佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 セールスマンの死 DEATH OF A SALESMAN 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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DEATH OF A SALESMAN

Written by Arthur Miller
Director Mike Nichols


Willy / Philip Seymour Hoffman
Biff/ Andrew Garfield
Linda/Linda Emond

Charley Bill Camp
Happy Finn Wittrock
Stanley Glenn Fleshler


Uncle Ben John Glover
Miss Forsythe Stephanie Janssen
Bernard Fran Kranz

「マスターピースの上演史に刻まれる名演」
 今回のアメリカ行の目的のひとつが、この上演を見ることだ。日本で予習をし万全の態勢で出かけたこともあり、この稀にみる名演を堪能できた。フィリップシーモアホフマンは、この10年弱の間にハリウッドのトップクラスの俳優として君臨する名優となった。それはほぼデビュー作でもあった「トルーマンカポーティ」1作でアカデミー賞主演男優賞を奪取したことでも明らかだ。それも誰もがその受賞を疑わない圧倒的な名演であった。
 ホフマンは若いころのアルパチーノやデニーロのように、役にのめりこむタイプの役者である。舞台上の彼は演技をしているというよりも、ただそこに存在している。台詞のうまいこと、表情の豊かなこと、肉体の存在の見事なこと。ただ椅子に座っている。ただ歩いている。ただ人を見る。そのひとつひとつが、資本主義国アメリカでアメリカンドリームを実現できなかった男の哀しみを体現しているのだ。
 僕はブロードウェイとロンドンで本当に多くの名優たちを生で見てきた。ダスティンホフマン、ケビンスペイシー、アンソニーホプキンス、デンゼルワシントン、ジュリールイス、ケヴィンクライン、ローワンアトキンソン、3回みたマギースミス、バネッサレッドグレープ、キャサリンゼタジョーンズ、ジェシカラング、マイケルガンボン、マーティンショート、ジョシュハートネット、バーナデット・ピータース、イーサンホーク、ジェフゴールドマン、ネイサンレイン、アルバートフィニー、ジョンリスゴー、グレングローズ、クリスチャンスレーター、ダニエルラドクリフ、マドンナのストレートプレイを見てるし、そして、ジャックレモン。今回も「エビータ」のリッキーマーティンに始まって、前に「ピローマン」を演じたのも観劇した2回目のジェフゴールドマン、若手の演技派ジャスティンラング、そして、キャンディスバーゲン、アンジェラランズベリー、ジェームズアールジョーンズ、ジョンラケット、5回目のマシューブロデリックと山ほどハリウッド映画のスター達を生で見ているのであるが、本当にうまい。しかし、今日のホフマンの演技はそんな名優たちの中でも特筆だ。
 普通スターというのは持って生まれたオーラ、キャラクターから来るオーラというものがある。それはそれで素晴らしい。しかし、このフィリップシーモアホフマンという俳優は普段はきっと普通のアメリカ人のおじさんとしてカメレオンのように大して目立たない。しかし、一度演技を始めるとその演技自体がオーラを放ち魅力となるのだ。キャラではなく演技そのものが輝いている。それも押しつけがましいのではなく、普通にただ存在しているだけなのに。そういう意味で、前述のスター達とはまた違った次元にいる俳優なのだと思った。
 日本にいまこれほど素晴らしい俳優がいるだろうか?男優で?
 共演したリンダエモンド、アンドリューガーフィールドも丁寧な役作りでものすごくうまいのだが、ホフマンの前ではかわいそうなくらい目立たない。演技をしているという感じから抜け切れていないからだ。
 そして、もうひとつ付け加えたいことがある。ブロードウェイは確かに悪い意味での資本主義に染まっている。特に9/11以降はチケット代が本当に高くなった。昔はなかったプレミアムシートで、このセールスマンの死も最高席は400ドルである。通常席のS席(1階席と2階席の2/3)は140ドルくらい。最後列2列くらいが水曜のマチネだけ60ドルといった具合。僕がここで芝居を見始めたころは最高席でも60ドルくらいで、ミュージカルでなければ50ドル以下だった。本当に高くなったものだなあと思う。
 例えば、この「セールスマンの死」は16週間の限定である。シーモアホフマンが演技をしているから見るのであって、ミュージカルのようにでは次のキャストというわけにはいかない。いろんな問題がある。今日見た劇場はミュージカルでない良心的な名作、意欲作を上演することが多いエセルバリモア劇場。5~7年くらい前に、ここで見た「ガラスの動物園」も素晴らしかった。ジェシカラングとクリスチャンスレーターをデビッドルヴォーが演出していた。
 こういった素晴らしい演技を経済的に余裕がない若い演劇人、若い人たちに見てもらう方法はないのだろうか?

公演後歩いて帰るホフマン(笑)

2012年4月11日@ブロードウェイ エセルバリモア劇場
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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