佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 DANCE to the Future 2012 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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DANCE to the Future 2012 平山素子振付によるトリプル・ビル
「Ag+G」湯川麻美子 寺田亜沙子 益田裕子 奥田花純 五月女 遥 福田圭吾 貝川鐡夫 古川和則 原 健太 八木 進
「Butterfly」丸尾孝子 宝満直也
「兵士の物語」【兵士】八幡顕光【プリンセス】厚地康雄【3人の道化】大和雅美 小口邦明 清水裕三郎【悪魔】山本隆之


1.「Ag+G」新国立劇場バレエ団のための平山素子最新作。変化する銀、交錯する重力、ダンサーの肉体から迸るエネルギーは新たな時空へと向かう。
音楽:笠松泰洋「『Ag+G』for two violins」より、落合敏行
2.「Butterfly」2005年9月の初演以来、再演を重ね絶賛を浴びている男女のデュオ 音楽:マイケル・ナイマン、落合敏行 共同振付:中川賢
3.「兵士の物語」          
2010年12月「ストラヴィンスキー・イブニング」で初演された衝撃作。ピアノ・ヴァイオリン・クラリネット三重奏による上演です。


「この作品が国税で作られている事を意識して」
 出かけてみたら最前列だった。そして、今回は舞台と客席は同じ高さだ。言うまでもなく対峙させられる。ダンスを普段見ているわけではないので、こういう作品をどういう視点で観るのかということから自分と問答する。少ないとはいえ、バレエも観るし、演劇、オペラなどの舞台芸術は多く観るので取っ掛かりはそこになる。
 新国立劇場の踊り手たちの肉体は素晴らしい。そして、その肉体は重力からさえも自由であるかのようだ。ダンスは肉体によって表現されるものだから、それを伝える踊り手がこれだけの技術と、それだけでなくたった2回の公演、中には1度しか踊らないにも関わらずこれだけの集中力と懸命さでその瞬間に取り組む姿勢はプロだということを考えてもそれだけで感動する。
 しかし、だ。平山素子の作品は、それに相応しいほど素晴らしかったのか?
2作目の「バタフライ」は面白かった。見ていて飽きないし、オリジナリティも感じられた。男女のペアの肉体の関係が発展し崩れ動いていく。交差し交わり反駁し合い愛し合う。生の危うさと強さを感じさせる作品だった。ナイマンの音楽も照明も良かった。この作品は、踊り手には高度な技術と集中力を要求するし、作品に自らを捧げることも求められる。それに2人は良く答えていた。宝満には若さがあり繊細でのびやかだ。それに対して丸尾には少々若い溌剌さがないなあと思ったけれども、それは表情を隠してしまうメークにあったのかもしれない。

 しかし、あとの2作品はイマイチであった。

 先ずは1作目「AG+」つまり、銀という意味である。
 舞台には、銀色の鋭角なメタルをイメージさせる衣装、銀色に塗る顔が導入される。こうして、具体的に物理的な銀を導入することの危険性に無頓着すぎないか?
 こうなると、この銀はメタルの銀の世界となってしまう。さらに、そこまで物理的に銀があると、踊りでその銀よりも銀以上のものを見せなくては、衣装とメークに負けてしまう。
 銀というタイトルはいい。とても哲学的だし抽象的にイメージはいろいろと広がる。抽象的な作品を僕は予想していた。
 それが、実際は舞台に、物理的に「銀」が山ほど導入された。こうなると色の銀、メタルの銀に固定されてしまう。
 「銀」というタイトル、そこと直結する衣装とメーク。タイトルは、作品を作る前に決めるわけだから。決めてしまった事はいいこととして、作品を平山が作る時に、その言葉から平山が連想する、感じる自由な、もっというと我々の持つ銀のイメージに寄り添うことなく、広がって作っていけばよかったのだ。
 そこに、ここまで物理的に銀を見せられると、それぞれの観客の持つ銀自体のイメージから離れる事は難しくなってしまう。
 
