開けのラダメス、ヨハンポータは音程がふらふらで息継ぎもダメ、声も出ていません。ここにアップしたアラーニャのブーイングをかった歌唱以下で、今回は拍手もなかったです。僕はブーイングしようかと思ったくらいです。代役となったアムネリス、グバノヴァは声が弱く、肺活量が足りないので、ものすごい勢いでいろんなところで息継ぎをする。そして、オケに負けてしまう。昔のオブラスツワとか、Fコソットのような素晴らしいメゾはもう出て来ないんでしょうかね。今宵の指揮者はバレンボイムでしたが、余情的な音楽作りをしようとしたのか、ちょっと舞台と合っていなかった感じがしますね。カーテンコールではブーイングしていた人もいましたね。いろいろとありますが、ホントに思います。やはりね。オペラは舞台芸術の最高峰だと。

ドンカルロ 声とヴェルディサウンド。ソリストも合唱も素晴らしかった。演劇的効果もあって集中して4時間半の大作に向き合えた。やっぱスカラ座はいいな。

       スカラ

YOUtube見ていたら、アイーダの舞台の一部がありました。ごらん下さい。



 この独唱をしている人はロベルトアラーニャという現代を代表するテノールなんですが、このあと事件が起こります。イタリアのテレビニュースからどうぞ。



 幕開けの「清きアイーダ」という名曲を唄った後に客席からブーイングが出て、その場で唄うのを辞めてしまって、途中から私服の代役の人が唄ったという次第。スゴいですね。イタリア。

 この舞台が日本にやってくるのです。このシーンだけをみても金が掛かっていて人が山ほど出ているのも分かりますね。他のシーンも見てみましょう。今度はアイーダが唄っているシーンです。




イタリアミラノスカラ座は12月にそのシーズンが開幕となり毎年大きな話題になります。特にイタリアではそうなんですね。次のようにニュースにもなります。今回のプロダクションはゼッフェレッリという映画監督ビスコンティの弟子に当たる人が担当しています。豪華絢爛な貴族趣味の演出で有名な人です。映画監督している人です。



オペラが、音楽、演劇、美術、バレエなどなど総合芸術であることが良く分かりますよね?
何かみなさん興奮して話しているのが分かりますよね?有名な凱旋行進曲はサッカー好きならおなじみでしょう。ミラノスカラ座のオペラ体験。今年の秋9月に日本でできます。如何ですか?


アイーダ
2009年9月4日
NHKホール

ドンカルロ
2009年9月8日
東京文化会館

オペラ合唱名曲コンサート
2009年9月16日
NHKホール

ウィーンフィルハーモニー管弦楽団演奏会
エサペッカサロネン指揮 カティラマッティラ独唱
曲目 ベルグ作曲 叙情組曲からの3章、アルテンベルク歌曲集 ブルックナー作曲 交響曲第6番2009年8月10日 祝祭大劇場 
 
 東京の演奏会ではなかなか見られない組み合わせである。サロネンはつい先年までロスフィルの常任だったわけですが、ものすごく手堅く演奏した。ザルツブルグできくウィーンフィルは、僕がきく東京や、かつてきいたニューヨークやロンドンのそれと違って、自宅にいる落ち着きと重石があったように思える。ツアーの中で披露するものと違うような。ベルグの小編成の楽曲で弦楽合奏の調子を最大限にあげ、マッティラの歌声を得て歌曲に。そして、珍しいブルックナーの6番をサロネンというよりもウィーンフィルのそれとして演奏した。楽友協会できいてみたいと強く思った。

モーツアルト作曲 コシファントッテ
アダムフィッシャー指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
2009年8月11日 モールアルトハウス

ザルツブルグ音楽祭の引越公演は東京でも行われ、僕は歌手もピットにはいるオケもちょっと不満だったのでいかなかったのだが、ここザルツブルグではウィーンフィルが入っている。そして、2000人を遥かに下回るキャパのモーツアルトハウスでの上演だ。演出はモダンなのだが、演奏はアップテンポで行くのだがモーツアルトそのものでもある。
 現代のエリートな若者のパーティに話を移し替えていたのだが、何かね。そんなことしなくてもと思ってしまうなあ。

ロッシーニ作曲「モーゼとファラオ どうやって紅海を渡ったか」
リッカルドムーティ指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
2009年8月11日 祝祭大劇場

 素晴らしい演奏である。歌手もオケもスゴい。1時間前までモーツアルトを演奏していた人たちがどれだけピットに入っているのかは知らないが、驚いてしまう。しかしね。オラトリオみたいな退屈な話で、演出も何か嘆きの壁のようなものに囲まれて、とにかく大勢のユダヤ人の前で、唄い続けるんだけど、まあ、ホントにね。退屈で。楽曲は、ロッシーニ的な軽やかな曲でなく、どしっとした曲にしようとしたんだろうね。ムーティはどこがいいと思って取り上げたんだろうか?僕にとっては退屈の極み。もう一度言います。演奏は究極の極みであることは良く分かります。しかし、退屈。超名優が超名演をするのだけれど、台本が酷すぎてみてられないという感じだった。


 夏の旅行の行程中にザルツブルグは入っていて、丁度音楽祭のシーズン。早速ネットでチケット予約しました。

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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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