佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 モンテカルロバレエ 来日公演 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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モナコ公国モンテカルロ・バレエ団 2012年日本公演<Aプロ> 
(「シェエラザード」「ダフニスとクロエ」「アルトロカント1」
「シェエラザード」
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー (ミハイル・フォーキンへのオマージュ)
音楽:ニコライ・A. リムスキー=コルサコフ
美術・衣裳:ジェローム・カプラン
舞台装置部分:レオン・バクスト
照明: ドミニク・ドゥリヨ

愛妾ゾベイダ:小池ミモザ
シャリアール王:ガエタン・モルロッティ
シャゼーマン (王弟):レアルト・デュラク
宦官長:ロドルフ・ルカス ほか

「ダフニスとクロエ」
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー
装置、ドローイング:エルネスト・ピニョン=エルネスト
衣裳:ジェローム・カプラン
音楽:モーリス・ラヴェル
アンハラ・バルステロス-ジェローン・ヴェルブルジャン
ベルニス・コピエテルス-クリス・ローラント

「アルトロ・カント 1」
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー
音楽:クラウディオ・モンテヴェルディ、ビアジオ・マリーニ、ジョバンニ・ジローラモ・カプスベルガー
衣裳:カール・ラガーフェルド
装置デザイン:ロルフ・サックス
照明:ドミニク・ドゥリヨ

◆上演時間◆ 「シェエラザード」19 : 00 - 19 : 40  休憩20分
「ダフニスとクロエ」20 : 00 - 20 : 35  休憩20分
「アルトロ・カント1」20 : 55 - 21 : 35



「マイヨーの仕掛けるバレエリュスからの旅」
 バレエリュスという言葉は前から聞いていたけれど、それがロシアを意味すると知ったのはつい最近。知らずに使っているのは恥ずかしいね。でも20世紀初頭のバレエといえば、ロシアバレエと同義語に近かったはずだから、それでも感覚的に大きく外れていたわけではないなと納得。それもロシアバレエはディアギレフを頂点とした流行があったわけだ。
 チャイコフスキーのロマンチックなバレエだけでなく、ストラヴィンスキーの春の祭典を、パリで上演し観客から激しい拒否を浴びたバレエの熱い時代。僕はそれがなぜか分からないけれども、バレエリュスはモンテカルロに落ち着くとか。良く分からないけれど。僕の持っていたバレエリュスのイメージは1作目の「シェラザード」に色濃く出ていた。前にこのバレエ団が来日した時に観た、「牧神の午後への前奏曲」を観た時にも何かシャガールの緞帳のイメージがして何か遠い1世紀ほど昔と心がつながる経験をした。
 バレエリュスの肝は何だろう。観客の求めるバレエを裏切り続けることじゃないかと思ったりもする。その裏切りは、観客がお金を払って着飾って、人間の肉体の極みと美を観に来て楽しく幕間をおしゃべりとシャンパンで過ごし、ああ楽しい一晩でしたと終わらせない凄みがある。突きつけるのだ。いま自分が観ているものは何だろう。分からない、でも惹かれる。今までとは違う。ああ、知性と感性が引きちぎられる!こういう体験をさせることがバレエリュスの肝ではないかと思うのだ。
 何の根拠もないけどね。
そんなことを感じさせる物語バレエ「シェラザード」のあとの2本は、後者になるに連れて、物語性は失われ、単純にエロチズムとか美しい身体の線と動きとか、そういった従来の自分の経験した感性で観られる作品から遠ざかっていく。面白いなあと思った。
 最後の作品は衣装がカールラガーフェルド。トランスジェンダーな衣装で普通の美意識を根底から揺さぶりかける。美しいが従来のそれとは違う。でもダンサーの動きは魅力的だ。でも、古典のダンスで観て来たそれとも違う。
 マイヨーはそういう旅をこの3作品で観客にさせた。そして、空間を舞台表面からジャンプしてのせいぜい3メートルというのからも解放した。視線は踊りを含めた舞台空間全体に均等に振り向けられ、美しい照明は人間の肉体のモーメントを見事になぞってみせた。こんな美しいバレエの照明はみたことがない。
 常に革新的で分からないけれども魅力的。きっとそれがバレエリュスだろう。
 パリオペラ座やロイヤルバレエ、ボリショイや東京バレエ団を観るときのようにスターダンサーの絶技を観に行くわけはないし、そのようなアイコンもこのバレエ団にはいないけれども、そこにはマイヨーの仕掛けるもっともっと深く幅の広い仕掛けがあった。
 2012年3月7日@東京文化会館
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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