 ダンス、肉体のモーメント自体も高度な技術であるけれども、そこから自らの衣装、メイク以上に銀を感じさせるものは何もないだろう。
 2つのバイオリンの音楽が流れる中、激しく変わっていく踊り。ソロ、デュオ、全体といろんなタイプの踊りを組み合わせていくのだが、その踊りの技術は素晴らしい。
 でも、そこに物理的な銀でダンサーは埋められる、タイトルもこうあると、何でこの作品が「銀」なのか?となってしまう。
 そうなのだ。我々も自由に作品と向き合えなくなってしまうのだ。タイトルと衣装とメークが、ダンサーと観客の間に大きな壁を作ってしまった。失敗作だ。

 「兵士の物語」はもっといけない。
 ストラヴィンスキーは20世紀の大振付家がその音楽に素晴らしい振付けをすでに施している。そして、ここでは、道化師にいわゆる古いイメージの道化の、悪魔には悪魔の衣装を着せ、男のダンサーにプリンセスとして圧塗りのメークと女装までさせる。こうなると通常のバレエと比較されてしまう。
 なぜなら、バレエをやりますと宣言しているようなものだからだ。
 平山はストラヴィンスキーの作った音楽「兵士の物語」の枠の中で作品作りをしなくてはいけない。
 平山は、「兵士の物語」の作品に沿って、バイオリンや「金のなる本」を出してみせるし、悪魔と交換し、悪魔が女装して兵士のもとに来たりもするのだが、それは、この作品を見るだけでは分からない。見ていると、平山は物語から離れて振りつける部分ばかりには彼女の興味ややる気も感じるのだが、物語部分はソコソコやってるだけで丁寧にやっていないので、物語が伝わって来ないのだ。
 バレエとしてのダンスの見どころを提供してもいないし、「兵士の物語」をもきちんと語っていない。もともとこの作品は踊りだけで見せる難しさがあるからこそ、語り手を導入している。それを省くのなら、きちんとダンスで見せなくてはいけない。これじゃあ、タイトルに「兵士の物語」を冠するのは過ぎるだろう。
 この作品は、「兵士の物語」そのものに、きちんと対峙することなく、他の作品と同じようにただイメージで振付けているような印象をもった。
 作品のへそもないし、登場人物に衣装以上のキャラクターをもって演じさせない。高度な踊りのテクニックを踊り手には要求しているけれども、それが作品の中で生きていない。あれだけ踊らされても何も「兵士の物語」は伝わらない。本質が伝わらないだけでなく、物語の筋も伝わらないのだ。
 踊り手が可哀想だとさえ思った。悪魔をやった山本隆之などは悪魔を踊ろうと、分かりやすい動きをするのだ、しかし、そこから物語がほとんど起こらない。黒い顔、白髪頭、分厚いコート。分かりやすい悪のイメージだけで勝負できるわけない。
 だいたい、そんな古典的なフェアリーテール的アプローチは20世紀の音楽には通用しないことを平山は分かっているのだろうか?
 もっと当たり前の衣装やメークを排して、もっと踊りで見せていくことをしなくてはいけない。衣装やメークはそれを助けるものなのだが、踊りがあって、そこに添えられるものでなくてはならないはずだ。逆ではおかしい。
 繰り返しになるが、センスがないなあと、衣装とメークで思ってしまった。あれじゃ表情は見えない。「AG+」の衣装では踊りがきれいに見えない。「兵士の物語」では、古典バレエのように分かりやすい衣装を着せるだけで何も起きない。平山的アプローチをするのであれば、もっと自由に自分の作品を作るために、そのようなイメージからも自由でなくては作品作りはできないはずだ。何よりも踊り手の表情をしばり、動きがきちんと伝わらない衣装やメークをそのままにしてしまうのは、如何なものか?
 新国立劇場の予定をみると、来年も平山氏の作品を上演する予定があるようだが、新国立劇所は、この若い人物に毎年税金を使って作品を発表する場を提供していくのか?それならば、新国立劇場の予算はもっと行革の対象にならなくてはならない。
 平山氏は国税を使ってではなく他のパフォーマーと同様、自ら上演資金を集め自らのリスクで公演を積み重ねてもらいたい。先ずはそこから初めて欲しいと切に思う。2012年4月22日@新国立劇場中劇場
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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