佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 ベストマン 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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脚本/ゴア・デビル 演出/マイケルウィルソン
出演 ジェームズアールジョーンズ(「博士の異常な愛情」「レッドオクトーバーを追え」「パトリオットゲーム」「フィールドオブドリームス」「ルーツ」ダースベイダーの声)、キャンディスバーゲン(「砲艦サンパブロ」「風とライオン」「結婚ゲーム」)、ジョンラクロット(「JFK」「リッチーリッチー」)、ケリーバトラー(「ツインズ」「アナザーワールド」「30ロック」)エリックマコーマック、アンジェラランズベリー(「ナイル殺人事件」「ジェシカおばさんの事件簿」) ほか トニー賞、オリビエ賞、アカデミー賞の常連ばかり!

権力、野心、政治上の秘密、過酷な大統領選の舞台劇。ゴア・ビダールのThe Best Man(ザ・ベストマン)の舞台設定は大統領選挙の予備戦中の党大会で、二人の候補者が指名獲得争いに凌ぎを削っている。泥仕合に騙し合い、三重の言い抜け、と
「名優、スターのきらびやかな競演を満喫」
 とても面白かった。同時に日本での上演は考えられないなと思った。きらびやかなスターたちが、きちんと政治家に見える。政治家の台詞を話すのだ。日本では会社員、経営者、政治家、弁護士、医者に見える俳優がどれほど少ないか。だから、この俳優でやるのかと思うキャスティングになる。例えば、今度やる「エンロン」。僕なんか一番見たい種類の芝居なのだが、また、あの市村節で芝居をやられるのかと思うとわざわざ金を払ってまで行きたくなくなってしまうのだ。怪人やエンジニアは良いのだが、政治家、医師、経営者、弁護士、ジャーナリストとかを、いつものあのテンションで市村さんのセリフでやられたらどれもこれもぶち壊しだと思うのだ。
 この作品は1960年の民主党の指名争いの党大会の話だ。実際に指名されるケネディは出てこない。3人の候補が最後のしのぎを削っているという設定だ。
 壮年で病気を隠し、妻との冷え切った関係の候補。若く野心があるが軍隊時代にホモ疑惑を持つ若い候補は、壮年候補の秘密を握って今にもマスコミに公表して逆転してやろうと必死だ。一方、壮年候補も若手候補のゲイ疑惑の秘密を握る。
 大統領は壮年候補を支持。しかし、末期癌で痛み止めを飲みながら選挙戦の行方に絡んでくる。最後に二人の候補は取引をしようとするが…。
 といったストーリーである。 ブロードウェイで芝居を見ると、どうしてもミュージカルの比重が多くなる。英語の台詞の理解度に不安があるので、音楽、歌、ダンスでも楽しめる作品に手を出しがちだ。しかし、今回の芝居はあらすじも知らなかったし、何も知らずにとにかくスター総出演というのに惹かれてみたのだが、これだけ英語の台詞がきちんと分かる芝居も珍しいなあと思った。
 この芝居はブロードウェイものでは珍しく3幕仕立て。そこで、どうしてだろうと思いながら3幕を見ていたら、なるほどと思った。わざとらしくなく、微妙に重要なキーワードをきちんと際立たせるように自然に台詞を話しているのである。特にアクセントをつけたり、間をとったりするのではないのであるが、言葉を大切にしている。伝えている。これでキーワードを聞き逃さずに聞けるから話がどんどん分かるのである。名優の技術ってこういうところに出るのだなと思った。そういえば、日本でも昔の新劇の名優はそうだったし、今でも現代口語ではない歌舞伎を見ても何を言ってるのかがわかるのは、歌舞伎の俳優はそういう技術を伝承しているからだ。
 大統領選挙戦のいま、大変面白い芝居を見れて大満足なのであった。



2012年4月10日@ブロードウェイ ジェラルドシェーンフェルド劇場 Gerald Schoenfeld Theatre
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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